本日の上村達男教授(+クラスアクション?)

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本日の産経新聞13面、”【正論】早稲田大学法学部長・上村達男 ライブドア事件−−
罪を問えない3つの巨悪が本質、現在進行形で機能する「規制」法を”、という記事で、上村教授が熱弁をふるってらっしゃいます。。

 ライブドア前社長の堀江貴文被告に対して、16日に東京地裁は懲役2年6月の実刑判決を下した。この判決については、様々な論評がなされているが、そこで何が起こったのかを理解した上での論議であるかは疑わしい。
 ライブドア事件の本体は以下に示す3つの巨悪からなり、そうして得られた利益を売り上げとして計上したという「不正の後始末の不正」だけがこの裁判で取り上げられたにすぎない。最後の部分だけを見ると、そんな不正は昔からよくあるではないか、金額も巨額というほどではないのではないか、実刑は重くはないか、目立つ人物を検察が恣意(しい)的に摘発したのではないか、という発想となる。
 しかし、判決が(中略)等々、強い口調で被告を批判し、実刑判決を下した背景には、こうした粉飾に至る巨悪への認識があると思われる。本判決は巨悪を巨悪として摘発できず、有価証券報告書虚偽記載という(通常は重大な罪だが、本件の構造の中では)いわば末梢(まっしょう)的な罪によって裁かなければならない日本の資本市場規制の貧しさの表現である。問題の本質はここにある。

として、上村教授はライブドアが行った「三つの巨悪」として;
第1として、株式分割により証券市場を意図的に機能不全に陥らせることのみを目的とした行為は、これだけでも偽計取引。
第2に、下方修正条項付き転換社債(MSCB)を、貸株つきで発行するという、株主を害することが予定されている行為の悪。
第3が、市場外取引であるトストネット取引を利用して、本来は強制されるはずの公開買い付け(TOB)を潜脱した違法。
を掲げてらっしゃいます。

時々刻々と変化する市場にふさわしい本来の規制体制が確立していない。そこで最後の砦(とりで)として検察が出てくると、必ず勝たねばならない組織であるために、また専門性の乏しい裁判官が理解しやすいように、有価証券報告書虚偽記載やインサイダー取引といった分かりやすい罪名を使う。するとことの本質が見えなくなる。貧しい悪循環というほかはない。

ということなんですが、問題は具体的にどういう法秩序を形成するか、ですね。
上村先生がどういう規制体制をイメージされているかはよく存じませんが、個人的には、社会というのは「複雑系」なので、ここんところの一連の法改正のように、「どんどん細かくしていけばいつかは理想的な状態に達する」という気はまったくいたしません。
ライブドアについても、「確かに悪いのはわかるが、東京地検がいきなり踏み込んで、有無を言わさず上場廃止にするのがよかったのか?」というご意見の方もたくさんいらっしゃるかと思います。
そのケースのように公権力が介入しないと健全化機能が働かない状態を「市場経済」と言えるのかどうかについては、ちょっと疑問でして、「ビジネスのことは民間で解決できる」という姿がなんとか実現できないものかなあと思っております。
じゃあどうすんの?ということで、識者の方々といろいろしゃべっているときに「今時点であまり言うと嫌われるけど」という前置きのもとで、「クラスアクション(の日本への導入)」というキーワードが、なぜか最近よく出てきます。
本日も、「弁護士さんの内部統制のセミナーで、”司法制度改革で法曹資格を持った人が増えるから、結局、それをやるしかないという方向だ。『上』の方も、それを後押しする方向らしい。”」というような恐ろしい情報(確度不明)を聞いてきた話を聞きまして・・・。
(うへー)
そういう世知辛い時代が来る前に、なんとかコーポレートガバナンスとか内部統制とかいったリスキーな(になる)話からは身を引いて、隠居の身になりたいものであります。
(ではまた。)
(追記:3/21)
例えばアメリカでは、インサイダー取引が明文で法律に規定される前に、膨大な判例が形成された、というように、もうちょっと「web2.0っぽい」ルール形成が行われているようなので、上村教授は(必ずしも法整備をやれ、というわけじゃなくて)、そういう感じも想定されているのかな?とも思ったのですが、記事からはよく読み取れませんでして、非常に興味があります。

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7 thoughts on “本日の上村達男教授(+クラスアクション?)

  1. ライブドアはこの三つの巨悪(特に引受証券会社に対する貸し株付きのMSCB)を実行しながら無知な投資家を騙して図体だけ大きくなった典型的な泡沫会社です。
    さっさとこれらの罪も証券取引法の包括規定でばっさり裁くべきです。

  2. 「細かくしても理想状態に達することはない」なんて当然。だた適切にルールを整備すると良い状態に近づく場合もあると思いますし、3つの巨悪を阻止できなかった当時のルールは体制はお粗末だったと感じます。

  3. >当時のルールは体制はお粗末だったと感じます。
    例えばアメリカでは、インサイダー取引が明文で法律に規定される前に、膨大な判例が形成された、というように、もうちょっと「web2.0っぽい」ルール形成が行われているので、上村教授は(必ずしも法整備をやれ、というわけじゃなくて)、そういう感じも想定されているのかな?とも思ったのですが、記事からはよく読み取れませんでして、非常に興味があります。

  4. 「株式分割により証券市場を意図的に機能不全に陥らせることのみを目的とした行為」というのはおかどちがい。
    証券市場はつかのまですが活性化しました。
    このような抜け穴があること自体が体制側の問題である。
    下方修正条項付き転換社債(MSCB)
    これも由々しき問題である。
    私も何回もやられました、がライブドア特有の問題ではないでしょう。
    このような抜け穴があること自体が体制側の問題である。
    (TOB)を潜脱した違法。
    違法でないから問題なのである。
    上村達男教授さんというのはアホかマヌケかわかりませんが
    どちらかでしょう。

  5. >記事からはよく読み取れませんでして、非常に興味があります。
    ではぜひ一度講義にお寄りくださいませ。。。連絡お待ちしております。

  6.  上村教授は、「アメリカ式の原則自由の市場制度を導入した以上、本来日本はアメリカ並の厳しい市場監視システムを同時に整備しなければならない。」と主張しています
     その一方で「そもそも日本がそのようなアメリカ式の市場制度に既に舵を切っていることを、私たち日本人の多くがどれほど認識しているかについても疑問が残る。ヨーロッパでは市場の節度を重んじる立場から、アメリカとは一線を画し、一定の規制を残す道を選択しているが、果たして日本は意識的にアメリカ式を選択したのだろうか。」とも言っています。
    以上は、有料サイト「マル激トーク・オン・ディマンド」の昨年1月放送回において、主張していました。上村教授は、証券市場の本質を捉えた鋭い見識の持ち主であると思います。

  7.  上村という人は、ライブドア憎しでずっと一貫している、マスコミに取っては都合の良い方で、バランスを取るときには必ず彼にインタビューにいきます。しかし、言っていることはほんとに教授なのかと思えるほどずさんです。
     巨悪の罪を問えなかったからその分を微罪に上乗せしたから重くはないんだと。罪刑法定主義ってのはないんですか。判決自体が「脱法目的」だから投資組合の「存在はなかったものとする」という怪しげな理由ですから似たようなものですが。
     3悪も笑止
    【株式分割】06/1から東証が制度を変更したらソフトバンクの分割から急騰はピタリとなくなった。印刷が早くなったわけでもない、ただ制度変更して権利落ち後に新株の売買ができるようにしただけ。いつでもできたことをしなかったのは誰?東証。東証が分割を勧め急騰を喜んでいたわけです。とっつかまえるなら東証とそれでもうけた投資家。
    【MSCB】野村証券が始めた日本的なMSCBと同じ、ただライブドアは貸借銘柄ではなかったので、日証金から借り株ができないために、堀江社長から借株して市場消化された。たしか2回転してます。野村証券も空売りしてMSCBを消化しているので、これが巨悪なら規模も回数も比べ物にならない野村証券、大和証券などを多くの一部上場企業社長とともに逮捕したほうがいい。「あらかじめ売り投資をしておけば必ず儲(もう)かるからくり」なんてありませんよ。ライブドア株を買う人がいなければMSCBは消化できません。判決も同じような間違った考えをしています。分割にしてもそうですが、東証が制度を変えてしまえば上がりませんしね。必ずなんてのはインサイダーの短期勝負以外はありません。
    【「市場外取引であるトストネット取引」】
     磯崎さんが間違えたのかどうか確認して来ました。
    http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070320/srn070320000.htm
     憎いに憎いと思っているとこう書いてしまう。トストネット取引は市場内取引です。市場内取引を使って、市場外取引をTOBを使わずにやったから「脱法」だという主張になります。最初から市場外取引なら「脱法」ではなく「違法」です。嘘を載せてしまうサンケイ新聞もダメですね。
     ニッポン放送のフジテレビ宛の新株予約権差し止め訴訟で、東京地裁と東京高裁はトストネット取引は違法だとする被告の主張に対して、東証の市場取引で合法と判決しています。いまさらまた蒸し返していますが確定した判決を無視する教授と新聞社ってなんなんでしょうか?
     私が不思議に思うのは、ライブドアがトストネット取引を行なった半年ぐらい前に、フジテレビはトストネット取引でニッポン放送株を大量に取得しています。相手は銀行だったと思います。だぁ〜れもこれを指摘しないのはなんなんでしょうね。知っている人はみーんな黙っている。フジテレビのHPのIR情報で見たものですから知っている人は千人どころじゃないはず。素人は発言できないにしても専門家はなぜ黙っているんだろう。だいたい専門家っていうのは大学など上下関係があるから空気をみんな黙っちゃう。世の中で最も保守的なのが日本に専門家。付き合いもあるからある程度は仕方がないが、素人が騙されているのを黙っていと、世論が誤導されるて、問題の本質が見えず解決が5年とか10年とか遅れてしまう。