「誰がベンチャーを助けてくれるの?」日本の未公開株市場の構造

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これから何回かにわたって、日本の未公開株の市場の構造についてちょっと考えてみたいと思います。
間接金融(銀行)から直接金融(証券)へのシフトの必要性が言われて久しいです。間接金融では銀行が「仲介者」になって預金者から集めたお金を企業に貸してくれるのに対して、直接金融は文字通り企業が直接投資家からお金を集めることで、その場合の仲介者というか「お助けエージェント」は「証券会社」ということになります。そして、(ここが重要ですが)、法は証券会社以外に直接金融を助けてくれる人を基本的に認めてないのです。
(以下、斜体の条文は、めんどうでしたら飛ばして読んでください。)

証券取引法第2条(定義)第8項
この法律において「証券業」とは、銀行(略)その他政令で定める金融機関以外の者が次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
1.有価証券の売買(略)
2.有価証券の売買(略)の媒介、取次ぎ(略)又は代理(略)
3.次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理(略)
3の2.有価証券先渡取引(略)
3の3.有価証券等清算取次ぎ
4.有価証券の引受け(略)
5.有価証券の売出し
6.有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い
7.有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であつて、電子情報処理組織を使用して(略)

証券取引法28条(証券業の登録)
証券業は、内閣総理大臣の登録を受けた株式会社でなければ、営んではならない。

加えて証券会社は、(ここがほとんど知られていないところですが)、原則として未公開会社の株を扱ってはいけないんです。

店頭有価証券の売買その他の取引に関する規則(日本証券業協会公正慣習規則第2号)
第2条(定義)第1項第1号(店頭有価証券)
本邦法人が本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券(略)、新株引受権証券、新株予約権証券及び新株予約権付社債券(店頭売買有価証券を除く。)をいう。

第3条(グリーンシート銘柄以外の店頭有価証券の投資勧誘の禁止)
会員は、第15条(適格機関投資家のみに対して投資勧誘を行う場合の取扱)及び第18条(店頭取扱有価証券[監査が行われている譲渡制限株式等]の場合)の規定による場合を除き、グリーンシート銘柄以外の店頭有価証券については、顧客に対し、投資勧誘を行ってはならない。

ベンチャー企業で株式等による資金調達(エクイティファイナンス)の知識がきちっとあるスタッフがいるところというのは極めてめずらしいので、そういうことをサポートしてくれるエージェントがぜひとも欲しいところです。しかし、創業してから年数の浅いベンチャー企業の場合、まだ監査法人等が監査を行っているケースはさほど多くないでしょうから前述の公正慣習規則第2号第18条の「店頭取扱有価証券」には該当しないケースの方が多そうです。
また、実際に証券会社が数千万円程度の(彼らにとって細かい)資金を集めてくれる可能性はかなり低いのが現状です。
かといって、証券会社でない企業が「ベンチャーの増資のお手伝いします」「ベンチャーキャピタル等をまわって、お金を集める仲介をします。」とうたってしまうと(そういう会社も実際結構あるのですが)、それは法令違反の可能性が極めて高いわけです。
ここは以前、金融庁にも問い合わせてみましたが、
「それは、”証券取引法第2条第8項第6号の有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い”、というのにズバリ該当するので、私募であっても、証券取引法違反となります。」
という回答でした。
これは、違反すると、結構シャレにならない罰則が待っています。

証券取引法第198条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する。(中略)
11 第二十八条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで証券業を営んだ者

すなわち、刑務所に入る可能性もあるわけですね。
99年の証券ビッグバン以降、証券会社の参入障壁は格段に低くなったとはものの、実際にはそうかんたんに登録させてもらえるわけではありません。
では、創業してから年数の浅いベンチャー企業はどうすればいいんでしょうか?「グリーンシート市場」や、今回の証取法改正で盛り込まれた「証券仲介業制度」は、こうしたベンチャーにとって追い風となるんでしょうか?
・・・と、ちょっと長くなりましたので、この続きはまた今度。
ではでは。

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