ネット株IPOの大物への有罪判決

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Wall Street Journalの本日の速報より。
元クレディ・スイスのFrank Quattroneという人が、ネット株IPOでの株の割りあてに関連して18ヶ月の懲役を言い渡された、という記事。
まず、この方のプロフィールですが、

During the Internet boom of the late 1990s, Mr. Quattrone was one of the highest-paid figures on Wall Street, earning as much as $120 million a year. His investment-banking stamp was on some of Silicon Valley’s flagship companies in the late 1990s — Amazon.com, Netscape Communications Corp., Cisco Systems and Intuit, among others.

ということで、AmazonやNetscape、Cisco、IntuitなどのIPOを手がけた方。
年間1.2億ドルの稼ぎ、というのは、会社の、じゃなくて、Quattrone氏の、ということでしょうね。

By late 2000, the government was looking into whether some CSFB clients had paid kickbacks in exchange for getting shares of hot IPOs. The IPO investigation closed with no criminal charges filed.

ということで、CSFBは2000年に顧客がホットなIPO株を入手するのにCSFBにキックバックを支払った容疑で捜査に入られたものの、何も出てこなかったわけですが、で、この方が何をやったかというと、

The charges stem from a 22-word e-mail in December 2000 that he forwarded from a subordinate, urging employees to “clean up” files as the government was investigating the firm’s allocations of initial public offerings.

つまりは「検査忌避」をした、ということですね。
(この判決、日本の某銀行の行方にも影響を及ぼすかも知れません。)
それにしても、22語のメールを転送しただけで、というのも「・・・・・・」という感じ。
メールも証拠になるんだ(当然)、というところも、転送でも、というところも怖い。

The sentence makes Mr. Quattrone, 48 years old, the most prominent Wall Street figure since junk-bond dealer Michael Milken to face time behind bars.

1990年の「ジャンクボンドの帝王ミルケン」への判決(10年)以来の「prominent」な判決とのことですが、アメリカだともっと証券取引法関係でガンガン有名人が捕まってるかと思いきや、意外にそうでもないんでしょうか。
ちなみに、ミルケン氏も刑務所から出てきて、現在では、ジャンクボンドでなく、eラーニングの会社等にベンチャー投資をされてます。2億ドルも罰金くらっても、まだまだお金持ちなんでしょうね。
この記事には、付録として、他の「high-profile white-collar cases」の一覧(プロフィール、罪状、判決内容等)も取り上げていて参考になります。
Martha Stewart、Peter Bacanovic(マーサスチュワートの証券会社の社員)、Andrew Fastow(エンロンのCFO)、Michael Milken、Ivan Boesky(チャーリー・シーンとマイケル・ダグラスが出ていた映画「Wall Street」のモデル)等。
証券取引というのは、「会社の権利」という非常に抽象的なものを小口化して売買するという、極めてバーチャルな行為なわけで、その市場の適正性を守るためには、ルール厳守が絶対条件です。
しかし、そのルールも、「人を殺してはいけない」とか「モノを盗んではいけない」というようなわかりやすい原初的なルールと違って、これまた極めて抽象的で複雑なルールですし、要は「いかに市場が効率的になるか」「市場参加者が安心して取引できることで、取引量が増えるか」というようなことを見ながらルールが決まっていく話なので、世相とともに、ルールのニュアンスもどんどん変わっていきます。
ご参考:「証券の『気持ち悪い』歴史」
上記の人たちはみんな「みんなやってるし、こんぐらいいいんじゃないの?」という感じで結果としてだんだん感覚がズレて犯罪になっちゃったのではないかと思います。
コンプラ最優先で仕事を発想する人はそういうことにはならないと思いますが・・・そういう人でも年収100億円とかになれるんでしょうか?
WSJの記事URL(有料):http://online.wsj.com/article/0,,SB109457145704811216,00.html

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