広告の歴史を変える?「iogous(イオゴス)」

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月曜日に「Fringe81(フリンジ ハチイチ)株式会社」の新サービス「iogous(イオゴス)」の発表会

プレスリリースはこちら。
http://www.fringe81.com/detail.php?id=21

に呼ばれて行って参りました。

 

これはスゴい。

 

これは広告の歴史を変えるかも知れません。

 

「iogous(イオゴス)」は、文字・背景色などの要素を自在に組み替えて、非常に多くの種類のバナー広告を自動的に生成し、それのクリック率(CTR=Click Through Rate)を見ながら、自動的にCTRの高い最適なバナー広告を表示する、というシステム。

これによって、バナーのクリック率は「数倍」に上がるそうで、つまり、広告主にとって、広告効果が上がるわけです。

 

201005260746.jpg
ジャストシステム社と行っている実験的な広告の例。
(背景色、画像、コピー等の組み合わせ、配置等で、多様なパターンを生成している。)
(クリックで拡大)

 

しかし、それだけ聞くと、

それって、あたりまえじゃん?
だって、そういうインタラクティブなことができるのがウェブでしょ?

と、思いますよね?

 

ところが、今までのバナー広告(ディスプレイ広告)の世界では、デザイナーが文字や画像の配置、背景色等を人間の経験と勘によって決めており、結果による見直しはほとんど行われてこなかった、とのこと。

広告の差し替えを行う場合も、ネットの広告を掲載している会社に代理店等から電話がかかってきて、

「 今出してもらってる広告、クリック率がよくないようなので、今から送るのに差し替えてもらえますか?」

等、「手作業」で人間が差し替えていた、とのことであります。
(そうした「媒体」側の会社の手間・コストも非常に大きかったわけです。
結果として、当然、一つのキャンペーン期間中に変更できる回数は、数回といったオーダーになってしまうかと思われます。)

 

私も今回聞いて始めて知って、非常にビックリしました。

 

しかし、この 「iogous(イオゴス)」では、文字・背景色・画像などを組み替えて配置換えをしたバナー広告を、自動的に数千から数万種類発生させ、それを表示した結果、CTRのよかったバナーを自動的に生き残らせて行きます。

 

201005260804.jpg
(クリックで拡大)

 

上図のように、CTRは単純に直近のCTRだけでなく、累積CTRなども考慮して多変量解析で決めているようです。

遺伝的アルゴリズム」にちょっと似てますね。

 

アメリカだと個人情報が結構簡単に手に入るそうで、それとの組み合わせでウェブの広告の最適化が行われたりもするそうなのですが、日本だとそもそも個人情報が手に入らない。

結果として、今までは「デザイナー」にすべてを依存していて、クリック率が悪いと
「おまえのセンスが悪い」
と責められて、精神的に参ってデザイナーが辞めちゃったりもしたらしいのですが(笑・・・ごとじゃない・・・)、そもそも
「20代女性向けのこれこれの商品の場合、どういう背景色にするとクリック率が高いか」
といったデータが無く、PDCAサイクルを行うしくみすら存在しなかったんだとしたら、そりゃデザイナーがかわいそうというもんですわな。

 

そして、そういう「真っ当なPDCA」は、テレビ・新聞・雑誌といった既存のメディアでも、もちろんやられてこなかったわけです。
グーグルのAdwordsなど、ネットのテキスト広告でやっとそういうPDCAが行えるようになり始めて、それがグーグルをはじめとする広告系のネットベンチャーの成長要因になったわけですが、それが、「画像」の広告の世界でも行えるようになった。

これは画期的なことじゃないかと思います。

ちなみに、「iogous(イオゴス)」というのは「SUGOI (すごい)O」ptimizationのアナグラムだそうで。

 

Fringe81社長の田中弦氏、取締役の川崎裕一氏は、私の昔の勤務先の同僚で、グリーの田中社長やミクシィの笠原社長などといっしょにネットの研究をしていた、いわゆる「76世代」の経営者。
私は、彼らが大学を卒業してすぐの2000年前後にいっしょに仕事をしたのですが、おっさんには感じ取れない「何か」を感じ取る能力をもった「ニュータイプ」というか、私は彼らを見て、アムロの能力を見たブライト中尉的な気持ち(こいつらのフィールドで戦ってもちょっと勝てそうにない)になったもんでした。

 

よく、ネット系のベンチャー企業でも、ネットに関連したことをやっているにもかかわらず、ビジネスモデルは労働集約的で「人間の努力とセンスでがんばります」というものがよくあります。

それが絶対悪いとは申しませんが、ネットの世界では、グーグルを例に引くまでもなく、今まで手作業で行われて来たことをコンピュータで自動的処理することにより、従来のコストの何分の一でサービスが提供出来たり、従来の何倍ものパフォーマンスをあげることができる、「破壊的イノベーション」がしばしば発生するわけです。
人間の力やセンス、人間関係といったもので他社よりも優越的な地位を築くということは、一見、活気にみなぎっているように見えても、実は「おまえはもう死んでいる」状態だったりするわけで。

 

このiogousの発表会でも、

Data is King

という言葉が何度か出ましたが、ネットのベンチャーは基本的にはそういう「データやアルゴリズムを蓄積して破壊的イノベーションを起こす」側に回ることを目指すべきであり、そうでないビジネスモデルの採用は、それでも長期的に勝ち残っていけるのか、破壊的イノベーションを起こす企業が現れて負ける可能性は無いのか、ということをシビアな上にもシビアに見つめた上で行うべきでしょう。

 

社名「Fringe81」の「81」は、日本の国コード。
日本から世界に飛び出すような会社になろうという意味を込めたそうですが、ぜひ、そうなるようがんばってください。

 

(ではまた。)

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4 thoughts on “広告の歴史を変える?「iogous(イオゴス)」

  1. 「スプリッドテストが簡単にできる。」インターネット広告が出てきた時にみんな言ってましたが、ようやく実現できそうですね。

  2. 広告バナーの究極系「iogous(イオゴス)」

    isologueさんが興奮気味に伝えています。 広告の歴史を変える?「iogous(イオゴス)」 これは広告の歴史を変えるかも知れません。 「iogous…

  3. 自動生成すると「これはだめだろう」というモノもできてしまうと思うのですが、そういったものも出してみてから反応を見て弾くのですかね?
    下手をするとネガティブな効果が出てしまうそうですが
    しかし、これは先行者が強そうなシステムですね
    蓄積したデータを生かして方向性だけは人間が指定してあげるシステムを作り上げてシェアをとってしまったら、後から追いかけるのは大変そうです