データを見ない人々(「オープン化」する社会での「分析」の価値)

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先日、マスコミ業界に詳しい方と話をしていて、なるほど、と思った話。

マスコミの人って、データを全く見ないんですよね。
代理店の人ですら。さすがにマーケの人は別だけど。

例えば、子供向け出版物の売れ行きが落ちている説明として、会議で担当者が、
少子化が進んでいるので
なんて説明をしたりするけど、調べてみるとここ数年、実は小学生の数はほぼ横ばいなんですよ。

今やインターネットで政府の統計なんか簡単にタダで調べられるのに、調べない。
データがいくらオープンになって、タダでインターネットで見られるようになっても、見ない人は見ないんじゃないでしょうか。

 

実際に「学校基本調査」の小学生の在学者数の推移を調べてみますと。

こういうグラフ

200911200945.jpg
図表1.小学生の在学者数の推移(単位:人、平成[年]、出所: 学校基本調査)

 

を見ると確かに「ものすごい勢いで少子化が進んでいてたいへんなことだ」という気にもなりますし、減っているのは事実なのでマスコミの報道も「少子化がうんぬん」ということになってるわけですが、
人数をゼロを起点に設定したグラフで見ると、

200911200949.jpg

図表2.小学生の在学者数の推移(単位:人、平成[年]、出所: 学校基本調査)

 

・・・のように、小学生の数はほとんど変わってない印象になります。
(数値はまったく同じですが。)

平成14年から平成21年までだと、わずか2.4%しか下がってない。
年平均だと0.3%ペース。

うちの近所の小学校や中学校の生徒数は逆に増えていて「少子化なのに恵まれた地域だなあ」と思ってたんですが、要するに少子化というトレンドはミクロな地域で見ると誤差の範囲の話でしかなかった、ということですね。

 

もちろん「全体として子供の数が減っている」のは間違いではないので、例えば政府が少子化対策に力を入れないでいいかというとそうではないでしょうけど、だからと言って、子供向け出版物の売上が2桁ペースで下がっていることの理由として少子化をあげるのはおかしい(理由は他にある)、ということになります。

 

以前も、「(有価証券報告書等の開示が見られる)EDINETへのアクセスは、私のブログへのアクセスと人数が大して変わらない」とビックリしたお話を書きましたが、最近、おかげさまでブログのアクセスが伸びているので、現況だと下記のような感じです。

200911201039.jpg
図表3.EDINETと弊ブログのアクセス(リーチ。出所:alexa)

 

いくら個々の企業のホームページでも財務データを公表しているとはいえ、これってちょっと不思議ですよね?

経済学では「情報の非対称性」ということが言われますが、いくら情報を開示してもデータを見ない人はまったく見ない。そして、その「非対称性」は「無料でデータを開示する」だけでは全く解消されないものなのではないかと思います。

マスコミの人や投資家というのは、客観的に見ても日本の中では最もインテリ層に入るはずですが、そういう方々ですらデータを見る習慣が無いということは、日本の99%くらいの人は、おそらくほとんどデータを見ずに(「観念的」に)仕事や生活をしてるはずです。

誰でもデータが簡単にタダで見られる時代になり、Googleも登場すると、当然のことながら、「データを単純に右から左に流す機能」の価値は著しく低下します。

私がブログやメルマガでご提供している情報は、「私が独自の情報網で仕入れた超極秘情報」というよりは、タダで誰でも簡単に入手できる情報を分析・加工したものがほとんどなので、「そんなもんを見てもらえる時代は今のうちだけだろう」と思っておりましたし油断しているわけでもないのですが、一般論として、「データを分析する機能」の価値は今後もあんまり減らなさそうな気がしますし、むしろ「分析する人」にとっては、簡単に手に入る情報が増えて仕事はどんどんやりやすくなるので、分析する人としない人の「差」は、逆にオープン化でより大きくなるんじゃないでしょうか?

 

(ではまた。)

 


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9 thoughts on “データを見ない人々(「オープン化」する社会での「分析」の価値)

  1. ?????若?帥??荀???ŝ??篋冴??鐚??????ŝ?若????喝???????????腓鞘????с???????????????勌勝??わ??…

  2. いつも楽しく拝見させていただいております。
    私のクライアントで、ちょうど同じような発想で、
    「タダでは見られるけど、どこに公表されているのか知らなかったり、見に行くのが面倒だったり、海外サイトだったら語学の問題があったり、知識・労力・言語の壁があったりして、意外とデータが有効活用されていない」
    という観点から、一般の人がデータをより感覚的に扱えるように、データ(グラフ)版YouTubeとでもいったサービス
    http://www.visualzoo.com/
    を立ち上げたので、アナリスト等、分析を業とされている方々から見ると、そういう問題意識があるのかな、、と思った次第です。
    確かに、EDINETの閲覧数の方が少ないなんて、意外ですよね!

  3. あれでしょうね。逆にデータがありすぎて、どれを見たらいいのか判らない(そして目的のデータがそもそもあるかどうか判らない)ってのがあるかもしれませんね。
    たぶん2〜3度はググかもしれませんが、キーワードが適切じゃなくて結局判らなかったりとか。
    僕も先日、「戦前くらいから今に至るまでの社会の総エネルギー消費量の推移って調べられる?」と軽く聞かれて、そもそもそれネットで調べられるのかどうかはなはだ不安でしたし。
    ネットから、目的のページを探すんじゃなくて目的の「データ」を探すノウハウってのは、結構求められてるかもですね。

  4. アナリストをやっているものとしては非常に共感します。観念的に話している人が多いですね。
    ただ、今回の子どもの数の減少のデータ分析は、若干ものたりない部分がありました。10年間でほぼ10%の割合で下がっていれば、結構インパクト大きいのではないかという印象もありました。
    例えばこの10年で日本の総人口が10%減っている中で、小学生の数も10%減っているなら納得なのですが、平成10年〜19年の日本の総人口のデータを見てみると1%増でした。
    そうすると、全体のパイが増加している中で、小学生は減少している、これって少子化じゃない?という読み方も出来ます。
    0から80万人までの範囲でグラフで取れば、たしかに小学生の数の減少も誤差の範囲に見えてしまいますが、これはグラフのマジックで、作成者側の意図が入った誤ったデータの導き方を生むので注意が必要だと思います。

  5. 本当にそうですよね。
    会議で、議論になって「そういうけどさぁ、その主張を支える根拠データはどこかにあるの?」というと、しばしば、嫌な顔されます・・・。
    (これは「その意見はお前の思い込みに過ぎないだろ」と言いたい気持ちをオブラートに包んだ言い方です・・)
    これは能力というより意思の問題だと思ってるんですがね。データを見るか、見ないかが、「格差」を生んでいると言っても過言ではないような気もします。
    今回の例でいえば、おそらく、団塊ジュニアの更に子供たちが小学校入学する時期になって来ているので、小学生の人数全体では余り減ってないのでしょうね。
    少子化を、「一人の女性が産む子供の平均が下がること」と定義すれば、引き続き進展しているのかもしれませんが・・。

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