「適合性原則」的観点から見た「NOVA」と「広告」と「破たん対応」

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NOVAが会社更正法の適用を申請したということで、改めてEDINETで開示されている有価証券報告書を見てみました。
(ちなみに、定款上の商号は「株式会社NOVA」ですが、EDINETには「ノヴァ」で登録されてます。つまり、「NOVA」「ノバ」で検索しても出てきません。)
主要な経営指標等の推移(一部)
nova1.jpg
 
財務構造を簡単に図示すると、下図のとおり。
nova2.jpg
「NOVAうさぎ」をはじめとして大々的にテレビなどでCMをしている会社なので、一般には「非常に好調な会社なのだろう」と思われていたのではないかと思いますが、財務データを見ると、実は2年前からド赤字であり、資金繰りは「前金」に大きく依存している会社であることがハッキリわかるわけです。


 
「誰も教えてくれない」
もし私が「NOVAで受講してみようかしらん?」と考えた場合には、十万円単位の金を先払いするわけですから、CMだけ見て決めるのではなく事前に有価証券報告書などを見たと思いますし、この財務諸表(しかも前々期で大手監査法人が退任)を見たら、「こりゃちょっとヤバい会社なんじゃないの?」と思ってやめてNOVAは避けたと思います。
「自己責任」でいいか?
しかし、では一般の人に「英会話学校で受講する前には財務諸表を見る注意義務があった。(英会話学校受講するんだったら、財務諸表くらい見やがれ。)」とまで言えるかというと、それはちと無理でしょう。
マスコミは助けてくれないのか?
では、新聞やテレビなどのマスコミが、
「NOVAって一見調子がいいように見えるけど、実は赤字ですよ。」
「前金商売なので、いざ破綻したら、お金が戻ってこない可能性がありますよ。」
といったことを伝えるべきだったかというと、(伝えるべきだったかどうかはともかく)、実際問題としてはそれもちと難しい。
そもそも一般には赤字だから悪いというわけでもないので、大口の広告主(前々期の広告宣伝費は100億円超)であられるところのNOVAの営業に悪影響があるような報道は行いにくいでしょうし、むしろ、「NOVAうさぎなどの『ゆるキャラ』が、今、街で大ブーム!」といった特集を組んで積極的に応援していた側面が強いんじゃないかと思います。
金融業界規制との対比(「自己責任」の原則どおりでいいか?)
ご案内のとおり、金商法施行で、金融業界については商品のリスクなどを事細かに説明する義務が強化されましたが、そもそも、そういう多数の一般の人からお金を預る業態は、いざというときに利用者が大損する可能性も高いので、免許制や登録制にしたり、自己資本比率を規制したり、預り資産を分別管理させたりして、そうした情報の非対称性の影響を受ける相対的な弱者が不利益を被らないようなしくみを作り上げてきたわけです。
もちろん、
「日本は自由主義の国であり、基本的には自己責任だ。財務諸表まで開示されており、今やネットでそれをタダで見られるんだから、それを見ればド赤字だってことは誰でもわかったはず。」
という考え方もできます。
一方で、こうした規制対象以外の一般業種については、多数の消費者から資金を集める構図や強く情報の非対称性が働く構造は同じであるにも関わらず、また、見る人がちょっと見れば「その会社、危ないよ」とわかるにも関わらず、30万人もの無垢な子羊たちが、ぞろぞろと死の淵に向けて行進していくのに、誰もそれを指摘する人がいないという社会の構造は、それはそれでいいんでしょうか?
(日本人は「投資」というものをどちらかというと胡散臭く思っていて、リスクがあるのを承知なはずであるにも関わらず、金融商品取引法であそこまで説明義務を強化しているのとの対比からして)、より財務的なリテラシーが高くないはずの一般消費者が保護されるしくみがないというのもなんだかねぇ、という感じであります。
未来の規制?(モーソー)
そのうち、

自己資本比率が○%未満であって、○千人以上の消費者から使用総資本の○%超かつ○億円超の資金を預かる事業者は、契約を行う前に消費者に対し次に掲げる事項(事業リスク等)について説明しなければならない。

といった条文が消費者契約法などに組み込まれたりして。
(それはそれで、一般的なビジネスの自由度を過度に制約しないか、ちょっと心配ではありますが。)
(ではまた。)

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9 thoughts on “「適合性原則」的観点から見た「NOVA」と「広告」と「破たん対応」

  1. こんばんは。
    大赤字だったり、自転車操業だったりしても、テレビCFがバンバンかかっている会社というと、携帯電話キャリアの3社がどうしても思い浮かびます。
    確か、老舗の会社は海外投資で何兆円かをスッてしまったように記憶しています。今でも会社は営業してますから、大したこと無かったのかもしれません。
    新興の会社は、資金を色々な手法で回転させているようですが、昔で言う自転車操業と同じように見えますし、その会社にロックインされる契約が増えているようです。
    「消費者は危険を察知できた」とされるのでしょうね。

  2. NOVAは上場企業だから、決算書は誰でも見られますが、非上場の英会話学校はどうなのでしょうか。
    会社法440条で全ての株式会社に決算書(要旨)の公告が義務付けられているのですから、それを守らせることが重要だと思います。日本でこれほど守られていない法律も珍しいのではないでしょうか。

  3.  大人向けの英会話学校って、自分の都合の良い時刻・時間に授業が取れないと、すぐサヨナラですね。
     サービス業って、みんなそうなんですが。

  4. 30万人もの無垢な子羊を助けるには、規制もいいですが短絡的に考えると垢付けしてしまうことでしょうか。
    勝手に言葉を作ってしまったので説明すると、つまりは財務諸表の教育を義務教育に入れていくべきなんでしょうね。
    EDINETという便利な公共システムもあるわけですし、IT教育のついでに財務諸表の探し方、簡単な見方くらいは教えて欲しいものです。
    自己責任の前提には十分な情報提供とその情報を理解する能力を備えていることです。説明責任は企業に負わせていますが、教育責任は国が負って欲しいと思います。
    それだけでも、もしかしたらこのような被害は減る気がします。

  5. 性善説に立てば、マスコミか誰かが教えてくれるかもしれませんが、現実には難しいですよね。
    なので、磯崎さんが指摘されたように、消費者契約法など、一定の法規制があった方が良いかもしれません。
    また一番の問題が、先払いした会員へ返金が困難な点だとすると、先払い金額に「キャップ」を設けるのもありだと思います。
    “高額”の定義等の問題はありますが、高額な先払いを要求する以上、企業には会員に対し事前に、財務情報などの開示(説明)責任があってしかるべきでしょう。

  6. うちの倅(次男坊)が、入間市のNOVAでバイトをしておりました。
    バイト代がいまだ振り込まれておらず、嘆く事しきり。
    一ヶ月前にやめたほうがいいって言ったのですが。
    まぁこれも勉強のうちでしょう。
    何にせよ先払いというのはリスクがありますよね。
    得をしようとすればするほど大きくなる。
    いっそ先払い禁止にしてしまったほうが安全でわかりやすい。

  7. 秀逸であると存じます。
    一点だけ。行政が助成対象講座として認定するのであれば、そのための条件設定を考えることは有意義であると思われます。財務面があまりに危なっかしいところは認定しない、とするための基準を作るってのも手かも。