海外投資や送金をすると、日本の預金や資産は減少してしまうのか?

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昨日は、新春初エントリを含めて延べ8時間以上にわたって、ツイッターでマクロ経済についてディスカッションさせていただきました。(経緯のあらかたは@yositosiさんにtogetterでまとめていただきました。)

私が昨日のエントリで申し上げたかったことは、「消費を増やしても、銀行預金が減る訳ではない」「だから、消費が増えても、国債を売却したり企業から貸しはがしをしたりなんかしなくてもいいはずだ」ということでした。

しかし、さすがに、消費で企業に移った資金の一部を企業が海外に送金したりしたら、日本国内の預金は減るだろうと思って、

もちろん、増加した14兆円の消費のほとんどを海外の企業の海外口座に送金して購入した、といった場合には、国内の預金はその分減少することになります。しかし実際には、14兆円の資金を全部海外に向かわせようなんてことは、やろうと思っても難しいです。

と書いたのですが、この部分にもNoriko Kawaiさんから、

海外口座へ送金するには外貨へ交換しないといけませんね?だったら減少しないでしょ?

と、ツッコミが入り、公認会計士の保坂義仁氏からも、下記のご自身のブログの記事、「わかる!経営管理 オピニオンブログ」の「外国為替取引」のシリーズの第6回~8回、11回、12回をご紹介いただきました。 

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どうやら、個人や企業が国外に送金しても、だから日本の預金が減るとか、国債をその分売らないといけないということは無いようです。

このブログから、引用させていただくと、

為替決済取引に関して、特に一般に理解されていないのではないか思う点は、それぞれの通貨はそれぞれの通貨圏内で受け渡しされるということです。すなわち、円とドルを売買したときに、円の引き渡しは日本国内で行われ、ドルの引き渡しはアメリカ国内で行われるということです。決して日本でドルを引き渡すことはできません。
 資金の引き渡しについて、なんとなく国境を跨いで円の札束がアメリカの銀行の手元に渡され、引換えにドルの札束が日本の銀行の手元に渡されているとイメージしているかも知れません。しかし、空港の外貨両替で行われているような素朴な取引は、銀行間の資金決済取引では行われていません。
 まず、外国為替取引の決済には、厳然とした通貨圏の壁があることを理解する必要があります。(第6回

コルレス取引の仕組みなどで、ここまでの概念は理解していたつもりでしたが、

 テレビや新聞で、「〇〇国に資金が流入している」「〇〇国から資金が流出し始めた」という表現を聞いたことはないでしょうか。
 資金流入とは、一般に外国人が株式や債券、不動産などの資産を購入することをいいます。
 ニュース解説では世界地図を示して、札束がバンバン飛んでいってある国に吸い込まれる、あるいは吐き出されるというイメージ映像を観たことがあるのではないかと思います。例えば「オーストラリアに短期資金(ホットマネー)が流れ込んでいる」という表現を聞くと、USドルの札束がオーストラリアに吸い込まれて、オーストラリア人がそれを羽振り良く使っているところをイメージしてしまいます。
 筆者もかつてはこのような説明に特段の疑問を持っていませんでした。しかし、あることを調べていくうちに行き当たった事実から、この説明には重大な問題があることに気づきました。
 あることとは、日銀の銀行間決済における役割と外国為替取引における役割であり、そこから導き出される「通貨の壁」という考え方です。
 日銀の銀行間決済における役割と外国為替取引における役割、そして通貨の壁という考え方を総合すると以下の事実に行き着きます。
 すなわち、「通貨圏内におけるマネーの総量は、外国為替取引の前後で変化することはなく、預金ポジションの保有者が変更されるに過ぎない」ということです。(中略) 

 マクロ経済系の専門書を調べてみたところ、驚いたことに資金流入が、あたかも物理的にお札が流入してくることだと考えているらしい、あるいは読者にそう受け取られかねない記述がいくつかありました。そうではないことは、このシリーズで何度か説明しています。(中略)

 なお、念のため日本銀行の国際局国際収支課に電話で問い合わせたところ、外国為替取引の資本収支はゼロであり、経常収支と外貨準備増減がゼロならばいくら資金流入しても資本収支はゼロである、という考え方で正しいとの回答を得ています。
 国際資金フローの考え方を、マクロ経済学や国際経済学の大物学者でも間違えているのかも知れません。(第11回

ということで、マクロ的に見ても、海外に送金や投資をしようが、国内のマネーの量は変わらないというご説明です。
コルレスの仕組みや、実際に金や紙幣などが国境を行き来するわけじゃないことは理解していたつもりでしたが、マクロとの関係まで完全にイメージしきっておりませんでした。

このシリーズでは、「CLS」のしくみ、国際収支統計等との関係などについても解説されていますが、為替の話で、実務と会計とマクロ経済を統合的に説明したものを今まで見たことがなかったので、これはありがたいです。

(まだ完全に腹に落ちていませんので)、これを拝見して、「その後の為替レートの変動等によっても、本当に預金の量は変化しないのか」「不胎化介入等との関係は?」等などを含めて理解を深めたいと思いますが、取り急ぎ御礼まで。

Noriko Kawaiさん、保坂義仁さん、どうもありがとうございました。<(_ _)>

(ではまた。)

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