本日の素朴な疑問その2(イオンクレジットのイスラム金融)

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本日の日経1面の記事「イオンクレジット、イスラム金融で資金調達、邦銀と組み債券発行枠」より。

 イオンクレジットサービスは日系企業としては初めて、マレーシアでイスラムの教義に即した金融方式を活用して資本市場から直接資金調達をする。
(中略)
 今回設定した発行枠は七年間有効で、この期間内に最長十二カ月のコマーシャルペーパー(CP)と、最長五年の中期債の発行が可能。調印後一カ月以内に最初の中期債を発行する計画で、金利五%だった銀行からの借り入れと比べて低コストの四・五%で調達できる。

イスラム金融は、同記事の注に、

利子の受け払いを禁止したイスラム教の聖典コーランの教えに沿った金融取引。預金者は金利ではなく配当の分配として報酬を受けるなど、様々な仕組みを活用して利子の形態を回避する。禁忌である酒や豚肉、ギャンブル関連の企業や事業への投資や、そこからの資金受け入れも排除する。

とあるように、基本的に、「コーランの教えからはずれない事業からのリターンだ」という(「参加型」的な)タテツケで「利子」とみなされることを回避するんだと思うんですが、イオンクレジットサービスさんというのは、まさに、どう見てもイスラムで禁止されている「利子」が営業収益の過半を占めている会社さんなんですけど、それはよろしいんでしょうか?・・・というのが素朴な疑問。
同社のプレスリリース「イスラム金融方式を取り入れた債券発行について」
https://www.release.tdnet.info/inbs/110f06f0_20070115.pdf
によると、直接資金調達をするのは、マレーシアの現地法人のようで、

(注1) 同社のイスラム金融に関する取組みについて
同社は2002年にノンバンクでは初めてイスラム金融方式を取り入れた個人向け無担保ローン事業を開始しております。また2004年より、モーターサイクルの個品割賦販売(イージーペイメント)にてもイスラム金融方式を取り入れております。

とのこと。
イオンクレジットの事業全部でなく、個品割賦など、特定の(貸付でなく、売買などとみなせる)事業に対する資金、ということなんでしょうね。
そもそも、そのマレーシアの現地法人の事業だけを考えれば、マレーシアでやってるだけに、そもそもイスラムの教えに背いた貸付にはなっていないはず。事業そのものがイスラム的にOKであれば、それに対する参加型のリターンというのもOKということなのかと。
(調達額も、イオンクレジットサービスの連結負債額約5300億円のうちの136億円程度です。)
−−−
昨年初めに、最高裁で、貸金業に対する一連の判決が出て以来、「人道」と貸金業については、ずいぶんと考えさせられました。
「契約したんだから守ってもらわないと」という西洋的な概念からいくと、グレーゾーン金利での貸付というのも、もちろんアリなはずですが、その観点からだけだと、「欧米か!」という話ですし、借入をした消費者の中にはまさにイスラムが利子を禁止した時代に起こっていた悲惨な状況に陥っている人がいることも確かであります。
多分、ムハンマドのころには、事業金融でも数十%、個人金融だと百%以上といった金利でないとペイしなかったんじゃないかと思いますが、ビジネスのボリュームが増加することで約1400年の間に金利も相当下がってきたと思われますし、ムハンマドのころにはなかった「有限責任」や「自己破産」といった制度も出来ましたので、「デットの邪悪さ」は、相当減っては来ていると思うのですが、世界には「それでもまだダメ」と思ってる人も多くいるということは認識すべきでしょう。
今回、webを検索してみて、durianさんのブログの記事経由で拝見した、バハレーン経済開発委員会駐日代表の今平和雄氏が、如水会で講演された「経済グローバル化とイスラム金融」
http://www.josuikai.net/josuikai/21f/60/im/im.htm
は、非常にわかりやすく、オススメです。
「金利」とならないための「信託」「出資」「売買」「リース」といったテクニカルなスキームの話も面白いですが、この「金利(リバー)禁止」という制度も、経済の停滞を意図していたわけではなくてその逆で、「退蔵の禁止」や「喜捨」などと合わせて、流動性不足の解消を意図していた、というところなども非常に面白いです。
(ご参考まで。)

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One thought on “本日の素朴な疑問その2(イオンクレジットのイスラム金融)

  1. 今まで一連の流れを見ると、貸金事業の「しくみ」が問題視されたのでは無いと思います。
    規制でいくら縛ったとしても、業者が同じ「人物」である限りは「人道」に沿ったビジネスは難しい。
    であれば、規制という方法で既存の業者に改善してもらうという方法を取らずに、(今でもある程度はあるわけですし)
    今までの貸金業のスタイルをとる業者を退場させ、銀行に肩代わりさせるという形で一気に解決する方法を取ったというのが私の解釈です。
    過払金は過去に遡って計算される為、既存で長くやってきた業者であればあるほどハンデが大きいですしね。
    (勿論こっちは意図してではないでしょうけど。)