日弁連の「ファンド規制意見書」に対して意見書を送付しました

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

(私がワールドカップも見れないバタバタ状態で、ご報告が遅れましたが)、先週、独立系ベンチャーキャピタリスト等有志で、日本弁護士連合会の「適格機関投資家等特例業務(金融商品取引法第63条)に関する意見書」への意見書(pdfファイルのリンクはこちら)を送付しました。

NewImage

日弁連さんの意見は、かいつまんで申し上げると、「政府が発表した改正案ではまだ手ぬるい。個人からファンドへの出資は原則として一切禁止すべきだ」というものです。
悪質なファンドの被害者を心配される気持ちもわかりますが、これから成長する領域のベンチャーに資金が適切に供給されなくなってしまうのでは、日本経済にとっては全く意味がないのではないでしょうか?

日弁連にも、ファイナンスや経済にお詳しい弁護士さんはたくさんいらっしゃるのに、そうした弁護士の方々に意見を聞くこともなく、連合会として経済に悪影響がある意見書を出すというのは、どうなのでしょうか?

実際、意見書に名を連ねている独立系ベンチャーキャピタルの各ファンドにアンケートを取って集計してショックだったのですが、回答した15ファンドのうち、新基準でもすべてのLPから出資を受けられたであろうファンドは4ファンドだけで、しかも、独立系ベンチャーキャピタリスト案でも出資できないLPがいるファンドが10もありました。(もちろん、まともなベンチャーキャピタルは、「DMを送りつけて知らない人から資金調達する」というわけではなく、知り合いや知り合いの紹介経由で、ベンチャーに対するリテラシーのある人から資金を集めているわけです。)

また、この規制で悪質な投資の被害が無くなるならまだいいですが、残念ながらそうはならないと思います。
今回の規制案はファンドだけに対するもので、法人への出資が禁止されるものではありません。このため、悪質なファンドや詐欺師は、ファンドでなく法人を使ったスキームで個人への投資の勧誘を続ければいいだけのことです。このファンド規制導入後に投資の被害が減らないということになれば、次は、「個人はベンチャーには一切出資できないようにしろ」と言う話が必ず出てきます。(実際、4年前に日本証券業協会で、「個人から出資を受けた企業は上場させない」という規則を作ろうとして、多くのベンチャー等の反対によって廃案になったケースがあります。)

米国の個人は、住宅を除く純資産が100万ドルまたは年収が20万ドル(夫婦で30万ドル)以上あればファンドに出資できるのに対し、日本の改正案の個人は、そうした年収基準もなく、有価証券などの「投資性金融資産」が1億円以上必要となっています。つまり、現預金を5億円持っている人でも株式を8000万円しか持っていなかったら投資できないとか、国債を1億円持っていれば投資できるのに現預金1億円ではダメだとか、借金でレバをかけて1億円の有価証券を持てば、自己資本が2000万円しかなくても投資できるなど、まじめな投資家やファンドには厳しく、無理矢理投資をさせようとする人には抜け道がある基準となっています。

私は、適切な投資家保護が行われることにはもちろん賛成ですが、個人投資家(エンジェル)の厚みが米国よりはるかに薄く、これからベンチャー投資がますます活性化していくという過程においては、なんらかの激変緩和措置が必要だと考えています。
日弁連さんは、こうした状況で、米国よりもさらに厳しい規制をいきなり導入して、経済に悪影響が無いと考えているのか、これで本当に投資の被害が減ると考えているのか、ぜひ伺ってみたいです。

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

コメントは停止中です。