無事退院しました!

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胆石(胆嚢)の摘出手術で先週水曜日から入院しておりましたが、昨日無事退院いたしました。
日本人の10人に一人は胆石持ちだそうなので、どなたかのお役に立てばと思い、手術や入院の概要を記載しておきます。
(以下、微グロ・微エロにつき、閲覧ご注意下さい。)

 

●胆石症とは

胆石症は、肝臓から排出され十二指腸に分泌される胆管の途中の袋「胆嚢」の中に石ができるもので、それがたまたま胆管への出口のところに転がると症状が出るし、また石が別の方向に転がると何事もなかったようにケロッと直ってしまう、といった症状のものです。

胆汁は、脂を分解する酵素そのもの(膵臓から出ます)ではなく、その分解を助けるために、脂を水と親和させる乳化剤(界面活性剤)の役目を果たすものだとのことです。
脂っこいものが胃から十二指腸に入ると、胆嚢がキュッと縮まって胆汁を吐き出そうとしますが、胆管への出口に石があると胆嚢が収縮しているのに胆汁が出ていかないので痛みが発生するわけですね。

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(肝臓から分泌された胆汁が、一度胆嚢(緑色で表記)に貯められて、膵液といっしょに十二指腸に吐き出される、の図。出所:Wikipedia

 

私は過去に胃潰瘍と診断されたこともあるので、てっきり胃が悪い人間だとばかり思っていたのですが、今回胃カメラを飲んだ結果、医者曰く、「あんたの胃は、ものすごくきれいだ。これはたぶん一生、胃潰瘍にはならないし、痕跡も無いので過去に胃潰瘍になったこともないはずだ。胃潰瘍と診断された時に胃カメラ飲んだ?飲まなかったでしょ?」とのこと。

今まで、胃に悪そうなものはなるべく避けていたのですが、もしかするとあまり「胃の痛み(と思えたもの)」には関係なかったのかも知れません。今までも、胃酸を抑える薬とか胃粘膜を保護する薬とか飲むと、「あ、直った」ということになるわけですが、それは薬が効いたからではなく、実は石が転がっただけだったのかも知れません。
今までストレスなどで「胃が痛い」「胃がキューッとなる」と思っていた現象も、もしかすると、「胆嚢が痛い」「胆嚢がキューッとなる」ということだったのかも知れません。 

胆嚢自体は胃の横、肝臓の下あたりにありますが、痛みはあまり関係ないところ(私の場合は「胃の上部」「みぞおち」。人によっては背中とか)に出るようです。昨年11月に発生した過去最大級の痛みは、こらえきれずに夜中に奥さんに夜間診療救急に車で連れて行ってもらいましたが、あまりに痛いので「これはもしかすると胃ガンで死ぬのかも知れない」と思いました。(幸いなことに、まったくの見立て違いだったわけですが。)

 

●手術決断

かように、胆石の症状は(私の場合は)そんなに頻繁に発生するものではありません。実際、胃カメラや超音波診断の結果を見た内科の先生も、11月に担ぎ込まれたという事実に気付くまでは「手術するまでではないかもね」という意見でしたが、過去にかなり強い「発作」が出たと知って、「すまん、前言撤回だが、やっぱり切っちゃった方がいいんじゃないか。うちの外科に専門の先生もいるので」という意見に変わりました。

私も、数ヶ月に一回とはいえ、そんな石の転がり具合で体調が左右されるのもイヤですし、大災害時や海外に出張している時とかに手術しなきゃいけない発作でも起きたら困ります。海外では同じ胆石の手術に200万円も300万円もかかることもあるとのことですが、日本では5泊6日の入院費・食事込み(4人相部屋)で、会計はなんとたった16万円程度でした。さらに、「高額療養費制度」で健康保険からの返金があるようですし、来年の確定申告で医療費控除も使えます。(日本の医療制度ってホント素晴らしい!)

手術は、胆石だけを取り除くのではなく、胆嚢ごと切除してしまいます。胆嚢が残っているとまた胆石ができる可能性もあるから根治にならない、といったことのようです。

また、今どきの胆石の手術はメスで開腹せず、小さな穴を開けてそこからカメラや鉗子を入れて手術をする腹腔鏡手術です。今回の場合、1cmから1.5cmの穴を4か所開け、ヘソの上部の穴からカメラを入れ、他の三箇所からいろいろ器具を入れて胆嚢を切り取り、切り取った場所を結索して、ヘソの穴から胆嚢を中の石ごと引きずり出して4つの穴を塞ぎました。輸血も不要。(ただし、可能性は低いですが、癒着などが見られて腹腔鏡手術ではヤバいということになった場合には、開腹手術に切り替えます。)
開腹手術に比べて、術後の負担もはるかに軽いとのこと。 

加えて私、サイボーグ009(初代)、仮面ライダー(1号)から攻殻機動隊ARISEに至る「元祖サイボーグ世代」ですので、改造されて、より高性能な肉体に生まれ変わるということに、なにか潜在的に大きな憧れがあるような気がします。親に丈夫な体に生んでもらったおかげで、この年になるまで全身麻酔の手術はやったことなかったので、(より重篤だったり緊急性の高い危険な手術をされる方には、不謹慎だとお叱りを受けると思いますが)、こうした未知の特異な体験をしてみたい、ということもありました。

以上のようなリスクやリターンを考えて、business judgementとして、今この時期に切っちゃおうということにいたしました。仕事等でご迷惑・ご負担をおかけしたみなさん、ありがとうございました。

 

●入院

手術は1月23日(水)でしたが、事前の準備もあるので前日22日(火)の昼に入院しました。
平時は別に腹が痛いわけでも歩行が困難なわけでもなく全くの健康体ですので、いろいろ周囲を観察する余裕もありました。例えば、医療過誤を防ぐために腕に付けたバーコードと点滴等を認証するシステムだとか、入院する部屋の入り口に入院患者の名称が表示されていないのは個人情報保護法の影響もあるんかいな?とか、いろいろ病院ビジネスの現状について見せていただいて非常に勉強になりました。

すでにMRIやCTや血液検査などの手術に必要な事前の検査一通り済んでいたので、入院してから手術までの1日の間にやったことは、執刀医や麻酔医の先生からの手術の説明を受け、同意書を記入し、シャワーを浴びて、ヘソのゴマを取ることくらいでした。ヘソのすぐ上に開ける穴から腹腔鏡(カメラ)を入れるので、感染を防止するために、そこを良く消毒しておく必要があるからです。

看護師さんがやってくれたヘソ掃除のやり方は、家庭でも簡単にできるものでしたので、ご紹介。
まず、仰向けに寝てヘソからあふれない程度にオリーブ油を注ぎます。後はそのまま10分ほどおいてヘソのゴマをふやかしたあと、綿棒などできれいに拭くだけ。無理にコスったらダメとのことです。

またよく、あまり関係無さそうな場所の手術でも「テイモウ」されると聞いていたので、これも人生初体験になるかと、ちょっとドキドキ♡していたのですが・・・実際には、やりませんでした。
私は未知の経験はしてみたいタイプですが、一般には恥ずかしい方も多いでしょうから、患者の「気持ち」の面からも、腹腔鏡手術というのは負担が少ない手術だと言えるのかもしれません。

病院の手術前最後の食事は「低脂肪食」でした。(私は、胆汁の分泌を抑える薬をもらってましたし、「どうせ胆石取っちゃうんだから」と思って、逆に二郎系ラーメンの店めぐりなどをやっておりましたがw。)

また、「OS-1」

経口補水液 OS-1 500ml

(「口からの点滴」で「ポカリスエットの親玉」的な飲料)を手術までに2本(1リットル)、最低でも1本(500cc)飲んでおいてといわれて、翌朝午前中まで、一所懸命飲みました。

 

●手術室へ

手術前に、白くてキツい医療用の「弾性ストッキング」というものをはきます。手術から手術後にかけて丸1日体が動かせない状態が続くので、血栓ができて脳などの血管に詰まる、いわゆる「エコノミークラス症候群」を防ぐためのストッキングだそうです。

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手術というのは、テレビドラマの手術がだいたい命の瀬戸際だったり、緊急手術だったりするので、すごいスピードでストレッチャーに乗せられて、横を若手医師が走りながら「血圧XX!」「心拍数XXまで低下!」といったことを叫んでるといった感じのイメージをお持ちの方も多いんじゃないかと思います。私も、ストレッチャーに乗せられて点滴されながら、手術室の入り口で「じゃ、行って来るよ」「がんばってね」と、奥さんに手をギュッと握ってもらうといった姿を漠然と想像していました。

ところが今回、別に私はどこかが痛いわけでも歩行が困難なわけでもないので、実際には、呼びに来た看護師さんに連れられてスタスタとスリッパで歩いて手術室に入りました。

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(「ご家族の方は、ここまで」。この時すでにノーパンです。)

手術室に入ると、女性の看護師さんたち5、6名ほどに私の周りに集まってきていただいて、「手術担当の○○です」「△△です」と自己紹介をいただき、「あ、どうもよろしくお願いします」「どもども」といった挨拶するというほんわかムード♡で、ちょっと拍子抜けな感じでありました。

手術台の横でスリッパを脱いで手術台に登ると、手術台が事前にポカポカに温めてあります。パジャマのままそこに横たわり、上に銀色のマット(内側はソフト)をかぶせてもらってから、パジャマを脱ぎますが、全身「まっぱ」で暖かいものにやさしく包まれるので「ほわ〜ん♡」という感じです。小さい頃、親の布団に潜り込んだ時の記憶なのか、はたまた母親の胎内にいるときの記憶なのか、何やら非常に懐かしい感じがしました。

 

●全身麻酔

そして待ちに待った人生初の全身麻酔。

事前に全身麻酔経験者の知り合いに伺ってまわったところ、薬品を注入される腕の先から「SFのように腕がバキバキバキと凍っていくような感じがして、数秒で意識を失い、次の瞬間には手術が終わっている」という意見が多かったのでワクテカ度が高かったのですが、麻酔医の先生(女性)に伺ったところ、「最初に使う薬はしみるので、『腕が凍るような』というのは、的確な表現かも知れませんね」とのことでした。

私が実際に体験した感じでは、「手の先からバキバキ凍る」というよりは、もう少しマイルドで、「ペパーミントのようなスーッとするものが注入されて、針から同心円状に広がっていく感じ」がして、その清涼感が2秒くらいで肘あたりまで達した次の瞬間にはもう、「終わりましたよー」という声がかかってました。

何人か周りの人に聞いた「数字を数えさせられる(が、3くらいまでしか数えられない)」というのは、私のケースでは無かったですね。

 

●手術後

13時から手術室に入り、13時20分くらいの時計を見たところまでは記憶があります。外で待っていた奥さんに「今、無事に終わりました」と告げられたのが14時30分くらいだったとのことなので、手術は正味約1時間。速い!

看護師さんがキャスター付きのベッドで迎えに来てくれたので、帰路はドラマでよく見る、ストレッチャーに載せられて廊下の天井が動いて行く感覚を体験できました。

 

私が麻酔から回復している間、奥さんは執刀医の先生から、切り取られた胆嚢を見せてもらい、
「胆嚢は念のため、悪性の細胞等がないか検査に出しておきます。一週間程度かかります。見たところ大丈夫そうですが。」
といった説明を受け、

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(見かけはまさにホルモン。(画面を一部加工しています。))

チャコールグレーのざらっとした表面の、直径十数ミリの石2個を記念にいただきました。

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●その後の経過

この後、丸1日ほど胸に心拍計のコード数本、背中に硬膜外麻酔の管、左手には点滴の管、両足の弾性ストッキングの上に血栓ができないようにするためのふくらはぎのマッサージ装置が付き、まるで攻殻機動隊の表紙の草薙素子のようにチューブだらけになって丸一日絶対安静となります。

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(第弐話「見知らぬ、天井」)

 

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体中に刺さった管の中でも、尿管を通って膀胱まで刺さった管(寝たきりなので、トイレに行かなくていいようにするためのもの)が、ちょっと動くと痛くて、一番違和感ありました。(もちろん、そういうプレイもしたことないので、これも初体験です。)

手術自体や術後の痛みよりも、この、同じポーズでほとんど身動きができずに丸一日じっとしてるのがつらかったです。しかし、昨年末に南米に往復約50時間かけて出張した時、エコノミーの座席でじっとしてたのとどっちがつらかったかというと、さほど違いは無かったかもしれません。しかも今回の入院では弾性ストッキング+フルタイムのふくらはぎマッサージ機が付いているので、血栓が脳や肺に詰まる可能性は南米便より低かったかもしれませんし。

歩けるようになってトイレまで行けるようになったら、尿管の管も外してもらえます。
膀胱まで刺さった管を引き抜くというのは、どれほどの激痛が待っているかとビクビクしていたのですが、ナースの方の技能が素晴らしかったのか、予想外にほとんど痛くなく、気が付くと抜けておりました。

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半日ほど、強い肩こりがありましたが、これは、「腹腔鏡手術は二酸化炭素を腹腔内に注入してお腹を膨らませて手術をするが、その二酸化炭素が体から抜ける際に肩が痛くなるから」なんだそうです。

手術痕も痛いと言えば痛いのですが、最初は背中に硬膜外麻酔の管がつながっていて痛みを抑えてくれますし、丸一日後に管がはずれた後も痛み止め(ロキソニン)をくれるので、私の場合、「張り切って腹筋をやりすぎて、翌日腹筋が筋肉痛になったくらいの痛さでしかありませんでした。つまり、最初はクシャミしたりベッドから起き上がろうとすると「イテテテテ」ということになりますが、翌日にはスタスタ歩いてましたし、手術後2日目にはもう、(パソコンも使えないのでヒマすぎて)病院中を全フロア、スタスタと探検して回っていました。

手術から丸一日経過した後は、シャワーも浴びれますし、3日目からは湯船に入っても構わないとのことでした。

 

●食事

手術から丸一日間は点滴だけの寝たきりで食事も無しですが、1日後から、流動食→五分粥→全粥と、毎食毎にトントン拍子で普通の食事まで出世して行き、手術から丸2日後には通常食に戻ります。通常食というのは、病人向きの脂控えめなメニューではなく、ホントの「通常」食で、鶏の唐揚げや天ぷらまで出てきたので、ビックリしました

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胆嚢摘出後も食生活にはさほど影響は無いとは聞いてましたが、そうは言っても油脂を控えた食事を勧められると思っていたので、「今後、脂っこいものを控えたり食事に気をつけなくてもいいんでしょうか?」と恐る恐る聞いてみたのですが、「もちろん三食とも脂っぽいものはやめた方がいいですが、普通に食べる分には構わないですよ」とのこと。 
いただいたお言葉は、「毎日でなければ、二郎や背脂チャッチャ系ラーメンもOK」と、ありがたく脳内変換させていただきました。

実際、手術から4日目の朝に退院して、昼食は、入院中に目を付けておいた先週オープンしていきなり食べログ3.74を獲得した東神奈川の店へ奥さんと息子と行ってきましたが、体調の変化は全くありませんでした。(ちなみに左下の注射器は魚介のタレが入っており、スープに注入すると味が大きく変化します。エルブリ風。)

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病院で出されたものも、全てペロリと平らげました。

それからこの病院、最上階に社食風のレストランがあるのですが、ここは首都圏で最も眺めのいいレストランの一つじゃないかしらん、と思いました。

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右奥のヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルだと、夜の客単価は1万円以上でしょうけど、ここは「社食価格」ですし、入院してない人でもウェルカムです。お金のないカップル向きかも。ただし、私みたいな病院のパジャマ着たヤツがうろうろしてるので、ムーディかどうかは謎ですし、夜7時で終わっちゃいますが。

以上、医学素人の私が(麻酔でラリっている時も含めて)聞いたことなどをまとめたものですし、個人差もあるはずですので、実際に試される際には医師等の専門家の意見をお聞きください。

世界にはまだ発展途上国だけでなく先進国においてすら最低限の医療も受けられない人の方が多い中で、おそらく世界最先端であろう医療技術を、かように安価な価格で、また肉体的にも負担が非常に軽い方法で体験させていただくことができました。また、(入院時に「職員にセクハラ行為を働きません」という項目が含まれる念書にも署名いたしましたのでセクハラ等は一切しておりませんが(笑))、これだけ多数の女性(男性も)に入れ替わり立ち替わり優しくしていただいたのは人生初かも知れません。最高に幸せな入院生活でした。

これでもう「胆嚢の縮む思い」をせずに、ガンガン仕事に遊びに打ち込めます。

お世話になった執刀医の先生方、看護師のみなさん、本当にありがとうございました!<(_ _)>

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