投資契約もオプションだ!

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さて、昨年末はMSCB(転換価額修正条件付社債)の話で結構(ごく一部方面で?)盛り上がらせていただきましたが、「うちはまだ未公開のベンチャーだから、そのへんはカンケーねーや」と思ってらっしゃる方。あながち関係ないとは言えないかも知れませんよ。
MSCBの話は要するに、「資金調達手段の中に隠されたオプション性」をどう評価するか?という問題だったわけですが、オプションというのは何も証券に限った話でなく、「経営活動のほとんどがオプションである」と言っても過言ではありません。(いわゆる、「リアルオプション」的な考え方、ですが。)
特に「契約」、とりわけ「投資契約」というのは、資金調達手段に関わる金融オプションそのものとも言え、MSCBと同じ問題をはらんでいます。
例えば、あなたの会社が今、投資家から投資を受けようとしているとします。
シンプルに発行済株式の10%の株式を発行して1億円調達するのであれば、投資家は会社の価値を10億円と評価してくれていることになります。ただここで、投資家側が「投資契約を結んでくれ」という話になったらどうでしょうか?
日本でも、ネットバブル前(1999年以前)は、大手のベンチャーキャピタルさんでも、投資の際に投資契約をまったく結ばないか、結んでもペラ1枚程度の契約だったりもしたわけですが(苦笑)、最近ではさすがに、(シリコンバレーのように厚さ10cmとまではいかないまでも)、それなりにいろんな条件付いた投資契約を締結したり、優先株式を使ったりということも行われるようになってきました。
単に「公開に向けてがんばります」とか「損益は毎月報告してちょうだいね」というような条件の契約であれば、あまり「オプションバリュー」は考えなくてもいいかも知れませんが、「残余財産の分配権」や「優先引受権」、「共同売却権」、「exit時の優先配当権」等が、優先株式や投資契約の条件についてたらどうでしょうか?
それらは明らかに投資家に有利なオプションバリューを持つことになりますので、MSCBと同じく「(株価に発行済株式数をかけた)表面上の企業価値評価」よりは「有利発行」されているとも考えられます。未公開で株式譲渡制限のついた会社では、株主総会の特別決議を経て新株を発行しますので、条件について既存株主と後でもめる可能性は公開会社よりは低いかも知れませんが、「御社を10億円と評価してますよ」という言葉にのって投資してもらったら、実はオプションバリューをよく考えたら3億円でしか評価されてないのと同じだった、ということにはなるかも知れません。(実際、投資家側から出てきた初回の契約書案をよく読んでみたら、投資家側に非常〜に有利な条件になっていた、というケースはよくあります。)
こうした条件のオプションバリューを数理モデルで計算して株価を決定しているという話は日本ではあまり聞きませんが、シリコンバレーなどではそういうこともやってるんですかね?(「厚さ数cm」の契約条件全部をオプションモデルに落とし込むのは、投資交渉のバタバタした中では難しいので、やってないんじゃないかと想像しますが。おおかたは「そういう条件はフェアでない。」「他社でもこういう条件をつけてることが多い。」てな(「文科系的」な)やりとりで決まってる気もします。)
ただ、ベンチャーキャピタルや再生ファンドなど専門の投資家さんは、こうした条件の持つオプションバリューやその相場観は、(数理モデルを持っているかどうかはともかく)、感覚的にはお持ちだと思いますので、このへん、スタートアップして間もなかったりファイナンスに疎かったりするベンチャー側の経営者と投資家との「情報の非対称性」が非常に大きい(つまり、うまく投資家に丸め込まれやすい)ところではないかと思います。
(ご参考まで。)

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