日経ビジネスのPikuに関する記事について

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本日付けの日経ビジネスONLINEに、『「クーポン」先駆者、撤退へ』という特集が載っていますが、この記事は、あちこちに事実誤認があり、著しく取材不足なのではないかと思いましたので、私が知っている範囲で事情を説明させていただきます。

ちなみに同社は6月10日時点で、Pikuに投資していたベンチャーキャピタルの一社で株式の過半を取得されたDITパートナーズの下で新しい経営体制となっております。当時の取締役3名全員は同日付けで退任しており、同時に私も監査役を退任させていただきましたが、それをブログでお伝えするのも新しい経営陣の門出に水を差すことになると思い、あえてブログには書いておりませんでした。

この記事は事情をよく知る旧経営メンバーには全く取材していないんじゃないでしょうか?

 

ちなみに昨年7月に書いた、私の監査役就任時の記事はこちらです。
→(「Pikuの社外監査役に選任されました」)

 

業界再編はいつ始まったか?

まず冒頭。

 

日本初のクーポン共同購入サービス会社、ピクメディア。その同社が事実上撤退に追い込まれた。市場形成から約1年。早くも業界再編の号砲が鳴った。

とのことですが、この業界では昨年から既に何社も撤退は始まっておりまして、「業界再編の号砲が鳴った」のは、今(「市場形成から約1年。早くも」)ではなく、もっとずっと前からでした。

記事にも「上位2社に大きく水をあけられているシェアリーは、ピクメディアの事業を引き受ける前にも「Qpon」や「GOTi」といった他社サービスを次々と傘下に収めている。」とあり、上記の記述と一貫してないですね。
Piku自身も、撤退する他社のアカウントを引き継いできました。

 

株主構成と資金調達額

次に、株主構成や資金調達額ですが、

 

海外VC(ベンチャーキャピタル)3社と国内の1社から総額9億円近くの調達に成功し、

 

とありますが、どう取材したらこの株主構成や調達額の数字が出て来るんでしょうか?

株主は、今年6月まではドイツのRebate Networks GmbHという会社が株式数の過半を保有しておりました。
この会社は、last.fmの創業者やドイツのSNS「StudiVZ」の創業者(新聞「Die Zeit」や「Nature」「Scientific American」などを発行している、ドイツのGeorg von Holtzbrinck Publishing Groupという世界的出版グループが同社をバイアウト)が経営している会社です。

ドイツ、中国、オーストラリアなど、世界中で、この「フラッシュマーケティング」と呼ばれる分野に投資をしている会社なので、「ベンチャーキャピタル」や「投資会社」というよりは「事業会社」に近い性格の会社です。
他は、全部「日本の」ベンチャーキャピタルですね。

 

また、調達額は実際には「9億円近く」ではなく、9億円「超」です。 同社ホームページを見ても資本金が「456,286,269円」とあるので、ちょっと会社法や登録免許税の知識がある人なら、9億「超」ではないかと推測できるはずです。

(本来、きちんと元経営陣等に裏取り取材をすべきだと思いますが、登記簿(今や法務局まで行かなくてもネットで調べられます)も取得しておらず、ホームページすらちゃんと確認していないのではないかと思います。)

(追記:失礼しました。そもそも記事では株主構成がまったく違っていたので勘違いをしましたが、9億円超は、設立以来創業者も含めて会社が調達したすべての資金の合計で、Rebateとベンチャーキャピタルから受けた投資金額の合計は9億円を切ります。)

 

このビジネスの鍵は何か?

「日本人は保守的なのでベンチャーに向かない」なんてことがよく言われますが、このビジネスは、まさに戦後の浜松を中心に全国で数百社が参入したオートバイ市場以来ともいえるすごい乱戦市場で、「いかにも利益を出すのが難しそうなこの市場に、よくぞこれだけの人が参入するなあ、全然保守的じゃないじゃん(笑)」と思ってました。

 

記事では、

同社が先鞭をつけたクーポン共同購入市場には米グルーポンやリクルートなど大手資本が次々に参入。営業力がモノをいう同市場は乱戦になり、

とのことですが、私の個人的な考えとしては、このビジネスに最も必要なのは「営業力」もさることながら「資本力」です。

 

6月に「週刊isologue」の114号から117号

週刊isologue(第114号)GrouponのIPO資料を読む(日本法人を中心に)
週刊isologue(第115号)GrouponのIPO資料を読む(米国本社資本政策編)
週刊isologue(第116号)GrouponのIPO資料を読む(ガバナンスとドイツ法人編)
週刊isologue(第117号)GrouponのIPO資料を読む(ビジネスモデルまとめ編)

で、この業界の世界トップ企業、米国のGroupon社のIPO申請資料(Form S-1)をもとにしたビジネスモデルについての分析でも書きましたが、Groupon社は今年3月末ですでに13億ドル超の資金を調達し、繰越損失(Accumulated deficit=今までの赤字の累積額)も522百万ドル(現在のレートで約400億円)にも達しております。

日本のこの業界は、Pikuが事業を開始して数ヶ月後に、Groupon、リクルートという巨大な資本力を持つ企業が参入して、その時すでに「早くも業界再編の号砲が鳴った」わけです。
上記のGroupon社の財務諸表のとおり、世界の業界トップは大幅な赤字を覚悟に大量のマーケティング費用を世界中に投下してきたわけで、これに対抗するためには、コストを極力小さくして生き残りを図るか、または対抗してシェアの拡大に努めるか、どちらかにする必要がありました。(中途半端は、どちらにせよ可能性が無い。)

Pikuの親会社であるRebate Networksは、もともと、大阪、福岡、仙台等、政令指定都市レベルに拠点を作り、急速に体制を拡大する方針を取っておりました。他の国でもそうしています。
つまりこれは当然、Rebate Networks 社の追加出資の前提がないと成立しません。

ところが、昨年後半から、Rebate Networks の方針が、追加出資はできないという方針に変わりました。
同社も、日本の一般的なベンチャー企業と比較すると桁違いに巨額の資金調達に成功しておりましたが、Groupon社が数百億円規模の増資に成功したという情報なども伝わり、対抗して資金勝負に出ても勝ち目は無い、と判断したのではないかと思います。

このため、Pikuも借りたばかりの各地方都市のオフィスを解約して、それらの支店の従業員にも辞めてもらうということになってしまったわけです。
従業員の方々にも申し訳なかったですが、会社としてもオフィスは数ヶ月前に通知しないと解約できないので、財務的にも大きなダメージです。

 

「経営なき経営」だったのか?

記事には、

ただ、その内実を見れば、「経営なき経営」の当然の結末でもあったことが分かる。事実、同社はこの半年以内に3回も経営陣が入れ替わっている。

とありますが、経営陣が入れ替わったのは「経営なき経営」だからではなく、過半の株式を持つドイツ法人の Rebate Networksの方針によるものです。

 

記事には、「3月11日の東日本大震災で創業者の森デイブ氏がカナダへと出国し」とありますが、「当時の社長である」というのも取材不足による間違いです。当時、デイブ氏は取締役ではあったものの、すでに「社長」ではありませんでした。
(これもネットで登記簿を確認すれば、当時すでに代表取締役でなかったことは簡単にわかることです。)

私は、震災後かなり経ってから日本に戻って来た本人たちから直接釈明を聞きましたが、確かに、日本語がよくわからない外国人が、日本人でもビックリするような大地震の揺れを体験し、原発の建物が爆発する映像がテレビで流れ、テレビや防災放送は何を言ってるかよくわからない、子供も産まれたばかりで本国の親族からは「すぐに帰って来い」とパニクった電話がかかってきたということであれば、心情として理解出来る面も無いわけではないです。
しかし、他の役員にも相談なく黙って出国するというのは、さすがに私もカチンと来ましたし、創業者であれば、日本に残って被災した取引先や従業員を気遣うといったことをやるべきだったと思います。
(震災当時、緊急で閉店した店や操業が止まった店も多かったので、「クーポンを持って店に来たけど、店が閉まってる」「モノが届かない」といったクレームが殺到して、創業以来最も現場が忙しい時期ではなかったかと思います。)

 

そもそも同氏は、営業マンとしての人当たりは非常によかったのですが、なにぶん、このビジネスモデルは、急速に支店展開を図ったり、人員を採用したり、価格設定やマーケティング費用の投下など、法律面、財務面などのテクニカルな部分も含めて総合的な意思決定を図らないといけないビジネスです。

デイブ氏は、それまで7年間、日本で社長をやってきてはいましたが、コストを抑えた家族経営で、そうした急成長企業のマネジメントには(結果論的には)向いていなかった。

Rebate Networks は、ただ投資して「あとはよろしく」ではなく、CTOを派遣してテコ入れしたり、経営の細かい方針もいっしょに検討するなど、「口を出す株主」なので、社長はこの株主と緊密にディスカッションしながら事業を進めないといけなかったのですが、デイブ氏は、Rebate Networks に対して数字などをもとに合理的な説明するのが上手にできなかったのではないかと思います。結果として、取締役間で相談の上、昨年中に既に社長を降りて営業に専念することになったわけです。

 

これは会社としては大きな意思決定なので、当時の取締役会で私は、「創業した会社の社長を降りるというのは、かなりの決断だと思うが、デイブさんとして不満は無いのか?取締役間で十分に話し合ったのか?」と質問したのですが、「大丈夫だ。これからは営業に専念してがんばりたい。」といった答えが返って来ました。
(デイブさんは、基本的に前向きで明るい笑顔の「いいやつ」なのですが、良くも悪くも「Never say never」で、出来の悪い従業員をはずすとか、リストラするとか、ドラスティックな経営には[結果的に]向かなかったと思います。)

 

記事には、

 もともとの創業者は飲食店向けに英会話教室を展開していた「English OK」の社長だった森デイブ氏。

とありますが、これも若干違いまして、飲食店向けというよりは、外資系ブランドホテルなど、英語を必要とする企業の従業員向けの英語教育をやっていたと聞いています。

この創業者デイブ氏は、それまで比較的じっくり経営をしてきたので、後から入って来た外資系企業やネット企業等出身の優秀な人たちのスピード感やビジネスの考え方とは合わなかったと思います。

 

だから、結果論から言えば、早い時期にデイブ氏を中心とする旧メンバーには経営から完全に退いていただくべきだったかも知れません。しかし、Rebate Networks 社などが投資をする際に締結した契約により、数年間の最低報酬額の保証と、取締役を解任しない旨、退任する場合には保有する株式を低い株価で会社が買い取れる旨が定められていました。
外資系企業に50%超の株式を握られるわけですから、前半は、創業者側からすれば、もっともな契約ではありますが、結果としてこの契約の存在が、社内に考え方が大きく異なるグループを生んでしまったと思いますし、不満を抱えて辞めていった従業員も多かったと思います。

 

また、

2011年3月末にはピクメディアに投資した企業の1つ、ジェイ・シード(東京都港区)のジェフリー・チャー氏がバトンを受け取った。

とあります。

「投資した」と言っても、初期のころエンジェル的に少額を投資しただけで持分はゼロに近かったのですが、 Rebate Networks 社から社長に就任することを要請されて、(取引先や従業員等を混乱させてはいけないので説明してはいなかったと思いますが)、当初の位置付けとしては正式な社長が決まるまでの「臨時」の社長でした。

(ただ、結果としては、これだけ乱戦で黒字転換が見えない市場の会社の社長を見つけるのは困難で、火中の栗を拾った形になってしまったと思います。ご苦労様でした。)

 

「乱脈経営」だったのか?

記事では、

「これはベンチャーのお金の使い方じゃない」。創業間もない段階でピクメディアに在籍していた元社員は、当時の様子を憤慨しながらこう明かした。「English OKからいた外国人社員数十人の給与が軒並み年俸1000万円を超えていた」。潤沢に集めた資本金は、経営陣の人件費に費やされていた。

とありますが、 English OK時代からいた外国人社員は「数十人」ではなく「数人」ですし、数十人もの年俸が軒並み1000万円を超えていたというのもまったくのデタラメです。

従業員のみなさんには、株主の方針変更によって不安をおかけしたと思いますが、事情をよく知らない不満を持つ従業員だけから話を聞いて、元の経営者などに裏も取らないというのは、日経ビジネスともあろう雑誌の取材のあり方としてどうなのでしょうか?

 

「乱脈経営」といった言葉も使われていて、読者の方は、あたかも同社では合理的な意思決定に基づかない経営が行われていたかのような印象を受けるのではないかと思いますが、以上のように、大手が予想以上に早く参入したり、国際的な資金調達状況などを考慮して、私の知る限り、その都度、十分な検討をして合理性のある経営判断が行われていましたし、法令等にも十分配慮して経営が行われていたと考えます。

 

(追記 19:22)
「前社長ジェフさんに会った事もないので、面倒くさくて取材しなかった」のかと思ったのですが、先ほど聞いたところ、昨年の12月に会ったことあるとのこと。なんでコンタクトしなかったんでしょうね。)

以下、蛇足かも知れないですが、元社長等に裏取りをしないことも含めて、取材や記事作成のスタンス判断の一助となれば、ということで。(/追記)

 

記事を書かれた記者の方は、記事中でプロフィールやツイッターのアカウントも書かれていますが、下記の通り、

 

201108030729.jpg

 

「基本的にやさぐれて飲み歩いているだけ」だそうです。

(「泣く泣く日経ビジネスに異動になった」なんてことを書いて、他のがんばってらっしゃる日経ビジネスの記者のみなさんには失礼じゃないんでしょうか?)

 

201108031010.jpg
(記事本文のプロフィールでは、なぜか「日経ビジネス記者」を2回繰り返して強調されてます。)

 

(追記:8/9)

同じ原記者による現経営陣インタビューが日経ビジネスONLINEに掲載されてますね。

「我々は無給で経営再建に取り組んでいる」
渦中ピクメディア、現経営陣に聞く次の一手

 

現経営陣からの情報はいただいてないですが、やめてもない事業を「撤退」なんて書かれたら、大損害が発生しかねないので、日経ビジネスに対して、かなり強く抗議したのかも知れませんね。

 

(ではまた。)

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6 thoughts on “日経ビジネスのPikuに関する記事について

  1. 半年だけ在籍していた永井です。現場からの印象を投稿します。
    経営陣のキャラが生き馬の目を抜くような外資系企業体質に合わなかったのはその通りかもしれませんが、地震で自分だけ逃げるというのが「そもそもこの国に根をはってビジネスをする気なんかない」というのをよく象徴してるように思います。
    わたしは経営能力うんぬんというより、入社時から創業メンバーの「本気さ」をぜんぜん感じませんでした。
    毎月何千万も赤字垂れ流してたんですから、本気でどうにかしたいと思ってたらデートだから緊急時の携帯に出ないとか、更新されないツイッターとか、(ほかにも山ほど言いたいことがありますが)創業者でそれってありえないんじゃないでしょーか。
    https://twitter.com/#!/marcbeardsley
    日本人から距離置いて身内だけでオフィスの隅に陣取ってましたけど、現場がどうなってるのか気にならないのかしら?とずっと不思議でした。
    「営業力」とか「資本力」とか「競合参入」とか、事業がうまくいかなくなる要因てイロイロあるんでしょうけど、「本気さ」なくして人がついてきて成功することなんてあるんかいな?って感じです。
    そもそもの”大前提”が抜けてたんじゃないですか。
    ところで日経ビジネスのこの記事のクオリティはすごいですね。これはこれで仰天です。

  2. >わたしは経営能力うんぬんというより、入社時から創業メンバーの「本気さ」をぜんぜん感じませんでした。
    げらげらw いい加減なベンチャーに相応しいいい加減な記事だったというのが結論でしょうかw
    >ドイツ、中国、オーストラリアなど、世界中で、この「フラッシュマーケティング」と呼ばれる分野に投資をしている会社なので、「ベンチャーキャピタル」や「投資会社」というよりは「事業会社」に近い性格の会社です。
    「投資をしている会社」が「投資会社」ではないという理屈はわけが分かりませんwww
    「『フラッシュマーケティング』と呼ばれる分野」に特化した投資を行っていた「投資会社」としか読めないじゃありませんかw
    「投資」以外の「事業」は何をしていたのですか?
    >私の個人的な考えとしては、このビジネスに最も必要なのは「営業力」もさることながら「資本力」です。
    >ところが、昨年後半から、Rebate Networks の方針が、追加出資はできないという方針に変わりました。
    では幾らでも「Accumulated deficit」を計上できるだけの資本を他から調達すべきだということになりますが、「経営」はそのような活動は行ったのですか? そのような記述はどこにもありませんがwww
    >そもそも同氏は、営業マンとしての人当たりは非常によかったのですが、〜そうした急成長企業のマネジメントには(結果論的には)向いていなかった。
    「経営」に向いてなかった人が「経営」を降りたのなら会社の体制は好転した筈ですよねえwww
    しかも「このビジネスに最も必要なのは」、「資本力」の次に「営業力」なんでしょう?
    そしてその「経営」に向いてなかった人は「営業マンとして」は優秀だったのでしょう?
    それで「撤退」ということになったのであれば、矢張り「このビジネスに最も必要」であった資本の調達に失敗したからということにしかなりませんよねえ?
    ならば彼が社長であったか取締役であったかなんてことは瑣末な事象ではありませんかwww
    「国際的な資金調達状況などを考慮して、私の知る限り、その都度、十分な検討をして合理性のある経営判断が行われていました」と書いている以上は「9億円超」程度の調達で済ませていたことに「合理性」があったと判断しているということですよねえ?
    言っていることが矛盾してやしませんか?
    いくら「日本で初めて」であったろうが「2010年」は、2008年に創業したGrouponの成功をみて日本でも陸続と猿真似企業が勃興したした時期であり、その中でギャージンがテケトーにカネを出してテケトーにギャージンを経営に送り込んでテケトーに商売していたから、あっという間に後続に置いて行かれたという、「あたかも同社では合理的な意思決定に基づかない経営が行われていたかのような印象」しか受けませんねえwww
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%BD%B9
    「監査役(かんさやく)は、日本の株式会社において、取締役及び会計参与の業務を監査する機関」ですよねえ?
    いったいどのような業務監査を行っていたのですか?
    「他の役員にも相談なく黙って出国」する取締役など、善管注意義務違反として取締役会を招集した上で株主へ報告し、総会で解任すればよかったのでは? ギャージン同士でツルんでるから無駄だったんですか?
    営業マンとしては優秀だから残したんですか? それで「同事業から事実上撤退」ですかwww
    なにがなんだかさっぱり分かりませんwww
    最後っ屁のように記者に対する嫌味を書いて終わらせていますが、こんな内容では監査役を勤めていた会社が事実上潰れてしまったことを暴露されたことに慌てて釈明エントリを上げ、本まで書いた著名公認会計士としての評判を維持しようとしたという印象しか読者には残りませんよwww
    もう少しまともなことを書いたらどうですか? wwwww

  3. すいません追記で。
    磯崎さんがおっしゃりたいのは「経営的判断と法令順守は問題なかったでござる。日経ビジネスの記事は事実誤認ありまくりでひどい」ということかと思いますが、わたしが言いたいのは「いくら監査OKで愛想が良くたって、本気でやってない会社が成功するわけない」ということであります。
    もちろん半年しかいなかったわたしイチ個人の印象なので、「そんなことない!現場も経営陣も死ぬ気でやっていた!」という意見もあるかもしれませんが、どうも磯崎さんとはこの点で温度差がありまくりです。
    外野の人は「フラッシュマーケティングというビジネスモデルがどうのこうの」「外国人vs日本人のコミュニケーションがどうのこうの」と適当なこと言ってますが、そんなのは細末な問題でしかない。
    あのメンツではどれだけ素晴らしい”道具”や”人材”が揃っても、うまく行かなそうだと思いました。

  4. AntiSepticさんがいろいろ疑問をお持ちのようなので、補足しておきます。
    ■>「投資をしている会社」が「投資会社」ではないという理屈はわけが分かりません
    一般の事業会社も投資をしますし、実際、Grouponも日本やドイツをはじめとする現地の法人を買収、投資をして子会社としています。本文では、Rebateは単に投資をするだけではなく、積極的に経営に関与してくる会社だったとご紹介をしているだけで、ここでの本旨は「海外ベンチャーキャピタル」なるものはRebateを含めたとしても1社しかいなかったが、なぜ事実を誤認した記事になるのだろう?ということです。
    ■>では幾らでも「Accumulated deficit」を計上できるだけの資本を他から調達すべきだということになりますが、「経営」はそのような活動は行ったのですか?
    まさにそのとおり、この事業の鍵は資本であり、他から資金を調達することも検討すべきだ、ということは昨年からすでに取締役会で私も主張し取締役会でも検討しました。しかし、株式の過半を持ち、種類株式の定めにより株式発行についても拒否権を持つRebateは、自分が筆頭株主から降りるのもイヤだし、追加出資する気もなかったので実現しなかった、ということです。
    ■>「他の役員にも相談なく黙って出国」する取締役など、善管注意義務違反として取締役会を招集した上で株主へ報告し、総会で解任すればよかったのでは?
    もちろん、善管注意義務違反についても創業者を除く取締役と法的な検討をしました。ただし、この会社は普通株式と種類株式の権利が特殊で、Rebate側は種類株式の過半を握って拒否権はあるものの、普通株主総会での議決権をおさえている創業者グループを、本人の意思に反して解任することはできない株式のフレームワークになっており、このことが長期にわたる膠着状態を発生させてしまった、ということです。定款や契約で定められたことを破るわけにもいかないですし、私が監査役に就任した時には、もうこの枠組みが株主間で決まった後だったので、残念ながら法的には、その枠組みの中で考えるしかなかったわけです。
    本来の「うまくいく」ビジネスの姿としては、増資を決めて早く新しい(臨時でない)社長にバトンタッチすることだったわけですが、上記のような事情で、それが叶わず残念です。
    米国のVCの人が「アメリカのVCは社長がダメなら次の社長に取り替えるが、日本は、社長がダメでもクビにできるだけの株式も持てないし、替わりの経営者も少ない」と嘆いてました。アメリカに比べてベンチャー企業が少ないので、力関係としてはどうしても株主より創業者側の権利が強くなってしまう傾向があるのではないかと思います。
    (ではまた。)

  5. 在籍していた元従業員です。
    (1)毎月のように営業社員を増やしたあげく、一気に人をレイオフ
    (2)毎日定時か、定時を1時間ほど過ぎたあたりでさっさと帰る創業者と創業者の秘書
    (3)ジェイ・シードから週に2日ほど(しかも午後)やってくるわけのわからない”コンサル”
    (4)ロットで発注したはいいが、処理できず段ボールで数十箱単位で溢れるpikuマスコットや文房具などの在庫の山
    (5)”マーケティングディレクター”や”エグゼクティブアシスタント”、”事業戦略アライアンス部長”など「何をしているのか」実態不明な肩書きだけの人間が存在していた社内
    (6)レイオフ後繰り返される玉突き人事で士気の失われた社内と、毎週のように発表された「退社のお知らせ」
    ——————————-
    私の知る限り、その都度、十分な検討をして合理性のある経営判断が行われていましたし、法令等にも十分配慮して経営が行われていたと考えます。
    ——————————-
    本当にそうでしょうか?
    そんな簡単コメントで済ませてしまうのが、磯崎さんのお考えなのですか?

  6. 私のできる範囲で疑問にお答えさせていただきます。
    まず、「合理性」とは何か、ということですが。
    経営(特にベンチャー経営)において「合理的な判断だったかどうか」は、「神のように完全で間違いが無かった」とか、「スタッフが充実した大企業と同様の判断をした」とか「”結果として”うまくいった」とかではなく、「その時点での状況を踏まえて、限られた経営資源の下で、合理的な範囲で努力をして考えたかどうか」という意味だと考えています。
    本文に書いたとおり、Pikuは昨年7月時点くらいまでは日本でトップだったわけですが、その直後に、米Grouponやリクルートが出て来て月間数億円の資金を投入してマーケティングをしたり、数百人単位の雇用をして、全国に支店を展開しようとしていたわけです。
    この時点で「いやいや、もうどうせそんなヤツらにかなうわけないから、増資したばかりで資金もまだ5億円くらいあるし、1位の座はすんなり開け渡して、今までのメンバーだけでのんびりやっていこうよ」という判断をすれば、従業員の方々のストレスは最も少なかったとは思います。
    しかし、そのやり方で生き残れる可能性があるかどうかは、また別の話です。
    魅力あるディールが少ないサイトには人が来てくれないし、人が来ないサイトにディールを出してくれる店は無くなっていくという悪循環に陥るのは必至ですから、国内トップグループに残らないと、いずれにせよ後が無いからです。
    このため、親会社も経営陣も当時「対抗して拡大路線を取る」という意思決定をしたわけですし、これが非合理的な判断だったかと言うと、そうではなかったと思います。
    しかし、これはあくまで「兵站が続く」ことを前提とした作戦でした。そして、本文にも書いたとおり、前線が最も伸び切った時点で次の武器弾薬が入って来る道が断たれたわけです。
    前提が大きく変わったその場合に、会社が生き残るために支店を閉鎖して大量リストラをするという決断は、従業員にとっても経営者にとっても楽しいわけは有り得ません。しかし、「非合理的」だったかというと、そうではなかったと考えています。
    「実態不明な肩書きだけの人間が存在していた」とのご指摘がありますが、それは(ご存知かどうかはさておき)初期の採用時に解雇に関する条件に制約を付ける契約を締結していた人のことも指してらっしゃるのではないかと思います。私が就任する前の契約の締結については「合理的」な判断だったかどうかはわからない部分もありますが、(よくも悪くも)そうした契約が存在する前提の下では、その契約を一方的に破棄して解雇を行い、契約違反で法的に争うことに限られたマネジメントの経営資源を投入するのがいいかどうかには疑問があると思います。
    このビジネスモデルについては、日本の解雇規制の問題についても強く感じました。
    親会社は、中国、オーストラリアなど、全世界の同モデルの会社に投資をしていたので、
    「他の国では数百人単位で採用してダメなやつのクビをどんどん切り、10人でも優秀なやつが残ればよし、という感じで営業を拡大しているのに、なぜ日本はそれをやらない?従業員に退職時のペナルティを支払ったとしても、日本でトップの地位を獲得できれば、時価総額は数百億円にはなる。解雇に関わるコストは安いものではないか?」
    という感覚なので、
    「いや、日本においては『整理解雇の四要件』等、解雇に関しては極めて厳しい制約が課せられている。日本においては、従業員を解雇するのはカネだけで解決できる問題ではないし、法的紛争のコストは諸外国より高い。1人解雇して法的紛争になるだけで、経営者のリソースは、ほとんどそれに取られてしまうことになる。だから、日本では『誰でもいいからジャンジャン採用して、ダメなやつはジャンジャン首を切ればいい』といった方法は採用し得ない。試用期間中の解雇でも自由にやっていいわけではないし、日本社会やこの業界の中でのレピュテーションの問題もある。日本では雇用の流動性も低いので、ベンチャーに来てくれる人材も限られるが、その中で、出来る限り慎重に面接をして採用していくしかないのだ」
    といった、制度の違いを説明するのに相当な労力がかかっていたと思います。
    ただし、これは日本の制度の下では極めて常識的に聞こえますが、よく考えると、経済効率的には必ずしも最善の状態では無いわけです。
    従業員がその会社で力を発揮できるかどうかは、「実際に働いてみて成果を上げられるかどうかを見る」のが会社にとっても本人にとっても最もよくわかるはずで、履歴書や面接だけで「いい人」を選ぼうとしても限界があります。
    300人採用して200人辞めても、100人「いい人」が残るなら、会社にとってもそれが最適ですし、社会的に見ても100人の雇用を産み出されて、その分経済も活性化します。辞めた200人の人も、絶対的に能力が低いわけではなく、「その会社に合わなかっただけ」の人が多いでしょうから、会社に残るのが幸せとも限りません。
    しかし、解雇になった人の心はひどく傷つくし、経営者も楽しくてそうしたことをやっているわけではない。そうした「解雇」を極力発生させないようにしようという日本の解雇規制は(経済効率ではなく)「心情」としては非常に正しいものだと思います。
    こうした環境の下では、雇用契約に縛られない業務委託の人を使うというのも合理的だったと思います。
    しかし、結果としては、ご指摘のように、会社にフィットしない人がかなりの比率で残ってしまい、それがさらに他の従業員のモラールをダウンさせるという結果になってしまいました。
    経営者は、日本の解雇規制の下では十分合理的な判断を下したと思いますが、結果として国際的に納得が行く十分なスピードで採用が進められなかったし、他の国の業績の伸びに比べてパフォーマンスも見劣りがした。
    「経営者の判断は最善で一つのミスも無かった」とは申しませんし、資金さえ十分にあれば、別の経営者を連れて来られる可能性もあったわけです。想像ですが、ドイツの親会社も別の経営者を探していたと思います。それでも、ドイツの親会社が追加出資をする気が無くなってしまったのは、(やりとりの経緯を垣間見ていた私の想像に過ぎませんが)、こうした日本の規制の下で、これ以上日本に資金を投下しても、他の国のような急速な成長は見込めず、十分なリターンが望めないと判断したからではなかったかと思います。
    つまり、「結果論」からすれば、会社にとって最善の道は、経営陣にも従業員にも、さらに不快な選択肢、「より大量の人員を採用しつつ、パフォーマンスのいい人や経営者と反りの合う人だけを残して、大量の解雇を並行して行う。」だったかも知れませんし、数百万円程度のノベルティの在庫で逡巡するのではなく、もっと数億円単位でマーケティング費用を使い試行錯誤するべきだったのではないかと思います。
    そして「究極の結果論」つまり、「米国Groupon社の上場申請資料が提出され、世界のトップですらまだ赤字で、累積で400億円もの赤字を垂れ流しているということが判明した今の知識を前提とした結果論」としては、中国やアメリカなど、世界で数千社参入した企業は、すべてそもそもこの市場に参入すべきでなかったということになるかも知れません。実際、その情報が昨年時点で既にわかっていたなら、創業者もこの事業を始めようと思わなかったと思います。
    しかしそれは「結果論」であって、神ならぬ人間が行うベンチャー企業は「やってみて始めてわかること」ばかりなわけです。そうした不完全な人間ができることは、その時の状況の中で最善の努力を行おうと務めることでしかないと思います。
    繰り返しになりますが、大変な思いをした従業員や経営陣のみなさんは、本当にお疲れさまでした。
    人事等にも関わることで、役員に就任している間はこうした話はできませんでしたし、現在でも何でもしゃべっていいというわけではないのですが、可能な範囲でお答えさせていただきました。
    ご参考になれば幸いです。
    (ではまた。)