ICPFセミナー「通信・放送の総合的な法体系に対する『筒井氏の個人的な』考え方」に行ってきた

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以前ご紹介した、第24回ICPFセミナー「通信・放送の総合的な法体系に対する通信事業者の考え方」(ソフトバンクBB取締役筒井多圭志氏)、に出かけてきまして、興奮冷めやらない状態でこの文章を書いております。競争法とか通信政策とかに興味ある人は、たぶん、この講演会を聞き逃したことを一生後悔するんじゃないかなあ、とも思います。:-)
(ちなみに、冒頭、筒井氏より、「『通信事業者の考え方』、ではなく、わたくし筒井の個人的な考え方です。」と訂正指示が。)
電気通信事業だけでなく、「証券取引所とPTS」とか、その他のネットワーク外部性が発生するIT系の事業をやっておられる方にも大いに参考になったかも知れません。
筒井氏の話だけでもヘタな漫才を聞くよりも面白いわけですが、後半のディスカッションタイムでは、客席の最前列に陣取った池田信夫氏と「ゴジラ対モスラ」級のやりとりがあって、これもマニアにはたまりまへんでした。
なにせ、議論がまったくかみ合わない。かみ合わないけど、どちらのお話も大変ためになる。


筒井さんの話と対比してみて、あらためて池田さんのされる話の性質がよくわかったような気もします。ブログでもご覧いただけるとおり、池田さんのお話というのは、経済学なんだけど非常に「取材」に裏打ちされて、「いつ、どこで、誰が・・・」という5H1Hによって、その領域での「力の構図」がよくわかる。(いい意味で)ジャーナリズム的であり政治的な経済学、とでも申しましょうか。
そして、池田さんの話を聞くと、「池田さんのようにいろいろ調べている人がいるんだから、私のような浅学なモンが、この領域に足を踏み入れちゃいかん」という気になるわけです。
一方、筒井さんの話というのは、(ネットの書き込みにも多く見られるように)そもそも他人に理解させようという気があまり感じられない。ディテールもやたら細かい。オタクであります。今回も、池田さんからは、「『コンテスタビリティ』という概念をしっかり説明しないと、今日の話はほとんどの人がわからなかったんじゃないか?」というご意見がありました。しかし、不思議なことにこれが極めてわかりやすいんですね。(今回も、独禁法第2条7項の精神から話が始まったわけですが)、「そもそも(WiMAX等で)1社だけしか参入できない規制がかかっているとしたら、それは独禁法の精神に反するだろう。」「2社以上、市場に参入して初めて『競争』なんだ。」というのは、小学生でもわかる話、とも言えます。
「NTTの光ファイバーが赤字」というのも、GAAP的な会計や税務上の話ではなく、(「なんで銅線より光ファイバーの耐用年数が短いんだ?」)という経済実態から考えて30年償却で原価計算したら大黒字・・・という話も(完全に理解できるかどうかはさておき)説得力あります。(そもそも、こうした固定費が大半の事業における原価計算の話で論争するのは、ある意味非常に不毛なところがありますので、私はあんまり近づきたくないんでありますが。)
「ディテールで煙にまかれている気がしないでもないけど、わかったような気になる。」というのが筒井さんの話の特徴。そして、筒井さんの話を聞くと、現状、欧米でどうだ、総務省の誰が何を考えているといった話なんぞはふっ飛ばして「世の中を変えなきゃいけない」「オレもなんかしないと」という気に(なんとなく)なります。
つまり、「革命家」なんでしょうね。換言すれば、筒井さんの言うことについていって「現世的な幸福」が得られるのかどうかはナゾ。でも、何か血沸き肉踊るものがあります。フツーの人であれば一晩寝ると熱も冷めて「ま、無難な落とし所を模索しますか。」ということになると思いますが、幾晩寝ても熱が冷めなかったのが孫さん、ということかも知れません。
昔エルサレムで、きちんとした律法の教育も受けてないはずのナザレ出身の若造の説教を聞いた人や、ロシア革命前に資本論を読んだ人も、同じような気持ちになったのかもなあ、という気がします。
とにかく、大変堪能させていただきました。
また、受付で名前を告げたら、「ブログで紹介いただきまして。記事を見て申し込んだ、という人が何人かいらっしゃいました。」とのこと。ICPFさんの何らかのお役にたてたとしたら幸いです。
本日のキーワード

  • 独占禁止法2条7項
  • 不可欠施設法理(エッセンシャル ファシリティ)
  • コンテスタビリティ/コンテスタブル市場
  • ゲーム理論と産業組織論
  • 総務省の「ドミナント規制」談義は、完全に失当
  • ボトルネック規制
  • 「円滑な提供に支障が生ずるおそれ」とは何ぞや?(円滑ではなく、「Technical Feasible」[FCC96年通信法]にしてほしい。)
  • 8分岐の構造的競争阻害要因
  • 電気通信事業法施行規則第23条の2第2項? と滋賀県
  • 虜理論(capture theory/ Stigler)
  • NGN
  • ZC接続
  • 総務省告示243号別紙2では、「光ファイバーはアンバンドルされており、ルーターは市場で売っているからボトルネック性はない」としているが、これは「ロケットは市場で買えるし、お金がないのはあなたのせいだから、月に行くのにボトルネック性は存在しない」という理屈だ。

ちなみに、先ほどGoogleで「筒井多圭志」と検索したら、以下の私の記事が一番上に出てきたので、びっくりしました。
https://www.tez.com/blog/archives/000693.html
大変光栄であります。
(ではまた。)

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2 thoughts on “ICPFセミナー「通信・放送の総合的な法体系に対する『筒井氏の個人的な』考え方」に行ってきた

  1. お疲れ様でした○┓ペコ
    わらひは今帰ってきました( ・ω・)∩
    記事をみて申し込んだ1名です。

  2. アンバンドル規制からプラットフォーム競争へ

    NGNにも関連するが、きのうのICPFのセミナーの筒井多圭志さんの話は、今もめている8分岐問題で、通信業界以外の人にはほとんど理解できなかったと思うので、…