プライスコレクション

上野の東京国立博物館でやってるアメリカ人ジョー・プライス氏(&奥さんのエツコさん)のコレクション「若冲と江戸絵画」展
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を一家で見てまいりました。
六本木ヒルズの森美術館のオープニング展覧会「ハピネス」にも来ていた、若冲「鳥獣草木図屏風」(風呂屋のタイルに描かれたみたいなやつ)、
 
 
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も再び登場してましたが、これ、「実は若冲じゃないんじゃないの?」説が出ていて、プライス氏がおカンムリとか。
確かに、他の若冲作品と並べてみると、まったく「芸風」が違いますな。ただ、オーラはすごい。江戸時代に、他の誰がこんな斬新な発想の絵をかけたのか、というのも疑問ですが、落款とか、描いた人を示すものが何も入ってないのでナゾ。
プライス氏は、大学の卒業記念にポルシェを買おうと思っていたが、建築家のフランク・ ロイド・ライト氏とニューヨークを歩いていて、画廊で鶏かなんかの掛け軸(後から若冲と判明)を見つけて、ポルシェの代わりにそれを買ったことから、コレクションが始まったそうで。
ポルシェにしなくてよかったね。という感じです。
−−−
(どうでもいいですが)帰り道、秋葉原のホコテンを避けて裏通りを迂回していたら、道路を横断している「メイド」を、(不勉強ながら)生まれて初めて肉眼で目撃。
私「おい、見ろ見ろ、メイドだメイド。」
奥さん「わー、ほんとだ。見な見な。」
息子A(小5)「興味なーし。」
息子B(小3)「えろそうだから興味なーし。」
・・・今、海外での「日本のアート」への関心としては、「若冲」より「メイド」のほうがぜんぜん旬なのに。
(あと5年くらいしたら、すごーく興味がわくかも知れないね。>息子たち)
(ではまた。)

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Death Note完結&証券犯罪の厳罰化

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Death Note最終12巻を買って即日読了。
−−−
さて、みなさんは、証券市場にも「キラ」がいて、極悪人はすべて(社会的に)抹殺されるような世界と、そうでない世界のどちらをお望みでしょうか?
私は、厳罰化はいいと思うんですが、「いいか悪いか明確じゃなかった領域」に厳罰が下ると、過度に証券市場が萎縮しちゃうんじゃないかと心配しております、というのは、これまでのエントリで述べさせていただいたとおり。
ただ、本日、某米国在住の方とランチをしてたときに伺ったところによると、ワールドコムのケースでも昨日突然死したエンロンのケネス・レイ元会長のケースでも、一生ムショから出てこられないような判決を受け、被告は奥さんといっしょに泣き崩れていたとのこと。
執行猶予が付く可能性もある日本のライブドア事件や村上ファンド事件を考えると、日本のおしおき度も、まだまだ軽いスねー、という気もいたします。
日本の識者の方々でも、「暴力団とのつながりでも出てくるのかと思ったら、東京地検ともあろうものが、捜査して粉飾程度の罪しか発見できなかった。大山鳴動してネズミ一匹。」的認識の方も多いようなんですが。
あのー、えーと、粉飾って「極悪」なことなんじゃないですかね?
「迷惑度」で量刑が決まるわけじゃ無いでしょうけど、報道によると村上ファンドの「インサイダー取引」による利益は30億円程度で、しかも一般投資家に与えた影響は、「もし知ってたらもっと儲かったのにー」という「機会損失」のお話。まだ大量買付けをやるという蓋然性があったとはとても言えない状況だったということを考えれば、そんな情報知ってて売らなかった人がどれほどいたかもようわかりまへん。
これに対して、ライブドア事件の場合には、粉飾を信じて株式を購入した人の資産が結果として7000億円(ホリエモン分も含みます)も失われたわけです。「ライブドア・ショック」によって失われた他の株式の価値減少も組み合わせれば、10兆円単位の「迷惑」を社会に対してかけたことになるのではないかと思います。
私、個人的には、堀江氏が「投資組合を通じて自己株を売却した場合に会計基準上、売上に計上していいのかどうか?」、というような認識があったかというと、ほとんど無かったのが実際だったんじゃないかと想像してます。(・・・というか、理解してたらすごい。)
しかし、「わからなかったんですー」というエンロン会長の「idiot defense」は打破され、一生ムショ暮らしの罪が言い渡されました。
ライブドアにおいても、ネットではさほど売上が立っていないにも関わらず、投資家に「IT企業としてガンガン儲かっている」というような誤った認識を与えないような開示をするため、取締役として内部統制やコーポレートガバナンスの構築義務があったのは間違いないところでしょう。
一方で、アメリカのこうした「ホワイトカラー的犯罪」のムショ暮らしというのは、非常に待遇がいいようですね。
以前、テレビの特集で、大和銀行事件の井口氏が刑務所で暮らしているところのを見たのですが、刑務所には塀すらなく、庭には芝生が広がり、(確か)部屋のドアには鍵もかかっておらず、本棚まであって回顧録も執筆できる、というような、かなり「いい生活」だったご様子。
ちなみに、みなさんは、そういう「いい環境」の米国の刑務所に一生いるのと、数年間だけ、鉄格子の中で自分の意思で数十センチ動くことも許されないような日本の刑務所で生活するのと、選ばなきゃいけないとしたら、どっちを選びます?
(ではまた。)

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ライオンの視点 アリの視点

先日は小幡センセの経済教室にツッコミを入れさせていただいたので、今回は、ちょっと持ち上げて・・・というわけでもないですが・・・)
先日いただいた「ネット株の心理学」MYCOM新書
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は、非常におもしろいので、一読の価値あり、です。
一言でいうと、「デイトレでなぜ儲けることができるのか」について理論的(っぽく)かつ平易に書かれた本。
ちょっとファイナンス理論を学んだだけの頭の堅い人は、デイトレードを「非常にリスクが高くて儲かるわけない、アホの所業」とみなす傾向が強いんですが、本書にもあるとおり、そう決め付けるのもかなりアホな考えです。
本書では、自らがデイトレーダーである小幡先生の実体験に基づいて、具体的ケースに従って市場でどのような心理戦が繰り広げられているかが書かれている点が価値あるところ。
例えば、バリュークリックジャパン(現ライブドアマーケティング)の株式分割で発生した価格の高騰も、ちょっとモノのわかった人なら、
「本来は分割によって企業価値が変わるわけではないが、分割による子株が還流するまで需給のアンバランスが生じることによって、株価が一時的に高騰する現象」
というところまでは理解してると思いますが、本書では、そこからさらに2段階くらい踏み込んで、市場で発生した心理戦について書かれているので、非常に興味深く読ませていただきました。
マイクロな視点
つまりこの本は、「心理学」を語っているということもさることながら、マーケットの「マイクロな」ストラクチャーを実証的に説明している本だ、とも言えます。
一般のファイナンス理論は、機関投資家を中心とする数%程度の株式を運用する人には整合する度合いが高いかも知れませんが、もっと小さな領域に入ってくると、そこに働く法則は全く違ってくるわけでして、
(投資家の方を動物に例える失礼をお許しいただけば)、シマウマの骨についてる5mmくらいの肉片は、ライオンに取っては「食べかす」ですが、アリさん1匹にとっては、「食いきれないほどのゴチソウ」になります。
普通の商取引でも、100億円の商品を右から左に流して20%もサヤを抜こうというのは経済学的に非常にムシのいい話ですが、普通の小売とか飲食業では、粗利が30%とか50%あるような業態は非常に普通。
スーパーで、昨日100円で仕入れたものが翌日150円で売れたとしたら、利回りは年率換算で1.5365−1だから、1.8×1066%(1兆の1兆倍の1兆倍の1兆倍の1兆倍のさらに百万倍%)にもなるので、頭の堅い人なら、
「そんなことはファイナンス理論上ありえん!なぜなら、もし、そんなおいしい商売があるなら、他のヤツが参入して長期的には利潤がゼロになるからだ。」
とおっしゃるかも知れませんが、そういう人に捧げる言葉は、
「現実を見ろよ。」
ですね。
実際、小売店では30%程度の粗利は普通なわけです。同時にその小売商が、1年後に1兆の1兆倍の・・・といった資産家になっているかというと、そういうこともないし、全員が一文無しになっているというわけでもない。
制度的な流動性供給主体がいない市場における個人投資家の立ち位置
同様に、デイトレーダーの全員が儲かってるわけじゃないですが、儲かってるデイトレーダーの方もいらっしゃるという現実があるわけです。
マーケットの構造を見ても、日本の市場(というか東証)は、「ピュアな」オークション市場で、NYSEでポジションを取る「スペシャリスト」やNASDAQの「マーケットメーカー」のような、流動性を制度的に供給する主体が存在しません。
過去には日本の場合、証券会社の自己売買部門がこれを供給していたそうですが、現在はそうでもないとすると、小型株をも含めた株式への流動性供給主体として、個人投資家の役割は、日本において重要であるというだけでなく、利益を獲得するチャンスも理論的に多めに残っているということかも知れません。
「個人投資家中心の制度設計を考えるべき」なのか?
しかし、マイクロな世界の法則がマクロな世界で通じるかというと、必ずしもそうじゃないはず。
「市場の制度設計」という話は、「ライオンもシマウマもアリも」全部の生物を含めた「生態系」として考えるべきで、「アリが増えてきてるから、アリ中心に考えるべきだ」という話にもならないと思います。
(アリ、というのはバカにしてるわけじゃなく、「バイオマスでは地球上で最大級の、最も”成功”した生物の一つ」、という敬意をこめた例えですので、念のため。)
同様に、「ライオン(ファンド)は、シマウマを食うから悪いやつだ」というのも、人間の勝手な思い込みであって、ライオンが増え過ぎるとシマウマが減って、ライオンもえさが無くなって頭数が減少するといったバランスが働けば「生態系」としては均衡するわけですし、ライオンがゼロなのがいい自然か、というと、草食動物が増えて植物を食いすぎて砂漠化が進んだりして草食動物の数が減れば、結果的にアリの食料も減るわけです。
開示についてもルールについても、「透明性」が必要だ、というところには異存ございませんので、念のため。
「デイトレファンド」は成り立つか?
また、7月3日の日経朝刊1面の記事「試される司法」に、小幡先生が、「法にグレーゾーンが多く」、「腕利きデイトレーダーを運用者として競わせ、高配当を導こう」という「日本発のデイトレーダーファンド」の構想をあきらめた、というエピソードが紹介されてますが、これは法にグレーゾーンがなくても、ファンドサイズがでかくなることで、デイトレーダー的法則が通用しない「巨視的な」世界になるので、「マイクロな世界の成功法則」では、いずれにせようまくいかなかった可能性も高いんじゃないかな、とも思います。
(ではまた。)
参考文献:
マーケット・マイクロストラクチャー—株価形成・投資家行動のパズル
Maureen O’hara (著), 大村 敬一、宗近 肇、宇野 淳 (共訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4322237517/tetsuyaisoz05-22
株式市場のマイクロストラクチャー—株価形成メカニズムの経済分析
大村 敬一、川北 英隆、宇野 淳、俊野 雅司 (著)
日本経済新聞社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453213160X/tetsuyaisoz05-22
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バグズ・ライフ

以下、全く読んでませんが、本日Amazonで検索して発見した本。
市場と取引—実務家のためのマーケット・マイクロストラクチャー
Larry Harris (著), 宇佐美 洋、小野里 光博、濱田 隆道、山岡 博士 (訳)
上巻
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492653740/tetsuyaisoz05-22
下巻
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492653759/tetsuyaisoz05-22

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北朝鮮に対する金融制裁の「インパクト」を考えてみる

北朝鮮は、米国の金融制裁に反発して六カ国協議への出席も拒否していて、今回のミサイル発射も、この金融制裁が予想以上に効を奏していて北朝鮮が追い詰められているからではないか、という報道があるので、米国がどういう金融制裁をしたのかを、ちょっと調べてみました。
web上の情報を見る限り、米国の金融制裁は、マカオの銀行「Banco Delta Asia(澳門匯業銀行)」に対するもの(だけ?)の様子。
米財務省のリリースは下記のとおり。(September 15, 2005)
USA PATRIOT ActのSection 311により、Banco Delta Asiaを「primary money laundering concern」に指定した、とあります。

Treasury Designates Banco Delta Asia as Primary Money Laundering Concern under USA PATRIOT Act
http://www.treas.gov/press/releases/js2720.htm
The U.S. Department of the Treasury today designated Banco Delta Asia SARL as a “primary money laundering concern” under Section 311 of the USA PATRIOT Act because it represents an unacceptable risk of money laundering and other financial crimes.
(中略)
Deficiencies at Banco Delta Asia noted in the finding include, but are not limited to, the following:

  • Banco Delta Asia has provided financial services for over 20 years to Democratic Peoples Republic of Korea (DPRK) government agencies and front companies. It continues to develop relationships with these account holders, which comprise a significant amount of Banco Delta Asia’s business. Evidence exists that some of these agencies and front companies are engaged in illicit activities.
  • Banco Delta Asia has tailored its services to the needs and demands of the DPRK with little oversight or control. The bank also handles the bulk of the DPRK’s precious metal sales, and helps North Korean agents conduct surreptitious, multi-million dollar cash deposits and withdrawals.
  • Banco Delta Asia’s special relationship with the DPRK has specifically facilitated the criminal activities of North Korean government agencies and front companies. For example, sources show that senior officials in Banco Delta Asia are working with DPRK officials to accept large deposits of cash, including counterfeit U.S. currency, and agreeing to place that currency into circulation.
  • One well-known North Korean front company that has been a client of Banco Delta Asia for over a decade has conducted numerous illegal activities, including distributing counterfeit currency and smuggling counterfeit tobacco products. In addition, the front company has also long been suspected of being involved in international drug trafficking. Moreover, Banco Delta Asia facilitated several multi-million dollar wire transfers connected with alleged criminal activity on behalf of another North Korean front company.
  • In addition to facilitating illicit activities of the DPRK, investigations reveal that Banco Delta Asia has serviced a multi-million dollar account on behalf of a known international drug trafficker.

この銀行のホームページはこちら。
http://www.delta-asia.com/
東京の大手町(First Square East Tower)にも駐在員事務所があるとのこと。
http://www.delta-asia.com/macau/eng/branch_locations.htm
ホームページの更新は、やる気がないようで、制裁があった2005年9月以降は、リリースすら載っていません。(日本だったら、「このたびは、多大なご迷惑をおかけし・・・」みたいなリリースが必ず載ると思うんですが。)
アニュアルレポートも、2004年度分までしか開示されてませんが、その2004年度版を見てみると、
総資産:4,204,202千HK$(630億円)
自己資本:485,006千HK$(72億円)
Interest income:127,136千HK$(19億円)
Other operating income:109,160千HK$(16億円)
純利益:59,849千HK$(9億円)
ということで、日本で言うと中くらいの信用組合以下の規模です。
この財務諸表、一応、PWCさんが監査して適正意見を出してるんですが(14ページ)、北朝鮮に協力した収入が(さすがに全部じゃないとして)、売上(Other operating income)の20%だとしても、3億円???
たかだかその程度のフィーのために、マネーロンダリングや偽札の流通に協力してたんでしょうか?帳簿に載らないところで、そういうことをやってたということですかね?
また、「この程度の」銀行を押さえられただけで、北朝鮮は身動きが取れなくなってしまうんでしょうか?
これなら、2002年3月に足利銀行が北朝鮮の銀行とのコルレス契約を解除した影響の方が、ずっと大きかったような気もしますが、当時(2002/03/28)の日経朝刊7ページの記事を見ると、

足利銀、北朝鮮向け送金を停止
 足利銀行は二十七日、四月中に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)向けの外国為替業務を停止すると発表した。北朝鮮の七金融機関との間で送金業務などコルレス(代理店)契約を解消する。一九七九年から北朝鮮の金融機関と契約を結んで送金を始め、現在は年間一億円の実績がある。国際業務見直しの一環で「政治的背景はない」(本部審議室)と説明している。
 送金額はピーク時の九六年度には約十億円に達していた。(以下略)

ということで、これも、たいした金額じゃなかったんですね。
つまり金額から見ると、米国や日本が本気で怒ったら、あっという間に息の根が止まってしまうくらいのもんだけど、「いろいろ考えて」で、あえて「生かしている」という気もしてきます。
(ではまた。)
ご参考:
外務省の北朝鮮に関する基礎データ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/data.html
GlobalSecurity.orgのミサイル発射サイトに関する記事(写真付)
http://www.globalsecurity.org/wmd/world/dprk/no_dong-imagery.htm

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