週刊isologue(第182号)「海商法」でベンチャーの源流を考える(後編)

先週に引き続き、今週は「旅客運送」から商法海商編の最後までを取り上げます。

現行の海商編の条文が明治の商法施行後にどのくらい変わってきたかですが、「体系海商法」(P27)によると、

明治四四年の商法改正に際して海難救助に関する一章が新設追加されたほかは、昭和五〇年に「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」(船主責任制限法)の制定に伴い関係諸規定が改廃されたこと、および昭和五四年に民事執行法の制定に伴い商法六八九条の船舶仮差押に関する部分の規定が改正されたことぐらいで、それ以外の数次の改正は、単に法規の体裁を整備するための形式的な改正にすぎなかった。

とのことなので、なんと、この商法海商編の条文はほとんど明治から変更されて無いようです。古代の地層がたまたま地表に表れている場所を見つけた古生物学者が小躍りして喜ぶように、この海商編を読むと、一種のタイムスリップを体験することができるんじゃないかと思います。

 

目次とキーワード:

  • 「タイタニック」とほぼ同時代にできた「旅客運送」の規定
  • 「何かを助けるために意図的に何かを犠牲にする」—共同海損!
  • 海難救助のインセンティブと制度設計
  • 海から生まれた「保険」
  • 船舶を目的物とする先取特権

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週刊isologue(第181号)「海商法」でベンチャーの源流を考える(前編)

秋の連休シーズンなので、日常の陸の世界からちょっと離れて、商法の「海商編」を取り上げてみたいと思います。

司法試験でも公認会計士試験でも、商法第三編「海商」の部分は試験範囲から除外されてますので、私は「試験範囲に入ってないということは、よっぽどショーモナい法律なんだろな」と思ってました。(すみません)

ところがよく読んでみると、(特に昔の)海商というのは「ベンチャー」そのものです。極めてリスクの高いビジネスにおいて、リスクにもめげずに資金調達をしたり、そのリスクの中で意思決定したり、リスクをコントロールしたりする工夫の積み重ねが法律という形に結実しているわけで、その昔のベンチャーの、荒削りだけど本質的なしくみを見ることは、現代のベンチャーに関わる人達にとっても、大いに刺激になるのではないかと思います。
(すべての法律の中で、最もロマンをかき立てられます!) 

海商の歴史を考える上で「ベンチャー」以外のもう一つの隠れたキーワードは「情報通信」です。今は世界中どこにいても衛星等を使って即座に陸地と連絡が付きますが、電信の発明される前は、せいぜい旗などで通信していたわけで、船長は本社(船舶所有者)や「上司」などに相談する「サラリーマン」ではなく、荒れ狂う海の中で強い権限と責任を持って独立して判断を下す「ベンチャー経営者」としての存在でした。
現代の船舶は、GPSや衛星通信等の通信装置で、台風の位置や船の居場所もわかるしコミュニケーションも取りやすくなっていますが、こうした情報通信技術の発達により、この50年ほどで船長の位置付けや海のビジネスのリスクの構造などは大きく変わって来ました。

今週と次週の2回にわたって、この「海商」編の条文をもとに、法律の解説というよりはビジネスやファイナンス的な観点から考えてみたいと思います。

 

目次とキーワード:

  • 非常に金額がデカくてリスクが高い設備投資
  • 「ファンド」の元祖?:船舶の共有
  • 手厚い買取請求権、exit可能性の保護
  • 船長の「誰の命令も受けずに独立して判断する権限、責任」

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海とわんことビジネスと【第2回】「海の管制塔」東洋信号通信社で旗の謎に迫る

11日から始まったcakes(ケイクス)での連載「海とわんことビジネスと」の第2回。
今回から本格的にマニアックになってきますw!

『海の管制塔』東洋信号通信社で旗の謎に迫る

(cakesは週150円でコンテンツ見放題のサービスです。)

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「cakes」オープンしました!

Femto Startup投資先のピースオブケイクのサービス「cakes」が本日オープンしました!
cakesは週150円で読み放題のサービスです。

茂木健一郎、津田大介、大槻ケンヂ、藤野英人、岡田斗司夫、finalvent、三田紀房、山本一郎、川上慎市郎(R30)、田端信太郎、橘玲さんといった方々のコンテンツの他、

ケトル、ジセダイ by 星海社新書、週刊アスキー、週刊ダイヤモンド、少年タケシ、モーニングといったメディアのコンテンツも読めます。

時間限定無料コンテンツなどもありますよ。

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私も「海とわんことビジネスと」という連載を開始しました。

わんこと海ぎわを散歩して出会った海のビジネスから、いろいろヒントをいただこうという企画。 今回からはまず、かつては数少ない情報通信手段の一つだった「旗」の魅力に迫ってみました。 

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このわんこが目印。:-)

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週刊isologue(第180号)電子出版戦争前夜:Amazonと楽天の戦いを財務面から考える

日本ではAmazonのKindleに先行して楽天が「Kobo」をリリースしました。

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しかし、「『世界のAmazon』が日本でKindleをリリースしたら、楽天のKoboなんてイチコロでしょ?」と思ってる方も多いかもしれません。
今回は、この戦いがどうなるか、テクノロジー等ではなく、財務的な観点からざっと考えてみたいと思います。

 

目次とキーワード:

  • Kobo社買収の概要
  • Koboのネット上でのポジション
  • 楽天は「ネットショッピングの会社」か?
  • Amazonと楽天はどちらが儲かってる?
  • 本当の敵は誰か?

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週刊isologue(第179号)スタートアップの資金調達は「転換株式」で決まり!?

先週から「convertible equity」というコンセプトが一部で話題になっています。

米国のベンチャー支援組織とシリコンバレーの大手弁護士事務所の弁護士が協力して、このconvertible noteの欠点を補った「convertible equity」のひな型を8月31日に発表し、同日、TechCrunch、Forbes、Fortuneといったメジャーな媒体でも取り上げられました。(事前にきちんと広報的な動きをしたものと想像されます。)

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現在アメリカのエンジェル・ラウンドでの資金調達の50%はconvertible noteで行われているそうですが、これがもし、米国の税法や米国(デラウェア州)の会社法上などで本当に問題がないものなのだとしたら、恐らく今後シリコンバレーを始めとする米国スタートアップの資金調達では、convertible noteは使われなくなり、convertible equityが台頭するんじゃないかと想像されます。

日本では、こうしたエンジェルやインキュベーター向けの投資ツールの決定版がありませんでしたが、日本版convertible equityを考えてみると、思わず「なんでこの手に気付かなかったんだ!」と言ってしまうくらい、シンプルで実現可能性が高いもののようにも思えます。

ということで、今回はこの「convertible equity」が日本でも使えるかどうかについて考えてみたいと思います。
(追記:結果として、種類株式を使うこの回のアイデアはあまりよくなかったかも。普通株式を使ったよりシンプルなアイデアは、こちら(第205回)をご覧下さい。)

目次とキーワード:

  • convertible equityの、ひな型
  • convertible noteのメリット・問題点
  • 日本版convertible noteの問題点
  • convertible equityのメリット
  • 「convertible security」は「転換株式」か?
  • 「負債」「資本」とは何ぞや?
  • 日本でのインプリ上の課題
    ・受贈益?
    ・DESできるか?
    ・金融商品取引法上、どういう扱いになるか?
  • 日本版convertible equityのタームシート案

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「the incubator」にインタビュー記事が掲載されました

株式会社ビジネスバンクグループの”起業家のための起業家支援者を紹介するサイト”、the incubatorに私めのインタビュー記事を掲載していただきました。

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  • どのような起業家支援を行っていますか?
  • 最近の企業環境について何か考えはおありですか?
  • ずばり!資金調達のコツとは?
  • 尊敬する人は?(ω)

などの内容です。

(ご参考まで。)  

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