中国のヤミ金融と「発展段階ごとの規制」

今週の日経ビジネス(2004.11.22号)の記事、「預金者の銀行離れを防ぐ必死の策か−中国、利上げの深層」(BusinessWeek提携記事)より。
中国の銀行預金の金利は、

10月の利上げ後でも、期間1年の定期預金の金利はたかだか2.25%と、インフレ率の5%を下回る。

と、マイナス金利状態なのに対し、民間の(地下)融資市場は、

厳密に言えば、すべて違法だが、グレーな市場がどんな融資を実行するにせよ、貸し手は8〜20%の利回りを得られる。
20%という貸し出し利回りは、どんな時代でも預金金利を上回る。CSFBのドン氏の資産によると、8月と9月の2ヶ月間でざっと170億ドルの預金−中国のGDP(国内総生産)の1.2%に相当−が公式の銀行から引き出され、ほかへ投資された。

ということで、すごい勢いで「ヤミ市場」に資金が流れ込んでいる模様。
対する銀行は、

今後12ヶ月間で2ポイントほど金利を引き上げる(政府高官らは、その間インフレ率は3%程度まで低下すると予想している。)

ということですが、そううまくいくかどうか、というところ。
見方を変えれば、こうした「ヤミ」市場が発生するのは、(コンプラ的にはともかく)、「経済」としては元気な証拠ではないかと思います。もし、需要も供給も存在するのに、その間に国営銀行がどーんとのさばって、しかるべきところに資金が流れず経済が落ち込んでいくというのは完全に硬直化した経済でしょうけど(他の旧共産主義国は概ねそうなんじゃないでしょうか。)、中国の場合、ちゃんと「オルタナティブな資金供給手段」が生まれてきて、それがちゃんと機能して競争原理が働いているわけで。

国営企業が4大国営銀行から安くカネを借り、その現金より高い金利で民間の借り手にまた貸しすることもザラにある。

というしたたかさ。おまけに、

もう1つ、グレーな融資市場の驚くべき側面は、その相対的な健全さである。(中略)どんな調査報告を見ても、非公式融資のデフォルト(債務不履行)率は非常に低い。貸し手と借り手は通常、仕事上の取引や学校、地域社会を通じてお互いをよく知っている。
また、しばしば親族が担保を差し出すため、デフォルトはまず考えられない。「カネを出した親族がメンツを失うからだ」(CSFBのドン氏)。

ということで、融資スキームの柔軟性だけでなく、審査能力や融資システムの効率としても、「ヤミ」の方が効率がよさそうですね。
以前、「グラミン銀行と小規模融資のビジネスモデル」でも書きましたが、日本でも昔は、「無尽」(講)が日本のあちこちにあり、これが相互銀行になり、第二地銀になってきたわけです。このアナロジーで考えると、中国でも、こういう「ヤミ金融」を法律違反と目くじらを立ててツブしにかかるよりは、むしろ合法化して表に出してやる政策を取る方が、より「毛細血管」が発達し、体(国)も大きくなれるんじゃないでしょうか。
ちなみに、私はもちろん「ヤミ金融万歳」と言ってる訳じゃなくて、経済のフェーズによって、経済のプラスになる規制のしかたは異なってくるんじゃないか、と申し上げているわけです。
今の日本で、消費者や零細企業向けの融資を行う(貸金業登録していない)ヤミ金融には、ほとんど「社会的」メリットは存在しないと思いますが、一方で、仮に米国がヘッジファンドを規制する時期にきているとしても、日本もそうかというとどうなんでしょうか。
証券自由化後5年しか立っていない「共産主義から資本主義に転身中」の日本において、証取法等の改正をしてファンドビジネスに対する締め付けを強化することは、証券自由化後数年でせっかく育ちかけた「毛細血管」を詰まらせてしまうことになるんじゃないか、とも危惧しているんですが、どう思われます?
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

堤義明氏への「怨念〜」(完結編)

昨日のエントリーに関連して、いつもご愛読いただいている<(_ _)>某マスコミの方からメールいただきました。
ちょうど今、西武鉄道問題を取材されているそうで、曰く、
「義明氏は父親のお墓参りにもヘリコプターで行くらしいのですが、そのとき、あの利益供与事件で捕まった総会屋の家の墓の上を爆音を轟かせて飛んだそうで、それに怒った総会屋が西武鉄道を攻め、利益供与事件になり、ガサ入れとなって、結果として名義貸し問題が露呈することとなり上場廃止に追い込まれた、という経路があったわけで、「怨念」が今日の問題につながっていると言う磯崎さんのご指摘はまさに正しいと思います。」(要旨)
とのこと。
うーん。書いた本人がビックリというか(笑)、やっぱりというか・・・。
Google等で調べると一部では有名な話のようですが、総会屋の付け入るきっかけの理由がヘリだったというのは普通のマスコミでは驚くほど記事になってなくて、新聞記事検索をしても、下記の今年10月11日朝刊の読売新聞の記事1つだけ。日経、朝日や毎日等では記事になってないようです。(別に記事にするような内容ではないと言えばそれまでですが。)

西武鉄道利益供与 「ヘリで墓参り」に言いがかり、「おわび」深みに
 私鉄大手「西武鉄道」が、土地売却を偽装して総会屋に資金提供していた商法違反事件。同社と総会屋双方の計十六人(うち一人は死亡)が起訴され、すでに十四人の有罪が確定した。同社が総会屋との関係を深めたのは、右翼関係者との不透明な土地取引がきっかけだったとされる。捜査では疑惑が解明されなかった、その闇の実情を知る右翼団体の元幹部(70)が、重い口を開いた。
(中略)
 西武鉄道とのつながりの発端は一九八三年ごろ。同社の当時の最高幹部が、神奈川県内の霊園にヘリコプターで訪れた。ここに親族の墓がある元幹部は、それを知ると「墓の上を騒がしく飛びやがって」と、同社に言いがかりをつけた。

83年にインネンつけられていながら、それでもヘリに乗るのはやめなかったわけですね。
あれ、実際にヘリから見下ろされた人でないとわからないと思いますが、あの爆音というか、上と下というわかりやすい位置関係というか、ヘリで飛ぶのにかかっているであろうコストと地上の私のお金のかかってなさの対比(笑)というか、とにかく圧倒的な「見下ろされ感」があります。
(そういうのが好きな一部の方はともかく)、あれはやっぱり恨みを買うんですね・・・。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

堤義明氏への「怨念〜」

本日もかなりバタバタしてまして、以下、しょーもない話で恐縮ですが。
実は今年、我が家は大磯プリンスホテルで正月を迎えました。
おせち作るのも大変なので正月休みくらい奥さんにのんびりしてもらおうか、ということに加え、ご案内の通り、大磯プリンスの横にはショートコースが隣接していて、小学生と回るのにはちょうどよかったりしまして。(ホールの長さも、お値段も。)
正月なので餅つき大会もあって、ホテルの庭でついたつきたての餅を(タダで)いただいたりして、「(格安のパック料金だけど)おれもついにホテルで正月を迎えられる身分になったなー」と、プチ・ブルジョアな感慨に浸っていた、その時。上空より「バタバタバタバタ・・・」というヘリの轟音が。
「テレビ局が新春の日本列島の様子でも中継してるのか?」「箱根駅伝の中継か?」とも思ったものの、テレビ局なら普通1機だと思われるところ2機旋回してますし、箱根駅伝にしては西湘バイパスの上空あたりをぐるぐるいつまでも回っているので、ちょっと違うな、と。
そうしたら、同じく餅つき大会で庭に出て来ていた宿泊客一家の車いすの老婦人が、
「あれは、堤義明さんよ。堤さんはご自宅が(大磯の隣の)二宮で、都内にはヘリで通われてるの。」
と、家族にしゃべってるのが聞こえてきました。
うーん。真偽のほどはわかりませんが、堤義明氏は、ゴルフ場やリゾート建設でも「ヘリから原野を見下ろすのが山や谷の位置関係が一番わかって、施設計画も立てやすい」てなことをおっしゃっている方ですので、正月早々「ご自分の」資産をヘリから視察してるというのは、ありそうな話です。
こちらは、「シモジモがワシのホテルの庭でタダの餅をうまそうに食っとるのう」と見下されている気がして、せっかくのオトソ&プチ・リッチな気分が、いっぺんで吹っ飛びました。

P1000026(s).JPG
(思わず携帯のカメラで撮影。)

「ちくしょー、今に見てろよ」とギリリと歯ぎしりをしたのですが、それから1年弱。「こうした状況」になったのも、あのときに限らず、今まで(いろんな意味で)見下されてきた人々の「怨念の力」の蓄積のせいじゃないかと思う今日この頃であります。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

インボイス売却スキーム最終結果

昨日、インボイスさんが、
「(追加)当社の株主に付与する新株予約権の買取および売出しの実施に関するお知らせ」
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20041115.pdf
というプレスリリースを出し、「売却スキーム」の最終結果が発表されました。
これで、転換社債→即時転換→株式分割→自己株買取→新株予約権発行→売却スキーム提供、という、一連のインボイスさんのファイナンス・スキームも一段落ですね。
結果は、下の図表の通り。
image005.gif
image006.gif
(出所:両図表とも前記プレスリリースより磯崎作成)
11月14日に売却スキームの中間結果発表が行われたときに参加を表明していた株主は全体の約3分の1でしたが、最終的に参加することにしたのは、さらにその半分弱という結果となりました。
一言で言うと、
「なんだ、たった500円かよー」
という感じだったんじゃないでしょうか。
1株主当たりの個数もさらに下がって93.2個ですから、株主当たり平均46,576円。
1株あたり500円は、「おこずかい」としてはそこそこの金額かも知れませんが、権利落ち後の価格下落を埋めるにはちょっと少ないですね。
今後注目されるのは、来年9月末まで行使期間のある、発行済株式数の91.4%(!)もの前代未聞の大量な潜在株式が株価の上値にどう影響を及ぼすか。
また、(今回、売却しなかった)私の新株予約権の行使手続きになにか工夫があるかどうかというところも注目です。(もし仮に、行使できるところまで株価が上がる日が来れば、ですが。)
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「はたして小学4年生はシスアドに合格するのか?プロジェクト」始動!

本日、初級システムアドミニストレータ試験の合格発表があったようですが、
たまたま、昨日(日曜日)、うちの小学校3年の息子にパソコンのしくみの説明を求められたので、初級シスアドの解説本を見せたら、「なんだ、簡単そうじゃん」と豪語。
Google等で調べたところ、以下の通り、基本情報技術者とか初級シスアドとかは、確かに小学校5、6年生で受かってる子もいる模様です。

http://www.gdncom.jp/student/bbs/ShowPost.aspx?PostID=1420
2004-1-24
この間は小学 5 年生が FE (基本情報技術者) に受かったとのことでニュースになりましたね・・・、 頭が柔らかいうちにいろいろ勉強しておくと得ですね・・・。

http://mykit.jp/pc/furu6/keiji.php3
2003-06-10 00:44
基本情報を独学で学んで中学一年生で合格した人がいるそうです。
でもその子が最年少かと思えば小学6年生がいるそうです。。。

http://school.2ch.net/lic/kako/1012/10127/1012784146.html
02/09/24 00:26
国家資格では、 宅建主任者の最年少合格者は、15歳の中学生。
複数いるよ。
情報技術者初級シスアドは、小学6年生。
基本情報技術者は、中1。

次回の初級シスアド試験は来年4月で、息子は(留年しなければ)小学4年生。
まだ漢字もろくに書けないので論文がある試験は絶望的、面接があってもアウトだと思いますが、初級シスアドだとマークシートだけですから、確かに合格の可能性はゼロではありませんね。
また、初級シスアドは「コンピュータシステムをつくる側の人」の試験ではなく、「利用する側で知っておくべきこと」を問う試験なので、コンピュータのことだけでなく、「事業部制」などの組織論とか、「損益計算書の表示」とか、統計的なものの考え方だとか、社会に出てから役に立ちそうな項目がバランスよく入っているので、受からなくても役に立つかも知れませんし。(少なくとも「アサガオのツルは右巻きか左巻きか」てなことを無理矢理覚えさせて「お受験」させるよりは、はるかに役に立ちそう・・・。)
「小学校4年で受かったら、史上最年少かもよ。」と息子に言ったら、(「え〜。だったら、そんなの無理だよー」というかと思いきや)、「よっしゃー!燃えてきた。ついでにトップ合格も目指すぞ!」だそうです。(苦笑)
ということで、(明日には消滅しているかも知れませんが)、「はたして小学4年生はシスアドに合格するのか?プロジェクト」が昨日より我が家で始動いたしました。
以前、swさんに伺った「米国の法律相談サイトで人気No.1になった回答者が、実は小学生だった」という事例をご紹介しましたが、
検索エンジンなどIT技術の発達で、システムのみならず、弁護士、会計士、税理士といった専門知識サービス関連のビジネスというのは、今後、大きな変貌を遂げるのではないかという問題意識を強く持っておりまして、そういった観点からのプロジェクト始動、であります。
とりあえず、ご報告まで。

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

インボイス「売却スキーム」の中間結果発表

インボイスの新株予約権への申込や、売却スキームへの参加人数等が発表になりました。

11/11 (訂正)「(追加)当社の株主に付与する新株予約権についてのお知らせ」
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20041111.pdf

11/12 (追加)当社の株主に付与する新株予約権の買取および売出しの実施に関するお知らせ
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20041112.pdf

要約すると、下の図表の通りとなります。
image002.gif
image004.gif
(出所:両図表とも前記プレスリリースより磯崎作成)
現在の株主は、81,283人で1人あたり約100株を保有しているわけですが、今回、新株予約権は、(タダでもらえるのにも関わらず)、約27%、2万人以上の人が申し込まなかったわけです。
ただし、申込個数は91.4%ですから、(当たり前ではありますが)大口の株主の人の申込率は高かった、ということですね。
「売却スキーム」への参加希望者は、さらに下がって約32%。
こちらは、単価が申込者全員の単価の4分の3程度にグッと下がりますので、逆に、申し込んだ中でも小口の投資家の方中心に売却ということに見えます。(一部売却も可能なので、大口の方が半分だけ売却を希望、というようなこともあるのかも知れませんが、後から売却の取り消しや数量の削減も可能なので、申し込むなら全個数を売却希望で申し込む方が多かったのではないかとは思うのですが。)
で、12日には、当日午後6時現在の入札の状況が発表になりました。
1. 買取価格(売出価格) : 500円 (新株予約権1個のあたりの価格)
2. 売却申込個数: 1,632,113個 (株主からインボイスへの売却申込個数)
3. 買取申込個数:6,895,072個 (証券会社の買取希望個数)
需要の方が弱いんじゃないかと想像してましたが、なんと、4.2倍も多かったですね。
価格は500円。(rudyさんの予想ドンピシャ。)
申し込んだ方の個数からすると平均一人5万円弱。
この価格をどうやって決めたのかが知りたいところ。
この「売却スキーム」は、こうした価格や需給を見て、需給が均衡する点を探すというようなしくみではないので、これを見ても「ふーん」というしか無いわけですが。
前述のとおり、今後、まだ14日の17時までは売却の取り消し、数量の削減はできるので、「念のため」売却を申し込んでおいた人で、「なら、新株予約権として持っておくか」と、取り消す人も多いかも知れません。
最終的な売却申込者の数に注目!ですね。
500円って、値段も「宝くじ」くらい。(笑)
あと10ヶ月以上楽しめる(アメリカン・オプションな)500円の「宝くじ」を、500円で売ろうという人は少ないかも知れません。
で、私は売却取り消し
というわけで、www.so.invoice.ne.jp/から売却を取り消すことにしました。
下記の画面で「ログインページ」のボタンを押して進み、
invoice_baikyaku_B0(s).jpg
先日作成された「売却キット」のPDFに書かれていた、ユーザーIDとパスワードを入れると、
invoice_baikyaku_B1(s).jpg
この画面が出ます。
invoice_baikyaku_B2(s).jpg
「1個」(全個数)を入力して「次へ」に進むと、
invoice_baikyaku_B3(s).jpg
こうなって、
invoice_baikyaku_B4(s).jpg
売却キャンセル完了、となります。
invoice_baikyaku_B5(s).jpg
(おしまい。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

証取法(施行令)改正パブコメの結果

以前は、一般の人は、証券取引法というものが存在することくらいは知っていても、まああまり興味のわく対象ではなかったと思いますが、最近は、西武や日本テレビ、メディア・リンクスの架空取引にライブドアなども関与?というようなことで、証券取引法関連の事件が連日、マスコミの紙面に踊っているので、結構、関心が高まってきているのではないかと思われる(?)今日この頃ですが、
そんな中、昨日(平成16年11月12日)付で金融庁から、「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対するパブリックコメントの結果について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041112-2.html
が公表されました。
平成16年10月7日の「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041007-2.html

(1) 目論見書制度の合理化
(2) 公開買付制度の改正
� 公開買付制度への投資証券の導入
� 「3分の1ルール(強制的公開買付制度)」の適用除外要件の拡大等
(3) 投資事業有限責任組合等の出資持分の証取法上の有価証券への追加
等)

を受けたもの。
具体的な、証券取引法施行令の改正案は、以下の通り。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041007-2/02.pdf
以下、提出されたコメントの概要と、コメントに対する金融庁のコメントが書かれてましたので、これらのコメントやコメントに対するコメントに対するコメントを書いておきます。

【令第1条の4】
 みなし有価証券化される投資事業有限責任組合法第3条所定の事業を営む組合の出資持分に関しては、現行の投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条で定める者を、(1)定義府令第4条の適格機関投資家の範囲に追加するか、(2)証券取引法施行令第1条の4第1項の場合における人数計算から除外するか、のいずれかの方法をとることが実務上必要かつ適切である。

(考え方)
 適格機関投資家は、証券取引法において「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」とされ、投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条で定める者(適格機関投資家を除く。)をそのまま証券取引法上の適格機関投資家とすることは困難である。

「令第1条の4」は、証券取引法第2条第3項第1号の「有価証券の募集」の定義で、「勧誘の相手方が多数の場合」の定義を原則として「50名以上」とし、この人数計算等について細かく定めている規定。
「投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条」というのは、
「投資事業有限責任組合契約に関する法律」第六条の二第一項、

(特定組合の組合員の資格等)
第六条の二  特定組合(組合のうち、特定中小企業等に該当する株式会社の発行する未公開株式(証券取引法第二条第十六項に規定する証券取引所に上場されておらず、かつ、同法第七十五条第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)の取得及び保有その他の政令で定める事業(以下「中小未公開企業株式取得等事業」という。)の全部又は一部のみを営むことをその組合契約において約した組合以外のものをいう。以下同じ。)の有限責任組合員たる資格を有する者は、同法第二条第三項第一号に規定する適格機関投資家その他の政令で定める者とする。

で定められる「特定組合」の投資家になるための要件として、

(特定組合の組合員の資格を有する者)
第十三条  法第六条の二第一項 の政令で定める者は、次のいずれかに該当する者とする。
一  適格機関投資家
二  資本の額又は出資の総額が一億円以上の会社
三  民法第六百六十七条第一項 に規定する組合契約で投資事業を営むことを約するものによって成立する組合(その組合員のすべてが前二号又は次号から第七号までに掲げる者であるものに限る。)及び匿名組合契約に係る営業者(投資事業を営む者であって、当該営業者を相手方としてその投資事業のために匿名組合契約に基づく出資をする者のすべてが前二号又は次号から第七号までに掲げる者であるものに限る。)
四  私立学校法 (昭和二十四年法律第二百七十号)第四条第三号 及び第五号 に掲げる学校法人
五  外国の法令上前各号に掲げるものに相当する者
六  外国に所在する投資事業有限責任組合に類似する団体
七  中小企業総合事業団
八  当該特定組合の無限責任組合員が法人である場合におけるその役員及び使用人

等があげられているので、この条文の(適格機関投資家以外の)投資家も、「証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」第4条に定める適格機関投資家、つまり、

(適格機関投資家の範囲)
第四条  法第二条第三項第一号 に規定する内閣府令で定める者(以下この条において「適格機関投資家」という。)は、次に掲げるものとする。ただし、第一号から第十四号の二まで、第十六号、第十八号、第二十号、第二十号の二及び第二十二号から第二十四号までに掲げる者については金融庁長官が指定する者を除き、第十五号に掲げる者については金融庁長官が指定する者に限る。
一  証券会社
二  外国証券業者に関する法律 (昭和四十六年法律第五号)第二条第二号 に規定する外国証券会社(第八条の二において「外国証券会社」という。)の同法第二条第八号 に規定する支店
三 投資信託及び投資法人に関する法律 (昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十八項 に規定する投資信託委託業者
三の二 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十九項 に規定する投資法人
三の三 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第二十九項 に規定する外国投資法人
四  銀行
五  保険会社
六  保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第七項 に規定する外国保険会社等
七  信用金庫及び信用金庫連合会並びに労働金庫及び労働金庫連合会
八  農林中央金庫及び商工組合中央金庫
九  信用協同組合及び信用協同組合連合会並びに業として預金若しくは貯金の受入れ又は共済に関する施設の事業をすることができる農業協同組合連合会
十  有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律 (昭和六十一年法律第七十四号)第二十四条第一項 の認可を受けた業者
十一  日本郵政公社法 (平成十四年法律第九十七号)第二十四条第三項第四号 に規定する郵便貯金資金又は同項第五号 に規定する簡易生命保険資金の管理及び運用をする者
十二  財政融資資金の管理及び運用をする者
十三  年金資金運用基金
十四  国際協力銀行
十四の二  日本政策投資銀行
十五  業として預金又は貯金の受入れをすることができる農業協同組合及び漁業協同組合連合会
十六  令第一条の九第四号 に掲げる者(法第六十五条の二第一項 の規定により登録を受けたものに限る。)
十七  銀行法施行規則 (昭和五十七年大蔵省令第十号)第十七条の三第二項第十二号 に掲げる業務を行う株式会社(当該業務を行う旨が定款において定められ、かつ、最近事業年度の末日における資本の額が五億円以上である場合に限る。)のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
十八  投資事業有限責任組合契約に関する法律 (平成十年法律第九十号)第二条第二項 に規定する投資事業有限責任組合
十九  厚生年金基金(最近事業年度に係る年金経理に係る貸借対照表(厚生年金基金令 (昭和四十一年政令第三百二十四号)第三十九条第一項 の規定により提出されたものに限る。)における流動資産の金額及び固定資産の金額の合計額から流動負債の金額、支払備金の金額及び過剰積立金残高の金額の合計額を控除した額が百億円以上であるものに限る。)のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)及び厚生年金基金連合会
二十  都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第二十九条第一項第二号に掲げる業務を行うものとして同項の承認を受けた者(同項第二号に掲げる業務を行う場合に限る。)
二十の二  株式会社産業再生機構
二十一  有価証券報告書(法第二十四条第一項 に規定する有価証券報告書をいう。以下この号、第二十四号及び第三項において同じ。)を提出している者(企業内容等の開示に関する内閣府令 (昭和四十八年大蔵省令第五号)第一条第二十号の二 に規定する内国会社に限る。)で、毎年七月一日におけるその者の最近事業年度及び当該事業年度の直前事業年度に係る有価証券報告書に記載された貸借対照表における有価証券(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 (昭和三十八年大蔵省令第五十九号。以下この号及び第二十四号において「財務諸表等規則」という。)第十七条第一項第四号 に掲げるものをいう。第二十四号において同じ。)の金額及び投資有価証券(財務諸表等規則第三十二条第一項第一号 に掲げるものをいう。第二十四号において同じ。)の金額の合計額が百億円以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
二十二  外国の法令に準拠して外国において次に掲げる業を行う者(個人を除く。)で、この号の届出の時における資本若しくは出資の額又は基金の総額がそれぞれ次に定める金額以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
イ 証券業 一億円
ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項 に規定する投資信託委託業又は同条第十七項 に規定する投資法人資産運用業 一億円
ハ 銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第二項 に規定する銀行業 二十億円
ニ 保険業法第二条第一項 に規定する保険業 十億円
ホ 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律第二条第二項 に規定する投資顧問業(同条第四項 に規定する投資一任契約に係る業務に限る。) 一億円
二十三  外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国の中央銀行及び日本国が加盟している国際機関のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
二十四  有価証券報告書を提出している者(企業内容等の開示に関する内閣府令第一条第二十号の三 に規定する外国会社に限る。)で、毎年七月一日におけるその者の最近事業年度及び当該事業年度の直前事業年度に係る有価証券報告書に記載された財務書類(財務諸表等規則第一条第一項 に規定する財務書類をいう。)における有価証券に相当するものの金額及び投資有価証券に相当するものの金額の合計額が百億円以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)

の中に入れてくれ、ということを言っているわけですが、それに対して金融庁側は、「学校法人や投資組合だからといって必ずしも「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」というわけじゃないだろうから、(「適合性の原則」的に考えて)、「ダメ」、とおっしゃってるということですね。
パブコメを出した方は、恐らくVC等の「資金を調達する側」の方ではないかと思いますが、金融庁側としては、証券取引法にそれを入れてしまうと、他の私募等にも全部、(よく投資とかがわかっていない)学校法人等も入って来ちゃうので、やめてくれ、ということかと思います。
「なるべくベンチャー投資や企業再生を促進したい」という「経済産業省的観点」の有限責任組合法 vs 証券取引法、という構図とも言えます。

【令第1条の5第1号】
 外国投資法人について、その設立準拠法ではなく、日本の証券取引法により、投資主の平等原則である強制公開買付けの規定の適用を及ぼすという政策は正しいのか。外国株については適用されているので、同じということなのか。
 外国投資法人については強制公開買付け制度の適用除外とし、他方、外国法で公開買付けが必要である場合又は当事者が必要であると判断した場合には公開買付けを選択できるようにし、選択した場合には日本の証券取引法を適用するということはできないのか。
(考え方)
外国株券等と同様、外国投資証券であっても有価証券報告書を提出しなければならない投資法人が発行するものであれば日本国内に多数の投資者が存在すると考えられるため、投資者の平等原則及び投資者保護の観点から、公開買付制度の適用対象とするもの。

「令第1条の5第1号」は、「適格機関投資家向け勧誘に該当する場合」について定めたもの。
これらは、外国投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第220条)に関して日本国内で募集を行う方が、何か不便を感じてらっしゃるのではないかと思いますが、よくわかりません。

【令第7条第3項第2号】
 外国投資法人の投資主としての議決権行使の権限は、「公開買付者の所有」に含まれていないと理解して良いか。
(考え方)
 外国投資法人の投資主(=社員)も含まれるよう措置したもの。
(参考)投資信託及び投資法人に関する法律上「投資主」は投資法人の社員と定義されているため、外国投資法人の投資主に当たる者を「社員」としたもの。

「令第7条第3項第2号」は、公開買付けの適用除外となる買付け等のうち買付後でも5%以下の所有割合になる証券取引法第27条の2第1項第3号の規定で、所有と同等の定義となるケースを定めた規定。

【令第7条第5項第1号】
 公開買付けの適用除外となる買付け等には、特別関係者のみならず同項第2号及び第3号に掲げる「他の法人等」及び「当該他の関係法人等」が保有しているものも加えるべきだと思われる。20%の資本関係と兄弟会社とで前者の方が結びつきが強いとは思えないのが理由である。
(考え方)
 これまでは、自己名義で総株主の議決権の100分の50以上を所有している会社の株券等を著しく少数の者から買い付ける場合は公開買付けの適用除外とされていた。これに対し、強制公開買付制度については、公開買付者とその特別関係者の株券等の買付け後の株券等所有割合が3分の1を超える場合は公開買付制度が適用されている。
 このこととのバランスを考慮し、機動的な企業組織の再編等を可能とする観点から、「総株主の議決権の100分の50以上」についても、公開買付者とその特別関係者が所有する株券等に係る議決権により判断することとしたもの。

「令第7条第5項第1号」は、公開買付けの適用除外となる議決権の50%以上を持っている者が「特定買付け等」をする場合について定めたもの。

【令第7条第5項第2号】
 現行の第2号ロ(祖父母会社からの買付け等)は削除されているが、特別関係者に祖父母会社が含まれるので、不必要であるから削除したのか。
(考え方)
 貴見のとおりである。
【令第7条第5項第3号】
 投資口の定義に外国投資法人の投資証券も入れるべきである。
(考え方)
 貴見のとおりであり、外国投資法人の投資証券も含まれるよう措置した。
(注)「投資口」は証券取引法施行令第7条第5項第1号において外国投資法人の社員の地位を含めて定義している。
【令第7条第5項第6号】
 営業譲渡が強制的公開買付けの規定の適用除外として明記される一方で現物出資が明記されていないのは、現物出資が合併や株式交換と同様「有償の譲受け」に該当しないとされているという趣旨か、それとも合併や株式交換と異なり「有償の譲受け」に該当するという趣旨か。
(考え方)
 証券取引法上、現物出資による買付けは「有償の譲受け」に該当するものと解されており、公開買付けの対象となる。同法第27条の2第3項及び同令第8条第2項では、公開買付けが金銭以外のものをもって対価とする場合について規定している。

営業譲渡される「営業」が公開株式を保有していてそれがくっついて来ちゃう場合、ということでしょうか。
現物出資ならダメで、営業譲渡ならいいんですね・・・。

【令第7条第5項第7号】
 現行の第6号は、売出しに応じて買う場合、届出又は発行登録した場合にのみ強制公開買付けの適用が除外されているが、通常、強制公開買付けの適用のある有価証券については、開示されている有価証券の売出しとなり、届出義務が免除されている。有価証券通知書が提出されるこのようなケースも適用除外すべきだと思われる。ディスクロージャーという観点では目論見書の作成・交付は義務付けられているので、差はないと思われる。
(考え方)
 有価証券届出書又は発行登録追補書類が提出されている株券等の売出しに応じて行う株券等の買付け等が公開買付けの適用除外とされている理由は、既に有価証券届出書又は発行登録追補書類が提出され、当該株券等の買付け等の情報が当該株券等の株主を含む広く一般に開示されているからであり、その情報が広く開示されない有価証券通知書が提出されている株券等の買付け等を公開買付けの適用除外とすることは、目論見書の作成義務がかかっていても適切ではないと考える。

「令第7条第5項第7号」は、現行の第6号で、売出しに応じて行う場合には、届け出等が行われている場合に限りOKというもの。(番号ズレだけで、今回中身は変更無し。)
(以 上)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

上場ベンチャー投信とベンチャーの出口戦略

ちょっと、上場ベンチャー投信について調べてみる機会がありました。上場しているベンチャー投信は、「投資信託及び投資法人に関する法律」「投資法人」を用いてその投資証券を上場しているものです。つまり、上場REIT(不動産投信)のベンチャー投資版、ということですね。
大阪証券取引所に以下の2銘柄が上場しています。
ベンチャービジネス投資法人投資証券(8720、三井住友系)
ベンチャー・リヴァイタライズ証券投資法人8721、ソフトバンク系)
時価が帳簿価格を下回る!
ところが、どちらの投信も、マーケットで付いている時価が、帳簿価格や第三者の算定による参考評価額をはるかに下回っており、時価総額も上記の投信で、それぞれ29億円、28億円にしかなっていません。(下図参照。)
venture-toushin_suii.jpg
(出所:ベンチャービジネス証券投資法人ウィークリーレポート
この理由として考えられるのは、以下のような点でしょうか。
(1) 機関投資家が投資しにくいサイズ
REITだと大半は時価総額1千億円以上になってますので、サイズとして機関投資家も買いやすいですが、ベンチャー投信のように30億円を切ると、ちょっと機関投資家の投資対象として検討しにくいかと思います。
(2) 商品の性質がわかりにくい
またREITは、不動産という安定的なキャッシュフローを生む資産に投資してますので、商品性も非常に分かりやすいのに対し、「ベンチャー株式」となると、その性質もいろいろなので、そのパッケージがどういう性質を持つのかは直感的にはわかりにくい。要は、将来へ向けた成長性に賭けるしかないわけですが、顕在化している指標(利益とか売上とか)ではそれも見にくい。投資しているベンチャーも一般の人は聞いたことが無い企業がほとんど。
つまり、一種の「コングロマリット・ディスカウント」的に、何の寄せ集めかがよく理解できないことによって、評価が実態以上に低くなっているということがあげられるかと思います。
(3) 一般の人の目に触れにくい
上場投信が2銘柄しかないのも一般投資家に性質がわかりにくい理由でしょう。
新聞の株式欄でも、隅の方にちょこっと載ってるのでまず普通の人の目には触れない。
Yahoo!ファイナンスでも、株式のように、ニュース・ 企業情報・ リサーチ・レポートといった情報もなく、ただ、掲示板があるのみ。
(4) クローズド・エンド
クローズド・エンドで期限があるので、どんどん資金調達して投資して、さらに時価総額を上げて、という性質のものではない。(夢のふくらみ方が、その分少ない。)
これでは、なかなか投資しようという気にならないかも知れません。
上場VCは一種の「投信」?
以上のように、時価総額が簿価純資産割れしているような状況を見ると、日本の投資家のベンチャーに対する関心は無いのかなと、悲しい気持ちになりますが、視点を変えれば、例えば、公開しているベンチャーキャピタルは、多数のファンドの運営報酬と、ファンドへの自社出資分からのキャピタルゲインを主な収入源にしており、一種のベンチャー投信的な性質も持ち合わせているかと思います。
(ベンチャーキャピタルが上場しているというところは日本の特徴。)
時価総額も、ジャフコ(2,800億円)、エヌ・アイ・エフベンチャーズ(430億円)など、サイズもそこそこあります。
「一番成功している上場ベンチャー投信」は?
こうした上場ベンチャー投信「的」なものを他にも探してみると、日本では、ソフトバンクや楽天、ライブドア、GMOといった会社が、上場ベンチャー投信的機能を果たしているとも言えますね。
(1) 時価総額もソフトバンク(1.7兆円)や楽天(1兆円弱)、ライブドア(2,800億円)、GMO(1,200億円)(11/12日現在)と、機関投資家が十分注目できるサイズがありますし、
(2) 単なるベンチャー株式のポートフォリオというよりは、それぞれの事業シナジーが考えられた「(超)ハンズオン」型の投資ファンド、とも言えます。
(3) 最近はとみにテレビに見かけることも多くなったので、個人投資家などの注目度も高い。
(4)「オープン・エンド」ですので、(うまく行っている限り)、どんどん資金調達をして、さらに成長する、という夢が広がります。
ベンチャーの出口戦略
以上のような観点から考えてくると、未公開のベンチャー企業のEXIT戦略(出口戦略:会社をどこかの企業に買い上げてもらう「バイアウト」(M&A)か、株式公開するか等)についても考えさせられます。
特に、IT関連のような技術革新の激しい領域のベンチャーは、十年後も同じことをやっていると立ち行かないことが多いでしょう。このため、株式公開してから成長し続けるためには、自分の得意領域を強化・深掘りするというだけではだめで、今後の成長領域を次々に取り込んでいかないといけない。次々に取り込むためには、自社内部の開発では追いつかないことが多いでしょうから、M&Aで他の割安な会社を吸収していく、という(フィナンシャルな)能力も求められることになります。
つまり、公開して100億円程度の時価総額にしかならないようだと、(よほど現在の事業が生むキャッシュが今後増加していく計画でない限り)、「買う側」に回るのはキツいでしょうし、社長が、「企画や技術や営業は好きだけど、財務はあまりよくわからん」ということでも、公開後に生き残っていくのは難しいかも知れません。
そういう「公開してからも成長できる要件」を満たさないようであれば、未公開のうちにどこかに会社ごと売却することを出口戦略とすることが賢明かも知れません。
米国ではたくさんあったREITが統合されて少数の銘柄に集約され総資産が巨大化していっているようで、プライベートな不動産ファンド等の保有する物件の売却先の一つとしてREITの存在があるのではないかと思いますが、日本のベンチャー企業も「上場ベンチャー投信」であるソフトバンクや楽天といった企業が出口として定着しつつある、ということかも知れません。
「上場ベンチャー投信」は成長し続けられるか?
ベンチャーの場合、不動産と違って、個々の投資先の間に強いシナジーが働く(ことがある)というメリットもありますが、一方で、規模大きくなるにつれ管理のspanも広がり、単に量を増やすだけでは成長できない難しさも大きいはず。
このため、時価総額が数千億円レベルを超えると、細かいベンチャーをちょこちょこ買っていくだけでは成長が難しくなるので、結局、電話とか金融(証券、銀行、カード)とか「インフラ」っぽいところに出て行かないといけなくなっていくわけですね。
業態にもよりますが、あまり「現状維持」でうまくいくベンチャーというのも少ないと思いますので、株式公開を考えているベンチャー企業も、公開してから自分の会社がどういう競争に巻き込まれ、どう成長していくのかを考えた方がいいでしょうね。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

米国ヘッジファンド規制関連の動き

日本も証取法改正を受けてベンチャーキャピタルさん等の動きが慌ただしいようですが、米国でのヘッジファンド規制に関連してもいろいろ動きがあるようです。
私が関わらせていただいてる某ヘッジファンドでも、不動産部門等の運用チームが上から下まで丸ごと抜けて独立したので、「うわ。外資系はこれだ(チームごと移籍しちゃったりする)から怖いや。」と思ったら、これもどうもヘッジファンド規制対策に関係があるようですね。
(住所もそのまま、「居抜き」での独立なので。)
(追記12日10:30:「そりゃ、規制対策とは関係ない動きだろう」、という方もいらっしゃいました。さて、どっちなんでしょう?)
(本日はこれにて。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

本日分、お休み

ちょっとバタバタしてて本日分が書けませんでしたので、本日、休載とさせていただきます。
owabi.jpg

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。