「電子債権」の未来を考えてみる(4)

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昨日のエントリに、「流行らない」さんからコメントいただきました。

電子債権は、流行しないと思いますよ。
たしか、登録義務者と登録権利者が共同で登録機関に登録申請しないといけないのですよね。こんな、手形を一枚一枚登記するような制度、面倒で仕方ありません。商品を納入して得意先に電子手形を振出してもらい、それを登録する、しかも得意先単独では登録できず、仕入業者と共同申請になり、得意先としては、仕入業者の数だけ別申請をしなければならない。仕入れ業者としても、得意先の数だけ共同申請をしなければならない。
さらに、手形が支払われたときも、原則共同申請。「手形が支払われましたよ」「じゃあ一緒に決済を登録しましょう」なんてやってられない。

いえいえ、それは電子記録債権法の原則のお話であって、仮に今後、銀行業界ぐるみで取り組めば、インターフェイスは普通のネットバンキングで銀行送金をする使い勝手と同程度になりうる、ということを申し上げております。


 
ユーザインターフェイス(UI)のイメージ
つまり、A銀行の顧客からB銀行の顧客に電子債権を送る(発生させた)場合、普通のネットの送金と同様、

  • 相手先口座(銀行、支店、口座番号等)

  • 金額
  • 支払期日、その他の条件(←ここが通常の送金と異なるところ。)

を入力してOKボタンを押すだけ。(に、なりうる。)
法的には、それぞれの銀行はそれぞれの顧客の「代理」として、全銀で決めたプロトコルに従って電文を電子債権記録業者に自動送信するだけです。
つまり、個別の顧客は、電子記録債権法も電子債権記録業者とのインターフェイスも知らなくていいわけです。
zengin.jpg
導入のシナリオは?
第1段階としては、各銀行の裁量で導入を決定でき「ネットワーク外部性」が働かない手形貸付について電子債権に移行するニーズが見込めるんじゃないでしょうか。
少なくとも印紙代が節約できますので、それでシステム修正費用もまかなえます。
(例えば、10兆円分で1bpとすると10億円)
第2段階として、ファームバンキングのメニューを整えて手形利用の大口顧客からセールスを開始。
最後に、次第に利用者が増えてきたところで、手形の廃止をする期日を決めて電子債権に全面移行・・・・てな感じで。
企業も、手形よりコストが安く、紛失の心配もなく、大量の手形を扱う企業ではパソコンで一元管理も容易になるわけですから、導入のメリットはあると思います。
銀行も手数料収入が入るし、実質的に他の電子債権記録業者は採算的に成立しにくくなる。(銀行の様式に基づかない紙の手形を利用するよりも、銀行の様式に基づかない電子記録債権を利用する方がさらに困難かと思います。)
つまり、こうした業務に関する利益を業界内で抱え込めます。

(差別的取扱いの禁止)
第六十一条  電子債権記録機関は、特定の者に対し不当な差別的取扱いをしてはならない。

とありますが、全銀協さんが設立する電子債権記録機関が「当機関は、別途定める場合を除き、銀行等または銀行等を代理人とする請求しか受け付けない」としても、必ずしも不当な差別的取り扱いにはならないかと。
−−−
上記のようなシナリオを前提とした場合、私の予想では、地デジよりかなり容易に普及するのではないかと。ETCやSUICAと同じかそれ以上のペースで導入が進む気がします。
(ではまた。)

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「電子債権」の未来を考えてみる(4)” への4件のコメント

  1. 有名ブログに初めてコメントするので緊張しています。
    磯崎さんと考えていることと、概ね同じだったのでちょっとほっとしました。といってもいろいろありますので、ご斟酌ください。

  2. コメントどうもありがとうございます。
    単にモーソーしてただけなんですが、「お」さんのお考えと概ね同じと伺って、こちらこそほっとしました。
    至らぬ点も多いかとは存じますが、今後ともよろしくご指導ください。
    (ではまた。)

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