「電子債権」の未来を考えてみる(2)

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昨日のエントリに対して、「茶々姫」さんからコメントいただきました。
長文になりましたので、こちらでお返事させていただきます。

さて、電子債権については、全銀協さんが本気でやりたいかどうかはともかく、上記のような落しどころになってほっとしてます。経済産業省主導で議論が進んでいた時は、「カネだけ集めて、海外へ高飛び!」のビジネスモデルがいくらでも沸いてでる!と、知人の法学者と酒の肴にしながら、大騒ぎしていましたので。
でも、過去を振り返ると、電子債権の議論がはじまった当初から信金中金には独自開発した電子手形システムがあったわけで(確か、沖縄で実証実験???)、そう考えると、いろんな審議会で活躍されている法学者を大勢集めて何年間も議論したことって、何の意味があるんだろう???とか考え込んでしまうわけです。


以下、雑談風に。
>全銀協さんが本気でやりたいかどうかはともかく
少なくとも、以前はあまりやりたそうじゃなかったですよねえ。:-)
>経済産業省主導で議論が進んでいた時は
そもそもは、電子債権というのは「資金調達が困難な中堅中小企業を助けるため」といった美しいお題目があったかと思うのですが、これだけ資金がジャブジャブにあって金融不安もそこそこ落ち着いていれば、それなりの企業にはそれなりに資金が回るはずなので、(新銀行○京などがうまくいかないのと同様)、それでも資金調達が困難なような企業にビジネスベースでお金を回そうというのは、そもそも経済的に無理があるはずです。
ただ、「美しいお題目」で法律を通して、(もし仮に)これが(ゆうちょを含む)銀行業界のバランスシートをマクロレベル(100兆円単位)で是正するようなしくみに育つんだとしたら、結果としてよかったですね、ということになるかも知れませんね。
1ベーシス程度の手数料になるとすると、残高100兆円単位の事業規模になったら、やっと事業の年間売上が100億円単位になると想定されますので、法律を一つ作った意味もあったと言えるようになるんじゃないかと思います。
>「カネだけ集めて、海外へ高飛び!」のビジネスモデルがいくらでも沸いてでる!
法律的にはいろいろ考えられるのでしょうけど、そもそも「ネットワーク外部性」が強く働くことに加えて、

電子記録債権法
(電子債権記録業を営む者の指定)
第五十一条  主務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その申請により、第五十六条に規定する業務(以下「電子債権記録業」という。)を営む者として、指定することができる。
(略)
五  定款及び電子債権記録業の実施に関する規程(以下「業務規程」という。)が、法令に適合し、かつ、この法律の定めるところにより電子債権記録業を適正かつ確実に遂行するために十分であると認められること。
六  電子債権記録業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、電子債権記録業に係る収支の見込みが良好であると認められること。
七  その人的構成に照らして、電子債権記録業を適正かつ確実に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有すると認められること。

のあたりで実態的な審査が行われることを考えれば、むしろ、そんじょそこらの会社が電子債権記録業の指定を受けるのは難しいんじゃないかと思います。
(取引量、残高、手数料体系、システム投資、人員等を実際にExcelに落として収支計画を立てるとなると、整合的でかつ実現可能性がありそうな計画を作るのは、実際、至難の業だと思います。)
ちなみに、昨日ご紹介した日経新聞の記事で、「システム開発に四十億—八十億円かかるとの試算もあり」というのは、確かに、○○○○−タさんとか○○○研さんに、「システムはしろうとでよくわからないので適当に作ってください」とお願いしたら、そんな見積もりも出てきそうな気もしますが、当初、(10億円かどうかはともかく)20億円も出せば、セキュリティやBCMまでちゃんと考慮したシステムを組めるところはある気がします。
>独自開発した電子手形システム
システムがイケてるかどうかではなくて、「みんなが使うかどうか」がポイントだったわけでして、仮にすごくイケてるシステムであったとしても、みんなが使う気にならなければ、まったく意味がなかったわけであります。
>法学者を大勢集めて何年間も議論したことって、何の意味があるんだろう???
これで仮に全銀行が「電子債権やってみようかな」という機運になった場合には、利用者からは基本的にファームバンキングのインターフェイスが見えるだけで、その背後にある「電子債権記録機関」とのやりとりは直接には見えないし、そういうことでないと普及しないと思うので、「はじめから全銀行が相談してれば、法律なんか作らなくても同じようなシステムは作れたはずじゃん」という気が一瞬してしまうのは確かであります。
しかし、紙の手形においても(銀行の様式に従わない手形は現在ほとんど存在しないでしょうけど)一般的な手形法があってはじめて銀行の実務が成立するように、この法律も(平時にはあまり気にしなくていいが、たとえば銀行の破綻処理の場合とか、銀行と係争が発生した場合など)特殊な状況において、単なる銀行間の契約で同様のものを運用するのと、電子債権法という法律が存在するのとでは違うことにもなるのではないか、という気もしますので、無駄ではなかったのかも知れません。
(ではまた。)

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「電子債権」の未来を考えてみる(2)” への2件のコメント

  1. 次のエントリとあわせ、さすが、磯崎先生と感動しています!
    経済産業省が騒ぐことで、金融庁が重い腰をあげ、その結果、銀行業界全体が動かざるをえなくなり、そこまで話が進めば、イケてない話も、イケてくる。
    バブル期にはじまった日米構造問題協議による外圧で日本の規制緩和が一気に進んだことと重ねあわせると、とても興味深いです。
    一見奇異に思える銀行業界のために経済産業省が頑張ったという構図も、日本経済の起爆剤のためにやむをえなかったと説明できれば、結構イケてますね!

  2. ・・・ま、あんまり最初からそうした「絵」が描かれていたという気はしないんですが・・・私のモーソーということでご理解ください。
    (ではでは。)