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April 28, 2008

世界にはまだこんな高利の貸金業が存在する!

人類の文明が誕生して数千年。
「ヴェニスの商人」に代表されるように、金貸しというのは、いつの時代にもどこの国でもあまり人から好かれない業態ではありますが、他方で、メディチ家のように金貸しでヨーロッパ全体に影響を及ぼすような勢力を有するようになった一族もおりますし、今でも銀行業の力は(特に西側諸国では)大変大きい。

片方に、金利を取るということ自体をいまだに全く認めないイスラム(金融)のような世界もあれば、日本では今や法律で許されないほどの高利で金を貸しておきながらノーベル平和賞を取る人も現れる次第でして、情報が一瞬にして地球を駆け巡るようになった現代においても、「金貸し(金利)」というものほど評価の分かれるものは、めずらしいのではないかと思います。

そんな中、先週末、中央大学比較法研究所の金融取引に関する比較法的研究という部会で、日本大学商学部講師の高橋めぐみ先生の「アメリカにおけるペイデイローンの規制について」という発表を聞いて、ブッたまげました。


アメリカには「Payday Loan」という、次の給料日(2週間後)まで上限500ドル程度までを先日付小切手等を活用して消費者に貸すという業態があるそうで。

これがなんと、年率換算すると300%とか400%といった、ものすごい金利。

アメリカなので州ごとに規制も異なり、上限金利を厳格に適用する東部十数州ではこのペイデイローンという業態は存在できないそうですが、他方には上限金利規制すらないウィスコンシン州(WI)のような州もあり、その他の大半の州では業法で一定の規制がかけられた上で、存在が認められているとのことです。

たいていの州では、上限金利は20%から40%に規制されているようですが、上限金利の緩い他州の銀行の代理店になることで、上限金利を「輸入」できる(判例でも認められている)そうで。
日本では、銀行が高利貸しに名義貸しするなんてことは考えも付きませんが、アメリカの銀行って、こじんまりした店舗が1店舗だけといったところも多いと聞きますので、名義貸しで楽して収入が得られるならぜひ、という輩(銀行)は探せばいくらでもいるんでしょうね。
(日本でも、銀行が貸してグループの消費者金融専業者が回収する、というスキームは増えていると思いますので、そういった意味では、あまり不思議ではないかも知れませんが。)

なお、先日付小切手を使うということは、少なくとも銀行口座を開いて小切手帳はもらえているわけで、ペイデイローンの顧客層は「最下層」の人たちではない、ということのようです。(つまり、最下層の人は、口座維持手数料が払えないので口座すら開けない。)


上場しているペイデイローン業者もあるということなので、EDGARで「ADVANCE AMERICA, CASH ADVANCE CENTERS, INC.」という会社の10-K

http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1299704/000104746908002021/a2182974z10-k.htm

の財務諸表(P66以降)を見てみると、

2007年末の総資本が472M$、うち「Advances and fees receivable, net(貸付金残高)」が221M$、Revenueが710M$、Net incomeが54M$程度となっています。
Revenueを貸付金残高の平残で割ると、ちょうど300%くらいなので、この「ものすごい高利」は確かに実在する(しかも上場までしている)、ということがわかります。

一方で、日本の消費者金融専業大手が1兆円単位の残高を持っているのに対して、221M(「ビリオン」ではなくて「ミリオン」)$の残高しかないわけで、上場企業とはいえ、日本の貸金業に比べると超零細な限界的業態ということかと思います。
(サブプライムローンの規模と比較しても、めっちゃ小さい。)

ROEも20%程度なので、そんなにボロ儲けをしているというわけでもない。
5万円程度の超少額、2週間という短期、小切手のような「紙」を扱わざるを得ず、しかも各州ごとの規制にそれぞれあわせて業務フローを修正する必要があることなどを考え合わせると、コストを考えれば、逆算するとこのくらいの金利水準じゃないと成り立たない、ということかと思います。

「闇金ウシジマくん」

を読んでも、こうしたリスクの高い層への日本の闇金さんの貸付は、「トイチ」くらい取ってらっしゃるようで、やはりこうした層への少額貸付では、このくらい取らないとコスト倒れになっちゃうということかと思います。

この日本では「闇」もいいところの「トイチ」の金融が、アメリカでは上場までしている(しかし州によっては営業が認められていない)、というところが、なんともアメリカらしいなあ、と思いました。

(「トイチ」はともかく)、私も社会人になり立てのころは、給料日前によく銀行系クレジットカードのキャッシングのお世話になりましたが、翌月返済で3%くらいの手数料だったので、年利だと36%くらいになるわけで、当時の消費者金融専業者の金利より高いくらいだったのですが、5万円借りて1500円のコストだったら別に死ぬわけではない。

昨今、電車に乗って「債務整理」の弁護士さんや司法書士さんの広告が多数踊っているのを見るたびに、「昔なら貸してもらえたが今は貸してもらえない層というのがどのくらいいて、GDPに対してどの程度のインパクトがあったのか」とか、「『上限金利を下げたおかげで多重債務に陥らなくて済んだ人』の幸福と『上限金利が下がったおかげで闇金のお世話にならなきゃなくなった人』の不幸の割合は、どういったことになっているんだろう?、というのを考えさせられます。

(ではまた。)

松下と三洋が経営統合!

ほんとになっちゃった!?


「松下と三洋が提携案、将来の経営統合も」(今朝の読売新聞。)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080427-OYT1T00715.htm?from=navr


本件にあたえた「島耕作」の影響は、計り知れないですね。

(ではまた。)

April 25, 2008

祝!島耕作氏社長ご就任その2(最優秀スキーム分析賞[暫定]発表)

昨日の、「祝!島耕作氏社長ご就任」で、今週号の週刊モーニングに掲載された島耕作氏の言動は会社法その他に照らしていろいろナゾが多い、というお話をしたところ、コメント欄でいろんな方から「実はこうだったのではないか?」というスキーム案をいただきました。


中でも、「元IB現PB」さんの、

 ほとんどギャグなのですが、「初芝(による)五洋(の持株会社=)ホールディングス」だったと言うオチはどうでしょう。
 「初芝五洋ホールディングス」と言う名前の初芝の100%子会社を設立、五洋の株式の分社型分割を計画している。五洋の株式は、初芝総資産の5%はあるでしょうから、簡易分割では不可、総会決議が必要であった、と考えれば、今回の疑問点はクリアされているように思えます。「ホールディングスの取締役は、来週の初芝電産の株主総会の時に(総会決議の決議事項でないけど)発表し、(分割の)承認を得た上で改めて記者発表いたします」と考えれば、最大の問題点だったナゾ3もOK。
 「持株会社を作ってその下に初芝・五洋両社を(直接)ぶらさげようという合意」は反故にされているわけで、だまし討ちもいいところですが。


というアイデアが、最も疑問をよく解決する説明ではないかと思い、ここに最優秀スキーム分析賞[暫定]を授与させていただきたいと思います。

つまり、記者会見時点では、やはり、


HGHD2_1.jpg


といった感じで、初芝五洋ホールディングスは、初芝の(ペーパーカンパニーに近い)子会社で、最終的には、


HGHD2_2.jpg


と、「初芝(による)五洋(の)ホールディングス」という中間持株会社になる、ということですね。

確かにこれであれば、新設分割等ではないから、計画書も設立時の取締役の記載もいらないです。
(会社分割でなく、株式交換その他の方法も使えるかも知れませんし、TOBに応じなかった少数株主のキャッシュアウトに三角会社分割または三角株式交換が使えるかどうか、税制適格が取れるかどうか、というあたりも検討してみると面白いかも知れません。)

また、なぜ株主総会を経ずに「ホールディングス」が設立できたのか、とか、島耕作はもう「代表取締役」なのに、なぜ「”専務編”ラスト2回!」なのかも大変よく理解できます。

法律的には「初芝五洋ホールディングス」という名前が付いているからといってグループ全体の持株会社とは限らないわけで、常識や固定観念にとらわれずに純粋に会社法の観点から考察されている(?)ところがすばらしい。
合併や株式移転のように、事前に両者の合意のもとに経営統合したというよりも、初芝が自分の金で五洋の株式を取得したわけですから、五洋も何されても文句言えた立場ではないわけではあります・・・。

Bogusnewsさんにトラックバックいただいたとおり、島耕作氏にはスキャンダルのネタが山ほどあるので、本人はグループのトップに上り詰めたつもりでいたけど、実は子会社の中間持株会社に体よく封じ込められた、ということでしょうか。(島耕作と五洋の勝浦社長が社内の何者かに騙された、ということですね。記者会見の席上でもまだ気付かずに、後で、「会社法をもっと勉強しておけばよかった・・・」みたいな。)


または、「会社法上なんかおかしいけど社長になったぞ!」と思ったら実は夢で、島耕作はまだ課長のままだった・・・・という、「ドラえもんの最終回の都市伝説」みたいな夢オチだったら・・・・・ちょっと物悲しいですね・・・。

(・・・んなわけないか。)

(ではまた。)

April 24, 2008

祝!島耕作氏社長ご就任

最近、私専用で使えるDVDプレーヤーとテレビを手に入れたので、海外連続ドラマ(「HEROS」とか「4400」とか「BONES」とか「LOST」)にハマって見続けておりまして、(仕事もそこそこ忙しいので)ブログの更新をさぼっております磯崎です。

さて、本日発売の週刊モーニングの「専務 島耕作」ですが。作者の弘兼憲史氏が、欄外の近況コメントで、最近見た映画を「突っ込みどころが満載」と評されてますが、本編の島耕作の方も今までの中でも最も突っ込みどころ満載じゃあないかと思います。
(以下、ネタバレあり。)

冒頭、TOB合戦を経た後にゲットした五洋と初芝の統合を発表する記者会見のシーンから始まるのですが、司会者の人が

ただ今より初芝五洋ホールディングス設立の記者会見をいたします
つきましては当社代表取締役社長の島耕作から挨拶がございます

と挨拶し、島耕作氏が、

初芝五洋ホールディングスの初代社長として皆様にひと言ご挨拶申し上げます
ご案内のように初芝電産は先日、韓国企業の敵対的M&Aに対抗してTOBを実施し、五洋電機と経営統合をいたしました

と切り出しています。


ナゾその1:もう社長気分
これらの発言をそのまま理解すると、「初芝五洋ホールディングス」なる法人はすでに設立されているということでしょうか?

時は流れて、あのTOB合戦からすでに何ヶ月もが過ぎ、両社の株主総会で株式交換とか株式移転の承認が行われた後の記者会見かとも思ったのですが、島耕作氏は「先日、TOBを実施し」とか「来週の初芝電産の株主総会の時に」とも言っているので、総会での承認はこれからだと思われます。


ナゾその2:どういったスキームで統合?
「初芝五洋ホールディングス」が存在するとしたら、現在の株主は誰なのでしょうか?
TOB直後で「五洋電機」の株のほぼ100%は初芝電産がすでに取得しているので、「経営統合をいたしました」というところまではいいと思います。


HGHD1.gif
 

ところが両者の間には、持株会社を作ってその下に初芝・五洋両社を(直接)ぶらさげようという合意ができていると思われますので、


HGHD2.gif
 

初芝電産の100%子会社として「初芝五洋ホールディングス」をとりあえず設立しておいて、それを株式交換で持株会社に昇格させる、といったスキームなんでしょうか?


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(初芝は兆円単位の時価総額のはずだから)たぶん上場は維持すると思いますので、島耕作氏たちが個人で出資した会社でMBOしますよ、ということでもないはずですが。


HGHD4.gif
 

上場維持についての証券取引所さんとの相談とか、適格企業組織再編になるかどうかの検討とか、いろいろ検討しないといけないことも多いかと思いますが、すでにロゴマークまでデザインし終わっている!

さすが初芝のスタッフ。仕事が速いなあ。(・・・っていうか、ちょっと実際には無理でしょ?)


ナゾその3:ホールディングスの取締役はまだ決まっていない?
やはり島耕作氏の発言で、

なおホールディングスの取締役は、来週の初芝電産の株主総会の時に発表し承認を得た上で改めて記者発表いたします

とありますので、ホールディングスの取締役は島氏と万亀会長以外は決まっていないということですね。

もしこの会社が株式会社だとしたら、商法時代なら3名取締役が必要だったわけですが、とりあえずコンパクトに、取締役2名(取締役会非設置会社)として設立したのかも知れません。

しかし、初芝電産の株主総会でホールディングスの取締役について承認するということは、株式移転など新設型の再編で新設計画の承認が必要な場合ということであって、すでにホールディングスが設立されているんだったら、ホールディングスの取締役については初芝電産の株主総会での必須の承認事項にはならないと思います。

また、株式交換契約書などに任意で記載されているのだとしても、そもそも来週の総会でその契約を承認するなら、そのときに発表じゃなくて、この記者発表の時点ですでに招集通知に記載されて発送されていたり、本店に契約を備え置いたりしていてしかるべきかと思います。
(ホールディングスが設立されているにせよいないにせよ、不思議な話。)


ナゾその4:なぜまだ「専務」島耕作?
社長になったのに、なぜまだ表紙に「“専務編” ラスト2回!」大書してあるのでしょうか?


・・・とまあ、いろいろナゾは付きませんが、ともかく、社長ご就任おめでとうございます。

いくら「運も実力のうち」とはいえ、「こんな、エ○チの相手の女性のツテで運よく快進撃を続けてきたような人がもし将来社長になったりしたら、はたして従業員が付いていくのかしらん?」と、かねがねワクワクしながら見ておりましたが、「事業会社の社長を兼務しない持株会社の社長」というのは、工場や販売店などの現場からは一線は引かれているわけで、島耕作氏の落ち着きどころとしては、なかなかうまいことになったなあ、と思いました。

「課長島耕作」が始まった1983年にはまだ純粋持株会社は禁止されていたわけで、はじめからこの落としどころをイメージして書き始めたわけではまったくなかったと思いますが、つくづく、時代の流れは島耕作氏に味方してるんだなあ、とも思いました。

それにしても、島耕作氏、どう見ても40代にしか見えませんが、もう60歳なんですね。(若い!)

(ではまた。)

April 11, 2008

米国で著名ブロガー死亡相次ぐ

J-castの記事より。
http://www.j-cast.com/2008/04/10018844.html

私が最近更新してないのは、単なるサボりでありまして、ストレスのせいではございませんので、念のため。(んなこたわかってる?・・・そうですか。大変失礼いたしましたー。)

ではまた。

April 2, 2008

ガソリンスタンドの価格戦略 (ガソリンスタンドは損したのか?)

ガソリンの暫定税率がなくなって、「混乱」が発生しているという報道ですので、ガソリンスタンドの店長になったつもりで、どうやったら利益が極大化するかをちょっと考え始めたんですが。

簡単なようでいて、いろいろ考えないといけないことも多いですね。

gas_price.gif


3月までに仕入れた税金がかかった高い在庫は、いわゆる「埋没コスト(sunk cost)」だから、今更つべこべいってもしょうがない。販管費の額が変わらないとすれば、とにかく粗利の額(販売数量×単価×粗利率)を最大にするような単価を設定して、ガンガン売ればいいというのが基本のはず。

また、そもそも頭のいい店長なら、4月1日に向けて地下タンクの在庫の量は極力絞っていたはずです。(ガソリンスタンドってタンクの構造や制度上あまり在庫を減らせない理由ってあるんでしたっけ?)
「25円下がると、今の在庫の分で100万円くらい損することになります。」とテレビでコメントしていた店長がいましたが、25円で100万円ということは、4万リッター。1台平均20リッター入れるとして2000台分。1日200台来るとして10日分。下がるのがわかってるんだから、ちょっと在庫持ちすぎじゃないでしょうか。

発注のリードタイムにもよりますね。つまり、何日前に発注すればタンクローリーがガソリンを届けてくれるのか。10日も前に発注しないと来てくれないんでしたっけ。

ガソリンというのは、一見、「需要(売上)の価格弾力性」が強そうな商品。
ベンツに乗って50リッター入れに来る人が1円(つまりたった50円)の違いを気にするという、非常に不思議な世界であります。(リッター5kmの車で3km遠くのガソリンスタンドに行ったら、それだけで50円以上飛んじゃうわけですから。)
結果的に見れば、これだけ価格に注目が集まっているので、思い切った値下げをした人が勝者になった可能性が高い。

一方、真の意味でガソリンの需要の価格弾力性は大きいのか?
つまり、「ガソリンが下がったから、ちょっと遠出してみようか。」という人はそんなにはいないはず。春休みも終わりだし。

ということは、4月1日以降のガソリンの需要というのは、経済学の教科書にあるような、きれいな右下がりの曲線になるわけではなくて、「その商圏に存在する車のタンクの空きの量の総計」程度を上限として、投機需要的な性格を持っていたといえるかも知れません。
つまり、「安い!」という雰囲気をかもし出して、そのへんの商圏一帯の車のタンクの空きの部分の需要を他店に先駆けて一気にかき集めてしまったスタンドが勝ち。長蛇の列が1週間以上も続くなんて事はないはずですから。
つまり、下げるなら「一人勝ち」を狙わないとあまり意味が無かったかも知れません。
逆に、「値下げは様子見」という戦略をとったスタンドは、一番あほだったかも。

一方、スタンドというのは完全に地面にくっついている商売なので、地域の同業との関係も重要であります。暫定税率の改廃という一時に確保できるわずかな儲けのために、価格についての地域内での「あうんの呼吸」が乱れるとまずいという判断に傾く地域と、いわゆる「激戦区」では、行動が違ってくるでしょうね。
このへん、野球とかF1とかよりは「競輪」に似た競争かも知れません。

次に暫定税率が復活する局面では、ガソリンスタンドはガソリンを仕入れられるだけ仕入れるておくのが基本でしょうが、消費者も暫定税率復活前日までにタンクを満タンにしておく人が多いでしょう。
理論的には、安い在庫を使って、暫定税率復活日以降もしばらく安売りを続ける手もありえますが、4月1日と違って、今度は消費者のタンクがほぼ満タンになっているから、あまり「投機的需要」は望めないし「一人勝ち」も難しい。
(連休前だと、価格弾力性による若干の「実需増」もあるかも知れませんが。)
価格を下げても大量の集客が見込めないとなると、暫定税率が復活するとともに「地域の、あうんの呼吸」で25円いっせいに値上げされるんでしょうね。

以上が、「管理会計的」なお話。


資金繰り
「資金繰り」はどうでしょう?
何日締めの何日払いなんでしょうか?
在庫を極力絞って、1日に先駆けて値下げして客を集めたスタンドは資金は回る気がしますが、在庫をたくさん持っていた上に、4月以降の集客も集められなかったスタンドはちょっと厳しいのかも知れません。
でも、政府が援助を考えなきゃいけないほどなのかなあ?


会計上の利益
次に、「会計上の利益」の話。

ガソリンスタンドで上場している会社を知らないので、上場している石油会社の有価証券報告書のたな卸資産の評価方法を見てみたんですが、


新日本石油
主として総平均法による原価法を採用しております。

昭和シェル石油株式会社
主として総平均法に基づく原価法を採用しております。

出光興産株式会社
主として後入先出法による原価法(一部低価法)を採用しています。

コスモ石油
主として総平均法に基づく原価法を採用しております。

といった感じで、出光さんが(消え行く)後入先出法を採用しているものの、他は総平均法のようです。
中小のガソリンスタンドでも、シンプルな総平均法で計算しているんでしょうね。


「利益」とは何か
テレビのインタビューで「赤字です」と言っている店長さんが何人もいましたが、どの利益概念をもって「赤字」と言っているのかに、非常に興味があります。

ガソリンの粗利率が10%未満だとすると、1リッター10円ちょっとの粗利でしょうから、25円近く値下げしたら、前月末の在庫より今月の売価が安くなるのは間違いなさそうです。そういう意味では赤字のように思えます。


gas_price.gif


しかし、この図のように、もし仮に3月末の在庫が通常の1週間分あり、4月に通常の1.25倍の5週間分を仕入れたとすると、6週間分で総平均するわけだから、25円高かった在庫も均されて全体では4.2円高にすぎなくなります。
さらに、暫定税率復活前には安い在庫が残っており、これでまた元の売価に戻ったら、在庫量が期首と期末で同じなら、損得ゼロのはず。
期首の在庫は絞って暫定税率復活前の在庫を多めにしたら、その分得になります。

加えて、月間に売れた分も、いつもの月の1.25倍売れることが予想されるのであれば、リッターあたりの(最新の単価で考えた)粗利を0.8倍まで削っても、月間の総粗利の額は変わらないことになる。
このへんやはり、値下げがどのくらい需要増を呼ぶか、「価格弾力性」の読みの勝負だったかと思います。

(ではまた。)

April 1, 2008

買収防衛策は世間に受け入れられつつあるのではないか?(その3)

エープリール・フールですが、フツウにまいりたいと思います。
(クイズ付き)

kabuさんからまたお返事いただきましたので、それに関連いたしまして。


ブルドックの件など、有事に入れると高コスト、平時に入れると低コストというのは納得がいきました。確かにそうですね。ただ、(これは世間でも言われていた話ですが)8割以上の賛同を受けた防衛策なのだとしたら(そしてそれが司法の判断のベースになってるのだとしたら)高コスト弁護士などをやとって総会決議までして赤字転落するような方策をとるより、TOBに身を任せてもよかったのではないかと思います。いや、もちろん、本当に売られてしまうのが怖いのですが、8割の賛同ということはTOBは成立しなかったわけで、同じ事を違う方策をとることによって、猛烈なコストをかけてしまったように外からは見えます。

まず、(これもよく言われることですが)、株主総会というのは基準日時点での株主(のうち、委任状も含めた出席者)によって決議されるもので、株主総会(またはTOB)当日の株主全員によって決議されるものではなく、両者は違うものです。それは無視できる違いかも知れないし、無視できない違いかも知れない。(個々の企業や、その時の状況によって異なるはず。)

次に、安定株主比率の低い会社においては、事前に株主の意向を合理的に予測することは難しいわけで、株主総会で決議して8割賛同が得られることが最初からわかっていれば苦労はない。


それではここで第1問

事前に株主総会での合理的な予測が出来ず、会社の経営に重大な影響を与える可能性がある場合に、何の根拠も無く「ま、大丈夫でしょ」と行動する経営者というのは、はたして取締役としての善管注意義務を十分に果たしていると言える(又は、「いい経営者」と言える)でしょうか?


小生はやはり、「濫用的」なら取締役会決議で有事に導入・発動して戦えばいいじゃないかと思います。


私もそれができるのが一番いいと思います。が、ご紹介した3月31日の「法務インサイド」の記事にも、

一年ほど前、江頭憲治郎早大教授は独立委員会や取締役会限りで発動するタイプの防衛策は裁判所が否定的で、経営者の「気休めにすぎない」と指摘した。その後に出たブルドック最高裁決定も「株主の意思」を重視した。

とあるとおり、裁判で止められてしまう防衛策は、(タマが出ない鉄砲みたいなもんで)意味がないです。(「保身」に使えないだけでなく、「交渉の武器」としても使えない。)
そして、取締役会がフェアな判断をできるようにと体制を構築しているのに株主の意思確認を行っていないという形式面だけを見て裁判所がそれを否定するのだとしたら、後述のとおり、株主がより高く株式を売る機会を失わせることにつながる可能性があると思います。


最後に米国の取締役の姿勢ですが、最近の日本企業→米国企業のケースやマイクロソフトの件でも見られていますが、「無抵抗主義」ではもちろんないですよね。でも反対・議論の根幹をなすのが「価格」であるというのが重要です。(一般事業会社の敵対的買収の場合ですが。)米国の経営陣は「当社の本来の価値に対して、提案価格が低すぎる・ひどい」と反抗します。もちろん心の底では憎くてしょうがないんでしょうが、そこは抑えて、「株主に十分な条件が提示されていない」ことを主張するわけです。その条件が「一定の」レベルを超えたら、無抵抗主義になるかどうかは分かりませんが、Flat NOはできませんので、提案に甘んじるかホワイトナイトを連れてくるか、(無理だと思いますが)自社買収するか、といった方策をとるのだと思います。

私も、そのように「高く売る」方向で交渉すべき話だと思っているわけです。
しかしなんで日本中、アホの一つ覚えのように「買収防衛策=保身に注意」という話ばかりで、「買収防衛策が無いと高くも売れないよ」という議論が無いんでしょうか。


日本でも、少なくとも一般的事業会社のやりとりであれば、このようなかたちがあるべき姿のように思っております。

そうですか。
それではここで第2問

時価総額が1000億円の会社A社が、一般事業会社B社(時価総額5兆円)から買収の提案を受けており、A社経営陣も両社が経営統合することは事業上のメリットがあると考え、前向きに検討しています。
A社が保有している技術や営業網はB社の事業と非常にシナジーが高いので、それらをもし活用できれば、B社は自社の企業価値を3000億円向上させることが可能であり、統合後のリスクを考えて将来キャッシュフローをかなり堅めに見積もっても、2000億円までの買収金額であれば、十分に元が取れると判断しています。
B社が財務アドバイザーであるC証券会社に相談したところ、A社の株価の推移、株主構成や浮動株比率を勘案した結果、20%のプレミアムを付ければ(つまり1200億円の評価を行えば)、公開買付けによって80%以上の株式を取得できる可能性が高い、という回答を得ました。
A社の技術とB社の事業は極めて親和性が高いのでこれだけのシナジーが出ますが、当該マーケットにはB社以外に同様のシナジーを得られる会社はなく(つまり第三者が大量取得しても、B社以外へのexitストーリーが描きにくく)、ホワイトナイトが登場する可能性も低いと考えられます。B社がA社の反対を押し切ってTOBをかけたとしても、A社の事業の性質上、従業員のモラルダウンや大量退職等でA社事業の実質的な価値が損なわれるとは考えにくいとします。また、A社は買収防衛策を導入していません。
以上のような前提の場合に、B社がA社を1800億円で買収することは可能でしょうか?
B社経営者に対する代表訴訟が提起される可能性等の法的観点のみからでなく、投資家からの批判の影響、その他の経営学的な観点等からも考察しなさい。


第3問:

第2問と同様の前提ですが、A社が買収防衛策を導入しているとします
B社からの提案に対し、A社からは、「現在は相場全体の要因等で株価が下落しているが、当社の企業価値(株主資本価値)は1800億円は下らない。1200億円では話にならない。1800億円なら買収に応じる。」とのカウンター・プロポーザルがありました。
このような前提の場合に、B社がA社を1800億円で買収することは可能でしょうか?


もし仮に、第2問(買収防衛策を導入していない場合に高く買えるか?)への答えが「NO」であり、第3問(買収防衛策を導入している場合に高く買えるか?)への答えが「YES」なのであれば、買収防衛策は、会社を高く売るために有効に働きうるし、A社の株主のためになりうると言えるのではないかと思います。

(そして、ビジネスの世界は「一人勝ち性」をますます強めているので、「売るとしたらオンリーワン企業であるB社しかない」というこのA社、B社的なケースというのは、決して例外的なケースとはいえないと思います。)


買収防衛策以外にも、潜在的に企業の役職員と株主間で利益相反が発生する可能性のあることはいくらでもあります。(役員報酬や従業員の給与、ストックオプション、授権枠等。)
しかし、それらの場合には、それらによって役職員の士気があがったり機動的な経営が行えるといったメリットと、利益相反のリスクの可能性のバランスで検討が行われているわけです。

ストックオプションの発行決議を行った企業の株主総会では必ずといっていいほど、「ストックオプションを発行したら、既存株主の持分が希薄化するじゃないか!」といった質問が出ます。
そこの議論だけを見たら、「ストックオプションは利益相反性がある。」「ストックオプションは、投資家からの批判が強い。」といった認識になりえますが、ストックオプションを導入した企業の株価のパフォーマンスが悪いのか?といったら、どうなんでしょうか。
「アホなストックオプションの使い方をした企業のパフォーマンスは悪いし、うまい使い方をした企業のパフォーマンスはいい」、というだけの話じゃないでしょうか。

同様に、買収防衛策に対する議論だけを見ていると、「買収防衛策=保身に注意」「買収防衛策は投資家に評判が悪い」ということにも思えちゃうかも知れませんが、経営者が株主の利益のためになると信念を持って導入して、コストもさほどかからず、株価にもニュートラルなのであれば、導入して何も悪いことはないはず。
「市場」はちゃんとそうした利益相反のリスクとメリットをバランスよく考えて判断しているんじゃないでしょうか。(取締役報酬枠拡大やストックオプション発行の場合と同様。)


(ではまた。)