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September 30, 2005

財政構造改革と預金課税論(再び)

遅ればせながら、小飼弾氏とR30氏が、日本の財政問題についてやりとりしている以下のエントリを拝読して。

404 Blog Not Found:
備忘録-日本政府のB/S2003年度分
素人の、素人による、素人のための経済学

R30::マーケティング社会時評:
マクロ経済って本当に難しい


小飼氏曰く;

まあ、私がそういう心配をするのが大きなお世話なのかも知れない。私自身は家族を含め別に日本でなくとも生きていけるのだし。私よりもずっと日本に対する依存度が高そうなR30さんが心配無用といい、私が要注意というのは滑稽ですらある。

そう言われて私の周囲の人たちを見回してみると、国債残高やキャピタル・フライトに危機感を抱いている度合いは、「日本でなくても生きていけそう度」が高い人ほど高い、という傾向がおもしろいほど当てはまりますね。(R30氏が日本でないと生きていけないという感じもしなかったので、エントリを拝見したときに「お。例外が。」と思ったのですが。)

まったく違う話でのたとえになりますが、ちょっと昔を思い起こして見ると、技術的な知識がある方ほど「linuxのような優れたOSが無料で手に入るんだから、数年後にはWindowsは滅びているはずだ」てなことをおっしゃる傾向があったように思えますが、実際はそうなっていないようなもんでしょうか。物事がよくわかってる方ほど、一般庶民のアホさというか「慣性」というか「stickiness」というかの度合いがピンとこないもんなのかも知れません。

私σ(^-^;)ですか? 私は、(「日本でなくても生きていける度」が低いにもかかわらず)、日本の財政構造には非常に危機感がありまして、以前、こんな文章を週刊エコノミスト誌(2002年2月5日号)に載っけていただきました。(当時大阪大学にいらっしゃった跡田先生のコメント記事もいただけまして。今、どうお考えかはよく存じませんが。)

(これもR30さんに言わせると「マクロ経済をちょこっとかじっただけの素人コンサル」の書いた電波論文でしょうけど、)一言でいうと預金に対する課税論です。

yokin_kazei.jpg

預貯金をリスクマネー(この場合国債も含む)にシフトさせることで、市場経済を発達させるとともに、銀行や企業の財務を不良債権問題の再発を防止する構造へ転換し、かつ、年間十兆円規模の税収を確保して財政再建にも寄与する、というアイデアです。
当時は調整インフレ論なども盛んだったのですが、インフレより預金税の方がステアリングのレスポンスはいいんじゃないかと思ってるんですが。
また、路地裏の商店までのレジやシステムの大規模な変更が必要な消費税に比べて、銀行のシステムをちょこっと修正すればいいだけの預金税の方が、民間の現場に対する痛みも少ないし、「徴税」もはるかに楽なはず。

当時はとにかく景気も悪くてどうしようもなかったのですが、景気がよくなってきた今も、国の財政の課題は強く残っているわけでして。その場合に消費税を上げるよりは、預金に対して課税する方が、いろいろな意味でうまくいく気がします。

本質は「税」なんですが、「増税」というのが抵抗があるなら、「預金者負担の預金保険」とか「高齢化社会目的税」とか、もうちょっとマイルドな味付けにしていただいて。税にすると税率の変更が大変そうなので、預金者負担の預金保険等の名目で、率は日銀なり財務省なりが景気や金利や預金の減少動向を見ながら機動的に変更できる方がいいかも知れないですね。

ちなみに、当時、私の周囲の金融がわかってる方々には、「そんなことやったら海外に資金流出して終わりでしょ」と一蹴されましたが、もうちょっと日本国民の預金の日本の銀行へのstickinessは強いんじゃないかと私は思ってます。海外での資産運用のノウハウが日本国民に蓄積されるのは悪いことじゃないですしね。実際には、海外に資金を移すのも面倒がって、移動する資金の大部分は「預金税」のかからない国債にシフトして終わりだと思いますが。
任期中に消費税を上げないという小泉首相の公約にも違反しませんし。:-)
(ただ、売上税導入に失敗した中曽根内閣と同じになっても私は責任持てませんので悪しからず。)

ご興味のある方は、こちらをご覧ください。

エコノミスト 2002年2月5日号掲載
経済再生を強力に推し進める「構造改革税」の導入を

預貯金に対する課税は、初めて聞くと違和感の強いアイデアであるが、深く考察していくと極めて優れた特質を持っている。預貯金をリスクマネーにシフトさせ、不良債権問題の再発を防止するだけでなく、デフレを退治し、市場経済を発達させ、かつ、年間十兆円規模の税収を確保して財政再建にも寄与する。今後、人口が減少していく成熟国家である日本が二十一世紀の市場経済の中で発展していくために必要な税であると考えられる。・・・・・・


(追記10月1日)
Bewaadさんが本日からトラックバック受付再開、とのことなので、記念にトラックバックさせていただきました。:-)

September 29, 2005

議決権制限株式と買収防衛策

商事法務9月25日号に(やっと待望の)「条件決議型ワクチン・プラン」の設計書[中]が載りました。(が、まだちゃんと全部読んでません。)で、その前の号(9月15日号)に載っていた「議決権制限株式を利用した買収防衛策」(葉玉匡美[法務省民事局付検事]氏による)が、非常におもしろかったので、取り上げさせていただきたいと思います。

この論文のアイデアは、一言で言うと、「買収者の議決権を失わせる性質を持った種類株式を使って買収防衛策とする」こと。後述の通り、私は、このアイデアは買収防衛策としては「どうかなー」と思う点がいくつかありますし、葉玉氏ご本人も、これを防衛策として勧めるわけではない、会社法で可能になる選択肢の一つ、という旨のことを論文内で何度もおっしゃっているわけですが、(新)会社法における種類株式の性質を具体例で学べるというところが、何より非常に参考になると思います。


プランの概要
平たく言うと、このプランのポイントは、「株主が有する株式の数が発行済株式総数の一定割合未満(たとえば、二〇%未満)であること」等を、当該株主についての「議決権の行使の条件」として定める、というものです。

ただ、これだけじゃ、20%以上取得した大株主はみんな議決権がなくなってしまって、定款変更の特別決議をできるだけの議決権数を委任状闘争で集めないといけなくなります。(非常に大変。)
論文では、

なお、友好的な買収のときに買収者の議決権の行使を認めたい場合や、買収開始時の株主による株主総会の普通決議により買収者の議決権制限を解除することを認めたい場合には、「議決権行使の条件」を、そのニーズに応じて変更すればよい。

とありますが、普通決議まで弱めても、「いい買収者」が必要な議決権数を委任状闘争で集めるのは(株主構成にもよりますが)、非常に大変そうなので、常識的な線としては、「会社が設置する特別委員会が認めた株主は議決権を行使できる」というような立て付けにしておく必要があるのではないかと思われます。


「種類株発行会社」の読み方
この論文で解説されている「うらわざ」でまず面白いのが、既存の普通株式の性質を前項のように変えるだけではなく、まず、「新規に何らかの種類株式を(株主総会の定款変更決議で)追加する」というところ。

会社法第二条一三号の「種類株式発行会社」の定義は、

剰余金の配当その他の第百八条第一項各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する株式会社をいう。

となってますが、この「発行する」というのは、授権株式数の「会社の発行する株式の総数」というのと同じで、「すでに発行した」という意味ではなく、「発行することができる」という意味というわけです。
しかも、議決権行使に制限を加える条項は、「種類株式発行会社」でないとできないことになってます。(「種類株式発行会社」の定義がreferしている会社法108条1項3号に規定してあるので。)
このため、ここでのアイデアは、(使いもしない)ダミーの種類の株式を定款に追加しておく、ということです。つまり、実際には1種類の株式しか発行しないが、2種類目も定款に記載しておくわけですね。


「議決権制限株式」の読み方
もう一つ非常に勉強になるのが、現行商法での議決権制限株式と新会社法におけるそれの、解釈の違いについて。
現行商法でも新会社法でも、議決権に制限のある株式数は、発行済株式総数の2分の1までしか「ダメ」なわけですが、現行商法では「絶対的に」2分の1までしか発行しちゃいけないのに対し、新会社法では、超えたら「必要な措置」をとる努力をすればいいことになってます。

(議決権制限株式の発行数)第百十五条
種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式(以下この条において「議決権制限株式」という。)の数が発行済株式の総数の二分の一を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置をとらなければならない。

論文では、

会社法一一五条は、二分の一超過を絶対的に禁止するのではなく、二分の一超過が生じても議決権制限株式は有効であり(「超えるに至った」という文言は議決権制限株式が有効であることを前提にしている)、かつ、議決権が復活することもないこと(議決権が当然に復活するのならば、会社が「必要な措置をと」る必要はない)を前提に、会社に二分の一超過の状態を解消するための措置をとる義務(中略)を負わせているにすぎない。

ということで、議決権の行使に「条件」がついた株式でも、議決権制限株式にカウントしなくてもいい、とおっしゃってます。会社法108条2項3号でも、「株主総会において議決権を行使することができる事項」を「イ株主総会において議決権を行使することができる事項」と「ロ当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件議決権行使の条件」にわけているので、前者イについて制限していなければ、(20%超などのトリガー条項が発動した場合を除き)115条でいうところの「議決権制限株式」には該当しない、という説です。(条文をさらっと読んだだけでは、とてもそうはとれませんが。)

トリガーがヒットした場合の「必要な措置」というのが難題で、第三者割り当てで50%以下に薄める、買収者への持ち株売却勧告、定款変更、など非常に大変そうなことが並んでいます。論文では、

業務執行者が、単独で二分の一超過の状態を解消する措置を講ずることは困難であるから、業務執行者が措置義務を履行するための行動をとり続けている限り、結果的に二分の一超過が解消しなくても、任務懈怠にはならない。

とはおっしゃっていただいてますが、どこまで努力すれば許されるのかもよくわからないので、取締役としては買収者がトリガーにヒットしている間は、きっと負い目を感じてしまうでしょうね。「特別委員会が承認した株主は議決権を行使できる」といった条件がついていた場合、特別委員会はこのプレッシャーで買収を認めるほうに傾く、ということもあるんじゃないかと。


買収防衛策として機能するか?
この議決権制限株式を利用した買収防衛策が機能するかどうか、ですが。
葉玉氏は、このスキームについて、
・ 防衛が確実に行える(希薄化を恐れない株主にも有効)
・ 差し止めリスクが非常に小さい
・ 希薄化を発生させないため、課税リスクや、取締役に対する損害賠償リスクがない
・ 買収者に気づかないリスクが小さい
・ 新株予約権と違って、発動時に金銭の払い込みなどの株主への負担が少ない
・ 市場に影響を与えない(株式数の変動や希薄化が発生しない)
等、いろいろメリットをあげておられます。

上記のメリットを一言でいうと、「防衛策が自動的に発動し、希薄化が発生しない」というところだと思いますが、これは同時に最大のデメリットでもあるかと思います。

このスキームでは、買収者は議決権にさえ興味がなければ株を取得できちゃうわけです。希薄化が発生しないので確かに税務上の問題等も無いわけですが、一方で、経済的な損失が買収者に発生しない。一般の買収防衛策が仮想敵として想定しているグリーンメーラーには効果が無いんじゃないでしょうか。


ポイズン・ピルのデメリット(?)
葉玉氏は、

会社の発行可能株式総数は発行済株式総数の四倍以下であることが多いため、そのような場合、ポイズン・ピルは最高でも買収者が取得した株式を四分の一に希釈する効果しかない。とすると、買収者としては、たとえば、第一弾の公開買い付けで、ポイズン・ピルが発動する比率(たとえば、二〇%)を買い付けて、いったんポイズン・ピルを発動させ、その後、第二弾として全株式を買い付け目標とする公開買い付けを行えば、全体としてみれば十数%のプレミアムで全株式を取得することができてしまう。

と、ポイズン・ピル型のデメリットを指摘されてます。実際には100%取得するとは限らないし、これにTOBのプレミアムも乗りますので、それなりのダメージになることも多いと思いますが。
また、買収者の経済的損失は、会社の規模にも関連します。日本技術開発の買収劇の時に、「時価総額が数十億円程度の会社だと、どんな対策をしようがシャレで買収されちゃう可能性もあるなあ」と思いましたが、時価総額が一千億円超くらいになってくると、さすがにシャレで買えるプレイヤーは少なくなってくる。時価総額の大きな公開企業なりファンドなりが買収者ということになると、投資家に対する説明責任も出てきますので、経済的損失が発生するのが見越せたにもかかわらずそれを強行するというのは、他の強固な理由付けが必要になってきます。


防衛策は「経済的損失を与えること」が重要では?
以前も申しましたが、「買収防衛策」という言葉がちょっと問題で、「防衛」というと、とにかくなんでもかんでも防御できればいいというように聞こえてしまうのですが、買収防衛策の意図するところは「会社を守る」ということよりも、本来、「会社をより高く売る」というところでしょう。(「買収交渉策」という言葉の方がより適切な気がするんですが。)
とにかく、買収防衛策は「核」と同じで、実際には使わないのが大原則。その意味でも買収者がダメモトで買い増して行って、(たとえば)20%を超えると自動的に「発動」してしまう策というのは、問題があるかと思います。
つまり、事前に「交渉」をするのが買収防衛策の目的なのに、その交渉ができない。

ニッポン放送の時のことを思い返していただければわかりやすいと思いますが、この防衛策が入っていても、買収者は、とりあえず35%を買ってみることができるわけです。
また、買収者がどんどん買い増しをしていって浮動株が数%というような最終局面に入っていくと、この防衛策が導入されている場合、その数%の株主がキャスティングボートを握ってしまうわけで、それもまた非常に恐ろしいかと。(「数%の中に村○ファンドは入っているのか?」といった思惑で、相場の乱高下もより大きくなるでしょう。)

ピープルソフトVSオラクルのケースを見てみても、ピープルソフトは買収防衛策をうまくチラつかせながら、最終的にオラクルに高い株価で株を売ることに成功したわけです。この場合、ピープルソフトの既存株主には喜んでいただけたわけですが、議決権制限株式による買収防衛策では、既に取得されてしまった株について「もっと金を払ってくれ」とは交渉できないわけです。

−−−

葉玉氏は、買収防衛策導入には合理的な理由も認められるとしながらも、
「あくまでも個人的見解ではあるが、防衛策を導入しない会社に公開会社としての潔さを感じるものである。」
というマインドをお持ちのようです。

私も、(あくまで個人的見解ですが)、買収防衛策を導入する企業は、刀を授かった「武士」とか「核保有国」と同じで、一定の品位が求められるという点には同感。どこぞの国のように、「経営陣の保身」のために核をちらつかせるなんてことはやめていただきたいところです。

ただ、買収防衛策は「武士」の話ではなくて「商人」のお話であり、あくまで「ゼニカネの交渉のためのツール」ですから、株式取得の前に交渉のテーブルについていただけない買収防衛策はまずいんじゃないかと思う次第であります。

−−−

いずれにせよ、この論文は、今までよくわからなかった新会社法での種類株のディープな世界について考えることができて非常に参考になりました。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

(取り急ぎ。)


追記:
すみません、半期末シーズンで、他の方のブログを拝見する時間があまりなかったんですが、HardWaveさんとtoshiさんがすでにこの論文についてコメントされてました。ご参考まで。

HardWave:
議決権制限プラン

ビジネス法務の部屋:
議決権制限株式を利用した買収防衛策
議決権制限株式による買収防衛プラン(2)


追記2:
既上場の会社が、このプランを導入しようとすると、株券を全部取り替えないといけないかも知れないですね。

新会社法(株券の記載事項)
第二百十六条 株券には、次に掲げる事項及びその番号を記載し、株券発行会社の代表取締役(委員会設置会社にあっては、代表執行役)がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
一 株券発行会社の商号
二 当該株券に係る株式の数
三 譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを定めたときは、その旨
四 種類株式発行会社にあっては、当該株券に係る株式の種類及びその内容

これは、既公開会社にはそこそこ重い費用になるかも知れません。
ただ、一方で、これから上場するベンチャー企業などは、(Googleのdual classの例などもありますが)、種類株を使っていろいろ工夫がしやすいと思います。

September 26, 2005

SUICAジュース自動販売機と硬貨流通量

本日、東京駅でSUICAでジュースを買える自動販売機を見つけました。

suica_juice.JPG

ジュースの自販機というのは、小銭を使うのがもっともウザッタい局面の一つなので、キャッシュレスになるのは非常にありがたいですね。

(義理的にはEdyを応援しないといけない面も無きにしもあらずですが)、一消費者としては、正直、SUICAの方が使いやすいかあなと思っておりますし、私が実際に使うのも格段にSUICAの方が多い、です。ちなみに、SUICAはクレジットカード付きのやつにしてますので、金額のチャージ自体、キャッシュレスになってます。

「小額決済、電子マネー・クレジット規格乱立――「通貨統合」は先、カギ握るドコモ。」
といった日経流通の記事(9月9日)もありましたが、今のところ、わざわざ電子マネー機能付きの携帯を買う気になるかというと、それほどでもない人が大半かと思います。カメラ付き携帯と同じで、全部に電子マネー機能が付くようになったら使うようになるとは思いますが。


KIOSKでは使えてるのか?
KIOSKは、最近、東京駅周辺ではSUICA利用のためか、レジ打ちするところが増えているんですが、あれは大丈夫なんでしょうか?朝の慌ただしいときに、いちいちレジで打つのもさることながら、入荷と売り上げが単品で把握できてしまうと、棚卸しも理論上単品でできてしまうはずなんですが、どうなんでしょうか?
従来は、売価還元法的なカテゴリー別のざっくりした棚卸しをしていたんではないかと推測しますので、電子マネーのトバッチリでオペレーションがめんどくさくなってるとしたら、ちょっとかわいそうですね。(と、KIOSKのおばさんを心配するやさしい私。)

逆に言えば、KIOSKほど慌ただしい場所でオペレーションがスムースに回るようであれば、自販機はもとより、ほとんどの場所で電子マネーが使えるはずかと思います。


硬貨流通初の減少
9月5日の日本経済新聞の1面「硬貨流通、初の減少、電子マネー普及――7月末枚数、日銀まとめ。」の記事ですが、

日銀によると、百円玉や五十円玉など世の中に出回っている硬貨の流通枚数が七月末、前年同月比〇・〇五%減の九百十五億七千万枚と、初のマイナスに転じた。電子マネーやクレジットカードを利用する人が増えたためで、スーパーやコンビニエンスストアで買い物をするときに硬貨を使わない「コインレス決済」がさらに広がる可能性が大きい。(中略) 七月末の流通枚数が前年同月を下回ったのは五十円玉(前年同月比一・一%減)、十円玉(〇・一%減)、五円玉(一・一%減)の三硬貨。五百円玉や百円玉は〇・八―二・一%増えたものの、全体の流通数は一九七一年一月に調査を始めて以来初めて前年同月を割り込んだ。
 硬貨の流通量を金額ベースでみると、七月末は四兆四千二百四十八億円で、前年同月比〇・七%増と、九二年四月以来の低い伸びにとどまった。

というように、硬貨の流通にも影響を与え始めているようです。
記事によると、スイカの発行枚数は1300万枚、Edyは八月末で1230万枚とのこと。
スーパでは、「大丸ピーコックの青山店(東京・港)では今年四月、買い物客による全支払額のうち、エディが三・六%を占めた。」というような利用状況の模様。
当然、クレジットカードの年間取扱高が03年度の14兆円台から04年度に17兆円に達しているのも効いているようです。


電子マネー固有のセキュリティに問題はあるか?
ただ、同記事を受けた日経の社説「電子マネーの安全策を」(9月9日)は、あまりピンときませんでしたね。
スイカやエディは「簡便な決済手段として需要が高いが、銀行の偽造カードや個人情報流出が増えているだけに利用には注意が必要だ。」とのことですが、磁気カードである銀行カードの偽造と、(おそらくタンパープルーフ性を確保しているであろう)FeliCaの偽造とではリスクのレベルが違いすぎます。
センター側の情報が流出する可能性ももちろんありますが、それは一般的なクレジットカードや銀行からの情報流出と同じ話であって、電子マネーだから特にどう、ということはないかと思いますし。
また、「使用履歴は誰でも読み取れるため注意が必要である。」というところは電子マネー固有のお話で、確かに、FeliCaのリーダーがあれば履歴を読み取れます。
ただし、これも「レシートごとサイフを落とすリスクと同じ程度」のリスクですよね。

Edyの履歴はよく見てませんが、SUICAの方は乗車区間については細かく表示されるんですが、駅構内で買い物をしても、確か、商品名どころか店名すら記録されていなかったと記憶しています。電子マネーは、乗車以外は、そのデータを使って経費精算するようなニーズはあまりないような利用が中心になる気もしますので、それ以上細かい明細を電子的に記録してほしいというようなニーズも特にないですね。
あまり、一般的にも、落としたり盗まれたりしてカードの中の記録を見られてどうこうというデータでは無い気がします。


いまだに小銭を使う局面って?
私も、今、小銭を使う局面を考えてみると、ジュースの自販機の他、コンビニ、タクシーくらいでしょうか。
高速道路はもちろんかなり前からETCにしておりますし、ガソリンスタンドはSpeedPass 、スターバックスではスタバのカード、総合スーパーでもクレジットカードで買いますし、野菜は宅配で口座引き落とし、本などはもちろんネットでクレジットカードで購入するので、硬貨だけでなく、紙幣を使うケースもかなり減ってきてます。

コンビニでも以前、クレジットカードで買い物を何回かしてみたことがあるんですが、さすがに1000円くらいの買い物でクレジットカードを使うというのもためらわれますよね。
タクシーも「クレジットでもお気軽にどうぞ」とか書いてあっても、さすがに1000円程度でクレジットを出すのも気が引けます。
いえ、「セキュリティが心配」等の理由というわけではなくて、クレジットだとCAFIS?等での問い合わせで「通信」が入るわけで、後ろに客が並んでるコンビニのレジとか、タクシーの中で運ちゃんと2人切りの空間とかだと、その「間」がイヤじゃないですか?

これらも、SUICAとかEdyだったら、「ピッ」で一瞬ですので、OKかと。
また、総合スーパーくらいレジがたくさんあれば、クレジットの「間」があっても、後ろからのプレッシャーは無視できます。レジ3台くらいの食品スーパーだとちょっとためらうかも・・・。

最近ホント、たまに使う小銭がうっとうしいです。


郵便局もがんばってくれ
諸会費とか書籍って、郵便振替で振り込まさせられるケースが多いのですが、本日郵便局で「郵便振替って銀行のようにネットで振り込みってできないの?」と聞いたところ、「できるんですが、窓口よりも手数料が高くなります」てなネボケたことを言ってました。
銀行のネット振り込みは窓口より安いのが常識。はやく、「民間並み」にしていただきたいところ、であります。

(ではまた)


以前のご参考記事:
SUICAは「電子マネー」の本命になるか

September 22, 2005

本石町日記さん、カミングアウト

日銀をはじめとする金融関係の(匿名)ブロガーだった「本石町日記」さんが、実名でブログを開始されました。

http://kinyu.blog-jiji.com/0001/

時事通信の編集委員でいらっしゃったんですね。

まだ「アルファバージョン(試作の早期段階)」とのことなので、取り上げさせていただいてよかったのかどうかわかりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

(では。)

September 21, 2005

電車男と音楽ダウンロードビジネス

明日(22日木曜日)はいよいよ、フジテレビ(系)でやっている「電車男」の最終回。

densha_fujitv.jpg

梅田さんのブログでご紹介いただいて「ネット版」を読んでから、「本」も「映画版」も見ていなかったんですが、うちの奥さんが大ウケでテレビを見ているのを途中から見始めまして。(予想に反して、これが非常ーにおもしろい。)

オープニングのゴンゾさん制作のアニメとともに流れる主題曲、ELO(Electric Light Orchestra)の「twilight」は、40歳以上のおじさん(&お姉さま)には非常に懐かしい曲じゃないかと思います。
(が、すでに、この曲を聴くと「昔を思い出す」というよりは、電車男の「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 」ってなシーンが思い浮かんでしまうようになっちゃってるんですが。)


早速、iTunesでゲットだー、と思って探してみたら・・・無い。(アメリカのiTunesにはあるのに。)

ソニーのここ(視聴可)では買えるようですが、「iPodやWMA対応機器などの、OpenMGに対応していない機器ではご利用頂けません。」てなことになってます。

そうなると、かえって無性に聞きたくなるもので、仕方なくレンタルビデオ屋で借りてきました。

おそらく、レンタルビデオ屋で借りる人が増えてもレコード会社の収入が増える契約にはなってないでしょうから、その分、レコード会社としては損したことになるはずです。


フジテレビ側の皮算用
もし、フジテレビの電車男のホームページにiTunesを含むあらゆる形式でダウンロード可能なリンクが張ってあったら、200万ダウンロードくらいは行ったんじゃないですかね?
150円×200万として3億円。フジテレビにキャンペーン協力費として10%入るとして、3000万円。ワンクールのドラマの制作費の足しとしては、そこそこの金額にはなったんじゃないでしょうか。
今後、音楽ダウンロードする層がより増えていくと、テレビ(局のホームページ)と音楽ダウンロードビジネスの相乗効果というのは、「ネットとテレビの融合」上、重要な柱になっていきそうです。


ソニー側の皮算用
一方、ソニーの目算としては、「電車男」に乗じて、ELOのベスト盤(2,520円也)を10万枚売った方が得、と考えるかもしれないですね。
ターゲット層が40代以上のおじさんだとすると、購買力はそこそこあるので、レンタルビデオ屋なんかには走らずに買っちゃうんじゃないか、という目算も働いたかも。(残念ながら、私はレンタルビデオ屋で借りましたが。)

流通に卸す値段が5掛けとしても、1,260円×10万枚で1.2億円。

以上のような目算だとすると、今のところまだ、ネットで売ろうがパッケージで売ろうが、どっちでもいいや、って感じかもしれませんが、そろそろ、ネットでどう売っていくかということについてよく考えないといけない時期に差しかかっているかも知れませんね。

(ではまた。)

September 20, 2005

BORDER

冷凍マンモスにはあまり興味がないのですが、愛・地球博でぜひ見てみたい(みたかった)のが、ミスチルの曲のメッセージビデオが上映される国際赤十字・赤新月館。(と思ってたら、もう地球博も終わっちゃいますが・・・)。

こちらのホームページ(http://cupnoodle.jp/)では、同じくミスチルの曲に乗せて、今テレビで流れている日清カップヌードルのCM(イランで撮影したという、子供たちの「笑顔編」)が見られます。

このCMの最後に、
「日本で発売されている商品は、ハラール食品ではありません。」
という注が出てくるんですが、制作ノートを見ると、

・今回の撮影は、「イラン・イスラム共和国」にて実施しました。
・実際には、イランにおいてカップヌードルは発売されておりません。
・他のイスラム教圏の国々(インドネシア他)で発売されているカップヌードルは、同教で禁止されている豚肉(またはそのエキスなど)が入らない「ハラール食品」です。
・日本国内で発売されているカップヌードルは「ハラール食品」ではありません。
・また、撮影に当たって登場する子供たち(およびその保護者・学校関係者)には、このことを理解した上で撮影にご協力頂きました。

とのこと。

以前、NHKの在日イスラム教徒の特集で、スーパーで買い物をしているイスラム教徒の男性が、
「ハムは悪魔の食い物だ。見るだけでおぞましい気持ちになる・・・。」
とコメントしてました。おかげさまでそれ以来、トンコツラーメンを食うたびに、「悪魔の食い物を食ってるんだなあ」とリマインドさせられます。(確かに、悪魔のように甘美な誘惑が・・・。)

制作ノートに「このことを理解した上で撮影にご協力頂きました」と書いてありますが、「豚肉を使った製品が売り上げの大半ですが、よろしいですか?」とは聞かんでしょうから、何て説明したんでしょうか。
「イスラム教が主流でない地域ではハラールでない製品も販売してますが」くらいかしらん?

そもそも女性までカメラに顔を出して写ってますので、そんなに戒律の厳しい地域ではないのかもしれませんね。

(ではまた。)

September 19, 2005

会計士がダークサイドに墜ちるのを防ぐには?

ちょうど昨日、クリステンセンファンのうちの奥さんの要望で、「ニュースの天才」(原題:Shattered Glass)

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を、ビデオで見ました。

スターウォーズ エピソードII、IIIでアナキンを演じたヘイデン・クリステンセン演じる若手人気記者が、大統領専用機Air Force Oneにも置かれている権威ある雑誌「The New Republic」で、ねつ造記事を書いてしまうお話。(クリステンセンくんは、ここでもやはり、「ダークサイド」に墜ちていく役なわけです。)

これ、マスコミの話ではありますが、昨日書いた監査法人のお話と似てます。つまり、やはり「信用」が重要なビジネスであり、チェック機能も存在したのに、それが機能しなかった・・・。違いは、同じ米国でありながら、アーサーアンダーセンは崩壊したのに、この出版社は残った、ということでしょうか。

なぜそうした違いが生じたのか、というのは興味深いのですが、なぜでしょうね?やはり、一般人から見えるアウトプットが監査報告書1枚(または純粋な意味での「信用」)だけでなく、いろんな有用な情報を提供している、より「アモルファス」な構造だから、というあたりが理由でしょうか?


ダークサイドに墜ちることは防げるのか?
zooeyさんからコメントいただきました。

フツーの商売をしている者として、昔から不思議でした。監査法人はクライアントからお金をもらっていて、クライアントの不利益になるような監査報告書が書けるものだろうか、と。 当該会社の株主がお金を出し合って、より厳しくチェックしてくれる監査法人に委託するようなシステムはできないものでしょうか。

この部分については誤解を受けやすいので補足させていただきますが、昨日、「報酬とペイオフ曲線」の項で書きましたとおり、日本の現状は、「もらえるお金はちょっとで、損失は底なし沼」だと考えられるので、むしろ、わずかなお金のために大きな危険を冒してクライアントの粉飾を手伝う気持ちが沸くほうが不思議ですし、もちろん、ほとんどすべての会計士さんたちは、そんなことは夢にも考えないはずです。

私が昨日のエントリで申し上げたかった主旨は、「ほとんどの会計士はそういう悪いことを考えないはずなのに、一人罪を犯す人が現れるだけで監査法人全体が崩壊する構造というのは、いったいどういうことなのか?」ということです。

世界で何万人の会計士がいる法人であれば、必ず、「ダークサイド」に墜ちるやつは出てくるわけで、こうした不正が起きることは、確率を低くすることはできてもゼロにすることはできないはず。
「悪いやつは必ず出てくるもの」で、かつ「そうした悪いやつが一人出てくるだけで組織全体が崩壊する」とすれば、大手の監査法人というのは、いつか必然的に崩壊する存在である、ということになっちゃいますし、そうした「インフラ」に依存する社会というのも、極めて危険ですね。(米国の法人で1社について不正があるわけで、日本の[法律上はまったく別の]法人まで崩壊しちゃうわけですから。)
もっと、刺激的な言葉で言えば、「ロシアンルーレット」をやってるようなもんで、これを続けていけばいつか必ず死ぬ、ということになっちゃいます。


企業側としてできること
粉飾事件が発生すると、必ず「会計士、何やってたんだ!」という話になるわけですが、財務諸表の適正性を保つ一義的責任は、もちろん監査される企業自身の方にあるわけです。

では、企業側としては何ができるのか。

まず、かなりの公開企業では、実質的に監査法人を決定しているのは経理部門だったりするんじゃないでしょうか。まさに、監査されるその人自身が監査法人を決めてるわけで。社長なんかも、「わしゃ会計のことはよくわからんから、おまえらでテキトーに決めといてくれ」みたいな。(統制リスクに対する代表者の責任は、最近、非常に重くなってるんですけど・・・・ご存じない方も多いんでしょうね。)
まずは、ここから是正していかないとあかんのではないでしょうか。

zooeyさんご提案の、株主が直接監査法人にお金を支払う仕組みというのは難しいと思いますが、株主の利害を代表する立場として、「社外取締役」や「社外監査役」というもんも存在するわけです。商法上、監査役会や監査委員会には会計監査人を選任する強い権限があるわけですから、経理部門などが実質的に監査法人を決めてそれを追認するだけじゃなくて、社外役員中心の監査役会や監査委員会が実質的に主導して監査法人(やその予算)を決める体制とすれば、監査法人も「会計の現場」や「社長」ではなく、もっと監査役会や監査委員会、ひいては株主の方を向いて仕事をしてくれるんじゃないでしょうか。

もちろん、社外取締役や社外監査役自体が、あまり企業からの独立性が無い人だったらアウトなわけですが、どういう社外役員を選んでいるかは、監査法人のパートナーがどういう人か、ということよりは、もうちょっと株主にもわかりやすい(わかりやすくできる)はず。

投資家のみなさまにも、そのへんをぜひ御注目いただきたいところです。

(ではまた。)

September 18, 2005

監査法人をインフラとする社会

「さんくす」さんよりコメントいただきました。

会計士逮捕についてもコメントお願いします。一応会計士の方なので、パソコン壊れたというお話もいいんですが、業界の事件についてはご意見伺いたいですね。

今週は、大きめの(中間)クロージングが一発とパソコン環境のリカバリで終わってしまいましたが、それでは、ご要望にお答えいたしまして、「一応会計士」の不肖私めが、感じたことを書かせていただきます。

ただ、カネボウの件について逮捕された会計士個別の話となると、「悪い!」の一言で終わってしまいますし、今後どうすればいいかについても、ローテーション制や監督機関の権限の強化、教育や審査体制の拡充、といったすでに取り組まれている話で終わってしまいますので、本日はちょっと角度を変えて、より「マクロ的」「構造的」な視点からの話をば。


事後チェック型社会と監査
言うまでもなく、「事前規制型の社会」から「事後チェック型の社会」に移行する場合、「監査」という機能は必要不可欠なわけです。

明治以降、高度成長期までのような、単純で方向性が明らかな社会においては、一部の官僚等が大きな方向性を示すことが有効だったわけですが、これだけ社会が複雑化してくると、「入り口」での規制は無理になってくるわけで、「走ってる途中でのチェック」が重要になってきます。

郵政民営化も(機能するかどうかはさておき)この流れの上に乗るものでしょうし、会社法で最低資本金がなくなるのもそうかと思います。商法の学説でどう理解されているかはよく存じませんが、「資本充実の原則」も基本的には「入り口規制的な考え方」であって、「資本の額」を会社の安全性のインディケーターとして機能させようとする発想に基づくもんじゃないかと想像します。つまり「資本金のデカい会社=安心」という。
最初にいくら資本金があっても、実際走ってみてダメな会社はダメなわけで、重要なのは「パフォーマンス」のはず。企業のパフォーマンスが正しく開示されれば、「資本の額の正しさ」というのは、そのチェック機能の一要素として包含される話になるはずです。

「走ってる途中でのチェック」は何も会計監査だけでなく、取締役(会)や監査役(会)によるチェック機能や、社外取締役の導入とか内部統制をどうするか、等の問題もあるわけですが、そうした機能の中でもやはり、企業のパフォーマンスを直接示す「会計」についての監査は極めて重要です。
ところが、こうした監査法人のビジネスモデルは、他の商売と違って、非常に変わったところがいくつかあるわけです。


法律も認める?情報の非対称性
現行商法では、大会社の監査役会は会計の監査について、会計監査人(監査法人または公認会計士)の監査方法または結果の「相当」性だけを見ればいいことになってます。「相当」というのは、積極的に「よくやった!」というよりは、「ま、いいんじゃないの?」という、ちょっと引いた感じですね。つまりは、現行商法も、会計に関する専門家と一般投資家の間だけでなく監査役との間にも、かなり「情報の非対称性」が存在する、というスタンスではないかと思います。
つまり、商法は、「監査役さん、あなた会計の細かいとこわかります?わからないですよね?じゃ、会計のことは会計士にまかせて、あなたは「相当」かどうかだけ判断していただければ結構ですから」という、ちょっぴり失礼というか、やさしいというか、というスタンスに立っているのではないかということです。


誰のために働くか
そもそも監査法人は、本来的な制度の趣旨としては株主という「principal」のために働いている「agent」であるはずですが、実際にお金をもらうのは会社(被監査対象)から、になるわけです。普通のビジネスでは、「principal」と「お金をくれる人」は一致するのが普通。同じ専門家でも弁護士さんは(やはり情報の非対称性はあるけれど)クライアントのために働いてクライアントからお金をもらうわけです。しかし、会計監査ではそこが食い違ってるわけですね。
医者という職業も、健康保険の存在があるので、そこが(若干)食い違ってはいます。ただ、医療の場合、主として「公」からお金をもらって「私」にサービスしているのに対して、会計監査の場合には、「私」からお金をもらって「公」のために働いているわけです。
おまけに、医者でも弁護士でも「結果」を出せばお客が喜んでくれるわけですが、会計監査の場合、お客が喜んでくれるのは、よほどいい指導をした場合など限られた場合でしょう。(でなければ、それこそ粉飾を大目に見てあげた時などになっちゃう。)ということで、制度の趣旨に反するモラルの危機が(「外形的に」)常に存在するわけです。


報酬とペイオフ曲線
さらに、報酬にアップサイドがないのにダウンサイドが大きい、というところも特徴かと思います。
(つまり、「オプションの売り」と同じペイオフ曲線。)

(特に日本では)、監査報酬というのは最初から決まっていて、いくらよく監査をしてもそれが上限であり、一方、監査がヘボくて会社や第三者に損害を与えた場合には、損害賠償義務が発生するわけです。しかもパートナーは無限責任。つい一昨年くらいまでは、監査法人全体で無限責任でしたが、さすがに最近は案件を担当したパートナーだけ無限責任を負えばいいことに(法律上は)なりましたが。


報酬チャージの方式
先日、某監査法人の代表パートナーと話をしていて、
「なんでアメリカでは一社何千万ドル(何十億円)といった監査報酬が取れるんですかね?監査に対する必要性が社会的に広く認識されているからかしらん?」
という疑問をぶつけたところ、
「いや、アメリカは作業した時間分だけフルチャージできるからですよ。」
とのこと。

つい十年前くらいまでは、日本の大手都銀の年間の監査報酬が数千万円程度だった、というような話を聞くと、どう考えても人件費的に不良債権なんか見つけられるわけもないわけで。orz
被監査会社は(外形的には)監査はテキトーにやってくれたほうがいいはずなわけで、株主と(外形的な)利益相反があるわけです。そういう会社から高い報酬を引き出すにはどうしたらいいんでしょうか。アメリカではなぜフルチャージできるのか不思議ですね。実際、「価格カルテル」が存在したのか、それともやはり「訴訟」でそうなっていったのか。

「情報の非対称性」が存在する中でフルチャージを許すと、逆に今度は被監査会社側がエラい目に遭うので難しいところなわけですが、商法で監査役に強い費用請求権が認められていることを考えても、リスクに応じて監査人の裁量で作業量を増やせないというのは、監査する側にとっては非常に危険であります。


規模と収益構造
次に、こうした会計領域に関わる専門職は、マーケットが「U字カーブ型」の収益構造になると考えられます。つまり、大監査法人とブティックの収益性はいいが、真ん中はキビしくなる傾向があると考えられます。
一定以上の規模がないと、教育やチェックのための体制を維持するのが難しいし、いい人材を採るのも難しくなる。
となると、「少なくとも経済的には」規模を拡大することが合理的になるわけです。(が。)


「信用」がいかに形成されるか?
一般の人から見えるアウトプットが、「監査報告書」という紙切れ一枚である、というところもポイントかと思います。しかも、書いてある内容はほとんど100%いっしょで、違いは、監査法人(公認会計士)の名前だけ。
もちろん、その背後には、調書を作ったり何なりといった膨大な量の作業が存在するわけですが、それはあまり外からは見えないわけですね。

結果として非常に恐ろしいのは、この「ブランド」による信用形成が一瞬に崩壊しかねないところです。

例えば、銀行業で考えてみると、確かに個別の大口貸出先への債権回収が焦げ付いたら損はするものの、銀行への信用が一気に崩壊するかというと、意外にそうでもないんですよね。
ところが、エンロン事件ではアーサー・アンダーセンの全世界の組織が一気に崩壊しちゃったわけです。実際に、アーサー・アンダーセンの会計士数万人のかなりの人が「粉飾大好き」だったかというと、おそらく全く逆で、そういう「悪いこと」をする人はごく一部の人であったはず。
ところが、監査報告書1枚しか外部に公開されないと「監査の品質」というものは外部には全くわからないから、残るは「ブランド」による(実態とリンクしない)「信用」が形成されていくだけなわけですね。

つまり、そういう信用崩壊のリスクは、「大数の法則」で全くカバーされていなかったわけです。


・・・と考えると
監査法人が世界的に再編して、より少数の寡占状態になっていくのは、「U字カーブ型」マーケットやペイオフ曲線(少なくとも「経済的」には「大数の法則」が必要)からして、「必然」であるわけですが、一方、それは、「卵をより少ないカゴに大盛りにする」方向でもあるわけです。

世界全体が「事後チェック型の社会」へ変わっていく中で、その重要なインフラの一つである監査法人の構造がそういうことになっているというのは、すごくコワくないですか?

世界で「2大監査法人」くらいまで再編が進めば(苦笑)、さすがに他に選択肢が無くなるので、そこで再編が打ち止めになって、ちょっとやそっとの事件ではビクともしなくなるのではないかという「楽観的」な見方もできるかもしれませんが。

(本日はこのへんで)

September 15, 2005

水冷パソコンがやってきた

立て続けにパソコンが壊れたという話をお伝えしましたが、一発目のパソコンが壊れたとき、(こんなこともあろうかと)、NECさんの水冷パソコンをネットで見つけて衝動買いしてしまったんですが、それが発売日の今日(15日)、さっそく届きました。

いやー、今まで使ってた某外資系激安パソコン(17インチモニタ付で7万円台)とは違って、静かでんなー。

おまけに、パソコンなのにハードディスクが「RAID5」ですと。
ハードディスク150GBを3台ぜいたくに使って、Intel 82801GR/GH というRAIDコントローラーが、データを3つのディスクに分散して書き込んで、その分、ディスククラッシュ等に強くなっております。
RAID=「Redundant Arrays of Inexpensive Disks」ってくらいで、ディスクが安くなったからこそできる業ですな。
(コンピュータ用語なのに、「inexpensive」という経済的な概念が入ってるところが、変わってますよね。)


以下、じじいのむかし話
私が社会人になったころ(1984年)には、メモリは640KBもなかったかも。(20年で3万倍。)ハードディスクなんてもんはパソコンには付いてませんで 8インチのフロッピードライブしかなかったので、外部記憶はざっと10万倍の桁になったということでしょうか。
CPUに至っては、もろにムーアの法則、という感じ。

ただ、仕事の中身が20年でどれだけ進化したか、というと、どうでっしゃろな?という感じではあります。

たとえば、あるプロジェクトの将来キャッシュフローを計算するとして。
1984年当時は、N88Basicで全部数式を組んでプログラムを書いてたわけです。データなんか「カンマ区切り」でプログラムの中に打ち込む(笑)わけですし、罫線横棒は「----」、縦棒は「|」で、線の交点は「+」をprint文でプリントしたりして。

それが、今じゃ新人さんも、Excelで先輩が作ったワークシートをチョチョっと直すだけでいいわけですから、楽チンですな。

もっと驚くのは、社会人になった当時、部長クラスのおじさん(元銀行員)が、
「いやー、なつかしいねえー。僕なんかそれ、ソロバンでやってたんだよー。最近は便利になったねえー。
昔は一箇所間違うと、金利なんかが全部違ってきちゃうんで、はじめっからやりなおししたりねー。」
とおっしゃってたこと。

そう、パソコンの性能が10万倍になっても、やることはあんまり変わってなかったりするわけですね。もちろん、作業にかける時間は数分の1になってるでしょうけど、それより、20年前(30年前)には、一部の特殊なトレーニングを受けた人しかできなかったことが、「あほでもできる」ようになったところが大きいかも知れません。
(すくなくとも私は、ソロバンでキャッシュフローのprojectionをしろ、と言われても、ちょっとできませんです・・・。はい。)

ではまた。

September 13, 2005

大和言葉で「コンピュータ」を何と呼ぶか

昨日のエントリに、ろじゃあさんからコメントいただきました。

磯崎さんへ
パソコンの件、ご愁傷様です。
2台続けてというのは相当運が悪い。
御祓いです、御祓い。

(まじで考えました。それ。[苦笑])

私のパソコンはさておき、システムは巨大になればなるほど人智ごときではどうしようもない部分が出てきますので、大手銀行のメインフレームのコンピュータなどには、必ず神社のお札が張ってあるんじゃないかと思います。
(欧米の会社のサーバーに、キリスト像やコーランが張ってある様子はあまり思い浮かばないですね。そんなもんを付けなくても、「当然」、すべてのものは神に見守られていると考えてらっしゃるんじゃないかと想像いたしますが。)

以前、ある会社で、神社の神主さんに来てもらってシステムのお祓いをするのに立ち合わせてもらう機会があったんですが、日本の神様に英語は通じるのか、「コンピュータシステム」というのは何とお伝えするのか、と思って祝詞(のりと)を聞いていたら、神主さんは、

「からくり」

と呼んでらっしゃったように聞こえました。
からくり。なるほど。

ちなみに、その会社では、お祓い後は、システム障害の発生率はグッと下がったようです。
ご利益もさることながら、頭を垂れてその上でバサっバサっとやってもらうと、精神的な面でもシステム担当者に「気合」が入るという効果がある・・・のかも知れないですね。

(ではまた。)

September 12, 2005

パソコンがぶっこわれた(その2)

先日壊れたパソコンのかわりに代替機(新品)を投入したが、それもまた壊れた。orz
今度は、マザーボードがメモリを認識してくれない模様。
ノロワレテいるのかしらん。それとも、私の机の下に放射能を発する虫とかが住んでいるのか?

(というわけで、本日はこの辺で。)

September 11, 2005

メールの暗号化とインボー(その3)

自民党、圧勝ですね。

日本って、21世紀になっても利権型の政治が続くのかと思っていたら、国民の意識は想像以上に変わっていたようです。あくまで「意識」であって、郵政民営化に関する「知識」がどこまであってか、というのはさておき、国の債務や年金といった大問題が控える中、「意識」だけでも「改革」という方向が明確に国民から示された、というのは大きいかと思います。

−−−

さて、中妻 穣太さんが新しいブログをはじめられたようです。
コメントが書き込めないようなので、トラックバックさせていただきますが。


この話のミソは、wordのファイルの暗号化の強度は、暗号化の「方式」で決まるのではなく、「パスワード」の強度で決まる、というところです。

大枠としてこの考え方は正しいと思いますが、
引用:
例えば、十人程度の関係者間で契約書を決める場合に、私が目撃したケースでは、パスワードは、非常に容易に推測できるものが使われているケースが95%以上で、英大文字小文字、数字や記号がランダムに入り混じった文字列が使われているようなケースはまず見たことがありません。(そうでないと、当事者がパスワードを忘れてしまって仕事が進まないことによる損失の方がはるかにデカくなると考えられます。w

続く部分を見ると、磯崎さんはもしかして、「暗号の解読」=「パスワードへのブルートフォースアタック」だと思っていらっしゃるのではなかろうか、と読めます。

いや、さすがにそれはないです・・・。

素直に読んでいただたとおり、いくら暗号化自体を強力にしても、パスワードという「バックドア」が存在したら、文書全体の強度はそちらの方で決まっちゃいますよ、という話です。
PGPのような公開鍵暗号をもちいた暗号ソフトでは、こういう「裏口」となる強度の低い鍵とかパスワード自体が存在しませんが、wordのファイルをやりとりしている限りでは、必ずそこが弱点になってきちゃう、
セキュリティは「全体」として強度を考えないと意味ないですよね、ということです。

企業買収防衛策に例えると、「○○型」といったスキーム自体の強度のお話が暗号化方式自体の強度で、その企業買収防衛策を導入する企業のコーポレートガバナンスの状態とか、取締役会や特別委員会などでの意思決定自体の実態が、「バックドア」といった感じでしょうか。
いくら理論的に完璧なスキームを導入しても、意思決定の実態がコテコテの保身だったら、そっち(裁判)で負けちゃう。(し、負けてくれないと困る)。


営業とか法務とか企画とか「文系」的職場の方が、契約書等の重要書類をメールの平文で「ブリブリ流してる」と、著しく注意義務を欠いていた、と言えるでしょうか、どうでしょうか?
(中略)
しかし、例えば、普通の上場企業同士が取引の条件等の交渉をしてるような場合で、片方はプロバイダがIIJ、片方はso-net、途中IXを通りますが、といった場合に、そんな「ワルモノ」を想定する必要があるか、メールを暗号化してないと注意義務を欠いていたことになるかというと、どうでしょうか?

これは、ITセキュリティの問題というより、法曹の問題ですよね…。

うーん、そうでしょうか?
現代では、法律屋さん会計屋さんなどがITセキュリティを避けて通れないのと同様、ITセキュリティ屋さんにも法律の問題が問われてくると思いますけど。

確かに、「裁判は やってみなけりゃ わからない」のではありますが、「あなたはどう考えてこう行動したんですか?」と聞かれて、「セキュリティの理論と運用の現実を考え合わせて、これこれこのように判断して行動しました」と言うのと「すみません、何も考えてませんでした」というのとでは、勝率もだいぶ変わってくるかと思います。

(ではまた。)

September 10, 2005

パソコンがぶっこわれた

昨日、メインで使っているパソコンのWindowsが起動途中で立ち上がらなくなっちゃいました。ディスクをはずして他のパソコンで見てみるとちゃんと読めるので、ソフト的な障害か。で、こんなこともあろうかと「コールド・スタンバイ」させておいた予備のパソコンに、バックアップしてあったファイルを移したり、てんやわんやであります。
(ので、本日のエントリは中身がございません。)

午後3時から、先週購入したドライバー(パソコンのじゃなくて、ゴルフの)を練習場で使ってみる。飛ぶじゃん。
今までのは3年前に「初心者ならこのくらいのを使え」とゴルフ屋に薦められたR(柔らかい)シャフトでしたが、今度はS(硬めの)シャフト。今まで230〜250yといった飛距離だったのが、最低250y、ラン込みで280yくらい転がったりします。(しかもまっすぐ。)(追記注:「練習場の表示」での280yです。[かなり甘め。])
苦節三年、ヘッドスピードがちょっとは上がってきてたんでしょうね。プラス、道具の技術革新もすばらしい。

(ではまた。)

September 9, 2005

メールの暗号化とインボー(その2)

「メールの暗号化とインボー」に、sonic64さんからコメントいただきました。

Word では、少なくとも128ビットの AES は使えますよ。

(ほんとだ。)ありがとうございます。

「読み取りパスワード」の横の「詳細設定」のところで、暗号の強度を選べるようになってます。
存じませんでした。(そして、他の多くのみなさんもご存じないかと思います・・・。これもインボーか。w)

続く中妻 穣太さんのコメント曰く;

Office文書の暗号化レベルについては知らなかったのですが、128ビットAESに対応しているなら、現状望みうる限り最高強度と言えそうですね。

「暗号化」に関してはそうかも知れないですね。
ただ、この話のミソは、wordのファイルの暗号化の強度は、暗号化の「方式」で決まるのではなく、「パスワード」の強度で決まる、というところです。
例えば、十人程度の関係者間で契約書を決める場合に、私が目撃したケースでは、パスワードは、非常に容易に推測できるものが使われているケースが95%以上で、英大文字小文字、数字や記号がランダムに入り混じった文字列が使われているようなケースはまず見たことがありません。(そうでないと、当事者がパスワードを忘れてしまって仕事が進まないことによる損失の方がはるかにデカくなると考えられます。w)

結果として、普通、メールに添付されるwordのファイルのレベルは、「そこそこ」(つまり、普通の人が簡単に試行錯誤で開けることはできないかも知れないが、諜報機関等を想定した場合には、数時間以内に解かれてしまう程度)の強度にしかなっていないのが現状ではないかと思います。

とりあえず現状では、Office文書を暗号化してメール添付すると同時に、その暗号化キーを封書にして郵送すると相当セキュアだと思います。ちょっと時間はかかってしまいますが、重大な文書についてはこういう手を打つ必要もあるかと。
これよりは少し強度が落ちますが、暗号化キーだけ「携帯のメールで」送るのも悪くないです。携帯の経路に割り込むのは非常に困難ですし、割り込めたとしても片方だけでは意味がないからです。(ただし、携帯to携帯でないと意味がないです)
いろんな意味での「二重化」がセキュリティの基本ですね。

セキュリティの教科書的にはまさにそのとおり。(上記のように書かないと、情報セキュリティ関係の試験では、点をもらないと思います。)
が、実際の「文系」的職場で、そんなことやってるのは、まず見たことないですね。


注意義務の観点からセキュリティに関する注意義務

中妻さんが前回のコメントで曰く;

その反面、メールはどの会社も官公庁も平文でブリブリ流してると。
ISPとか組織内部にちょっと悪いやつがいたら、簡単に流出しますよ。

さて、それではここで問題です。
営業とか法務とか企画とか「文系」的職場の方が、契約書等の重要書類をメールの平文で「ブリブリ流してる」と、著しく注意義務を欠いていた、と言えるでしょうか、どうでしょうか?

「ISPとか組織内部にちょっと悪いやつがいたら、簡単に流出」するのは確かなんですが、それは、電気通信事業法で2〜3年の懲役を食らう(179条)犯罪を構成するようなお話ですよね。
もちろん、例えば、マンガ喫茶のパソコンで契約書を作って送信して情報が漏れちゃった、というやつがいたら、「著しく注意義務を欠いていた」と言えるかも知れません。または、アメリカ政府が非常に不快感を示している次期戦闘機の主要技術に関する情報をメールの平文で流したら、アメリカ側に漏れちゃいました、とかいう話なら、激しく注意義務を欠いていたと言えるかも知れません。

しかし、例えば、普通の上場企業同士が取引の条件等の交渉をしてるような場合で、片方はプロバイダがIIJ、片方はso-net、途中IXを通りますが、といった場合に、そんな「ワルモノ」を想定する必要があるか、メールを暗号化してないと注意義務を欠いていたことになるかというと、どうでしょうか?

例えば、「電話での会話」についても、「電話会社や組織内部にちょっと悪いやつがいたら、簡単に流出」するわけですが、双方の受話器に暗復号装置をつけて会話しないと注意義務を問われるかというと、大半の場合はそんなことはないわけですよね。

(どうでしょうか?)

平文でメールしても大丈夫、ということを申し上げているわけではありませんので、念のため。

(ということで、本日はこのへんで。)

September 8, 2005

change of control条項と買収側の善管注意義務

本日の読売新聞朝刊1面に、「新日鐵・住金・神鋼 特許相互利用締結へ−拒否権条項 買収防衛も狙う」という記事が載ってます。
要するに、これらの鉄鋼三社が、クロスライセンス契約を締結する際に、3社のうち1社が第三者に買収された場合、残る2社は買収者に特許の利用を認めないという条項を盛り込んでおくことによって、交渉なしに敵対的に買収する気をそぐ、という方法です。

日本で、こうしたchange of control(資本拘束条項)を、買収防衛目的で積極的に活用しようというのはめずらしいかも知れませんが、「契約の譲渡の禁止」をはじめ「合併や○%以上の株主の変動等の際に、サービスの供給者が一方的に契約を打ち切れる」というような条項は、ごく普通の契約書にもよく入っている特にめずらしくもないもの。(例えば、外資系のソフトウエア会社の契約書など。)


change of control条項のデューデリ
合併や買収の際には、買収側の弁護士さんが法務デューデリで、こうした重要な契約書についてチェックをして、change of control条項のチェックをかけていくのも、フツーの話です。

ところが、敵対的買収の際には、こうしたデューデリは行えません。今回の鉄鋼三社さんの場合は、あえてこうした条項の存在をアピールして、「事前警告」する意図なんでしょうけど、そうしたことを公言していない会社でも、そうした条項が隠れている可能性は大いにあるわけです。敵対的買収を行う買収者は、何が入ってるかわからない「福袋」を買うようなもんで、そうした条項のうち被買収会社の経営に重要な影響を与えるものが存在しないだろうという推測に合理性があったということでないと、善管注意義務違反に問われてもしかたがないかも知れません。

あのニッポン放送買収の時には、「ライブドアに買収されたときには、フジテレビからのコンテンツ提供等を打ち切ることも考える」ということがアナウンスされました。しかし、フジテレビからニッポン放送やポニーキャニオンへのコンテンツ提供等については、「グループ内にいるから供給する」という合意が両者間にもともと存在したと考える方が自然でしょう。「コンテンツ等を供給しない」というのは「有事」の買収防衛としての策としてそういうアナウンスをしたというよりは、もともとそういうネイチャーの会社だったとも考えられます。
契約書というものをあまり重視してらっしゃらないギョーカイなので契約「書」がないだろうという推測にはかなりの合理性があったかも知れませんがw、「契約」自体が存在しなかったかどうかが事前に外部から合理的に推測できたかどうかは大変微妙。そのへんを考えずに買収に走ったとのだとしたら、かなり「度胸ある行動」だったと言えるかも知れません。


change of control条項と株価
こうした「change of control」条項を買収対策で公言するのはいいんですが、契約にそういう条項がついているということは、その分、企業の価値としては下がる、という考え方もできるわけで、株価にはあまりいい影響を与えないかも知れないですね。

ちなみに、本日の株式市場は、(このせいかどうか存じませんが)3社とも下げて始まっています。


敵対的買収と企業規模
いつの間にか日本技術開発に対する夢真ホールディングスの買収劇も終わってましたが、あの買収劇の一つの大きな特徴として、「金額が小さい」ということがあったのではないかと思います。
買収がアナウンスされる前の日本技術開発の時価総額は40億円弱。過半数を取るとして「たった」20億円。この程度の金額であれば、いろいろ買収対抗策がほどこされていても、中身がよくわからなくても、”シャレ”で敵対的買収をしかけてくるところが現れてもおかしくないかも知れません。
しかし、企業価値が数百億円とか数千億円ともなると、それを買収する資金は、株式の上場やファンドの投資家から集められているわけで、そこの代表者は、株主や投資家に対して注意義務を果たす責任を負っていることを理解しているはずだし、デューデリも行うはずです。(普通は。)

数十億円規模の会社の買収でも、失敗したら社長が辞任することになるんですから、いわんや、もっとでっかい企業の買収なら、デューデリしないで敵対的に買っていくことが許されるケースは まれ なんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。


(ではまた。)

September 7, 2005

メールの暗号化と「インボー」

「専門家のモバイルパソコンと情報セキュリティ」には、たくさんコメント、トラックバックいただきました。ありがとうございました。


中妻 穣太さんからのコメント:

>「金融庁の見解では、『見られたかどうかがわからないので、それは事故に当たる』ということになった」

これひどい話ですよね。w
その反面、メールはどの会社も官公庁も平文でブリブリ流してると。
ISPとか組織内部にちょっと悪いやつがいたら、簡単に流出しますよ。
それに比べたら、その某監査法人のノートPCはよほどセキュアだと思いますけどね。

(ちなみに、その金融庁さんのご見解は、伝聞のまた伝聞ですので、ホントにそういう言い回しで言われたかどうかは、よくわかりません。念のため。)

これだけインターネットが発達し、WebについてはSSLなども発達した今日この頃、メールの暗号化だけがいつまで経っても普及しないのは不思議と言えば不思議。

理屈で考えれば、メールは非常に強く「ネットワーク外部性」が働くので、同報先(例えば関係者が10人いるとして)に一人でも使いたい暗号を採用してない人がいたらコミュニケーションができまへんので、暗号化が普及しないのも不思議でないと言えば全く不思議ではないのですが。
一方、マイクロソフトなどの大企業がその気になれば(例えばOutlook等のメールソフトのインストール時に暗号鍵作成を必須にするとか、メール作成で暗号化をデフォルトにするなど)、あっという間に普及するとも思うのですが、これって、あえて暗号を普及させないようにしようというNS○やCI○等のインボーだというのは考えすぎでしょうか?


Officeの暗号化ってどうよ?
弁護士さんや会計事務所とのやりとりなど、ビジネス系の世界では、MS-Officeの「読み取りパスワード」を設定するのが、「デファクト」の暗号化になりつつあるのではないかと思います。ビジネスやってる人でOfficeを使ってない人はほとんどいないという「普及率の高さ」がメリットですが、デメリットは「鍵配送」が問題になる点。たいていの方は、同じメールか、その直後のメールに「パスワードは、xxxxです」と親切に書いてあるので(大苦笑)、中妻さんがおっしゃる「平文での送信」とほとんど同じレベルでして、例えれば、「ハガキ」に重要な契約書の中身などを書いて送っているのと同じであります。(「郵便屋さん(通信経路上)」に悪い人がいないことを信じるしかない。)

通常の民間企業どうしのやりとりであれば、別に「郵便屋さん」を疑ってかかる必要もないのかも知れません。(本人同士では重要でも、第三者が見てもしょうがない話のことが多い。)
例えば港区のベンチャー企業が5億円の出資を受ける交渉をしているやりとりを、盗聴してまで見るインセンティブを持つ第三者というのはあまり想定できません。

ただ、過去の日米自動車交渉などの政府間交渉でも、日本側の作戦が全部米国側に(おそらく盗聴で)筒抜けだった、というようなまことしやかなウワサを聞くと、コワい人(一定以上の技術レベルの諜報組織を持つ国家など)の利害がからむ場合、平文でメールを送るなんてのはもってのほかかも知れませんね。
(元大統領や国務長官等がアドバイザーについているような外資系ファンドによる日本企業の買収で、CI○がインターネットの相互接続点(IX)付近にスニッファーをしかけて・・・・てなのは、ロバート・ラドラムとかマイケル・クライトンの小説の影響を受けたモーソーでしょうか?)

「対テロ対策」という視点も思いつきますが、テロリストの方々が、実名や平文でメールを送るなんてことはまず考えられない。(笑)
とすると、メールの暗号化を普及させないのが「インボー」とすれば、それは「経済活動面」の諜報活動を容易にするため、という方がmake senseです。


とは言え、FAXや電話や手渡しで一つの文書毎にパスワードを関係者全員に通知するのもビジネスの実務としては非常に無理があります。
シニアな方やエラい方に「おまえも暗号ソフトをインストールしろ」ともなかなか言えませんし。


ここで事情通の方にご質問ですが。
Word等で「読み取りパスワード」をかけた場合の暗号の強度はどのくらいなのでしょうか?対称鍵ベースで128bit(今の最速のコンピュータで数兆年かかるハズ)というような強度ではなく、40bit程度(最速のコンピュータで数時間以内に解ける)という程度かな、と予想してるのですが。(以前は、40bit以上の暗号が米国国外持ち出し原則禁止だったこともあり。)

つまり、「民間企業ではちょっと解読はできないが、NS○やCI○には容易に解読できるレベル」、ということですが。(考えすぎ?)

ではまた。

September 6, 2005

条件決議型ワクチン・プラン

商事法務No.1739に掲載された、「条件決議型ワクチン・プラン」の設計書〔上〕(武井弁護士他)を拝読いたしました。
〔上〕と書いてあるので、〔下〕とまとめて読もうかと思っていたら、次の号の商事法務を読んでも〔下〕が載ってません。(追記19:26:今、47thさんのブログを確認したら、「上は」と書いてあるので、やはり「下」もあるんでしょうね。)
ということで、「条件決議型ワクチン・プラン」について、遅ればせながらどうでもいいコメント(というか私の個人的備忘録)をば。


スキームのポイント
この論文のポイントは、ずばり、

条件決議型ワクチン・プランでは、差別的行使条件が付された新株予約権の無償割当(新会社法二七七条)をあらかじめ「停止条件付」で決議する。

という部分かと思います。(87ページ)

新会社法第277条は、

(新株予約権無償割当て)
第二百七十七条 株式会社は、株主(略)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。

となっており、次の第278条は、

(新株予約権無償割当てに関する事項の決定)
第二百七十八条 株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法
二 (略)
三 当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日
四 (中略)
3 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

となってます。

「停止条件付」というのは、おそらく、この278条1項3号の「当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日」という決議事項の部分を、

「ある者が、(発行済株式総数の5分の1を超える株式を取得する等の)トリガー条項(論文では『フリップ・イン条項』)に該当することとなったことを当社取締役会が認識し、公表した日から起算して○日後」

というような形で決めておく、ということではないかと思います。

「停止条件付き」という部分については、ブログ「ビジネス法務の部屋」で山口利昭弁護士が、新株予約権の発行のような「団体法上の行為について、民法上の「停止条件」というものを付すことが法律的に可能かどうか」という問題提起をされてます。
法律的な議論はよく存じませんが、経済的な観点から考えると、法律で上記のような条件決議を禁止することで、何か(その分 社会が発展するとか、ルールが明確になって調整コストが減少するとかの)メリットがあるのかというと、全く無いような気もしますが。(どうなんでしょうか。)

また、新会社法では定款自治が広く認められるようになったので、上記の278条3項のように、定款で定めればどの機関でも決議ができるようですね。
(「取締役会設置会社だけど株主総会で決議したい」、という場合には、まず、「(一定の条件の)新株予約権の無償割当てについては株主総会決議を要する」といった感じに定款を変更する決議をしてから、次の議案でその発行を決議する、といった感じになるんでしょうか?
「買収防衛策には株主総会決議が必要」という論旨も根強くあるようですが、形式的にいくら株主総会決議を経てもいても、目的が保身だったらダメとすべきだし、取締役会で決議しても、きちんとガバナンスが働いて株主のためになるんだったらOKじゃないかと思うんですが。ex.オーナーと安定株主で3分の2の議決権を取れてしまうようなコテコテのオーナー企業的公開会社の場合、どうなんだ?とか。)


コスト
実際にビジネスされている方が最も知りたいのは、主に「裁判で負けへんでっしゃろな?(法的安定性)」と「で、ナンボかかるんや?(コスト)」という2点でしょう。(商事法務の論文は格調高いので、こういった下世話な疑問にはズバっとお答えいただけないことが多いんですが。)

裁判所がどう判断するかは具体的な条件にも関わってくるかと思いますが、この方式の最大のウリの一つは「事前警告型」と並んで最もコストが安くて済むところかと思います。(弁護士さんの報酬を除けば、とりあえず取締役会議事録の紙代に毛が生えた程度でいいはず。)
導入を検討している企業からすれば、「信託型」が5000万円〜とウワサされるのと、だいぶ違うかと思います。


強制交換
新株予約権が無償で割当てられた後に、これを行使して株式を取得しないと、買収者の希薄化が実現しないわけですが、これも、

米国のフリップ・イン型ライツ・プランで採用されている強制交換(exchange)条項と同様の効果を得るために、株式を対価とした会社側からの強制取得条項(会社法二三六条一項七号イ)を付すことも状況によっては考えられる。

と、新会社法の強制取得の規定を使うアイデアが提示されてます。

会社法二三六条一項七号
当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
ハ イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法
ニ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法
(以下略)

つまり、無償割当と強制交換を組み合わせれば、実際の事務手続きは株式分割で子株を一定の基準日の株主に付与するのと限りなく同じ手続きでできることになるかと思います。
コスト的には、この「オートマ」方式が一番安そうです。

(備忘メモ:買収者に割当てた新株予約権については、「ハ」で定める新株予約権の一部の条件に「買収者の関係者等でないこと」等とするのか、それとも、「二」で交付する株式の数の算定方法として、「買収者の関係者等はゼロ」、とするのか?)


発動後の事務手続き
実際にトリガー・イベントが発生して新株予約権を発行するときには、現行の商法では新株予約権には申込書が必要ですが、新会社法では無償で割り当てられるので「申込書を提出してください」という1往復が省略できるわけですね。
(新株予約権の申込手続きの複雑さについては、
「インボイスの新株予約権申込証、来ました」
のあたりの一連のインボイスさん関連エントリーがご参考になるかと思います。)

また、新会社法における新株予約権は、原則新株予約権証券を発行する現商法と違って、「証券発行新株予約権」([新株予約権付社債に付された以外の]新株予約権で、当該新株予約権に係る新株予約権証券を発行することとする旨の定め[会社法236条1項10号]があるもの。会社法249条1項3号ニ)だけが証券を発行するので、おそらく、このスキームの新株予約権は、新株予約権証券を発行しないタイプになるはず。

つまり、現商法では、

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となるところが、新会社法下でこのスキームを採用すると、

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となり、さらに強制交換を使うと、

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といった感じ。さらに、将来(平成21年6月までに)、上場会社の株券が電子化されることになると、

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と、まったく株主との書類のやりとりをしないで完結することも可能になるかと思います。


株式交換とどこが違うのか?
一方、新株予約権の無償割当てと強制交換のタイミングがほぼ同時となってくると、「事前警告型の株式分割と何が違うねん?」という疑問もわいてきます。
事前警告型で株式分割をする場合には、基準日の株主名簿に従って機械的に新株が割り当てられるのに対し、新株予約権の条件決議の場合には、「こいつは買収者とグルと判明している人には新株が行かないようする」など、より微妙な調整もできる可能性があるという点が相違点の一つでしょうか。(「大砲」と「トマホークミサイル」といった違い?)


「オートマ」が最良か?
新株予約権行使の申込を行わず強制交換する「オートマ」方式では、株主に書類を書く負担や資金負担も発生しませんし、失権等で後でもめることもなさそうです。ただし、新株予約権者から「私は買収者やその関係者の要件に該当しません」という言質を取れないので、面倒でも行使または交換の申込をはさむ方がいいかも知れません。(どうせ発動しないとすれば、どちらでも同じ。)
ワクチンプランにより取得した株式もいっしょに後で買収者に売却する契約があるのに、それに該当しないと偽って申告して株式を取得した場合、まともな人ならその株式の法的安定性や行為の適法性については考えるでしょう。

また、プランの中身が理解できなかったり長期不在だったりで行使(交換)の申込ができなかった人については、「買収者の要件に該当しないと会社が認めた人には発行できる」ような文言にしておけば、なんとかなるでしょうか。(特に、シェアに関係しないような小口・多数の株主については。)


「差し止められにくさ」は?
私がスキーム毎の法的安定性を語るのはおこがましいのでやめときますが、どんなスキームを採るにせよ、例えば現経営陣が保身のために発動させようとしてる場合には差し止められてしかるべきだし、情報が行き渡らない中で不利な条件で会社が買われることを防止しようというような正当な理由がある場合には差し止められない、ということでないと、世の中のためにはならないかと思います。
(あるスキームを使えば、どんな買収者でもブロックできるんだったら、実際には経営者の保身もできるし、株主には不利益になるわけで。)


(本日はこのへんで。)

September 5, 2005

杉並の水害

朝起きたら、杉並の実家の近くがすごいことになってるので、おったまげました。

米国のハリケーン「カトリーナ」の被害を対岸の火事と思っていたというわけでもないんですが、実際に自分の知ってる場所が同じようなことになってる映像を見ると圧倒されるものがあります。

妙正寺川が氾濫したのは、私の幼稚園時代(つまり40年くらい前)以降、記憶がありません。(我が家は川のそばではないので、当時も今回も、おかげさまで浸水はまぬがれたんですが・・・。)
当時は確かまだ、川岸は「土」で自然のまんま(道路はジャリ道の時代)でしたが、その後、川は完全にコンクリでガチガチに固められ、人間のテクノロジーによって、完全に自然を制圧したかに見えたんですが・・・。

おまけに、確か最近では、神田川等があふれた場合の水を流し込むために、環八だか環七だかの大深度地下に超巨大空間を作ってたと記憶してるんですが、アレは機能しなかったんでしょうか。
先日、タモリ倶楽部で「マンホール特集」をやっていて、汚水と雨水の下水管の違いを説明してましたが(汚水用マンホールには穴が開いてないが、雨水用マンホールには穴が開いている。集中豪雨で下水道に急激に水が流れ込むと下水管の中の空気が圧縮されてマンホールの蓋がブッ飛ぶので、マンホールの蓋には穴を開けておかないとまずい、等)、
「バックボーン(大深度地下の空間)」の容量不足というよりは、「バックボーン」にたどり着くまでの、支線の下水管のキャパがオーバーした、ということでしょうか?

被災された方には心よりお見舞い申し上げます。

(ではまた。)

September 4, 2005

ポケバイの英才教育

昨日、はるばる千葉のショートコースまで一家でゴルフの練習にでかけたところ千葉北インター出てすぐのところのポケバイのコースが目に入ったので、帰りにちょっと見学を。
ウサワには聞いてましたが、幼稚園から小学校低学年くらいのちびっこ達が、膝のパットを擦りながら、すごいスピードでコーナーリングしていくんです。

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我が家の数軒隣に住む、某外資系タイヤメーカーにお勤めの方も、小学校3年生の息子さんをここまで連れて行ってまして。先日はポケバイの全国大会まで出場されたとか。首都圏でバイクの練習をできるところって、ここくらいしか無いらしく、GPクラスの選手も何人かここから輩出しているそうで。

何事も子供を世界レベルに育てようとすると、お金がかかりそうですね。先日、ゴルフの横峯さくらのお父さんが、子供のころゴルフの練習場代等に月に30数万円(!)かけていたというテレビ番組を見て愕然。ウチがかけてるコストは1〜2桁低かった・・・。orz
さくらパパは、プロで初勝利する直前には、財布の中に数千円しか入ってないところまで金銭的に追い詰められてたそうで、決して「ゴルフは金持ちでないと強くなれない」とは言えないとは思いますが・・・・・・「金がかからないスポーツ」とも言えないですねえ。

(ではまた。)

September 3, 2005

「暴力」とは何か

この夏、駒大苫小牧高の事件を見て思ったこと。

相撲部屋で親方が竹刀で弟子を叩いているのは、あれは「暴力」なのか、「指導」なのか。

「格闘技」はアリだけど、「野球」だからダメなんすかね?
「プロ」はいいけど、「アマ」はダメとか?

(ではまた。)

September 2, 2005

専門家のモバイルパソコンと情報セキュリティ

前回、PanasonicのLet’s Note「T2」を買ってから1年ちょっとしか経ってないのに、後継の「T4」を買っちゃいました。

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監査法人や法律事務所でも、Let’s Noteをまとめ買いしてるところをよく見かけますよね。今回、私が注目したのは、軽さと頑丈さ、電池の保ちが(公称)12時間と格段にアップしたということの他に、セキュリティ機能の強化が大きいです。
WindowsXP自体のファイル暗号化機能に加えて、ハードディスク自体にパスワードを設定し、その暗号鍵をTPM(Trusted Platform Module)という専用チップ側に持たせています。パソコンのハードディスクを外してアタックされる場合の強度が増してるわけです。
機密度の高いデータを持ち歩く職業の場合、こうしたデータの入ったパソコンを(もちろん、紛失しないように最大限の注意を払うのは当然として)、紛失した時にも最悪の事態にならないようにする必要があるかと思います。

先日、パソコンを紛失して新聞記事になっちゃった某監査法人のエラい方と話をしていたんですが、聞けば、「あのパソコンはちゃんと暗号化はされていたんです」とのこと。おまけに、パソコン自体のパスワードだけでなく、調書のシステムに入るためにもさらにパスワードが必要だったり、伺う限りではかなりちゃんとセキュリティ対策をしてらっしゃった模様です。

通常それくらいやってあれば、(専門家がそのパソコンを狙って盗んだのでもない限り)、中のデータを盗み見られるということはまずは無いかと思いますが、「金融庁の見解では、『見られたかどうかがわからないので、それは事故に当たる』ということになった」とのこと。

紛失した場合に、技術的にどこまでやっていれば金融庁さんに許してもらえるのかというのは、非常に興味ありますね。例えば、間違ったパスワードを5回くらい入れると、スパイ大作戦風にデータが全部消えちゃうとか。または、(もうちょっとブロードバンド環境が整ったら)、持ち運ぶノートパソコンはもっとthinクライアント的にして、データはすべてサーバー側に置いておき、ノートパソコン自体にはデータを一切残さないようにするとか。(それはそれで、サーバー側と通信部分とに別のリスクが出て来ますが。)

大手監査法人は組織もデカく、国際的な提携も進んでいて、社内にセキュリティの専門家もいらっしゃいますので、情報セキュリティについての態勢もそこそこのレベルにはなっているのではないかと期待されるわけですが、例えば法律事務所の情報セキュリティ運用レベルってどうなんでしょうか。今は数百人規模でも、つい十年前までは個人商店っぽい運営をしてたりするとすると、事務所の情報セキュリティ方針についてリーダーシップを取るべき上層部の方はあまり、「暗号化をどうするか」といったことには興味なさそう。パソコンに入ってるデータの「ヤバさ加減」では、監査法人よりも法律事務所の方がさらに上でしょうし。

最近の監査法人は一人一台ノートパソコンを持たせて調書をすべて電子化する方向ですし、法律事務所などでもノートパソコンを使うところは増えてきてますので、そうした専門家の持ち歩くノートパソコンは、すでに日本全体で1万台単位になっているはず。
前述の監査法人さんは真面目に金融庁に届け出たわけですが、よく考えたら、すでに1万台以上存在するパソコンのうち、その1台しか紛失してないというわけは無いですよね? つまり、「紛失したけど表面化していない」パソコンももっとありそうです。

・・・と考えると、ちょっと怖くなって来ますね。

(ではまた。)

September 1, 2005

コンラッドに行ってきた

宿泊施設系再生案件の参考にでもと思って、8月の平日にコンラッド東京に行ってきてみました。
コンラッド東京は7月にオープンしたばかり。「コンラッド」というのはヒルトンの創始者の名前で、ヒルトンの最高級ブランドだそうで。気をつけてみると、まだオペレーションにちょっとたどたどしいところが無かったわけではないですが、さすがに明らかな粗相があるわけでもなく、「高級感あるのに初々しい」、というめったにできない体験をしたという感じです。

フロントのおねいさんに聞いたところ、HRはヒルトンからごそっと移ってきたというよりは、(一部そういう人もいるものの)、ほとんどは(当然ですが)新規採用とのことです。


エントランス。
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下の写真は、エレベータホールに続く廊下ですね。
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(確か)コンシェルジュのデスク。
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客室階の廊下。
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部屋です。
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ベッド。夕方ごろ上品なメイドさんが二人でベッドメイキングしにきてくれる。
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ベッドメイキング終了後、よく見ると、ピンク色のコンラッドくまちゃんが。
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風呂。
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風呂にも、コンラッドあひるちゃんが。
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洗面。ミラーに風呂(ガラス張りエッチ系)が映ってます。
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資生堂と共同開発したというシャンプー類。(あまり関係ないかと思いますが、最近聞いたところによると、資生堂って、ヨーロッパなどだと(でも)高級ブランドのイメージがあるそうで。)
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電話類。館内で使える携帯電話付き。
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「Star Service」というボタンがあって、ここですべてのサービスを受け付けてくれます。
「フロントは01」「ランドリーは07」「ルームサービスは0X」とか、分かれてないわけですね。言われてみると、なぜ他の高級ホテルで分かれるのかのほうが不思議であります。
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部屋には望遠鏡も。
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なぜなら。ここは「汐留駅前」と言えば聞こえはいいですが、新橋から歩いたりするとえらい遠いわけです。そのかわり都心なのにリゾートというか、ベイブリッジから浜離宮までが一望できる都内でもトップクラスの眺め。浜離宮が再開発されてビルが建ったりしない限り、この眺望は永遠なわけですね。
ナイス、森トラスト(さん)。
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ペイパービューのテレビのお値段はちょっと高め。(1,890円)
2人で映画館行くよりは安い、という料金設定でしょうか。
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部屋には、コンラッド・オリジナルのCDがあって、なかなかおしゃれっぽい音楽が入ってます。
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で、通信環境ですが、なんと部屋にLANケーブルを置いていない。しかも、インターネット有料ですと。(グランドハイアットは部屋にちゃんとケーブルがあったぞ。)

思うに、映画のペイパービューやルームサービスのように、ホテルにとって変動費が発生するものは、高い料金をチャージされても「ま、しゃあないか」という気になりますが、例えば地上波のテレビを見るのにお金が取られるとしたら、場末のビジネスホテルみたいですよね?
固定費的なものからお金を取ると、高級感薄まるんじゃないでしょうか。

「?」と思ったのは、その点だけで、後は概ね大満足でありました。

(ではまた。)