March 3, 2010

日銀が国債引受けを行うとインフレになるのか?

池田信夫さんが「日銀が国債を引き受ける日」というエントリを書かれているので、日銀の国債引受けについてちょっと考えてみました。

 

日銀が国債を引き受けることは財政法で禁止されているが、国会が決議すれば可能である。かりに国会で「日銀は国債を100兆円買い取れ」という決議が行なわれたら、白川総裁以下、現在の日銀理事は全員、辞任するだろう。それに代わって亀井氏が(議員辞職して)日銀総裁になり、理事をすべてリフレ派に入れ替えれば、「無責任になることにコミット」できる。

 

と、このシナリオについては、なるほどそうなるのかも知れないなと思いつつも、

 

市場はどう動くだろうか。国会決議が行なわれる見通しになった段階で、国債が売られて暴落し、入札が成り立たない事態も考えられる。このとき日銀が国債を引き受ければ国債は消化できるが、市中に大量の通貨が供給され、インフレが起こるだろう。これによって円が暴落すると輸入物価も上がってさらにインフレになり、70年代のように物価が40%以上も上がることは十分考えられる。

 

という点についてはどうでしょうか?

 

仮に「国債が大量に市場にバラまかれそうだ」ということなら、国債の市場での消化が困難になって金利があがるはずですが、日銀が国債引受けをするというのは国債が市場を通らないということです。

市場の需給に影響がないとしたら、はたして国債は暴落する(金利が上昇する)んでしょうか?
(亀井大臣は国債を暴落させたくないからこそ、日銀引受けを持ち出して来ているはずで。)

 

これが例えば、上場企業が特定の第三者に対して増資を行う場合なら話は別です。
1株あたりの株主価値の希薄化が発生するものなら株価は下がるでしょうし、その出資者が後で市場に株式を放出しそうなヤツであれば、需給の悪化を懸念して株価は下がる可能性が高い。
しかし、国債は国の持分権ではありませんので希薄化が発生するわけではないし、「理事会メンバーがリフレ派に変わった日銀」は引受けた国債を握って離さないでしょうから、将来も市場での需給悪化が発生するとは期待できない。
理事会がリフレ派なんだから、金利が上がりそうならジャンジャン国債を市中から吸い上げようとするはずです。
日銀が引き受けてくれるのであれば、国債の償還も100%可能。金利が上昇する余地は無いんじゃないでしょうか。

もちろん、昨今の日本では例が無い施策なので一時的に混乱が発生することはあるかも知れない。
国債を売買する市場に参加してる人達というのは極めて数が少ないので、必ずしも合理的ではない話でも、期待が一方向にそろって、「日銀の理事会がリフレ派に変わ」って国債吸い上げを開始する前に市場が投げ売り走る可能性はゼロでないのかも知れません。

 

しかし、「物価」となると関与する人の多さや複雑さの規模が桁違いになってきます。

モノの値段は、政府や銀行といった数百程度の主体が中心となって決めてるわけではなく、数百万の法人や1億人以上の個人が取引する市場で決まっているわけです。

リフレ派の人達と今回の池田さんの記事が共通していまいちよくわからないのは、「期待」だけで本当に物価が動くんだろうか?という点。

世の中のほとんどの人は新聞もろくに読んでないわけで、「日銀が国債引受けすることが国会で決議された」ということが伝えられたからといって、床屋さんが「カットシャンプー3000円だけど、明日から3200円にしよう」といった意思決定はしないでしょう。さばききれないくらい客が押し寄せてるならともかく、客がガラガラなのに値上げするアホな床屋はいない。
スーパーマーケットの店長も、近所のライバル店が値引きのチラシ配ってるのに「牛乳の価格を上げてみるか」てなことは思いつかない。価格は競争で決まってるからです。
一般の人は経済学の知識があるわけではないので、自分の目の前の状況が直接変わらない限り、「価格あげられるかも」「価格が上がってもしゃーないか」という判断にはならないはず。

 

池田さんも以前書いていたように、物価上昇に効果があるのは、単に日銀引受が行われることではなく、それで得た資金を政府が財政政策でガッパガッパ使って、民間のいろいろな財市場で供給が間に合わなくなり、実際のそれぞれの企業の意思決定者の目の前で「価格、上げても買ってくれそうだな」という状況が発生する必要があるのではないでしょうか。

新聞に記事が載っただけでは、物価の上昇には繋がらないと思います。(ほとんどの人はそんな記事読んでないんだから。)
「インフレ目標掲げただけでインフレが起る」なんてことを思いつく人は、実際に企業でマーケティングやったり価格を決める現場にいたことが無い人なんじゃないか、と思います。 (そういう経験があれば、大衆に「期待」を抱かせるのがいかに難しいか、価格を上げるのを納得させるのがいかに難しいかというのは身にしみているはず。)

 

では、政府が財政政策でガッパガッパお金を使えるかというと、これもそれなりに厳しそうです。
公務員の給料を下げたり、高速道路も途中で建設やめるとか、スパコンはダメだとか、財布の紐を締めるケチくさい話が蔓延する中で、50兆円、100兆円の支出を追加しようなんてことができるんでしょうか?
(そんなに何に使うの?)

 

というわけで、「国債が大暴落する」「ハイパーインフレが起こる」というのは、(池田さん池尾さんも繰り返し書かれているように)、日銀が資金供給量を増やしただけで必然的に発生する話ではなく、財政支出が大量に行われる予算も決議されないと説得力が無い。
日銀が国債引受けする恐ろしさも、別の角度からの説明が必要なのではないかと思う次第であります。

 

(ではまた。)

 


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コメント

経済素人ですが池田さんの意見はおかしいと思いました。
調達した100兆円が政府の借金返済(国債の償還)にあてられるのか、ヘリコプターで国民にまかれるのかでは話が全然変わってくると思います。
ヘリコプターでまかれると金融資産をもっている老人達は大ダメージですが、果たして多数派である老人に選ばれている日本の政治家がそんなことをするでしょうか。
私が政治家なら調達した金で国債を買い支えますね。つまり借金返済=国債の償還。残念ですが若者達には末長く苦しんでもらいます。
それが多数派が勝つ民主主義です。

債権価格って床屋の値段に比べれば、格段に"期待"で動くものだと思いますよ。リーマンショックの時の物価連動債の下げっぷりはすごかったですし。
今の国債価格は将来の期待物価が低いのと、円安期待などのバランスでもってるようなもんだと思います。
期待物価が高まれば、十分国債価格が暴落する素地はあるんではないでしょうか。

あと近所の床屋と債権とじゃ 価格の決まり方の露骨さがかなり違うんでしょ。アメリカの債権に変えるのは簡単でも、中々床屋はアメリカまで通えないですね(笑)

まぁ、なんでも良いけど将来の見通しが安定するってのが、一番良いことなんですが。

どんな「期待」が発生するかということかと思いますので、具体的なプロセスのイメージを考えてみました。
http://www.tez.com/blog/archives/001595.html

ご参考まで。

そうですよね。問題は政府が使えるのような公共事業的政策があるのか?って話なのですが。

無利子国債で調達した資金を政府が使えればいいわけですよね。

1.リニア(空港を結び、複数の空港を一体化する。)
2.JRのリニア
3.宇宙港
4.全家庭にエコキュートと太陽光パネルを補助金で。
5.野菜工場・穀物工場・栽培漁業施設(マグロなど)への補助金。
6.宇宙開発資金(宇宙工場・宇宙発電・コロニーなどなど)
7.ロボット技術関連への補助金など

などなど、未来につながるインフラ投資はいろいろあると思います。100兆円や200兆円はすぐ使えると思いますし、無駄ではないと思います。リスクがあっても、政府紙幣でも日銀引受のゼロ金利国債でやるべき時期にさしかかっていると思うのですが。

もちろん、民主党のようなケチ臭い政党では無理ですから、それが実行できるような政党へと政権交代が必要だと思います。

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