「知識人とは何か」+「アーリーアダプター宣言」

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taejunさんからサイードの 知識人とは何か

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)
エドワード・W. サイード
平凡社
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という本を送っていただきました。

「著者謹呈」というのはいただくことがありますが、わざわざ買って送っていただいて申し訳ない。
ありがとうございます。

添えられていた手紙に、

47thさんのブログで紹介されていたので、すでにお読みになったかも知れませんが・・・

とありましたが、実際そのとおり!でして、47thさんの記事を読むなり即座にAmazonで注文して、既に1冊持っておりました。

だって、「あの47thさんを再びブログに引き戻した本」ともなれば、読みたくならないわけがないじゃないですか!

しかし、先月一読した感想としては、あまりピンと来なかったというのが正直なところでありました。

で、今回、送っていただいた本をもう一回読ませていただいて「ははーん」となんとなく理解できたのは、この本は、47thさんやtaejunさんのような「拠って立つところがしっかりある人」にとってこそ新鮮な感動がある本であって、私のような「テキトー」な人間には、ある意味あたりまえ過ぎるお話だからピンと来なかったのかも知れない、ということ。

私は、大学からして「在野」を標榜するところでして。
(「在野」のなんたるか、卒業生がみんなそういうスタンスで生きているかどうか、はともかく)。

卒業して就いた仕事もそうで、

コンサルティングにもいろんな「流儀」があって、(税務とか法律とか人事とか建設とか流通とか)きちっとした体系的な知識や形式に従ってコンサルティングを提供される専門家の方も多いと思いますが、私がやっていたのは、美術館とかノンバンクとかインターネットとか、あまりコンサルティング体系が確立されてない、「エマージング」「マージナル」な領域の話がかなりの比率を占めましたし、
コンサルタントのほうが知識的に優っているのが本来 楽なのですが、プロジェクトの開始時にはクライアントの方が圧倒的にプロとして知識がある「情報の非対称性」があるところに、(サイード氏がいうところの「アマチュア」として)ノコノコ入り込んで行って、3ヶ月なり半年なりで、(納得していただけたかどうかはともかく)クライアントが納得するアウトプットを作らないといけなかったわけです。

また、唯一ちゃんと勉強したともいえる公認会計士の仕事の体系というのも、専門的な「知識」もさることながら、「いかにクライアントからの独立性を保つか」ということが大きな柱の一つとしてあるわけでありますし。現在も、社外取締役とか社外監査役など、「外」の人間として企業に関わっておる次第であります。

つまり、著者のサイード氏に言われるまでもなく、私の人生はずっと、「専門家」とか「われわれ(内部)」というよりは、「アマチュアリズム」で「外部」だったわけです。

だから、私があこがれるのはむしろ、サイード氏が否定的なニュアンスで言う「専門家」なんですよね。
そして(しかし)、私は今まで「専門家」になりたいと思ったことは一度も無いし、すでに体の芯まで「アマチュアリズム」に染まっているので、「専門家」になれる気もまったくしないです。

その30年に及ぶ「外部」の「アマチュア」の経験を通して、そうした自分より専門性の高い人たちに話を納得していただくための「鍵」は何かと言えば、「信頼できるデータ」と、そのデータに基づく「合理的な推論」、ということに尽きるのではないかと思います。

日本語で「知識人」というと、「(静的な)知識」をたくさん持っている人、というように聞こえますが、原語の「intellectual」というのは、「情報自体を収集し、推論し、それを利用する人」という、もうちょっと「動的」なニュアンスを感じます。
(CIA=「Central Intelligence Agency」の「intelligence」が、日本語の「情報」とか「知性」というニュアンスとちょっと違うのと同様。
「intelligence」が体育会系・技術系なニュアンスを感じるのに対して、「intellectual」はもうちょっと文科系的でお上品な感じがしますが。)

日本語でいう「知識人」と呼ばれたいと思ったことは生まれて一度もありませんが、上記のような理解でいいとすると、「intellectual」というのは、ちょっとカッコいいかも知れませんね。

 

VCASI公開フォーラム 『コーポレーション』で聞いた「アーリーアダプター」の話

話が変わるようですが、先日3月28日に、VCASI(ヴィカシ)(仮想制度研究所)からお誘いいただきまして、第4回VCASI公開フォーラム 『コーポレーション』 というフォーラムに行ってまいりました。

これは、企業などを含む広い意味での「コーポレーション(社団)」について、

(1)認知科学の成果を取り入れたコーポレーション概念の理論的検討

(2)日本・西欧・イスラーム・中国における社団組織の比較分析、

(3) (1)(2)を踏まえたコーポレート・ガバナンスや雇用問題の検討

といった観点から検討しようというフォーラム。

こちらのページ から、YouTubeの動画も見られます。)

三部構成で、

第1部 コーポレーションの本質を再考する—認知システムとしての側面から
報告:青木昌彦(VCASI主宰、スタンフォード大学名誉教授)
        植田一博(東京大学大学院総合文化研究科准教授;VCASIフェロー)
ディスカッション:瀧澤弘和(多摩大学グローバルスタディーズ学部准教授;VCASIフェロー)
谷口和弘(慶応義塾大学商学部准教授;VCASIフェロー)

第2部 パネル・社団組織・思想の比較歴史
コーディネーター:中林真幸(東京大学社会科学研究所准教授;VCASIフェロー)
パネリスト:源河達史(新潟大学超域研究機構准教授)
池上英子(New School for Social Research教授;VCASIフェロー)
季衛東(上海交通大学法学院院長、神戸大学法学部教授;VCASIフェロー)
酒井啓子(東京外国語大学大学院教授;VCASIフェロー)

第3部 パネル・経済危機はコーポレート・ガバナンスについて何を示唆するか?
    特に人的資本との関係において
コーディネーター:鶴光太郎(RIETI上席研究員;VCASIフェロー)
パネリスト:池尾和人(慶應義塾大学経済学部教授;VCASIフェロー)
久米郁夫(早稲田大学政治経済学部教授;VCASIフェロー)
宮島英明(早稲田大学商学学術院教授;VCASIフェロー)
守島基弘(一橋大学大学院商学研究科教授;VCASIフェロー)
新原浩朗(経済産業省経済産業政策局産業組織課 課長)

というような豪華メンバー。

(事前には第3部が一番見たかったのですが、用があって当日は見られませんでした。)

一番「おっ」と思ったのが、植田一博東京大学大学院総合文化研究科准教授が、博報堂さん等と共同で行った研究。

マーケティングで使う下記の図は非常に有名ですが、

EA.jpg

自動車や携帯電話など、企業の研究開発の現場でどのようなことが行われているかという調査を行うと、実は、研究開発部門など「イノベーター」の人たちは、新しいアイデアを出す度合いが非常に低く、逆に、新しいアイデアを出し、情報が一番激しく流れているのが、「アーリーアダプター」層だった、というお話でした。

というわけで、私は長い間、「専門家」や「イノベーター」に敬意やあこがれを抱きながらも、自分は、どう考えても「アーリーアダプター」であって、世間の中では決してものごとに飛びつくのが遅い方ではないけれど「一番」ではない、ということに非常にアンビバレントな気持ちを持っていたのですが、この植田氏の研究を聴かせていただいて、

「そのまま、アーリーアダプターでいいんだよ」

と言っていただいたような気がして、非常に心が救われた気持ちになりました。

(ではまた。)

 

———————-

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というわけで、今まで「外部」でいるための独立性の確保という観点から、仕事の種類や顧客は極力diversifyしてきたのですが、大組織ならともかく小さな事務所では一つ一つの仕事の全体に占める比率はどうしても高まらざるを得ませんで。

そんなとき「まぐまぐ」さんにお声がけいただきまして、ネットの時代だからこそできる「究極のdiversification」は「コモディティ化」だなあと思いまして、上述の「信頼できるデータ」と、そのデータに基づく「合理的な推論」、ということをテーマにしたメルマガ「週刊isologue」を創刊してみた次第であります。

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* 発行周期: 毎週月曜日(臨時増刊の可能性あり。)

* 値段: 840円/月(税込)ただし、申し込まれた月はお試しで無料です。

今申し込んでも、当月分のバックナンバー(創刊号)も送られてきます。

年間で均して一通200円弱という設定が高いのか安いのか悩んだんですが、新聞や雑誌の過去記事をネットで見るのも、ベタ記事まで入れて100円から400円程度なので、そんなに大はずれな金額ではないのではないかと考えた次第です。

みなさま、ご購読のほど、よろしくお願いいたします。<(_ _)>

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「知識人とは何か」+「アーリーアダプター宣言」” への4件のコメント

  1. 訳の分からない押し付けっぽくなってしまって済みません。
    久しぶりにかなり痛い経験をしました・・・^^; 良い授業料だと思って、今後気をつけます!

  2. え、そんな・・・恐縮していただくと困ります。
    書き方が至らなかったのかも知れませんが、モンクを言ってるわけじゃなくて、今回送っていただいて、やっとこの本と自分の関係がすっきり腑に落ちたので、taejunさんへの感謝の気持ちを述べたかったということであります。
    改めまして、どうもありがとうございました。<(_ _)>
    取り急ぎ。
    ではまた。

  3. 47thさんのブログで興味深かったのは、知識人よりも、むしろ、Mr. ChildrenのHANABIの一部を引用してたことですね。磯崎さんのブログにも同じ歌の一部を引用したエントリーがありましたね。ミスチル、そんなにいいですかね(笑)。

  4. >ミスチル、そんなにいいですかね
    昔からミスチルのファンだったということもないんですけど、HANABIは気に入ってます。
    前にも書きましたけど、これは「市場経済」とか「法化社会」のことを歌ってるようにも聞こえるし、「バブル再来待望論」にも聞こえるし、小泉首相再任の可能性がまだ残っている時には「小泉首相再登板待望論」にも聞こえたりしました。(笑)
    (ではまた。)