「もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら」(続き)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

おおすぎ先生から、「もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら」にコメントいただきました。
もったいないので、コメント欄でなく本文で返信させていただきます。

(不正確かもしれませんが)ヴェーバーによると、19世紀(後半?)の近・現代的な意味での資本主義の勃興(イギリス・オランダ・アメリカ)には、カトリックでもなく、ルター派でもなく、カルヴァン派(=現世肯定・勤労奨励・節制奨励・貯蓄奨励)の精神がたまたま合致していたということですよね。


そう理解しております。

「資本主義」の誕生後は、日本やドイツの成功例もありますが、まさに「資本主義」の誕生の必要条件が論じられているのだと思います。

 
(このヴェーバーの研究についても、世間にはいろいろ疑念がないわけではないようですが、それは本題ではないので、ここではさておかせていただくとしまして。)
(念のため申し上げておきますと)
ヴェーバー(ウェーバー)は「資本主義」について論じてるんだろうと思いますが、私が「もしアメリカ大陸がなかったら」や「もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら」で思考実験として検討したかったのは、(「資本主義」というよりは)「自由」や「(今風の)市場経済」が誕生したのが「必然」なのか「偶然(幸運)」なのか、ということであります。
「自由」と「資本主義」が表裏一体か?というと、必ずしもそうでもないんじゃないかと。
例えば、「自由」という概念が徹底していなくても産業革命は起こったでしょうし、「資本主義」も発達したような気もいたしますが、少なくとも今の「情報通信革命」や「金融技術革命(?)」は「自由」という概念なしでは存在し得なかったと思います。

 ただ、私は、もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら、中国人が移住して現在のアメリカに近い国家・社会を作っていたような気もします。

 
「歴史のif」におつきあいいただきありがとうございます。
これはもう「歴史のif」というだけあって、真面目に深く考察するのも無理があるかと思いますが、おおすぎ先生がどのへんの要因から「気がする」のかに非常に興味あります。:-)
例えば、中国本土にいらっしゃらない華僑の方々の「気質」から考えると、私も直感的には、中国の方々は非常に「市場経済に向いている」のではないかという気が濃厚にするわけです。
しかし、放送大学の、「進化と人間行動(’07)」や「文化人類学(’08)」で諭されるのは、そうした民族の気質が「遺伝子的な意味での人種」から発生すると説明するのはちょっと無理がありそうだ、ということです。
とすると、歴史的・文化的な流れで見る必要があろうかと思いますが、1492年当時の中国は「明」の時代で、その後「清」になるわけですが、1215年にマグナカルタが制定されて、「王様といえども法に従うべきだ」といった概念が導入されていたイギリスと、当時の中国とはかなり異なる文化的風土であった気がします。
「現世肯定・勤労奨励・節制奨励・貯蓄奨励の精神」だけで言うと、それはむしろ、まさにアジアがお手のものとするところじゃないかと思います。しかし、「自由」という考え方の元になるような(カルヴァン派的な「予定説」をはじめとする)発想が、当時のアジアでそこそこのボリュームを占めていたのかしらん? という気がします。
(また歴史に詳しい方にオコられるのもいやなので念のため申し上げておきますと)、「自由ということを考えた人が一人もいなかった」、と申し上げているわけじゃなくて、やはり、そういう信念を持った人々がそこそこのボリューム存在し、そういう人が大挙して新天地に押し寄せないと、「自由」という考え方が力を握ることにはならなかったんではないかと思うわけです。
「アジア人では科学技術は発展させられなかった」と申し上げているわけじゃなくて、前述のとおり、産業革命などの技術革新は、そういった体制下でも発生したと思います。
しかし、「自由」がなくて、「現世肯定・勤労奨励・節制奨励・貯蓄奨励の精神」だけで科学技術が発展した社会というのは、もうちょっと「中世的」な、(例えば「デューン(砂の惑星)」
 

 
的な)世界になる可能性が高かったんじゃないかとも思います。

 最近のアメリカの経済の仕組み(借金してでも消費する・消費させる)はカルヴィニズムとは最も遠いような気もしますし、

全く同感です。
 

イギリスからの移住の後しばらくの間は、アメリカでは「法」は蔑まれ、疎んじられていた(田中英夫『英米法入門』のどっかに書いてあった)という点なども考えると、

 
この本でしょうか。
 

英米法総論 上
英米法総論 上
posted with amazlet at 09.02.04
田中 英夫
東京大学出版会
売り上げランキング: 168554
おすすめ度の平均: 5.0

5 「英国の議会主権」のことなど
5 最適な英米法入門書

英米法総論 下
英米法総論 下
posted with amazlet at 09.02.04
田中 英夫
東京大学出版会
売り上げランキング: 127471
おすすめ度の平均: 5.0

5 最適な英米法入門書

 
「『法』が蔑まれ、疎んじられていた」というのは、非常に興味深いです。
ローマ以来、ヨーロッパには、「法」に対するリスペクトが脈々と流れていたようなイメージがあったんですが、どういうことなんでしょうか。
購入して読んでみたいと思います。どうもありがとうございます。
 

「アメリカへの移住・アメリカの建国」の当時の要因から現状(=アメリカ的な「自由」)が生まれたというのではなく、途中で少なくとも1回のねじれがあったと考えるのが素直ではないかと思います。
 素人のコメントで、失礼しました(笑)。

 
「途中で違っちゃった」というのは、その通りなんでしょうね。
それは、「ねじれ」かも知れませんし、進化生物学的
 

クジャクの雄はなぜ美しい?
長谷川 眞理子
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 95596
おすすめ度の平均: 5.0

5 進化の案内書;大幅な改訂でさらに魅力アップの第二版

 
に見ると、ランナウェイ仮説のように、「進化」の過程で「暴走」した(ポジティブ・フィードバックがかかった)可能性も大いにあるように思えます。
「クジャクの雄の羽のツヤがいいのは寄生虫や病気への対抗力が強いことを表す指標だ」ということで雌に選好されていった結果、当初の目的とまったく違うことになっちゃった、みたいな。
(ちなみに、長谷川眞理子先生の研究によると、現在、すでにクジャクの雌は、雄を選ぶ際に「羽のきれいさ」では選んでおらず、鳴き声で選んでいるそうです。)
(続く)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら」(続き)” への3件のコメント

  1. 早速エントリーを頂き、ありがとうございました。
    (1)田中英夫先生のは、上巻の251頁でした。「『法』は蔑まれ、疎んじられていた」のではなく、正しくは「法律家に対する不信の念」でした(済みません)。久しぶりにこの本を開くと、187頁以下の植民地時代のアメリカの話が面白そうです。
    (2)磯崎先生の仰るように、たしかにアメリカ的な突き抜けた「自由」の起源には、ヨーロッパの文化、そして何よりもキリスト教があるように思います。それと関係あるのかないのか不分明ですが、「13世紀(だったかな?)頃にヨーロッパ(具体的にはドイツ)でキリスト教の持つ意義が変化する」、というか、「社会の構成原理が東洋とは明らかに異なるものになる」という趣旨の記述が、阿部謹也先生の御著書(おそらく『自分のなかに歴史をよむ』)の中にあったような記憶があります(手元に本がないので、あてずっぽうです。私の記憶力からすると、上記の「趣旨」は多分不正確だと思います)。
     磯崎先生が田中先生や阿部先生の本を読んでどう思われるか、大変に関心があります(

  2. (続き)
    「大変に関心があります」の後に入れていた文字列が、HTML文書のルールのせいか入らなかったみたいなので、(誠に間抜けでありますが)そこだけここに追記します。
    ← って、丸投げかよ〜)。あと、フランス革命(人為的に中性的秩序を排除した)についても、それをもたらした要因と、それがもたらした波紋の両面で気になります( ← って、言いっ放しかよ〜)。

  3. どうもありがとうございます。
    >正しくは「法律家に対する不信の念」でした
    これは、今のアメリカの「弁護士ジョーク」を考えても、まったく違和感ないですね。(笑)
    (ではでは。)