Wikimedia財団への寄付の税務について考えてみた

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(ごぶさたしてました。)
最近、Wikipediaにアクセスすると、バナーでさかんに寄付を募っているのにお気づきの方も多いかと思います。
Wikipedia Affiliate Button

ウィキペディアはウィキメディア財団(カリフォルニア州サンフランシスコに本部をおく501(c)(3)免税団体)により支援されています。アメリカ合衆国では寄付金分を控除することが可能です。

てなことが書いてあるわけですが、わたしゃアメリカで納税してるわけじゃないし、ウィキメディア財団に対する寄付が、寄附金控除とか寄附金の損金算入の要件を満たすなんてはずもなく、日本で税務上のメリットを受けようなんて、無理無理・・・・
・ ・・・と考えていたんですが、「ん?ちょっと待てよ?」、というお話。


まず、「2007年/2008年度の会計報告書を読む」というリンクから、ウィキメディア財団の収入の状況を見てみると、下記の通り。
pic2.png
ご覧の通り、収入の大半は寄付であり、しかも「たった」700万ドル(約7億円)で運営されている、ということのようですね。
これは、「ちょっと軌道に乗りかけたベンチャー企業」の売上程度にしか過ぎません。
コストの方は600万ドルくらいですから、お金が足りないというわけでもなさそう。
一方、ご案内の通り、「実態としてのWikipedia」は、ちょっと軌道に乗りかけたネットベンチャーどころか、Alexaで見ても世界8位に入る「スゴいメディア」なわけです。
そのメディアがこのコストで運営できてしまうんだから、いまどきのサーバ等のコストパフォーマンスはすごい。
ムーアの法則バンザイ!、であります。
Alexaで同10位の日本のヤフーさんと比較してみた図が下記。
pic3.png
(総合ではWikipediaはヤフーよりランクが上ですが、日本の人を中心としたヤフー(株)のアクセスに対して、世界中からアクセスがあるWikipediaは、Reachが大きく、PV(ページビュー)はヤフーより小さくなってます。)
EDINETで開示されている有価証券報告書のセグメント情報によると、昨年度のヤフーさんの年間広告売上は900億円弱だから、WikipediaのPV(ページビュー)が日本のヤフーの3分の1としても、気合いを入れれば年間300億円くらいの収入は稼げそうなもんです。
それでも広告を取らない、というところがスゴい。
「上場しろ」とは申しませんが、広告を取って金が余って困るなら、その金で何か知識普及のための公益的活動とかをすればいいのに・・・とも思います・・・けど・・・。

さて、税務の話に戻りますが。
このアニュアルレポートを見ると、「Benefactors」という記載があって、寄付した人の名前が載ってます。
一番大きいSloan Foundationは数億円単位の寄付をしているようですが、それも含めて5000ドル以上の寄付をしているのが、たったの22人(団体)で、意外に寄付の金額は小粒
1000ドル以上5000ドル未満もたった83人(団体)。(19ページ参照。)
しかも、日本人とおぼしき名前は、この1000ドル以上5000ドル未満のカテゴリ(SUSTAINING DONORS)で、
Tsuyoshi Goto
Joichi Ito
と、たったお二人のみ。
つまり、(ちょっと高いけど)1000ドル出すだけで、日本の名前はかなり目立ちます。
これは、広告効果の観点から「経費性あり」、とは考えられないでしょうか。
もちろん、サラリーマンの方などが寄附金控除を受けるのはちょっと無理かと思いますが、例えば、ちょっとネット関係の商売されてらっしゃる法人などで広告宣伝費として損金算入できる可能性は無くもないのではないかという気もします。(注:もちろん、1000万円弱以上儲けているような会社なら、1000ドル程度は、そもそも寄附金の損金算入限度額内に収まる可能性がありますが、そうでなくても。)
このアニュアルレポートがどのくらいダウンロードされるのかは存じませんが、なにせ、Wikipediaですから、それなりの数の人の目に触れるはず。
近所のお祭に寄付して寄付の名前が張り出されても数日ではがされてしまうし、慣行上、それを「広告費です」というのはかなり厳しいのではないかと思いますが、Wikimediaのアニュアルレポートなら何年も残るわけですし、特にネットの世界では「おっ!」という感じはするはずです。
(例えば金型を作ってる会社がWikimedia財団に寄付して損金算入できるかどうかはさておき)、ネットに関連する仕事をしているなど、Wikimedia財団のアニュアルレポートを読みそうな人を顧客層としている会社なら、一定の広告効果が認められることを想定できなくもない気もします。
日経新聞に1段の小さな広告を出しても、10万円以上は取られるわけで。考えようによっては、それよりははるかに大きな効果があるかも知れません。

見てもらおうとして、人の前で善行をしないように注意しなさい。さもないと、あなたがたの天の父のもとで報いをいただけないことになる。
だから、あなたは施しをするときには、偽善者たちが人からほめられようと会堂や街角でするように、自分の前でラッパを吹き鳴らしてはならない。
(新共同訳 マタイによる福音書6.1-6.2)

とも言いますので、私は仮に寄付などをしたとしても公言は避けるようにしたいところですが、この出費は一応、寄付ではなく「広告宣伝活動」になるんじゃないか、ということで、「私の氏名とメッセージを公開される寄付者リストに載せてください。」にチェック!。
pic1.png
来年から、「アニュアルレポートに名前が表示される寄付の下限が2000ドルになった」とか、上記のような解釈で損金算入して税務署から否認された・・・・といったことになったとしても、私めとしましては一切責任は負いませんので、あしからず。よろしくお願い致します。
それから、支払いはクレジットカード等のみのようですが、私はPayPalで支払ったところ、支払い者の名前を(例えば法人名などに)書き換えるページは出てきませんでした。コーポレートカードを使えば表示されるのかも知れませんが、法人名と異なる個人名だと、そもそもどう転んでも広告宣伝費にはみなされようもないと思いますので、ご注意を。
ではまた。

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Wikimedia財団への寄付の税務について考えてみた” への6件のコメント

  1. 1,000USDがたとえ損金不算入とされても4,000USD程度のdifですから、会社さんの規模によっては、広告効果がありそうですね。
    今回のエントリの影響で、損金不算入前提で寄付をする方も出てくるのではないでしょうか?

  2. ちょっと無理がある解釈に、コメントどうもありがとうございます。:-)
    来年のWikipediaのアニュアルレポートに、日本(人)の名前がずらずらずらっと並んでいたら、それはそれであんまり効果ないかも知れませんが。
    (ではまた。)

  3. コメントありがとうございます。
    でも、そのURLは時系列で、金額とかアルファベットでソートもできないので、特定の人を探し出すのは不可能で、広告効果としてはまったく無いですね。
    (ではでは。)

  4. あ、寄付者の金額別のページもあるんですね!
    URLの最後に「ja」とあるので日本分だけかと思ったら、世界でこれだけ、ということみたいですね。
    取り急ぎ、御礼まで。
    (ではまた。)