今時のインディーズ映画制作と金商法(規制のおさらい編)

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数日前のエントリで、ベンチャー企業のファイナンスには、金融商品取引法等による「コンプライアンス不況」は少なくとも直接には影響していないのではないか、という話を申し上げました。(もちろん、IPOのハードルがあがること等により、ボディーブローのように影響が出てくるとは思います。)
しかし、当然ですが、この規制強化が無視できない影響を与えている領域もたくさんあります。
その一例として、「インディーズ的な映画などの制作」があるんじゃないでしょうか。

「金融業者」でないと映画が作れない
先日、メールで、「映画を制作するのに数千万円程度の資金を集めたいのですが…」というご相談がありました。しかし、この手のご相談が、今、もっとも困っちゃうのであります。
つまり、結論からすると、金商法の施行により、今や映画を作るために資金を集めると、「みなし有価証券の自己募集」ということになり、「第二種金融商品取引業者」の登録を受ける必要があるということになっているのではないかと思います。
つまり、単に映画作りたいだけなのに、「金融業者」として登録をして金融庁の監督下に入れ、さもなくば三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金だぞ、ということかと。


普通に自主制作映画のようなものを作ってる人たちって、そういうことには気づいてらっしゃるんでしょうか?今までの日本では、「アート」と「ファイナンス」の人たちというのはまったく住む世界が違っていたので、気づいていない人も多いんじゃないかと思います。
真面目にアートに取り組んでいただいている方には大変申し訳ないんですが、一度、いい映画で有名な映画賞をもらった人が金商法違反で逮捕されたりして、外国のメディアに「日本はどうなってるんだ?」「法律が文化を破壊する国、ニッポン」てなことを書かれたりしたらどうなるかを見てみたい気がします。
カンヌやアカデミー賞の舞台等で、外国の俳優が、
「日本じゃ、金融業者にならないと映画作れないらしいぜ!」
といったジョークを飛ばして、会場大爆笑、みたいな。

「金融商品取引業者」になって映画を作るべきか?
もちろん、数十億円金を集めてメジャー映画作ります、という話であれば、コンプライアンスにコストや人手をかけることも可能でしょうし、どんなスキームでも組めるかと思います。(また、後述の通り、そういう場合にはそもそも金商法の規制を受けない可能性が高い。)
「金融商品取引業者」とか「登録」といったキーワードで検索すると、こうした登録のお手伝いをしてくれる行政書士さんなどのページがたくさんでてきますが、(また、もちろん「資金を集めて運用する」ファイナンス的な実態があり、金融業務の経験もあるような方なら登録すべきでしょうけど)、単に映画等を作りたいだけの人が、たかだか数千万円の資金を集めるために、資本金1000万円以上の株式会社等を準備して第二種金融商品取引業者の登録をして、行為規制等に耐えられるだけの態勢(内部統制のとれる組織や広告のチェック態勢など)を構築するなんてことをしなければならない社会的意義が、はたしてあるんでしょうか?
というわけで、前述のご相談の件ですが、
私は、「金融商品取引業者」になるということが、どのような組織内コンプライアンス態勢等が必要になるかということを想像するに、クリエイティブな活動をしている方に、「第二種金融商品取引業者になれ」なんてことは言いたくない。真面目に良質の映画を作ってる人に「なんとかなりませんか」と言われたら、なんとかお手伝い差し上げたいところではあるのですが、金商法を潜脱するような違法性の高いスキーム構築をお手伝いするわけにもいかない。
とはいえ、法律は法律なので仕方がない。以上のような法改正の要点を詳しくご説明して、「このような法改正が行われた結果、ご相談にみえてもお役に立てないと思いますよ」、ということを婉曲にお伝えしたつもりだったのですが、
「ホームページで見る分には親切に相談に乗ってくれそうだったのに、そういう言い方されると取りつく島がない。知識があるのはよくわかったが、性格に問題があるんじゃないか?」
的なことを言われまして・・・・どうも、不快な思いをさせてしまったようですみません・・・。(でも、取りつく島がないのは私ではなくて金商法の方だと思いますが・・・。まさかそんなひどいことになっているとは想像すらされてないでしょうから、もちろん悪気は全くないんだと思います。)
というわけで、罪滅ぼしというわけではないですが、以下、法令等の概要と、こうしたニーズの場合における、金商法の潜脱にはならない簡素なスキームの案を掲げて、映画等を制作される方のご参考にしていただければと思います。
なお、膨大な法令やパブコメの中から気づいたところだけを抽出したものですので、完全性を保証するものではありません。実際のスキーム構築の際には、弁護士、税理士等にご相談してください。

規制の概要
まず「みなし有価証券」について定義しているのは、金融商品取引法の下記の条文。

第二条二項
前項第一号から第十五号までに掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)及び同項第十八号に掲げる有価証券に表示されるべき権利並びに同項第十六号に掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)及び同項第十九号から第二十一号までに掲げる有価証券であつて内閣府令で定めるものに表示されるべき権利(以下この項及び次項において「有価証券表示権利」と総称する。)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし、次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。
(中略)
5 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項 に規定する組合契約、商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条 に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律 (平成十年法律第九十号)第三条第一項 に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律 (平成十七年法律第四十号)第三条第一項 に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)
イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利
ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)
ハ 保険業法 (略)
ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該権利を有価証券とみなさなくても公益又は出資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定める権利

(おそらく、普通に映画を作ってる方というのは、この条文を読んで理解することすら難しいんではないかと思います。映画を作ってる方々が「アホだ」と申し上げているのではなくて、こうしたややこしい条文を理解するには、普通の社会生活を行うには必要の無い特殊な能力が要求されるかと思います。
「弁護士ですら、そういう教育を受けていない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。ご参考:http://www.tez.com/blog/archives/001097.html。)
つまり、明示的に任意組合や匿名組合といった形式を採用する場合はもちろん、「儲かったらその分お返ししますよ」という約束をして資金を集めた場合には、すべて「集団投資スキーム」として「みなし有価証券」に該当すると考えられます。
そして、この「みなし有価証券」は、たとえ自分で資金を集める「自己募集」であっても、金融商品取引業者でないと行えません。(金融商品取引法第二条8項)

 この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為([略]を除く。)のいずれかを業として行うことをいう。
(中略)
七  有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
イ〜ホ (略)
ヘ 第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
ト イからヘまでに掲げるもののほか、政令で定める有価証券

金融商品取引業者になるとどういった規制がかかるのか、というのはこのへん

ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)
http://www.fsa.go.jp/common/shinsei/fund.html#main

をご覧ください。
以下のような規制がかかってきます。

(b)主な行為規制
主な行為規制として次の事項が定められています。
1. 顧客に対する誠実公正義務
2. 名義貸しの禁止
3. 広告規制
金融商品取引業者は、業務の内容について広告又は広告に類似する行為をするときは次に掲げる事項等を表示しなければならない。
(1)商号、名称又は氏名
(2)金融商品取引業者である旨及び登録番号
(3)顧客が支払う手数料等の対価に関する事項
(4)リスクに関する事項
(5)金融商品取引契約に関する重要な事項について顧客の不利益となる事実
(6)金融商品取引業協会に加入している場合は、その旨及び加入している金融商品取引業協会の名称
4. 契約締結前の書面交付
金融商品取引業者は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ、次に掲げる事項等を記載した書面を交付しなければならない。
(1)商号、名称又は氏名及び住所
(2)金融商品取引業者である旨及び登録番号
(3)金融商品取引契約の内容
(4)顧客が支払う手数料等の対価に関する事項
(5)リスクに関する事項
(6)契約締結前書面の内容を十分に読むべき旨
(7)金融商品取引契約の租税の概要
(8)金融商品取引業者及び行う金融商品取引業の概要
(9)顧客が金融商品取引業者に連絡する方法
(10)加入している金融商品取引業協会の有無及び加入している場合は金融商品取引業協会の名称
(11)有価証券の譲渡に制限がある場合はその旨及び内容
(12)集団投資スキーム(ファンド)の経理に関する事項
(13)外国の法令に基づく集団投資スキーム(ファンド)の場合は次の事項(略)
5. 契約締結時の書面交付
金融商品取引業者は、金融商品取引契約が成立したときは、遅滞なく、次に掲げる事項等を記載した書面を交付しなければならない。
(1)商号、名称又は氏名
(2)営業所又は事務所の名称
(3)金融商品取引契約の概要及び契約成立の年月日等
(4)顧客が支払う手数料等の対価に関する事項
(5)顧客の氏名又は名称
(6)顧客が金融商品取引業者に連絡する方法
(7)売付け又は買付けの別、銘柄、約定数量、単価、顧客が支払う金銭の額、取引の種類等
6. 禁止行為
(1)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
(2)顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
(3)顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為
(4)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
(5)金融商品取引契約につき特別の利益の提供を約し、又は特別の利益の提供をする行為
(6)金融商品取引契約の締結又は解約に関し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をする行為
(7)金融商品取引契約に基づく金融商品取引行為を行うことその他の当該金融商品取引契約に基づく債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させる行為
(8)顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又は顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
(9)集団投資スキーム(ファンド)持分について、出資され、又は拠出された金銭が、当該金銭を充てて行われる事業を行う者の財産と分別して管理することが確保されていない場合の募集等
(10)投資運用業に関して、自己又はその取締役若しくは執行役との間における取引を行うことを内容とした運用を行うこと
(11)投資運用業に関して、運用財産相互間において取引を行うことを内容とした運用を行うこと
(12)投資運用業に関して、特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は権利者以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない取引を行うことを内容とした運用を行うこと
(14)投資運用業に関して、通常の取引の条件と異なる条件で、かつ、当該条件での取引が権利者の利益を害することとなる条件での取引を行うことを内容とした運用を行うこと
(15)投資運用業に関して、運用として行う取引に関する情報を利用して、自己の計算において有価証券の売買その他の取引等を行うこと
7. 投資運用業に係る忠実義務、善管注意義務、分別管理義務、運用報告書の交付義務等
(c)行政処分
行政処分について次のとおり定められています。
1. 金融商品取引業者に対する業務改善命令
内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができます。
2. 金融商品取引業者に対する登録取消し命令及び業務停止命令
内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができます。
(1)金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき
(2)業務又は財産の状況に照らし支払不能に陥るおそれがあるとき
(3)金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき、等

銀行や証券会社に勤務されたことがある方などは、これがいかに大変なことなのかということについてイメージがわくかと思いますが、映画しか作った事無い方は、どういう事務を行えばいいかイメージすらできないのではないかと思います。
あまり深く考えずに金融商品取引業者になる道を選択すると、後で大変なことになる気が濃厚にします。
(要するに、なんかちょっと事務ミスをするたびに、法律上は、懲役とか罰金とかの可能性がでてきますので、金融商品取引業者が映画を作るということは、そうした懲役等の心配をしながら映画を作るということです。)
なんで懲役の心配をしながら映画作らないといけないんでしょうか。
また、ベンチャー企業等の普通の株式会社が増資をするのは金融商品取引業者にならなくてもできるのに、なぜ、「みなし有価証券」の場合には、(閾値の規程もないので)友達から100万円お金を集めるにも金融商品取引業者じゃないとできないんでしょうか?
ということで、例えば株のファンド等のファイナンス的なファンドをやるというならともかく、実態が「実業」である場合には、(少なくとも金融業の事務勘がある方以外は)金融商品取引業者になるという道はまったくおすすめできない。
「おおすぎブログ」によると、神田秀樹先生は、

日本では未だに「どうすれば規制を回避できますか」「どうしたら金商法の適用のないスキームにできますか」という問いばかりを聞く。(中略)横断化した法制を前にしてその適用を避けようとするスキームを熱心に研究するということはおかしいし、関係者の間にこうした態度があるとすれば、それは賢いとはいえない。(中略)

とおっしゃってるそうですが、神田先生をはじめとする金商法を検討された学者や弁護士等の方々って、「金融商品取引業者」の事務をちゃんとやるのがどのくらい大変か?というイメージがわかってらっしゃるんでしょうか?
金商法の適用を受けない方法を考えるというのは、非常に「賢い」ことだと思うんですが。

適用除外事項は非常に厳格に解釈される
ところがどっこい、金商法やその内閣府令等は「こんな規程逃れをするやつがいたらどうする?」ということを徹底的に考えて作られているので、その適用を逃れるというのは容易なことではない。
まず、出資者に「適格機関投資家」をまぜる、といった方法が考えられます。(金商法63条。)
実際、記事によると、みずほさんなどは累計で50億円も投資されているようですが
例えば「映画の専門学校を出てすぐだが才能あふれる新人」みたいな人は「適格機関投資家」とどうつきあっていいかもわからないという人も多いのではないかと思います。
(お好きかどうかはさておき)「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は3万ドルで作ったらしいですが、その程度のお金を集めるのに、いちいち「適格機関投資家」と交渉しないといけないのはどうなんでしょうか。
また、第二条2項5号にあるとおり、

イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利
ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)

といった場合も適用除外になりますが、「出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする」というのは、「いくら儲かっても、あんたには儲けはあげないよ。(損したらかぶってね。)」という意味ですので、そんな条件で映画制作資金が集まるわけがない!(「ふざけてんのか!」と怒鳴られるのがオチ。)
「イ」については、金融商品取引法施行令第一条の三の二で、より詳しく定められておりまして、

(出資対象事業に関与する場合)
第一条の三の二  法第二条第二項第五号 イに規定する政令で定める場合は、次の各号のいずれにも該当する場合とする。
一  出資対象事業(法第二条第二項第五号 に規定する出資対象事業をいう。以下この条及び次条第四号において同じ。)に係る業務執行がすべての出資者(同項第五号 に規定する出資者をいう。以下この条において同じ。)の同意を得て行われるものであること(すべての出資者の同意を要しない旨の合意がされている場合において、当該業務執行の決定についてすべての出資者が同意をするか否かの意思を表示してその執行が行われるものであることを含む。)。
二  出資者のすべてが次のいずれかに該当すること。
イ 出資対象事業に常時従事すること。
ロ 特に専門的な能力であつて出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該出資対象事業に従事すること。

となっております。
つまり、出資者「全員」が「必ず」決議をしながら事業を進めていくような場合とか、出資者「全員」がいつもその事業にベッタリ張り付いているとか、または、出資者「全員」が特殊な役割を持ってその事業に参画しているような場合には、「みなし有価証券」とはならないし、みなし有価証券でないということは、その出資を集めるのも、当然、金融商品取引業者にならなくても済みます。
たとえば、ジブリ映画を作るといった大規模プロジェクトの場合、ジブリ、徳間書店、日本テレビ、電通、三菱商事さんといった面々が参加する製作委員会は、参加者全員がそれぞれテレビ媒体、ローソンチケットといった「特殊な役割」を持ってらっしゃいますでしょうし、専任のメンバーをプロジェクトにアサインしているでしょうし、意思決定についての決議で集まるとか、議事録や決裁書類を作ると言った事務もできるでしょうから、おそらく、この製作委員会への出資は「みなし有価証券」にはならないようにされているのではないかと思います。
しかしながら、数千万円程度までの少額を集める場合には、逆に、出資者が常時そのプロジェクトに張り付くなんてことは考えにくい。お金を出してくれる人が見つかったら御の字で、その人に「特殊な役割」まで期待できるとは限らないでしょうし、すべての業務執行の決定について決議に参加してもらうなんてのも非現実的です。
「出資者がたまに口を出す」のではダメです。
パブリックコメント
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7/00.pdf
(2ページから12ページあたり)を見ると、「1回病気等で欠席したのでもOKとは言えない」的な、非常に厳格な解釈が取られているようですので、「金は出すから、たまには現場をのぞかせてもらったり意見したりするかも知れないけど、基本的には君のやりたいようにやりな。」といった「物わかりのいい」出資者の方から資金提供を受ける場合には、「みなし有価証券」に該当し、金融商品取引業者としての登録が必要になると考えられます。

この規制に意味はあるか?
もちろん、外形的に(平たくいうと書類を見た役所の方が)「いい映画制作者」と「映画制作の名を借りたアヤシゲな詐欺まがい行為」とを区別する方法はないし、2000万円とか3000万円というのは、(「ファンド」としては限りなく小さいですが)、詐欺まがい行為の金額としては決して小さくない。ですから、「投資家を保護する必要がある」と言われればそのとおりではあります。
一方で、普通に株式会社で2000万円とか3000万円を集める場合には、「金融商品取引業者になれ」なんてことは言われないのに、なぜ、「みなし有価証券」に限ってこれほどキツい規制を受けなければならないのか、まったくもって謎であります。今や資本金1円でも設立できる株式会社がそんなに偉いでしょうか?株式会社でもそういった詐欺まがい行為が行われる可能性はあるのだから、株式会社と同程度の規制を行えばいいだけの話じゃないでしょうか?
(あんまり言い過ぎると、「第二種金融商品取引業者にならないと、ベンチャー企業は株式を発行してはならない。(ただし経済産業大臣の認定を受けた場合を除く。)」といった規制が導入されるかも知れないので、このへんでやめときますが。)
こんな規制が行われたら、ハリウッドやフランスやインドだったら暴動が起こるのは確実ではないかと思いますが、日本では、映画、音楽、アート等の関係者が集まって、「金商法による文化破壊はやめろ!」といった集会が開かれたりはしてないんでしょうか?
今までの日本では、そういった活動というのは、大資本の映画会社の下で行われるものか、または親から借金したり手弁当の範囲内で行われるものがほとんどだったので、それで困る人というのはあまりいないのかも知れませんが、高性能なビデオや編集機材が激安になってきている今、そうしたインディーズ的な制作の芽を摘むというのが、せっかくアニメやマンガで盛り上がっている日本の戦略として正しいのか、大いに疑問であります。
(気が向けば、後編「金商法違反や潜脱にならないインディーズ映画の資金調達方法はあるか?編」に続く。)

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今時のインディーズ映画制作と金商法(規制のおさらい編)” への11件のコメント

  1. 私は、基本的に、金商法の幅広い有価証券概念の考え方を支持する者ですが、実際にそれほど大勢ではない人から資金を集めてインディーズ映画を真面目に作る人全てに金融商品取引業者としての登録を求めるというようなエンフォースメント活動は、金融庁や監視委員会としてやらないだろうし、やる必要もないだろうと思います。そういう人たちは、自分たちの行為が形式上金商法の規定に抵触している可能性を意識することもなく、別に問題なく暮らして行かれれば良いのではないでしょうか。
    現在のような法規制の意義は、そういう善意(?)の人たちに余計なコストを負担させることではなく、映画を作ると称して妙な金集めをし、結局最後は破綻して出資者に迷惑をかけるようなやからを「金融商品取引業を無登録で営んだ」というような形式犯として摘発できるようにすることにあるのだと思います。出資者ともめて問題を起こすような恐れはないと確信する映画製作者は、堂々と(?)金商法の規定を無視してお金を集めていれば良いのだと、私は思います。そのような社会的に何の問題もない行為まで、画一的に取り締まるような無駄なエンフォースメントをするほど、金融庁や監視委員会も暇ではないでしょう。きっと。
    現行法の施行後だったら、おりから話題のインチキ養殖池の件なんかも、まずは無登録営業で捕まえてというやり方ができたと思うのですが。。。

  2. こんにちは、久しぶりに投稿します。
    やっぱりある程度の規制は必要だと思います。この仮定であるインディーズ映画でも、俺今度映画作るからみんなもちょっとずつでいいから、お金だしてよっ!と言いながらお金が集まった時点でバックレてしまうということだってあるだろうし…
    とはいえ、おっしゃるように2種を取るのも意味がないとなると、2種業者さんにお願いするということで、新たなビジネスチャンスができるのではないでしょうか?
    例えば、適格機関投資家のハードルが下がりましたので、彼らが一口10万円で参加してあげる、けど全体のコンサルもしてあげるので、50万円払ってねとか…新興のベンチャーさんとかで有価証券を10億円以上お持ちであれば簡単にできちゃいますしね。

  3.  いつも楽しく拝見しております。
     仕事柄、会計関係の話はなんとか理解できますが、金融に及ぶと条文を見るのも・・・ でも、今回のようなメインストリームではないが、なんだか大事な事を徹底的に(わかりやすく!)解説してくれているエントリーはたまらなく好きです。
     コメントで、大崎様が 善意で作っている人は気にしないで良いんじゃないか という趣旨で書かれていますが、賛成半分反対半分だと私は感じました。
     
     いざとなると、『善意』をお上が判断することに怖さがあるわけです。最初は『善意』と認められていた監督さんも、徐々に作品が尖っていき『こいつは善意じゃねぇ』と誰かに目を付けられた時どうなるのかなと 思います。
     (法律を)網のように大きく広げておき、お上が気が向いたら、引っ張るような運用はどうなのかなと。

  4. 拙ブログですが、ミスリーディングであったようなので、補足・訂正させて下さい。
    神田教授ですが、某学会の事前配布資料では、上記のようにお書きになっているのですが、実際の報告では(伝聞ですが)ニュアンスの違う内容であったと聞いております(本来、自分のブログでも訂正・補足すべきですが、ビュー数が違うので、まずこちらに)。
    内容については、規制を逃れるスキームを工夫するというよりも、金額・人数等で適用除外の範囲を広げていくべきと考えましたが、実際の現場におられる方からみれば、私の考えでは生ぬるい(規制を美化しすぎている)ということかもしれませんね。

  5. 磯崎さんに相談をされた方が、これまでどういったレベルで映画製作に関わってきたのかはわからないのですが、「映画を制作するのに数千万円程度の資金を集めたい」のであれば、配給会社(小さな会社から大きな会社までいろいろあります)、ソフト販売会社、コンテンツ配信会社などに出資を募り、委員会方式で、出資者(社)「全員」が「必ず」決議をしながら事業を進めていくようにしたり、出資者(社)「全員」がいつもその事業にベッタリ張り付いていたり、または、出資者(社)「全員」が特殊な役割を持ってその事業に参画するようにすればいいのではないでしょうか? 小規模作品であれば、2〜3社で共同出資というケースもあります。相談をされた方は、「特殊な役割」を期待できるところから出資を募ることを考えていないのでしょうか? 逆に、なぜ「特殊な役割」が可能な会社から出資を募ることを考えないのかが理解できないのですが。

  6. >なぜ「特殊な役割」が可能な会社から出資を募ることを考えないのかが理解できないのですが。
    (私もよく存じませんが)、当然、真っ先にそういう会社と交渉したけど反応が冷たかった、ということなんでしょうね。
    ビジネスとして成功確率が高そうなものであれば、当然、そうした「特殊な役割」の会社も金を出すでしょうから、そうでないということはプロが見てもビジネスとしての成功確率も低そうということになり、ますます、「そうでない方」からの出資を募るというのは、金商法の趣旨からもビミョーな面が出てくるということになるかと思います。
    (ではまた。)

  7. [nekodemo]金商法とアートの資金調達について一言

    他にやることもあるのでブログを書いている場合じゃない気もするんだけど、書かずには

  8.  私は金融には(そして映画業界にも・・・)詳しくはありませんが、数千万で映画を作る方というのは、必ずしもビジネス的にペイすることを目指していなかったり(もしくは、傍目に勝算がない・・・)するんじゃないでしょうか。
     それに、金になる映画というのは、それこそ『善意』で良いのでしょうが、そうじゃない映画ほど、ややこしいテーマのドキュメンタリー映画なんかは、いざとなったりどうなってしまうんだ、 と思いました。

  9. >必ずしもビジネス的にペイすることを目指していなかったり(もしくは、傍目に勝算がない・・・)するんじゃないでしょうか。
    私もまったく詳しく無いのですが、千差万別のようです。
    以前、コンテンツ関係の方がおっしゃってたのは、例えば(ちょっとエッチっぽい)アニメとか、数千万円の投資でかなり確実に利益が見込める領域もあるようですし。
    先日ご相談された方は、「良心的な」映画を作ってらっしゃる方のようでした。
    どちらも潜在的に「トラブル」になりやすそうな要素は持ち合わせているのではないかと思います。
    (ではまた。)

  10. 大杉先生、
    >神田教授ですが、某学会の事前配布資料では、上記のようにお書きになっているのですが、実際の報告では(伝聞ですが)ニュアンスの違う内容であったと聞いております。
    某学会で神田先生のお話をナマで聞いておりました。私が聞く限り、神田先生は、ノー○○しゃぶしゃぶ事件で弱体化した大蔵省により、いったんは挫折した金融サービス法が、念願かなって一歩手前まで成就したのに(これは昭和の時代より神田ウォッチャーだった私の偏見かもしれませんが)、業者は抜け道ばかり考えるし、金融庁は重箱の隅をつつくような検査ばかりやってるし、「お前らいったい、何を考えとるんじゃ!」と呆れはてて、相当疲れておられるように感じました。
    磯崎先生、
    女子大生の一員として、「証券会社の規制」というタイトルで学生達(半分はピチピチのロースクール生)の前で報告を求められている姫は、大杉先生が引用されている神田Paperと磯崎先生の6月3日付エントリ「全米が泣いた!「アリバイより商売を」をネタに「業者規制の実態はこれだ!」という話をしようと画策しています。今回の磯崎先生のエントリも面白いので、どっちが未来の法曹にインパクトがあるか考え中です。

  11. 的外れかもしれませんが、ビジネス的にペイすることを考えないのであれば、いっその事カンパや寄付といった形式で資金を集めたらいかがでしょうか?最終的に残ったお金はどっかの団体に寄付してしまうとかして。
    ただ、これは何らかの趣旨に則った作品じゃないと使えないでしょうし、どれだけの出し手がいるかはわかりませんが。
    または、金融業者と組んでいくつかの作品をまとめて証券化してリスクを分散(全てこける可能性もありますが)させるとか。
    これはこれで組み込む作品についてファンドマネージャー(プロデューサー)の能力が問われることになるでしょうが。