「アリバイから商売へ」・・・「損失補填」で思考実験してみる

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

さて、金融機関がアリバイでなく商売を考えるようになるためには、立法や人事まで含めた「総合的な対策」でからまった糸をほぐしてやる必要があるんじゃないか、ということを申し上げてきました。
いただいたコメントを見ても、業界と監督官庁との関係は、まるで「共依存」関係のように見えます。
子供は(二十歳超えたいい大人なのに)「バナナがおやつに入るのか入らないのか、決めてくれないとわかんないよう」と言い、親は「私がいないとダメなんだから!」といいつつ子供を叱る。達成すべき目標は、「自立」(金融自由化、市場経済の活性化)なんだけど、「暴力を振るう夫とDVに耐える妻」のように、第三者が引き離そうとすると、実はお互いに相手に依存しあって自立を妨げている、という状況に陥っているのではないかと。


もしそうだとすると、第三者がよかれと思って両者の関係を引き離そうとしても、暴力を振るわれている被害者に見えた妻が、暴力を振るってる夫と別れるのを拒んだりしますし、その両者をヒアリングして言い分をいくら細かく分析してもだめで、一歩引いて俯瞰してあげないと、解決策は決して見えてこないはず。
ということで、実現可能性がどれだけあるかはともかく、「総合的施策」のうち、法改正(立法)に関わる部分について、「こういうことはできないのか?」と、考えてみたいと思います。
本当は、金融市場の活性化のためには、複雑すぎるインサイダー取引規制のスッキリ化、誰も理解できない強制TOB規制の改正(または廃止)など、バッサリと大鉈を振るう必要があるところは山ほどあるんじゃないかと思います。誰しも、そういうややこしそうなところは避けて、「株価が上がらないのは買収防衛策のせいだ」みたいな、短絡的でアホな方向に逃げ込もうとするんですが、抜本的な活性化のためには、本質的でない枝葉の問題に関わっていてもしょうがないと思います。
上記のような問題はあまりにデカいので、わかりやすいシンプルな例として「損失補填」の禁止規制について考えてみましょう。
損失補填禁止規定とは
Wikipediaで損失補填の立法趣旨を見ると、

  • こうした勧誘により投資家が安易な取引をすることにより投資家の自己責任原則が害されて、かえって投資家に不利益になる恐れがあること
  • 損失保証を巡る紛争の防止、
  • 証券会社の健全経営が損なわれる恐れがあること、
  • バブル崩壊で証券会社の経営に大きなインパクトを与えた

等があげられています。
ちゃんと教育を受けている金融界の方々は、「損失補填」は、「最も悪辣な証券犯罪」だと認識されていると思います。Wikipediaの記述を見ても、証券取引等監視委員会も、この損失補填事件に端を欲して創設された、とありますので、非常に「オオゴト」であります。
ところがWikipediaの損失補填の記述にもありますが、なんと、

損失補填を明文で禁止する立法は日本以外ではほとんど例がない

ようなのであります。
なぜ、外国にない規定が日本だけにあるのでしょうか?
もちろん、外国と違うからダメという短絡的なことを申し上げるつもりはありませんが、この規定の経済的な意味を考えた上で、思い切って、これをバッサリ切り取ったらどうなるか?という思考実験してみたいと思います。
損失補填禁止の規定が「商売」にどう影響するか?
一般的な産業においてマーケティングを考える場合には、顧客に何らかの財産的価値を与える、といったキャンペーン等を考えることがよくあるかと思います。しかし、金融界においては、たとえ少額であっても顧客に財産的価値を与えることについては、それが「損失補填」に該当しないかについて、極めて慎重に考える必要があるんじゃないでしょうか。なにせ相手は「最も悪辣な証券犯罪」ですので。(ただし、規定しているのは日本だけのようですけど。)懲役もあります。
「絶対に犯罪でない」ということについて「アリバイ」をちゃんと残しておかないと後で「逮捕」といったことになりかねません。
また、普通の業種で「CS (カスタマー・サティスファクション)」の話でよく出てくる話として、現場の社員が少額の予算権限を持っていて、顧客とのトラブルの際に臨機応変にそれを使う、といったことがあるかと思います。
ところが上述の通り、証券ビジネスでそんなことをやったら「損失補填」になってしまうわけです。
なぜかというのを条文で見て行きますと、

金融商品取引法
(損失補てん等の禁止)
第三十九条  金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一  有価証券の売買その他の取引(買戻価格があらかじめ定められている買戻条件付売買その他の政令で定める取引を除く。)又はデリバティブ取引(以下この条において「有価証券売買取引等」という。)につき、当該有価証券又はデリバティブ取引(以下この条において「有価証券等」という。)について顧客(信託会社等(信託会社又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第一条第一項 の認可を受けた金融機関をいう。以下同じ。)が、信託契約に基づいて信託をする者の計算において、有価証券の売買又はデリバティブ取引を行う場合にあつては、当該信託をする者を含む。以下この条において同じ。)に損失が生ずることとなり、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなつた場合には自己又は第三者がその全部又は一部を補てんし、又は補足するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
二  有価証券売買取引等につき、自己又は第三者が当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
三  有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
2  金融商品取引業者等の顧客は、次に掲げる行為をしてはならない。
一  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者との間で、前項第一号の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
二  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者との間で、前項第二号の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
三  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者から、前項第三号の提供に係る財産上の利益を受け、又は第三者に当該財産上の利益を受けさせる行為(前二号の約束による場合であつて当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求によるとき及び当該財産上の利益の提供が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
3  第一項の規定は、同項各号の申込み、約束又は提供が事故(金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人の違法又は不当な行為であつて当該金融商品取引業者等とその顧客との間において争いの原因となるものとして内閣府令で定めるものをいう。以下この節及び次節において同じ。)による損失の全部又は一部を補てんするために行うものである場合については、適用しない。ただし、同項第二号の申込み又は約束及び同項第三号の提供にあつては、その補てんに係る損失が事故に起因するものであることにつき、当該金融商品取引業者等があらかじめ内閣総理大臣の確認を受けている場合その他内閣府令で定める場合に限る。
4  第二項の規定は、同項第一号又は第二号の約束が事故による損失の全部又は一部を補てんする旨のものである場合及び同項第三号の財産上の利益が事故による損失の全部又は一部を補てんするため提供されたものである場合については、適用しない。
5  第三項ただし書の確認を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、その確認を受けようとする事実その他の内閣府令で定める事項を記載した申請書に当該事実を証するために必要な書類として内閣府令で定めるものを添えて内閣総理大臣に提出しなければならない。

という、金商法本文の趣旨を理解した上で、

金融商品取引業等に関する内閣府令
(事故)
第百十八条  法第三十九条第三項に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一  有価証券売買取引等(法第三十九条第一項第一号に規定する有価証券売買取引等をいい、有価証券等清算取次ぎを除く。イにおいて同じ。)につき、金融商品取引業者等の代表者、代理人、使用人その他の従業者(以下「代表者等」という。)が、当該金融商品取引業者等の業務に関し、次に掲げる行為を行うことにより顧客に損失を及ぼしたもの
イ 顧客の注文の内容について確認しないで、当該顧客の計算により有価証券売買取引等を行うこと。
ロ 次に掲げるものについて顧客を誤認させるような勧誘をすること。
(1) 有価証券等(法第三十九条第一項第一号に規定する有価証券等をいう。)の性質
(2) 取引の条件
(3) 金融商品の価格若しくはオプションの対価の額の騰貴若しくは下落、法第二条第二十一項第二号に掲げる取引(これに類似する外国市場デリバティブ取引を含む。)若しくは同条第二十二項第二号に掲げる取引の約定数値若しくは現実数値の上昇若しくは低下、同条第二十一項第四号若しくは同条第二十二項第五号に掲げる取引の当該取引に係る金融指標の上昇若しくは低下若しくは金融商品の価格の騰貴若しくは下落又は同条第二十一項第五号若しくは同条第二十二項第六号に掲げる取引の同条第二十一項第五号イ若しくはロ若しくは同条第二十二項第六号イ若しくはロに掲げる事由の発生の有無
ハ 顧客の注文の執行において、過失により事務処理を誤ること。
ニ 電子情報処理組織の異常により、顧客の注文の執行を誤ること。
ホ その他法令に違反する行為を行うこと。
二  投資助言業務又は投資運用業に関し、次に掲げる行為を行うことにより顧客又は権利者(法第四十二条第一項に規定する権利者をいう。)に損失を及ぼしたもの
イ 過失又は電子情報処理組織の異常により事務処理を誤ること。
ロ 任務を怠ること。
ハ その他法令又は投資顧問契約若しくは法第四十二条の三第一項各号に掲げる契約その他の法律行為に違反する行為を行うこと。
(事故の確認を要しない場合)
第百十九条  法第三十九条第三項ただし書に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一  裁判所の確定判決を得ている場合
二  裁判上の和解(民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二百七十五条第一項に定めるものを除く。)が成立している場合
三  民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十六条に規定する調停が成立している場合又は同法第十七条の規定により裁判所の決定が行われ、かつ、同法第十八条第一項に規定する期間内に異議の申立てがない場合
四  金融商品取引業協会又は認定投資者保護団体のあっせん(法第七十七条の二第一項(法第七十八条の七及び第七十九条の十三において準用する場合を含む。)に規定するあっせんをいう。第二百七十七条第一項第四号において同じ。)による和解が成立している場合
五  弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第三十三条第一項に規定する会則若しくは当該会則の規定により定められた規則に規定する機関におけるあっせんによる和解が成立している場合又は当該機関における仲裁手続による仲裁判断がされている場合
六  消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第十九条第一項又は第二十五条に規定するあっせんによる和解が成立している場合
七  認証紛争解決事業者(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二条第四号に規定する認証紛争解決事業者をいい、有価証券売買取引等(法第三十九条第一項第一号に規定する有価証券売買取引等をいう。)に係る紛争が裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律第六条第一号に規定する紛争の範囲に含まれるものに限る。)が行う認証紛争解決手続(同法第二条第三号に規定する認証紛争解決手続をいう。第二百七十七条第一項第七号において同じ。)による和解が成立している場合
八  和解が成立している場合であって、次に掲げるすべての要件を満たす場合
イ 当該和解の手続について弁護士又は司法書士(司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第七号に掲げる事務を行う場合に限る。)が顧客を代理していること。
ロ 当該和解の成立により金融商品取引業者等が顧客に対して支払をすることとなる額が千万円(イの司法書士が代理する場合にあっては、司法書士法第三条第一項第七号に規定する額)を超えないこと。
ハ ロの支払が事故(法第三十九条第三項に規定する事故をいう。以下この条から第百二十一条までにおいて同じ。)による損失の全部又は一部を補てんするために行われるものであることをイの弁護士又は司法書士が調査し、確認したことを証する書面が金融商品取引業者等に交付されていること。
九  金融商品取引業者等の代表者等が前条第一号イからホまでに掲げる行為により顧客に損失を及ぼした場合で、一日の取引において顧客に生じた損失について顧客に対して申し込み、約束し、又は提供する財産上の利益が十万円に相当する額を上回らないとき。
十  金融商品取引業者等の代表者等が前条第一号ハ又はニに掲げる行為により顧客に損失を及ぼした場合(法第四十六条の二、第四十七条若しくは第四十八条に規定する帳簿書類又は顧客の注文の内容の記録により事故であることが明らかである場合に限る。)
2  前項第九号の利益は、前条第一項第一号イからホまでに掲げる行為の区分ごとに計算するものとする。この場合において、同号ハ又はニに掲げる行為の区分に係る利益の額については、前項第十号に掲げる場合において申し込み、約束し、又は提供する財産上の利益の額を控除するものとする。
3 金融商品取引業者等は、第一項第九号又は第十号に掲げる場合において、法第三十九条第三項ただし書の確認を受けないで、顧客に対し、財産上の利益を提供する旨を申し込み、若しくは約束し、又は財産上の利益を提供したときは、その申込み若しくは約束又は提供をした日の属する月の翌月末日までに、第百二十一条各号に掲げる事項を、当該申込み若しくは約束又は提供に係る事故の発生した本店その他の営業所又は事務所の所在地を管轄する財務局長(当該所在地が福岡財務支局の管轄区域内にある場合にあっては福岡財務支局長、国内に営業所又は事務所を有しない場合にあっては関東財務局長。次条において同じ。)に報告しなければならない。
(事故の確認の申請)
第百二十条  法第三十九条第三項ただし書の確認を受けようとする者は、同条第五項の規定による申請書及びその添付書類の正本一通並びにこれらの写し一通を、当該確認に係る事故の発生した本店その他の営業所又は事務所の所在地を管轄する財務局長に提出しなければならない。

といった内閣府令を理解し、「どうしてこれが「損失補填」に該当しないのか?」についての「アリバイ」の書類をきちっと固めるとともに、財務局等に必要な確認等を行ったり、必要であれば弁護士の意見書等も取らないといけないわけです。
どうです?
みなさん、ちゃんと読みましたか?

そもそも世の中の人の99%は、こうした規定を読む気にもならないんじゃないでしょうか。これでも、金商法の記述としては最も簡単な部類に入ると思いますが、こうした法令を読んで内容を理解し、ややこしい書類を作ったり、弁護士や役所とやりとりしないといけないとしたら、他の産業でいくらマーケティングやCSといった「商売」に非常に長けている人でも、金融領域では、その能力を発揮できないことも多そうだ、ということがおわかりいただけるのではないかと思います。
「商売」より「アリバイ」を作成する能力に長けた人でないと金融のマーケティングは難しいとすると、そもそも人材が限られちゃいますし、「商売」としてもいまいちパッとしなくなっちゃうのもやむを得ません。
また、他の産業であれば、「大変申し訳ございません。当方のミスですので、さっそくしかるべき処置を」といった対応がさっと行われるようなことでも、補填でないということを立証するために、「今、役所と交渉中で」、「弁護士と検討しておりますので」みたいなことを言われたら、顧客も「ふざけんな!」ということにもなります。
(「顧客満足度を上げる最大のチャンスは、ミスをしたときだ」というCSの基本から考えると、アンチCSのお手本みたいなことになっちゃってるケースも多いんじゃないかと。)
ただ、想像するに、業界もこの規定に「共依存」していて、
「大変申し訳ございません。なにぶん、法律でございますので・・・。」
という錦の御旗が立てられるので、この規定がなくなると、それはそれでコワいのではないかと。
自分で考えないといけませんからね。
「CSとかマーケティングという名のコンプライアンスチェック」はやったことがあっても、普通の産業で言うところのCSとかマーケティングは、(いくら「自由にやっていいよ」と言われても)、どのようにやっていいかわからなかったりするかも知れません。
(つまり、業界に「損失補填規定を削除したいですか?」とヒアリングかけても、「そんな必要ないと思いますけど」という答えしか返ってこない可能性大。 )
損失補填規定は現在でも必要か?
前述の通り、この「損失補填禁止」の立法趣旨は、

  • 投資家が安易な取引をすることにより投資家の自己責任原則が害されて、かえって投資家に不利益になる恐れがあること

  • 損失保証を巡る紛争の防止、
  • 証券会社の健全経営が損なわれる恐れがあること、
  • バブル崩壊で証券会社の経営に大きなインパクトを与えた

ということだとのことですが、そもそも、昔は手数料を取引額の1%も取って、80年代バブル期で株価も右上がりだったので損失補填する余力もあったわけですが、今や手数料は自由競争になっているので、そんな余力もないはず。
外国で損失補填禁止の明文規定がないというのは、そんなことすると業者自身が損するから、のはずです。

  • 投資家が安易な取引をすることにより投資家の自己責任原則が害されて、かえって投資家に不利益になる恐れがあること

  • 損失保証を巡る紛争の防止、

といったあたりは、今や、非常に細かい説明義務がいろいろありますので、そちらの方の規制で十分なのではないかと。

  • 証券会社の健全経営が損なわれる恐れがあること、

  • バブル崩壊で証券会社の経営に大きなインパクトを与えた

というのは、自己資本規制比率とか、リスク管理態勢の整備等の規制で行えばいいことのはず。
事前に契約を結んでいないのに事後的に取引額に応じた金額を顧客に支払うというのは、偶発債務のリスクを管理できていないという管理態勢不備として処分すればいい話。
損失補填類似の行為は、ある種のオプション(デリバティブ)を顧客に売るのと同等の効果があるはずですから、(リスク管理技術がほとんど存在していなかったであろう昭和ならともかく、)それなりにリスク管理手法が発達した現代においては規制する意味が失われているし、適切なリスク管理のもとにフィーをとってそうした今までなら損失補填規制に抵触しかねないことを解禁するというのは、金融業者のサービス設計にかなり自由度を与えるんじゃないでしょうか。
こうした、当初の立法時と環境が変わっているのに規制されているものは、他にも山ほどあるんじゃないかと思います。
ところが、「損失補填」というのは聞くだけでおぞましい感じがするので、「損失補填に関する規定をなくす」てなことを口にした瞬間、役所も業界もマスコミも大反対でしょう。
中立的な立場から、日本全体を見回してご意見を言っていただきたい学者の方々も、内閣府令とかマーケティングへの影響とか、学問としてまったく評価されなさそうなところは興味を示していただけなさそうです。
ただし、そうした困難を乗り越えないと、規制は今後もますます複雑になり、コレステロールが血管にこびりつくように、日本のお金の循環器系を弱らせ、徐々に市場経済全体が疲弊していくんではないかと思います。
重複してたり、制度や環境の変化で今や意義が失われているルールについては、思い切ってバッサリスッキリ整理し、「親離れ」「子離れ」を実現させて、活力ある市場が生み出す必要があるんじゃないでしょうか。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「アリバイから商売へ」・・・「損失補填」で思考実験してみる” への2件のコメント

  1. 論旨に全く賛成ですが、親離れ・子離れに必要な信頼関係を築くことはなかなか大変だろうなとも思います。
    損失補てんというと、1995年にすでに、黒沼悦郎教授が「損失補填の禁止」という論文(落合誠一・江頭憲治郎・山下友信編『現代企業立法の軌跡と展望』所収)で、立法論として損失補填の禁止には問題がある旨を指摘していました。現在の若手の研究者の間では、このような分析的態度は共有されてきていると思います。
    同論文389頁によると、アメリカではNYSEおよびNASDの規則が損失保証を禁止しており、それは不当勧誘の防止と理解されているようです。
    磯崎先生と同様に、私も事後の損失補てんは、経営判断の問題に過ぎず、法律で禁止することではないと思います。ただ、経営判断・業界の自浄努力が(当時の)業者に不足していたとも思います。うまく言えませんが、このシリーズの続編を期待しています(ところで、「ごくせん」は?)

  2. >NYSEおよびNASDの規則が損失保証を禁止しており
    これは刑事罰を伴うんですかねえ?
    少なくとも、アメリカ人の場合、「損失補填が禁止されているから、顧客に金銭を支払うのはすべてやめとこう」といったことは考えないような気がしますし、事務ミスである旨の申請をNASDにしてからでないと損害賠償ができないといった「内閣府令」があるという雰囲気もしないんですが・・・どうなんでしょうか?
    (ではまた。)