« なんかすごいニュースが飛び込んできた(「Carlyle Capital Expects Lenders to Seize Its Assets」) | メイン | 「ネット法」の発表で考えた、日本人と「フェア」概念 »

March 14, 2008

痴漢冤罪とドライブレコーダー(コンティンジェンシーの記録と立証)


痴漢でっち上げ「信じてもらえず、不安と悔しさ」2008年03月13日
 痴漢被害をでっち上げられ、大阪府迷惑防止条例違反容疑で誤って逮捕された会社員の(略)さん(58)=堺市北区=が13日、朝日新聞の取材に応じ、「自分の言っていることが信じてもらえず、悔しさと不安でたまらなかった」と当時の心境を明かした。「目撃者」とされた男が虚偽告訴容疑で府警に逮捕されたことで無実が明らかとなったが、被害者の供述に立証を頼る痴漢事件の危うさも浮き彫りにした。

http://www.asahi.com/national/update/0313/OSK200803130125.html


でっちあげの犯人が法学部の学生、というところがナニですね。

きっと、「それでもボクはやってない」とかを見て、この痴漢という領域は証言者の言葉だけで「推定有罪」になる法律的に特殊な領域であるということに気づき、示談に持ち込めば金になると思いついた、ということなんでしょうね。確実に儲かるぞ、と。法学部の学生だからこそ、この「スキーム」に酔ったのかも知れません。この共犯の女性が自首しなかったら、恐らく有罪になっていただろうことを考えると、改めてゾッといたします。


確率でかたづけるということ
私が、「それでもボクは」の前に「痴漢冤罪は怖い」という話をしたときには、非常に知的なみなさんから、「ゼロではないが、確率はめちゃくちゃ低い」「代表性バイアスだ」という話をいただいて、「あれっ」と思ったんですが。
日常でも仕事でも何か問題が発生したときに、それを「確率的に低い」でかたづけていいのかどうか、というのは非常に興味深い問題であります。

私も、学生か社会人になり立てのころ、「トヨタの生産方式では、生産ラインで不具合が発生した場合にラインを一度全部止める」という話を聞いて非常に違和感を感じました。ネジなどの部品に不具合が発生することは確率的にゼロにはできないし、確率が非常に小さいだろう不具合は無視したほうがラインを止めるよりも効率がいいんではないかという気がしたからです。しかし、トヨタさんの業績を見ると、そうした「低い確率の問題を無視する」よりも、「何か異常を感じた時にその原因や構造を徹底的に追求する」方が、結果としてパフォーマンスは高まるんではないかとも思われます。

仮に、ですが。電車のホームから人が突き落とされて殺される事件が全国で年間100件くらい発生したとしましょう。この100件をどう考えるか。
「自動車事故で死ぬ人数を考えれば、発生確率はその100分の1くらいだから、それでも自動車より電車の方がはるかに安全なのだ。」という考え方でいいんでしょうか。100人殺されたぐらいでギャーこら騒ぐのは確かに「代表性バイアス」なのかも知れませんが、100人殺されてもみんなパニックにならないとしたら「正常性バイアス」な気もします。

生物が進化する歴史の中で、天敵に仲間が殺されるのを見ていちいち騒いでいたらやってらんないので、「種が維持できる程度の犠牲は気にしない」図太い神経が身に付いているんだと思います。
しかし、(内部統制病にかかっているのかも知れませんが)、かように複雑化した社会においては、「何か異常を見つけたら原因を究明して是正する」ことが非常に重要ではないかと思います。(そうすると、さらに社会が複雑化するという悪循環になるような気がしますが。はい。T^T)

-----

最近では、「PDCA」とか「監査」とか「内部統制」とかいう話に触れる機会が激増してますので、「記録が残っておらず、原因が究明できない構造」に対して非常に強い不安感を覚えます。(職業病かも知れません。)

ということで電車は、「記録が取れず原因が究明できない空間」であるがゆえに恐ろしいわけですが、こちらは乗客の努力では記録を残すことは難しい。(満員電車にビデオカメラを持って乗り込んだら、そっちの方がアヤシイので。)


「車」の場合の過失の程度の立証
同様に、「車」というのも非常に怖い。

最近は交差点などにカメラが設置されているケースもありますが、交通事故を起こしたら、当事者もコーフンしてるから、その記憶や証言の信憑性もアヤシイ。ましてや、片方が亡くなった場合にはなおさらであります。

以下、大脳生理学的?な話になりますが、
以前、うちの親父が交通事故を起こして病院に駆け付けたことがあったんですが、目立った外傷はないのに、ちょっと様子がおかしい。

「ここどこ?」
「病院だよ。」
「今、何時?」
「9時半。」
と、質問に答えてやると、「ふーん」と納得するのですが、また1分くらい経つと、

「ここどこ?」
「病院だよ。」
「今、何時?」
「9時半。」
「ふーん。」

という問答となり、結局これを何十回と繰り返すことに。
(一生このままだったらどうしようかと思いましたが、1日くらい経ったらまったく普通に戻りました。)

よく存じませんが、「海馬」がオーバーヒートしてたんでしょうね。

ちなみに、私が紅顔の美少年だった高校生のころ、中野富士見町に向かう満員の丸ノ内線の電車の中で私の(男の)尻をなでまわしてくる痴漢にあったことがありまして。
その時、
「なんで男の尻をなでまわすんだ?」
「どんなやつがそんなことするんだ?」
「女?男?」
と、いろんな考えが一気に頭に流れ込んできて頭が真っ白になり(海馬がブッ飛んじゃったんでしょう)、腰から下の力がガクガクと抜けて、お恥ずかしながらどんなやつが触っているのか振り返ることもできませんでした。というわけで、痴漢を駅員に突き出す女性というのは大したもんだと思います。


車でも事故ったときの記憶に頼っても水かけ論になる可能性が高いのは明らかなので、前から欲しかったドライブレコーダー、

DREC2000.jpg

http://www.fujitsu-ten.co.jp/eclipse/product/drive/drec2000/index.html

を先週末に導入。
一定以上のGがかかった場合だけでなく、自分でボタンを押した場合にも、前12秒、後8秒間の画像が保存されるというスグレモノであります。

(これが活用されることがないよう祈ります。)

(ではまた。)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tez.com/mt/SA20071216T.sa/1095/SA20071216U.html

この一覧は、次のエントリーを参照しています: 痴漢冤罪とドライブレコーダー(コンティンジェンシーの記録と立証):

» 官僚司法問題(1)-周防映画から from 天下の大悪法・裁判員制度徹底糾弾!!高野善通の雑記帳
 今回から数回にわたってこの国の官僚司法思想が抱える大問題について取り上げたいと思います。第一回は、話題になった周防正行監督映画「それでもボクはやってない... [詳しくはこちら]

» 痴漢捏造の甲南大学:大学生を逮捕 from Happy Holiday のブログで事件です
(3月11日)痴漢捏造の甲南大学の大学生、蒔田(まきた)文幸を 大阪府警・阿倍野署は虚偽告訴罪(刑法172条)で逮捕した。 [詳しくはこちら]

» 痴漢冤罪について女性の立場から一言。 from 貞子ちゃんの連れ連れ日記
周期的に痴漢冤罪についてブログ界で話題になっています。 植草教授の事件(痴漢容疑だけで100日以上の拘留を受けてしまった話)やら、今年の3月13日の『痴... [詳しくはこちら]

コメント

そもそも論として、あれだけの人間があの狭い空間に押し込められてるという時点で、痴漢だけではなく、なんらかの事件(スリやら乱闘やら)があってもおかしくないと思います。ですから、磯崎さんが前におっしゃていたように、カメラを設置するなど、鉄道会社がもっと対策してしかるべきじゃないかなあと思います。何しろ、「痴漢」としてでっちあげられて、人生がむちゃくちゃになるというすごいリスクが発生するわけですから、鉄道会社にもなんらかの負担をしていただかないと安心して電車通勤ができなくなってしまいます。しかも、このリスクに対する防衛策はほとんどないわけでして・・・。女性専用車両ではなく、逆に男性専用車両とかできてもいいんじゃないかなあとは思っています。

防犯カメラ設置車両、ぜひ導入してほしいです。カメラはイヤという乗客もおられるでしょうから、選択できるようにするとよいと思います。女性専用/男性専用/男女共用車両と、カメラつき/カメラなし車両の組み合わせで。

自衛のために女性にできるだけ近づかないように気をつける。
なんともバカらしいですが、それが一番とやってます。

それはそれとして・・・・
×かたずける   ○かたづける
です(´・ω・`)結構多くの人が間違っているようですが。

>自衛のために女性にできるだけ近づかないように気をつける。

それだけでは防げないところが、この事件の怖いところでして。

>×かたずける   ○かたづける

ありがとうございます。修正いたしました。

(ではでは。)

最近の女性は自意識過剰なんじゃないですかね?ちょっと接触しただけで痴漢だと言われたら、相手はどうなるのか。相手の人生を滅茶苦茶にすることを分かって言っているのか。女性の権利が過剰に増幅されている気がします。女尊男卑もいいところです。最近の女は多少調子に乗っているのではないでしょうか?また調子に乗らせているのは男ではないでしょうか。男女平等であるべきだが、女性だけ尊重される社会というのはおかしい気がします。同じ人間であるのだが、性差を前提とした差別はあってしかるべきで、男性専用車両があってもいい。また、「痴漢です」と間違って申告した女性を名誉毀損で訴えることがもちろん男性の権利としてある。それに関与した警察署員や鉄道会社の社員も含めて。冤罪で訴えられる男性を守り、名誉毀損した女性を罰する仕組みが必要だと思う。痴漢と女性に言われた男性に弁明の余地がなく、有罪になる可能性が限りなく高い今の状況は改善されてしかるべきである。

女性が自意識過剰というより、そもそも いい年した(見知らぬ)男女が、夫婦や恋人同士でもやらないくらい体を強烈にくっつけ合わないと仕事や学校に行けないという異常な状況が発生しているのに誰も文句言わないというのが「正常性バイアス」だなあ、という気がします。

ほとんどの女性や駅員さんは、そういう異常な状況下で発生した状況に対して当然あるべき行動をとっているだけであって、根本的構造に手をつけずに女性や駅員さんを責めても問題は解決しないと思います。

痴漢事件の恐怖は、確率云々というのもありますが、一度疑いがかかったら反論の余地無く23日間拘留されてしまい、罪を認めないとその後も保釈されないという所ですよね。
仮に痴漢のような事件では24時間で必ず保釈されて、その後は裁判ということであれば、弁護士にお任せしておいて、社会生活上の問題もさほどおきないと思うのです。

やはりいきなり身柄を束縛されてそれが長期化するのにまともな理由がないというところが恐怖なんだと思います。最終的に無罪を勝ち取ったとしてもその間に仕事や家族が崩壊してしまいますから。


初めまして。
「確率はメチャクチャ低い」という点についてなんですが、
最近、確率というものに、非常に疑問を覚えています。
確率2%とか言われても、当事者にとって、
起きる時は100%ですし。
母集団を変えることによっても、確率は変わりますよね?
現在のサブプライムや市場の問題からも、
この確率論やからリスクを計算すること自体が
リスクになっているような気がします。

初めまして。
皆さんのコメント、特にEEEさんの御意見をを拝見して、どうしても気になることがあり、書き込ませて頂きます。

それは、「そもそもなぜ、女性専用車両が存在するのか。」ということです。
これは、今回のこの事件の根本でもあると思います。

早い話が、「痴漢をする男性が余りに多く、被害が頻発するので女性専用車両が作られた」わけですよね?
そして、私を含めた、周囲の被害女性を考える時、被害にあう女性のタイプは、必ずといっていいほど、
「おとなしそうに見える、小柄な女性」です。
つまり、痴漢を働いても、抵抗されなそうな相手を選んで行動に及んでいるのです。

痴漢こそ、男尊女卑の最たる卑劣な犯罪の一つであり、女性専用車両は、なんらその解決方法を見いだせないが為に施された、「応急処置」にしか過ぎません。

「女性専用車両は空いていてズルイ」だのという意見や、今回のような冤罪事件の表面だけを取り上げて、「男性専用車両をつくれ」
などと言うのは、痴漢事件の問題の根本、本質を忘れた、男性側の傲慢な意見としか、私には思えません。

磯崎様はどうお考えですか?御意見をお聞かせ下さい。

私も「女性専用車両は空いてていいなあ」とか「男性専用車両もあったら、社会的信用を失う痴漢冤罪リスクを冒してヒヤヒヤしながら電車に乗らなくていいのになあ」と思うこともありますが、本文中の私の体験のように、よく考えると男だから触られないという保証もないわけで。

問題の本質は都市が過密しすぎているということですが、過密を解消するために鉄道をさらに建設することは、これから人口が減りはじめることとか、ネットが発達することを考えれば、結果として過剰投資になる可能性もありますね。

ということで、私は、「天井監視カメラ派」
http://www.tez.com/blog/archives/000835.html
であります。

コメントを投稿