「電子債権」の未来を考えてみる

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以前、「電子債権って、イケてないのでは?」ということを申し上げましたが、

http://www.tez.com/blog/archives/000735.html
「電子系の法律」について考える(電子債権のパブコメ募集関係)
http://www.tez.com/blog/archives/000737.html
「電子系の法律」について考える(登録機関の事業性、ほか)

そういえば、法律も制定されたらしいけど、その電子債権は、今どうなっているのかなあ、と思ってちょっと調べてみました。


直近の記事は(日曜日なので、1面なのに見落としてましたが)これです。(2007/09/23)

電子版手形交換所設立へ、全銀協09年にも稼働——分割でき印紙不要。
(略)
 全銀協が設立する電子版手形交換所(記録機関)は、債権額や支払期日、当事者の氏名などをコンピューター上のデータベースに保存。取引を一元的に管理する。債務者や債権者は自社のインターネット端末を通じて取引に参加する。電子記録債権法が今年六月に成立、企業はネット上に記録するだけで、譲渡などの手続きを完了できるようになった。
 紙の手形は、決められた期日に額面の代金を支払うと約束する有価証券で、企業の資金調達手段として長年活用されてきた。しかし、紛失や盗難の恐れがあり、保管に手間やコストがかかるため、流通量は年々減少している。電子債権の中核機能を担う電子版の手形交換所が設立され、電子手形が利用されるようになれば、紛失などのリスクがなくなるほか、印紙代も不要になる。
 現行の手形は分割できないが、電子手形は小口化して一部だけ譲渡したり、複数の相手に譲渡することもできるようになる。(中略)
 記録機関は資本金五億円以上で、専業の株式会社であることが条件。システム開発に四十億—八十億円かかるとの試算もあり、手数料収入により採算がとれるか不透明で、設立に名乗りをあげる企業や団体が出てくるか懸念されていた。(以下略)

この「記録機関」という事業、法律では「民間で手を上げれば(要件を満たせば)誰でもできるよ」という建付けになってますが、この事業の特性として、

  • 「ほかの人も使ってないと使うメリットがない」というネットワーク外部性が強力に働く

  • 手形発行がシュリンクしている環境下でもあり、印紙税との対比で手数料率はかなり低め(額面の1ベーシス[0.01%]以下くらい?)にならざるを得ない
  • 逆に言うと、取扱う債権残高は売上高の1万倍(以上)の非常に巨額なものになり、セキュリティに払うコストはかなり高くなりそうだ

といったことを考えると、電子債権の記録機関の事業性として、「純民間」でこれをやるのは無理なんじゃないの?と想像していたわけですが、全銀協さんが乗り出す(しかも、既存の手形は廃止するかも)、となると、「準公的」なハナシになり、事業成立の可能性も出てくるかと思います。
全銀協+大手銀行さんでどういった話し合いがもたれているのか全く存じませんが、利用者側からすると、各銀行の通常のファームバンキングの画面にメニューが一つ増えて、現金を送金する代わりに電子債権を”送金”する(銀行が代理となって電子債権の登録機関に登録する)、といったものになれば、一番使い勝手がいいのではないかと思います。
つまり、「電子記録債権法」だけからだと、(いろんなことができるように想定されていて)、非常に多くの設計が考えられて頭がこんがらがるわけですが、

  • 支払場所 (銀行、支店、[種別]、口座番号)

  • 送り先口座(銀行、支店、[種別]、口座番号)

と、銀行口座を債務者・債権者を特定するキーにするということに決め打ちするのであれば、非常にシステムの全貌の見通しもよくなるのではないかと思います。
換言すれば、一般の投資家から証券会社の口座は見えるけど保振の口座は直接見えないのと同じで、

  • 顧客の目から見えるプレゼンテーション層(銀行 [のファームバンキング])、

  • ミドルウェア的な全銀の電子債権の情報交換に関わる新しいプロトコル
  • 物理層(電子債権記録業者)

を分ける(アンバンドル)する、という整理であります。
こうすることにより、電子記録債権に関する複雑で詳細な法令をユーザーが猛勉強する必要もなく、プロ(銀行、全銀協)にまかせておけばいい、ということにもなります。
しかし、ここまでやったとしても、現在、一般には資金が非常にダブついているので、ちゃんとした企業には融資が容易に付くでしょうし、ちゃんとしていない企業の電子債権は証券化等どんな手法を使ったところでいかんともしがたい(マクロで見るとサブプライムローンの構造と同じになっちゃう)ので、そもそもそうした「電子債権」での支払いが、手形の代わりにガンガン延びていくとは考えにくい。
韓国では、通貨危機もあって電子債権が世界一普及しているらしいですが、金がジャブジャブの日本で、どこまでそうしたニーズがあるんでしょうか?
一方、よく考えると、手形がなくなるということになれば、現在銀行が行っている手形貸付は全部電子債権化されることになるのではないかと。つまり、当然、「不渡り二回で銀行取引停止」という規律も、電子債権の上に移行されるのでしょうから。
仮にそうなるとすると、(おそらく)最大の電子債権者は銀行ということになります。ショボい手形のマーケットなんかと違って、残高も百兆円単位ということになり、これを流動化して銀行のバランスシートを圧縮するニーズというのが、電子債権利用の最大のビジネスになるかも知れませんね。
地銀と都銀の預貸のギャップを埋めるとか。「ゆうちょ」も結局生き残ることになっちゃったので、その巨額の資金の運用先としても有望かも。
(逆に、一般の製造業やサービス業で手形の利用が減少していることから考えると、そういう「コマい」一般企業の債権を寄せ集めてきて流動化させるというのは、結局、コスト的に難しい気がします。)
以上、全銀協さん等での検討の内容をまったく存じ上げずに勝手に想像(妄想)している内容ではありますが、ご参考まで。
(ではまた。)
電子記録債権法
http://law.e-gov.go.jp/announce/H19HO102.html

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「電子債権」の未来を考えてみる” への3件のコメント

  1. いつも楽しく拝見しています。αブロガーの磯崎先生に対する初コメントということで、ちょっと緊張しています。
    さて、電子債権については、全銀協さんが本気でやりたいかどうかはともかく、上記のような落しどころになっほっとしてます。経済産業省主導で議論が進んでいた時は、「カネだけ集めて、海外へ高飛び!」のビジネスモデルがいくらでも沸いてでる!と、知人の法学者と酒の肴にしながら、大騒ぎしていましたので。
    でも、過去を振り返ると、電子債権の議論がはじまった当初から信金中金には独自開発した電子手形システムがあったわけで(確か、沖縄で実証実験???)、そう考えると、いろんな審議会で活躍されている法学者を大勢集めて何年間も議論したことって、何の意味があるんだろう???とか考え込んでしまうわけです。

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