「年金を受け取れる権利」なんて、もともと存在しない

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(追記6/10:やや過激なタイトルにしすぎてしまった感がありますので、タイトルを読んで「そんなわけないだろ!」と思われた方は、ぜひ、次のエントリも合わせてご覧いただければ幸いです。)
社会保険庁のデータ不整合の問題は、まったくありえないとしか言いようがないですし、組織の運営として許される話でもないです。
一方で、(追記:「一方で…」というだけでは「今回の社会保険庁の問題は以上で終わり」「以下、今回の事件とは関係ない、年金の一般論ですが」、というニュアンスがうまく伝わらなかったようなので、その旨、補足させていただきます。)、世の中の人は「年金の掛金を払った人は、将来、年金をもらう権利がある」と思ってらっしゃる方が大半のようですが、これも大間違いなんでしょうね。


おそらく、世間の人のほとんどは、年金は預金などと同じく「自分のお金を政府に預けている」ものだから、いつか「(利息をつけて)返してもらえる」ものだし、年金を受け取れるのは、掛金を負担した者として当然の権利、と思ってらっしゃると思います。
しかし、例えばwikipediaの「年金」の解説に、日本の年金制度は、

現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金給付に必要な費用を賄うという世代間扶養の考え方を基本に賦課方式により運営されている

とあるように、「高齢者に年金を払わないといけないから、若いヤツは金出せ」という制度、あるいは「過去に掛金を払わなかった人は年金あげないよ」という制度ではあるが、「掛金を払った人には必ず将来年金を差し上げます」という制度ではないわけですね。
(↑この微妙な違いを、じっくりお楽しみください。)
以前も書きましたが、法的な説明としては「年金2008年問題
年金2008年問題—市場を歪める巨大資金
の著者の玉木伸介氏がおっしゃっていた、

年金をいくら受け取れるかは「法律」で決まっている。「法律」で決まっているということは、国会で過半数の承認が得られれば、いくらでも変更が可能だ、ということだ。
年金は、国に対する国民の「債権」であると思っている人が多いが、債務者である国側の都合で金額が勝手に変えられてしまうものが「債権」であるはずがない。

という説明が非常にわかりやすかったです。
(追記:上記引用部分は、講演会での玉木氏のご発言を私が引用したものですので、引用の表現については私に責任があります。ご注意いただければ幸いです。)
(法律的な厳密さを横において平たく言うと)、年金制度とは、若い世代が高齢層への「寄付」を法律で強制される制度であって、「寄付」したからといって自分が将来寄付してもらえるとは限らない。
これがもし、「国が国民の出した掛金を預かって運用し、年を取ってから年金として返す制度」だったとしたら、国が運用に失敗することで、年金が「破綻」することがあるかも知れませんが、社会保険庁がやってきた仕事は、非常にざっくり言うと「若い世代から吸い上げたカネを、右から左に高齢者に渡す」というだけの仕事だったわけですから、ある意味、絶対破綻しないわけです。いざとなったら「払えるだけしか払えん」わけですから。
・・・ということだと、もともと受託者として「人のカネを預かっている」責任感といったものは、生まれるはずもない構造だった、ということなんでしょうね。
(ではまた。)

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「年金を受け取れる権利」なんて、もともと存在しない” への25件のコメント

  1. いつも拝見させていただいております。
    確かに年金についての法律も「国民年金法」であって「国民年金『保険』法」とはなっていませんよね。(厚生年金は「厚生年金保険法」ですが・・・・。)
    厚生年金はともかくとして、国民年金についてはほとんど「均等割の国税」と思っていたほうがよいように感じます。(それにしては、1号〜3号の考え方の整理が微妙ですが・・・)

  2. [雑記][社会]年金、もらえるかどうかが焦点じゃないよね。

    磯崎先生がおっしゃることは確かにそのとおりなんだけど、 おそらく、世間の人のほとんどは、年金は預金などと同じく「自分のお金を政府に預けている」ものだから…

  3. 年金をあてにしない人生設計

    年金はあてにしない方が良いと思います。
    年金を払うくらいなら、そのお金を自分で投資・運用した方が確実に老後生活の資金を用意できるんじゃないかと思いま…

  4. 理屈の上では仰ることはわかるのですが、もしも現実に「払えるだけしか払えん」と開き直ったら、その時の政権政党は票がとれなくて政権を失うでしょうね。
    よって、日本が民主主義である限り、無理やりでも年金はあるラインの金額を維持すると思いますよ。だって若い人は選挙いかないし、高齢化で票田は年寄りだし。

  5. はてブまたはずれだ。
    つまんない記事をブックマークするなよ、おまえら。
    並はてブと、上級はてブに分けてほしい。

  6. 現在の法律に基づいている年金受給額がもらえないということが問題になっているのであって、「年金は権利ではないのだからあてにするな」というのは法治国家を否定していることですよ。国民には納付を義務付けているのだから、納付額より少なくなることはあっても給付するのも義務です。

  7. >「年金は権利ではないのだからあてにするな」というのは法治国家を否定していることですよ
    だから給付はする(=破綻しない)というとろーが。
    ただそれは1円でも払ったら「ほら、破綻はしてないじゃんおちんちんびろーん」と言うのと同じ。
    それを「ああ、権利は保障されたんだ、よかった」と満足するやつがどこにいる?
    正しくは「年金は(払った額を等価以上でもらえる)権利ではないのだから(元が取れるとは)あてにするな」で。
    江角マキコの国民年金CMの話題のころに、年金は上にあるように国営ねずみ講以外の何者でもなく、人口がいったん少子化に入ったら破綻(払った額より少ない額の償還しかあり得ない)せざるを得ないことにみんな気づいたと思ったのに。
    義務じゃなきゃ馬鹿でない限りは絶対に払いたくない制度であり、もう早く税金に含んでほしいと思う。
    その方が気がまだ楽だよ。
    国のライフガードだから否定しないよえぇえぇ。
    ちなみに払えるだけしか払えん、という開き直りは日本総借金もそうですが、一部政府お抱え学者ですら講演会などでは堂々と口にしてまする。>o<
    時の政党は言わないでしょうが、言わないだけで実行はできるのはお約束。

  8. 年金制度って、国が法律を作っるから合法だが、
    ようするに「詐欺」でしょ?
    いまごろ気付いている人は……

  9. アルゴの時代34:疑惑・消えた年金問題。…画像データ化した年金記録を霞ヶ関は隠蔽しているはず。

    「消えた年金記録」が社会的問題になっており、自民党が支持率を落としている。 この問題は、紙資料を電子データベースに移行するときに起きたことを指摘する人は…

  10. 一応、年金の財源調達方式は�修正積み立て方式�とされています(岩田規久男教授)。氏は、実質的には賦課方式とも付け加えています。
    もともと年金制度には、賦課方式か積立方式か曖昧なところがありました。賦課方式とすると、給付と支払において不公平感が生じ、積立方式とすると、年金制度が始まった当初における積立額に問題が生じます。
    年金保険金料率は、年金制度が始まった当初は5.5%でした。今後この数値が約20%弱まで上昇する事が現実的ですので、非常に見通しが甘かった事が分かります。
    野口悠紀夫教授は�旧厚生省の人口推計に問題があり、人口高齢化つまり少子化について、その推計値が非常に楽観的(少なく見積もっていた)であった�としています。
    世界に類を見ないスピード(24年)で高齢社会に突入する日本に手本はありません。いろいろな問題をはらんだまま、成熟社会へと突入いたします。
    年金問題と少子高齢化問題は表裏一体のもの。自販機、コンビニ好き、外人嫌いの日本はロボット王国を目指すしかありませんね..

  11. 今年の予算編成で、たしか「SDI」、例の矢で矢を打ち落とすために、1800億円以上の予算が付きました。
    そして、漆原警察庁長官によれば、24000人程度の警察官の増員が認められたとのことです。
    年金・介護はじめとする福祉の問題は
    庶民にとって切実なるものであります。
    しかし、分けのわからめなところに変なお金が放り込まれています。
    なんか、軍事にしろ警察にしろ、「秘密」大好きセクションだ。
    こういうところが青天井の予算編成でして
    そういうことはマスゴミではなかなか報道されない。
    結局、弱い奴は、ヤツラの肥やしにしかならないのでしょうか?
    おれも庶民の1人ですけど
    う〜ん、なんか〜、怒りを通り越して
    寂しい感じがとても強いっす。
    あ、そうそう、「空中給油機」が2機導入されましたが
    専守防衛を標榜してる「自衛隊」に
    こんな高価なもんいらんぞ。
    次は、本格的「空母」の製造だな。
    おれたち、「喰う」坊にされそうな勢い。
    まことに御目出度いことでございますな、、、w

  12. 年金問題、おわびも素通り 社保庁が全国でチラシ配り (中日新聞,2007-06-08)

    5000万件+1430万件の「消えた年金」問題ですでに我慢の限界に達している1億2千万国民の怒りがわずか紙切れ一枚でなだめることができるとでも思ったのだろ…

  13. 「年金を受け取れる権利」は当然存在します

    磯崎哲也さんの「「年金を受け取れる権利」なんて、もともと存在しない」は、この手の問題について磯崎さんへのネット上での信用度は高いだけに、とっても困ってしま…

  14. >「掛金を払った人には必ず将来年金を差し上げます」という制度ではない
    これには反論が多いですね。まずいと思います。
    年金の掛け金は「保険料」と称しています。保険制度とはもともと互助会に始まるもので、すなわち掛け金を払った人に利用権がある制度です。
    掛け金を保険料と称するのは「あなたに利用権を保証する」と言う意思表示ですから、その上で「利用は約束していない」というのならば、その段階で詐欺の意思が明確です。
    ま、実態は上のほうで名無しさんがおっしゃるとおり、詐欺ですけどね。

  15. まあこの世の中全て事故責任ですか。納得しました。しかしワープロソフトも見事な誤りをしますなー
    「今年の予算編成で、たしか「SDI」、例の矢で矢を打ち落とすために、1800億円以上の予算が付きました。
    そして、漆原警察庁長官によれば、24000人程度の警察官の増員が認められたとのことです。」
    SDIは、本当に有効なのでしょうか?私は、自衛隊に金をかけるのはいい加減にしてDSIのシステムを実用化するより、違った視点で宇宙開発に力をいれて人工衛星を落とす技術を完成させ、あまったお金を年金に使ってはと思います。
    例えば人工衛星を打ち落とす技術と人工衛星を打ち上げて自動的に人工衛星が複数生成しこれらが他の人工衛星を探し自爆する技術等です。
    何か紛争があれば宇宙中の人工衛星を全て破壊すれば米国その他の軍事力も力がなくなるのではないでしょうか。
    それでも北朝鮮のミサイルは飛んでくる?
    もう一つは電波妨害システムでも開発すればミサイルの誘導も出来ないのではないでしょうか。

  16. 基礎年金番号に反対してきた連中が年金記録不備を糾弾する矛盾

    年金特例法案が衆院通過 社保庁法案も (NIKKEI-NET) 野党、抵抗強める 国会は1日未明、衆院本会議で社会保険庁改革法案と年金支給漏れの時効を撤廃…

  17. 「年金を受け取れる権利があると思っているやつ」なんて、もともと存在しない。
    大多数の人は、年金を受け取れる資格があると思っているだけだ。この微妙な差がわかるかな?
    ためにする議論の典型だ。反省しろ。

  18. 5000万件問題で年金の丼勘定ぶりに唖然 [ブログ時評80]

     「宙に浮いた年金記録5000万件」問題でブログが騒然としている。5月末からキーワード「年金」を含むブログ記事が連日3000件前後も書かれている。

  19. 「5000万件」の話はなぜに問題になったのか

    isologue:「年金を受け取れる権利」なんて、もともと存在しない
    「権利がない」というと物議をかもすが、年金は働く世代から集金し、年金受取世代へ配分…

  20. 論争。

    年金問題について、私的にはエントリーを上げるほどの見識も意見も持っていないのですが、ちょっとした“ブログ間論争”が発生していまして、私も興味深く拝読させて…

  21. 5,000万件の年金納付記録消失問題を再び。1

    公的年金の納付記録が5,000万件消えた事件で、『我が家はサラリーマン世帯の厚生年金加入者だから関係ないのかなぁ?』と、ぼんやりと構えている人は勘違いして…

  22. 公的年金に財産権は実在するか? ?The Heart of the Matter?

    そもそも財産権とはなにか?Wikipediaには以下のようにある。「財産権(estate)は私権のうち、権利の内容が財産的価値を有するものである。物権、債…