DoCoMo2.0は言うほどたいしたことないのでは?という証取法的考察
最近、DoCoMo2.0の「そろそろ反撃してもいいですか?」といった広告
がたくさん流れていますが、ティザー広告なので、具体的にはどんな新サービスなのかよくわからない。
「2.0」とのことですし非常に刺激的なコピーなので、どんなすごいサービスなんだろ?とも思うわけですが、証券取引法的観点からは「言うほど大したことない」と推測できるのではないか?というお話。
この、「情報をすべて開示せずジラす」という手法、マーケティング上は面白いんですが、証券取引法的な観点からは、重要な事実は適時に開示しインサイダーな情報を元に証券の取引が行われないようにしなければならないのは当然。
ティザー広告という手法は、こういうガラス張りのまったく逆を行くものでありますから、それが妥当な範囲内のものなのかどうか、というところの判断は重要かと思います。
東証さんの適時開示規則においても、「新製品又は新技術の企業化」を機関決定した場合には、
- 新製品の販売又は新技術を利用した事業の開始日の属する事業年度の開始の日から、3年以内に開始する各事業年度のいずれかにおいて、当該企業化による売上高の増加見込額が最近に終了した事業年度の売上高の10%に相当する額以上
- 新製品の販売又は新技術を利用した事業の開始のために特別に支出する見込み額が、最近に終了した事業年度の末日における固定資産の帳簿価格の10%に相当する額以上
に該当する場合、又は該当しないことが明らかでない場合、開示が必要とされています。(適時開示規則第2条第1項第1号j。また、証券取引法第166条第2項第1号カ、会社関係者等の特定有価証券等の取引規制に関する内閣府令(取引規制府令)第1条の2第8号[軽微基準]、参照。)
これだけ大規模に宣伝するからには、すでにサービスの開始は機関決定されているのでしょうし、ドコモさんほどの大企業であれば、開示が必要かどうかは入念にチェックされたでしょうから、この新サービスの内容を開示していないということはすなわち、DoCoMo2.0と称するサービスは今後3年間は昨年度売上高の10%を超えるサービスにはならないと明確に予想されてらっしゃるはず、です。
(または、「2.0」とは言うものの、今までのサービスの延長線上のものにすぎず新サービスには該当しないとか、すでに公表していることをマーケティング上「ヒミツ」と言っているにすぎない、など。つまりこの場合も「言うほどたいしたことない」、わけですが。)
[「トラックバック等で、「もうすでに公表していることを『ヒミツ』と言ってるだけでは?」というようなご指摘もあったので、一部追記。5/15 10:30]
(逆に言うと、もし、新サービスに該当しているし昨年の10%以上の売上を3年以内に達成しそうだと思っていながら開示していないのであれば開示規則違反だし、新サービスのなんたるかを知っている社員や取引先がドコモ株式を開示前に売買したら、インサイダー取引に該当する可能性も出てくる、ということになります。)
もちろん、ドコモさんの場合、昨年度の単体売上高の10%としても約2600億円ですから、規則上開示の必要がない「大したことない」場合でも「大した」事業規模ではありますし、本エントリのタイトルも半分は冗談ですが、こういったIT系等で単品性の強い事業構造の場合、(多数の製品群がある自動車産業や食品製造業などと異なり)、有力な新規サービスが前年度売上の10%以上を占めるようになると予測されることも多いでしょうから、サービス開始時にティザー広告という手法が取れないケースも多そうだなあ、と思った次第です。
[追記。5/15 10:30]
他のサイト等で、「ドコモが証取法違反を犯しているらしい。」といったコメント等も見られましたので(苦笑)、念のため補足しておきますと、私が申し上げているのは、「ドコモさんが法令違反をしている」、ということではなくて、
「ドコモさんが証取法違反を犯すようなミスをすることは考えにくいから、一見、まったく新しい革新的な秘密の新サービスを始めるようなCMをしていても、その中身は『言うほどたいしたことない』はずだ、ということが証取法的な観点から推測できる。」
ということであります。
(ではまた。)

コメント
ランチェスターさんの言うとおりにするとすれば、DoCoMoは今までauとSoftBankにやられてきたことをほぼそのまんまコピーしてやりかえす、つまり通話料金定額のように見える新料金プランとか、乗り換え推奨キャンペーンとかをするのが常道だと思われますが、そういうものはここでいう「新製品」にあたるのですか?
Posted by: tockri : May 15, 2007 | 9:20 AM
個人的には、料金プランの変更が「新製品」にあたるとは思いませんが、他社がやってたことそのままだったら、それは「他にはマネできない(今のところ)」というコピーの示す新サービスには該当しないんじゃないでしょうか。
ちなみに、ソフトバンクの「0円」はダメだったわけですが、そういう一連のマーケティングに対する「反撃」という意趣なんでしょうから、景品表示法違反に該当しないかどうかについてもちゃんとチェックされてると思います。
Posted by: Tetsuya Isozaki : May 15, 2007 | 10:58 AM
ネタに混じれ酢で申し訳ない。
携帯電話会社の成功話って、料金設定を下げて利用者増
ってタイプが有名なので(auのパケ割、softbankのホワイトプラン)
ドコモ2.0は↓の定義には当てはまらないものを用意しているのではないでしょうか?
「売上高の10%に相当する額以上」
「固定資産の帳簿価格の10%に相当する額以上」
単価下げてユーザーが得した気になって
契約者数が増えることをもってドコモがウハウハすることをもぅて
「反撃」って言っているような気がします。
ドコモでは、
「単価↓×契約数↑⇒ 売上げ金額ほぼ変わらず」
とか、「いやいや弾力性がどうたらこうたら」とか、
いやいや、自社ユーザー数↑で自社ネットワーク利用が○○だから、
支払い接続料↓でうんたらかんたら」
なーんてお話をしているのではないでしょうか?
Posted by: どこもにいてんぜろ : May 15, 2007 | 9:15 PM
DoCoMo2.0のリーフレットとしては、‘904iGUIDE BOOK’というポケット・サイズのもののがありますが、内容はこれから売り出される904iに搭載される機能の内容を書いているだけで、TVコマーシャルでやっている意味深な内容とは、かなりかけ離れているような気がします。
証取法は、基本的には有価証券の発行、流通について開示方法等を定めているもので、(有価証券の)円滑な流通と投資家保護を目的としているため、上述のリーフレットやTVコマーシャルの内容と関連付けるのは、よほどのことがない限り難しいと思います。
ところで、FOMA904iシリーズのうちF社のものはワンセグTV、お財布携帯及びミュージック・プレイヤーを含め、今考えられるフルスペックに近いものがあり、これ以上どんな機能を盛り込んだらよいのかわからないような状況にあります。
そろそろ携帯電話会社も、電話機メーカーの開発疲弊と国際競争力低下のことを考え、過剰な機能の開発競争はやめて、ユーザーのために本丸である電話料金の引き下げのことを真剣に考えてみる時期のきていると思うのですが、皆さんはどうお考えですか。
Posted by: 彷徨 : May 16, 2007 | 9:44 AM
今日前後からサービス名のみを列挙した同じデザインの広告が出稿されていますね。
Posted by: Fmoto : May 16, 2007 | 7:52 PM
どこもにいてんぜろ
↓
ドコモに移転ゼロ
Posted by: エロ爺 : May 17, 2007 | 5:13 AM
開示義務があるのはサービス開始日から〜日となってるだけで、サービスをやろうと思った日に開示しなければならないということではないのでは。
Posted by: 通りがかり : May 18, 2007 | 1:32 AM
取引所の適時開示規則で、当該開示は「サービス開始日から」ではなく、「(取締役会などで)機関決定した場合には」です。
機関決定したけどサービス開始は2ヵ月後です、という場合、サービス開始までそれを開示しないと、その間に、それを知って同社株を取引した人は、すべてインサイダー取引規制違反になる可能性が高いですので、「決まったら、すぐに開示してね」というのが適時開示規則の趣旨だと思います。
(ご参考まで。)
Posted by: Tetsuya Isozaki : May 18, 2007 | 4:06 PM