日本で優先株ベンチャー投資がメジャーになる日

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日本のロースクール版Venture Capital Negotiation」にtaka-mojitoさんからコメントいただきました。

VECの優先株式2割という数字は、ぼくも見たのですが、どうも今ひとつ鵜呑みにできないなあという感覚です。金額ベースでの20%で、件数ベースだとどれくらいというのが掴めないですしね。


 
通信などの使用総資本が非常に大きい企業への投資や、再生案件的要素を含むベンチャー投資が含まれているのかも知れませんね。
バイオのように治験に金はかかるし非常にリスクも高く、次回のラウンドのvaluationが今回より下がる可能性も大、というような場合にはanti-dilution条項が入った種類株で投資しました、という話も聞きます。
そういえば、今思い出しましたが、私が関わった企業も、昨年、(数億円単位ですが)、VCさんに優先株で投資していただいたんだった。(すっかり忘れてました。あはははは。)
(それは、VCさん側からの要求というよりは、会社側の都合で優先株を使ったスキームにする必要があったんですけど。)

で、件のペーパーを書くために(無事提出済)、昨年度のマザーズ新規上場会社40社の新規公開時目論見書をざっとさらったのですが、40社中、公開直前に大株主上位10位にVC又はVCファンド(と合理的に判断できるところ)が入っている会社が25社(投資額は様々で、本当にちょっとしか投資していないところも含む。)、そのうち優先株式を使っている会社は1社(Gaba Corporation)、残り24社は優先株式を使った形跡がない(公開直前は普通株のみであり、増資の経緯を見ても(登記簿までは見ていませんが)開示書類から分かる限り過去にも優先株式を発行していない)という感じです。Gabaについても、無議決権、転換権なしの優先株でしたので、VCでいう優先株というのとはちょっと違いました(銀行が発行した優先株のイメージ)。

なるほど。参考になります。
ただ、よく見るとVECさんの統計「図表 6-14:種類株への投資」は、合計が863億円(うち種類株式195億円)しかないので、投融資額合計の2,345億円からすると種類株式による投資は全体の8%程度、ということもありえますね。
195億円くらいなら種類株式で投資されてるかも、という感じですが、もしそれだけだとすると「20%」というVECさんの「概要」は、ちょっとミスリーディングかも。
トラックバックいただいたグロービスの小林雅さんのブログによると、

弊社は優先株式を基本にしたディールストラクチャーを考える数少ないベンチャーキャピタルファームのように思います。 日本の場合どうか?とか私などに聞いたら一発で悩み解決(ネットで検索する必要なんてない・・・)ではないかと思います。

とのことですので、小林さんに聞くもよし。小林さんにいちいち伺うのも申し訳ないと思われる方は、グロービスさんの投資先企業
http://www.globiscapital.co.jp/company/index.html
や、小林さんのページにある元投資先の登記簿をあげて、種類株式の要項の記載がどうなっているのかを見るのもいいかも知れません。(すべて普通株式に転換されて定款変更で当該条項が削除されても、アンダーラインで消されて残っているかと思います。)
日本で優先株で投資されてそうな会社さんの登記簿がどうなっているかというのは、時間ができたら、ぜひやってみたい研究であります。
Participating条項とバイアウト圧力の増加(IPO圧力の減少)
特に、バイアウトの際に「Participating」な条項がヒットする構成になっているものも多いとすると、IPOよりバイアウトで威力を発揮することも考えられるので、IPOの件数にはあまり出てこないのかも知れないですね。
米国だと公開時には創業者の持分が10%を切ることも多いと聞きますが、日本の場合、経営者の持分が少ないと「売り圧力が高くなる」と見られて事実上公開が困難になるケースが多いので、相対的に投資家の比率は下がらざるを得ません。
こういう環境下で普通株式で投資すると、投資家としては、バイアウトよりはIPOのほうがほぼ確実に得になるので、「ひたすら公開を目指せ!」ということになりますが、バイアウト時にもヒットするParticipatingな条項がついていると、IPOよりバイアウトを選択する確率も高まることになるかと思います。
優先株式と善管注意義務
それから、日本の大手VCの方が、「善管注意義務」と普通株式・優先株式の話に触れられていたのも非常に興味深かったです。
「米国のように、まわりが全部優先株で投資しているような環境では、普通株で投資したらGPはファンドの出資者から善管注意義務が問われることになるだろうけど、日本のようにほとんど普通株式で投資されている場合には、優先株式で投資しなくても善管注意義務に問われることはまずないだろう。ただし、今後、優先株式での投資が増えてきた場合にどうかといわれると話は変わってくる可能性がある。」
とのこと。
「みんなで渡れば怖くない」わけですね。
(または、一種の「ネットワーク外部性」が働くお話かと思います。)
逆に、ファンドの出資者に海外の投資家が多い場合には、(現状では、「日本はそういう慣習なんです。」「優先株にこだわると、いい案件を逃す可能性もあるんです。」といった説明は不可能ではないと思いますが、そうはいっても)、「ナゼ、preferred stockデ投資シナイノデスカ?」と聞かれたときに、説明としては大変メンドクサそうであります。
つまり、日本のベンチャーに投資したい外国の資金がどどっと日本に流れ込むと、日本の優先株投資は(ある一定の閾値を超えると)、急速に進む可能性がある。(理屈としては。)
ただし、日本国内に資金はジャブジャブあるし、ベンチャーの資金需要が今後急速に増える見込みも無い。(少子化の影響で減るシナリオは「ありそう」ですが。)
また、先日、別の大手VCさん(非老舗系)の方が、シンガポールに転勤になられたんですが、「日本の新興市場の調子もよくないし、投資の条件もよくないので、インドや中国の企業に投資するほうがよっぽどいい。」てなこともおっしゃってました。
外国資本も、なにもわざわざ言葉も通じない日本のベンチャー向けに資金を投じなくても、中国やインドにはCEOが米国のMBA等で言葉も通じてスケーラブルに成長しそうな企業がいくらでも転がっていそうなもんですから、資金が今後なだれをうって日本に押し寄せる、というのも期待薄。
とすると、日本で種類株式によるベンチャー投資がメジャーになる日というのは、永遠に来ないのかも知れませんね。
(ではまた。)

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日本で優先株ベンチャー投資がメジャーになる日” への3件のコメント

  1. ご無沙汰してます。最後の段は全くその通りです。要は需給です。米国でSOX法施行で起こったように日本でも今後内部統制強化でIPOが難しくなるとBuyoutを前提としたExit Planが出てくるかもしれませんね。その場合はLiquidation Preferenceが重要になってきます。(但し、Liquidation Preferenceには批判もあるみたいですね。)Red Herring3/26 のPublisher Letterで「Not Your Dad’s VC Firm」と最近の官僚化したVC Firmを批判していました。米国でもハンズオンは中々できてないようです。

  2. こんにちは、元キャピタリストの経験からコメントさせていただきます。
    海外案件では確かに種類株はあったかと思いますが、日本のベンチャー投資ではほとんど記憶になかったですね。
    日本の場合には上場している種類株さえ少ないというのも影響しているかもしれません。
    未成熟な経営者が多い中、種類株による投資というのは危険ではないかと思います。第三者からの資金調達と共に、情報開示の仕方を身につけ、株主の意見を聞くことを覚えるというプロセスも必要ではないかと思います。
    とはいえ、現在のファンドバブル状態が続くと増えてゆくような気もいたしますが…

  3. 「日本で優先株ベンチャー投資がメジャーになる日」はあるのか?

    ブログのアクセスを見ていたところ5月1日