« 妻子持ちのオッサンが女子美大生とつきあう方法 | メイン | 内部統制システムに係る監査の実施基準(日本監査役協会) »

April 17, 2007

委員会設置会社制度改造論

さて、掲載するのがすっかり遅くなっちゃいまいましたが、先週金曜日の中央大学法科大学院での授業のあと、大杉先生と「監査役制度改造論」の話ができました。

(商事法務に掲載された大杉謙一教授の論文「監査役制度改造論」についてのエントリは、こちら。)

開口一番、
「なんで、監査役が取締役を兼務するんですか?」
「今や、委員会設置会社という類型があるんだから、取締役が監査機能も持つ監査委員会を置いて監査役を置かないというほうが、よっぽど受け入れられやすいんじゃないでしょうか?」
という核心のところをうかがってみました。

大杉先生としては、

ことさら監査役制度に何か特別の思い入れがあるわけではない。

やはり、監査役設置会社と委員会設置会社の中間あたりに実務界としての大きなニーズがあるのではないかと考えており、そのために過去からの経緯や理論を整理して白紙から考えることが今回の目的だった。
だから、特に監査役制度から発展させることや、監査役+取締役という形式にこだわっているわけではない。実務界で大いに議論をしてもらうことが重要と考えており、そのためのとっかかりとか整理になればいいと考えている。

というようなお話でした。

「ビジネス法務の部屋」でのエントリやコメント欄なども読まれていて、「ともあれ、実際に社外役員を務められている方々の声を聞くことができるのが、私には大変ありがたいです。」とのこと。

−−−

以前のエントリでも述べさせていただいたとおり、私としては、「取締役会+監査委員会」(報酬委員会や指名委員会は必ずしも設置しなくいい。)型が気に入っております。

経団連さんが、委員会設置会社から委員会を任意でピックアップできるアラカルト方式提案されてますが、

我が国におけるコーポレート・ガバナンス制度のあり方について http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/040.html

4(3) 委員会制度の見直し
現在、委員会設置会社については、会社法上、監査委員会、報酬委員会、指名委員会の3委員会の設置が強制されている。また、委員会の独立権限制の仕組みしか採用されていないが、一部の委員会のみの設置や社外取締役過半数の場合に取締役会が委員会に代替できる仕組み等、各社が自らの特性に合わせて各委員会の柔軟な利用を可能とすることが望まれる。

もうちょっと具体的に考えてみましょう。


報酬委員会、指名委員会は、どう機能しているのか
まず、報酬委員会、指名委員会というのは、人事に関わる権限を持っているわけで、非常に強力な委員会ではありますし、逆にだからこそ、その過半数を社外取締役にしなければならないところが強いアレルギーのもとになっているのではないかと思います。

また、委員会設置会社の報酬委員会、指名委員会は、毎月定期的に開かれるというよりは、だいたい、年に数回程度のタイミングで開かれているのではないかと思います。
これに対して監査委員会は毎月開いているところが多い(取締役会より開催頻度が高いところも多いはず)でしょうから、監査役制度との対比においても、この3委員会の中で監査委員会は設置させる必要性は高いかと思います。

一方、報酬委員会、指名委員会は(も)社外取締役が過半数なわけで、社内の取締役やスタッフに「この案でよろしく」と言われた場合に、基本的にはその追認的なことが多くなるんではないかと思います。
というのも、監査委員会は開催頻度が高いので、やってるうちに会社の内部事情もだんだんわかってくるし、特に適法性や会計や内部統制といった話については、社外取締役の方が専門性があることも多いでしょうし、フレームワークがきっちりしているので、「それはダメ」等、意見も言いやすいはずなんであります。

ところが、人事とか役員報酬の水準をどうするか、といった話の場合には、よほど社内の人間関係に詳しくないとツッコミを入れられないはずなんですね。
特に日本の場合、どの部門の誰が次に役員になるかどうかといったあたりは組織のやる気を大きく左右するところですので、たまにしか会社に顔を出さない社外取締役中心にそんなことを決めさせるのも怖いし、社外取締役もそんな大役をお願いされてもちょっと後ずさりするはず。

また、監査役や監査委員会なら、例えば日本監査役協会さんで情報を交換し合う場が存在するわけですが、報酬委員会、指名委員会については、「おたく、どうやってます?」といったことが聞ける情報交換の場もあまり無いんじゃないでしょうか。

一番「きれい」なのは、超大企業の指名・報酬委員会で行われているように、人事コンサルタントに指名や報酬の制度設計をさせて、それで得られた結果について指名委員会や報酬委員会が妥当性を検証する、といったプロセス的なアプローチかも知れません。
しかし、こういった人事コンサルタントのキャパシティというのは、日本では思いのほか小さい。

以前、某社のお手伝いをいただけないかと、主だった人事系のコンサルタント会社さんを数社回ったんですが、
「うちは、仕事選びますから。」
「今、仕事がいっぱいでして・・・」
「フィー、高いですよー。」
「おたくでやると、コストパフォーマンスが悪くなっちゃうと思うんですよねー。」
と、(ナショナルブランドの大企業の仕事なら受けるけどね)、といった敷居の高いニュアンスが漂っておりました。

超大企業ならともかく、普通の上場企業の感覚としては、役員の人事や報酬の決定のプロセスのエビデンス作りのためだけに、1千万円単位のフィーを支払わなきゃいけないというのは、「なんじゃそりゃ」ということになるはずです。
また、(実際にどうかはさておき)、ほとんどの企業の社内の人は「外部のコンサルタントより、俺たちの方が社内の人間関係については適切に判断できる」と思っているはずです。

もちろん、社外から実力ある取締役をつれてきて、ドーンと報酬を支払え、といった大胆な改革をするには社外の人が口を出すことが必要な場合もあるでしょう。
しかし、上述の通り、報酬委員会、指名委員会は、ほとんどの企業にとっては非常に手が出しづらいしくみなのではないかと考えます。

であれば、報酬委員会、指名委員会については、任意で設置する、という類型があってもいいんじゃないかと思います。


監査役人事は難しい
コーポレートガバナンスの強化が叫ばれる昨今、政治的な圧力としては、「監査役の権限を強化しよう、強化しよう」、という力が働くわけですが、そうすると逆に、そんな強大な権限を適切に運用してくれる人のハードルというのは高くなっていきますし、「北風と太陽」と同じで、逆に監査役には「あたりさわりのない」人を置こう、というインセンティブが強くなってしまいます。

特にベンチャー企業においては、監査役人事は難しい。社歴が短いので、「常勤」監査役になる人ということになると、非常に探すのが難しくなってしまうわけです。

企業経営者は「適法性」「会計」の議論が好きかどうかはともかく、「妥当性」に関わることの議論はむしろ望んでいることが多いと思います。
ところが、「妥当性」的な役に立つことを積極的に発言するいい人材は、往々にして「監査役」というポジションにすっぽりはまる感じではないんですね。

従来のベンチャー企業の発展プロセスは、

「取締役会+監査役」→「取締役会+監査役会(要常勤監査役)」→「上場」

といった感じでしたが、

(「取締役(社長)」→)「取締役会」→「取締役会(+監査委員会)」→「上場」→(委員会設置会社)

といった感じで進めることができれば、非常にスムースに発展していけるのではないかというのが実感であります。

先日も、設立を予定しているベンチャーから「監査役に」とお願いされたので、「会社法になったので、今は必ずしも監査役はいらないんですよ」と申し上げたら、「え、そうなんですか」と喜んで取締役のみの会社(監査役非設置)にされてました。

「法律上しかたないから、誰か置いておくかー」というのだと、監査やガバナンスに対する認識は「しかたない→最小限の要件だけ満たせばいい」ということに陥りがちです。
それよりも、会社の発展にあわせて最適な形態を選べる方が、ガバナンスの大切さが身にしみると思うんですが。
いかがでしょうか。

(ではまた。)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tez.com/mt/SA20071216T.sa/873/SA20071216U.html

この一覧は、次のエントリーを参照しています: 委員会設置会社制度改造論:

» 監査役の権限強化も考えもの from 経営・会計通信2
磯崎哲也事務所さん: 「委員会設置会社制度改造論」から。コーポレートガバナンスの [詳しくはこちら]

コメントを投稿