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June 15, 2006

福井総裁の責任とファンドのvehicleの建て付け

日銀の福井総裁が村上ファンドに1000万円出資していたことでバッシングを受けているのを見て、

「なんでやねん。じゃあ、
・預金を預けている銀行が法令違反をしたり
・持っている投資信託を運用している投資信託委託業者が法令違反をしたり
した場合にも、バッシングされないとあかんのかいな?」

と、一瞬思いかけましたが。・・・ん?ちょっと待てよ。

(日銀の総裁である人がどういう態度で資産運用に臨まないといけないか、というのは、話がややこしくなるので、この際、ちょっと横に置いときますが)、一般の出資者にも関連する話として、

  • 預金を持つのか、

  • 投資信託に出資するのか、

  • 普通の信託の受益権を持つのか、

  • 限定責任信託の受益権を持つのか、

  • 株式を持つのか、

  • 特定目的会社(TMK)の優先出資を持つのか、

  • 匿名組合で出資するのか、

  • 投資事業有限責任組合の有限責任組合員として出資するのか、

  • 民法上の組合の組合員として出資するのか、
  • 等で、出資者にかぶさってくる責任というのは、当然異なりますよね。

    村上ファンドは確か、今は、投資事業有限責任組合も使ってらっしゃるようですが、昔はケイマン籍のLPと日本の民法上の組合を組み合わせた構成になっていたはず。

    民法上の組合(任意組合)は、いわゆる「無限責任」のvehicleでして、財産は組合員の共有であるとともに、組合の債権者に対して「直接」「無限責任」を負うものです。
    このため、不動産投資など借入を行う投資には向きませんが、株式投資の場合には「株式」自体が間接有限責任なので、レバをかけない限り実際には組合員が出資額以上の責任を負うことは無い「はず」。このため、税務上パススルーということもあり、投資事業有限責任組合(LPS)の使い勝手がよくなる前は、(ベンチャー投資など)株式投資の私募ファンドには主に民法上の組合が使われてました。
    ただし、銀行借入はしなくても、例えば、組合が不法行為を行って損害賠償責任が発生した場合には、組合員に債権者からの権利行使が行われるということもありうる、ことになるかと思います。

    また、有限責任事業組合(LLP)でも(ですら)、工作物責任については組合員は有限責任にならずに、共有している財産につき所有者として責任を負う、という見解もあるようです。
    (例えば、信託大好きおばちゃんのブログ「工作物責任と限定責任信託」


    では、組合がインサイダー取引をしちゃったら、各組合員の責任は?

    当然、(村上ファンドはキャッシュが潤沢なようですが)、分配後で組合の財産がなかったりしたら、「得られた財産(元本+利益)の没収」等については各組合員からも取り返される可能性は高いと思いますが、その他の刑事罰(懲役、罰金等)についての組合員の責任というのは、どう考えればいいんでしょうか?(どなたかご存知の方。)

    ・・・ということで、福井総裁が責任を問われるべきかどうかはともかく、アクティビスト・ファンドのような、「株式の間接有限責任の範囲だけにとどまらないような活動」をするファンドを任意組合で組成すると、出資者(組合員)も、ちょっと怖い思いをする可能性もあるんじゃないでしょうか?というお話でした。

    (ではまた。)

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    » 福井総裁の責任について目からウロコが落ちた記事 from 革命の日々!
    世間では福井総裁が村上ファンドに投資したことについて、責任があるやなしやと大騒ぎですが、実はオイラはほとんど興味ありません。 でも、1つだけ目から鱗... [詳しくはこちら]

    コメント

    刑事は基本的に行為者本人が処罰されます(正犯)。
    直接に行為をしていなかった場合は犯罪は成立しませんが、正犯に影響を及ぼした場合は共犯となり刑法60条から65条に従い処罰されます。

    したがって、インサイダー取引をした行為者が正犯となり、正犯に影響をおよぼした者は共犯となります。

    そこで、影響を及ぼしたか否かが最大のポイントになると思われますが、これは一義的には決まりません。
    一般的には「物理的因果性」と「心理的因果性」という概念で整理します。前者は犯罪実行の道具を供与したとか資金を調達した(殺人のナイフや麻薬購入の資金などを想像してください)というのが典型で、後者はそそのかす、励ますといったのが典型です。計画を立てる、謀議をするというのもよく出てくるケースです。

    また、共犯には「共同正犯」「教唆」「幇助」の3類型があります(刑法60-62条)。態様や関与の程度で分類されるのですが限界的な事例では不分明です。

    そういうわけで、共犯になるか否かは事案しだいというのが正直なところだと思います。
    ただ、一般の投資家で投資の意思決定に関与していないならば共犯になる可能性は高くないのではないでしょうか。(また、仮に因果性が認められたとしても故意がないので結局犯罪不成立になるのではないかと思います。)

    なお、組合自体は犯罪能力がないとされて犯罪の主体とはならないと思います。(少なくとも組合処罰の規定が無い限り処罰のおそれは無いと思います)
    法人については証券取引法でも両罰規定がありインサイダー取引の処罰の対象となるようです。(207条、198条)

    組合員間の「共同事業」であっても、実際に事実を知ったり投資の意思決定をしてなければ、組合員に刑事罰が課されることはない、ということですかね。

    「同義的責任」は、株式会社の出資者と、任意組合の組合員とでは、違うのか同じなのか、てなことも、ふと考えました・・・。

    どうもありがとうございました。

    手元に刑事系の資料がないところでコメントするのも何だかなぁ、と、思って、誰かコメントしてくれるのを待っていたんですが、犯罪の成立という点では非専門家さんのコメントでつきている(組合には法人格がないので両罰の対象となるかは、ちょっと調べないと分からないんですが)と思うんですが、悩ましいのは、組合財産が没収・追徴の対象になるのかと、更に無限責任を他の組合員が負うのかというところかな、という気がします。(罰金は入ってこないと思うんですが、何れにせよ額がそんなに大きくないので)
    法人格がある場合とのバランスでいうと、前者については肯定、後者については否定という気もするんですが、法律構成的には悩ましさも残りそうな話です。
    何れにせよ、ある程度調べないと分からないんで、問題提起だけさせていただいておきます。

    すでに明確に決着が付いている問題というわけではない、ということですね。

    組合財産が没収・追徴の対象になるというのは「当然」と思っておりましたが、なるほど、懲役刑や罰金刑が他の組合員に及ばないのであれば・・・考える必要がある、ということですね。

    もし対象にならないとすると、業務執行組合員がインサイダーでどんどん儲けてくれれば、他の組合員は大儲け。「塀の中」に入るリスクの分、多少、業務執行組合員に高めのマネジメントフィーのレートを支払ってもいい、ということになっちゃいますわね。(笑)

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