January 22, 2006

ライブドア問題は「日本のエンロン事件」になるか?

監査法人の責任
前回のエントリに関して「ぬえ」さんからコメントいただきました。

ところで今回は監査法人にあんまり注目が集まっていないような気がしますが、そのへんはちょっと不思議です。

ですよねえ。
私もちょっと不思議に思っていたのですが、一昨日あたりからマスコミ各社の方々から、今回の監査法人についてどう思うか?というご質問をいただきはじめました。

「粉飾に協力してたんでしょうか?」というようなご質問も受けるんですが・・・んなことわかるわけないですよね。(粉飾かどうかもまだ判決が出たわけじゃないのに。)

「全く気付かなかった」か
「うすうす気付いてはいたがあえて触れなかった」か
「気付いていたが、適正だと判断した」か
「不適正と判断したが黙っていた」か
のどれかということになりますが、
売上に占める金額も非常に大きいので、これを全く気づかなかったとしたら監査法人としてはまずいですし、気付いていて触れないのは論外。「取引内容は理解していたがこれを適正だと判断した」というのは、今回の場合、かなり「クリエイティブ」な考え方ですよね。

つまり、詰め将棋的に考えて、どう転んでも今回の場合、監査法人さんの責任問題というのはキビシそうな気はいたしますが・・・・その辺は、今後の捜査や報道でわかってくることかと思いますので、このへんで。


波及効果
本当に報道されているように、ライブドアさんがSPV(というか投資事業組合)を関与させて決算を水増ししたのだとしたら、そういう意味では米国のエンロン事件に非常に似ていると言えます。
今回ご担当の監査法人さんは、パートナー数12名(ホームページによる)の中堅監査法人でしたので、売上に占めるライブドア関連会社からの報酬の比率も非常に高かったはず。これも、アーサー・アンダーセンのケースと同じ「経済的独立性」の話なのかも知れません。
いずれにせよ、あまり目新しい論点ではない、ということですね。

一方で、エンロンのケースと大きく違うのは、アンダーセンがたった1件の事件をきっかけに(真面目にやってた人を含め)世界数万人の組織が崩壊してしまったのに対し、今回は仮に監査法人さんが積極的に関与していたにしても、(トバッチリを食う人や企業には申し訳ないですが)、その影響は小さそうだ、というところでしょうか。

ライブドアさんが取った(という)手法も、「他の企業も結構やってる手法」ではなく極めて独自性が高いものじゃないかと予想しますので、そういう意味でも社会全体への影響は非常に小さいのではないかと想像します。

「小さい」といっても金額ベースで株式全体の時価総額の数%程度の影響(数兆円)にはなるかも知れませんが。ト○タさんとか新○鐵さんとかがもしこんなことをやってたのだとしたら、日本市場の信頼は確実に大崩壊するでしょうけど、この株高・景気回復トレンドの時に開示やコーポレートガバナンスに一石を投じるというのは、資産価値が実態から大きく乖離するバブルを牽制する意味でも、非常に費用対効果が高かったかと思います。

今後の世論の流れが、「企業価値の向上を追求することが"悪"なのではなく、コーポレートガバナンスが効いていないことが"悪"なのだ」という方向に行ってくれると、健全でいいんですけどね。


−−−

ちなみに、昨年11月の終わりに、知り合いの某氏から、「ライブドア担当の監査法人の代表社員○○さんと千葉でゴルフするんだけど、磯崎さんも来ない?」とお誘いをいただいたのですが、私は昨年3月にちょっと前に書いたエントリのような分析をしていたので、「ライブドアのBSに出資金勘定がありますけど、この出資先のファンドはライブドアさんが事実上コントロールしたりしてません?」とか「営業投資有価証券の売却を売上に立てたりしてません?」というようなことを聞きたくて聞きたくてしょうがなくなってゴルフどころじゃないと思ったので、「えー、その日はちょっと用がありまして〜」という感じでパスさせていただきました。

お会いしてたら、今回の一連のブログの記事も書くのがはばかられたと思いますので、お会いしなくてよかったかも知れませんね。:-)

(ではまた。)

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コメント

こんにちわ。おっしゃるとおり、組合を通じた連結決算の不正水増しはイカンですよねえ。LPが実質支配下にあるGPに売買の指示だしてたみたいですから・・・・。GP、LPの独立性の貫徹を再認識したしだいであります。
雑誌記者が本件で取材に来るんですが、isologueさんを事前に拝読するように申し上げておきました^^;

なるほど、今回ご担当の監査法人さんは、ライブドア関連会社からの報酬の比率が高かった可能性があったんですね。
監査法人の経済的独立性という話は、確かに目新しい論点ではありませんけど、重要なポイントですね。

コーポレートガバナンスがしっかりしていることが必要なのは間違いありませんが、昨日もちょっと書きましたけれど(前にも書きましたっけ)、アメリカのSOX対応を実務でやってみて思うんですが、SOXがコーポレートガバナンスの向上に
役に立つかというと、どうも靴の上から足を掻いているような感じがしてならないんですね。
もうちょっと言ってしまうと、結局のところ、SOX対応業務は監査法人さんが仕切るので、実態はそれほど変わらないまま、監査法人さん達の御飯のタネが増えるだけという気がしてしまいます。

あの一点だけ。エンロンによる粉飾決算事件の当該事業会社の監査法人はKPMGです。アンダーセンは起訴された操作妨害も不起訴になっています。アンダーセンは真面目に(?)、関与していたのですが、無関係な決算書の責任を取らされたということです。

はじめまして。ライブドア、エンロンと監査法人のキーワードでトラックバックをさせて頂きました。
時々お邪魔して勉強させて頂こうと存じます。

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