LLPでファンドを作れるか?

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読者の方から直メールで「LLPを使ったファンド」についてのご質問がありましたので、ブログの方でお答えさせていただきます。
質問の元になったのは、11月15日の日経朝刊7面の「創業間もない企業に投資、ファンドに新手法——有限責任組合を活用、リスク分散」という記事。

株式会社と任意組合の利点を併せ持つ新たな事業形態、有限責任事業組合(LLP)を活用した投資ファンドが年内にも立ち上がる。バイオ専門のベンチャーキャピタル(VC)が設立し、日本の創薬・医療機器ベンチャー企業に投資する。手元資金が少ないベンチャーキャピタルもLLPを活用すれば、機関投資家などから資金を集めやすくなる。創業後間もない企業向けの投資などで普及しそうだ。
 LLPは企業や個人など出資者が組合員として運営する。出資者の責任は出資額の範囲にとどまるほか、運営時の役割は出資額にかかわらず自由に決めることができる。八月に設立が解禁されてから、公認会計士が起業に使う事例などが出ているが、投資ファンドにLLPを活用するのは初めてという。
 バイオ専門VCのバイオテック・ヘルスケア・パートナーズ(東京・港、松本竹男社長)が投資ファンドを設立する。日本政策投資銀行から出資を受けて、LLP形態の十億二千万円の親ファンド(ファンド運営組合)を設ける。この資金をもとにした子ファンドをつくり、国内外の機関投資家から出資を募る。子ファンドの規模は最大五十億円を想定している。(以下略)

とのことです。
まず、この「有限責任事業組合契約に関する法律」は、ご案内の通り、経済産業省さんが主導されて作った法律ですが、経産省さん自体は、あまりこのLLPを証券投資用のvehicleに使うということは想定されてないだろう、ということが一点。
共同事業要件
つまり、LLPは「みんなでいっしょに事業をやる」という「共同事業要件」があるのですが、LP(Limited Partner)が出資をして運営には関与せず、GP(General Partner:ファンドの代表者)のみが投資の意思決定をしているというような「一任」っぽいファンドでは、そうした「共同事業要件」が満たされない可能性が強いのではないか?という公式見解のようです。また、(平成電電の匿名組合のケースではないですが)、そういうファンドが「事故」を起こして、LLPに対するイメージ自体が悪くなることについて危惧されてらっしゃる模様。
ただし、「共同で」といっても、当然組合内の役割分担には濃淡もあるし領域の違いもあるわけですから、どこまでが「共同」で、どこまでが「一任」なのか、というのは、なかなか法令等で明確に線引きすることは難しいところなわけで。実際、どんな事業であってもすべての事項について「全員一致」で意思決定していくというのは、業務が立ち行かないはず。業務の一部については「権限委譲」されるのが通常かと思います。ただし、全部の事項について一人の組合員が決定していくのは「共同事業」ではない、ということでしょう。
施行令を見ても、弁護士や公認会計士業とか、宝くじなどをLLPでやってはいけないとは書いてあるのですが、投資事業を行ってはいけないとは直接には書いてありません。
経産省さんが恐れていることの一つは、「一任」で投資顧問業を営んでいるのが実態なのに、「組合」の名を借りて規制を潜脱するというワルい人が現れるといやだなあ、ということじゃないかと思います。
子ファンド(ファンドの本体)が何のentityになっているのか
上記の記事のファンド本体がLPSなのかLLPなのかというのは、記事からはよく読み取れませんが、ファンドサイズが大きくなるほど、より「おまかせ」の投資家でないと集まらなくなりますので、「投資事業有限責任組合契約に関する法律」の投資事業有限責任組合契約(LPS)を利用する方がいいのかも知れません。
image010.gif
LPSとLLPの違い
このLPSとLLPとは、主にLPSの方が規制が厳しくなってます。
GPは名前の通り「無限責任」組合員ですし、監査法人や公認会計士による監査が義務づけられております。
同じことができるのであれば、コストが安いLLPを使った方がいいかも知れないわけですが、上述の通り、「共同事業要件」というのは、LLPの場合にはより強く求められると思っておいた方がよろしいのかな、と思います。
GPの人が無限責任を負うのか
もう一つGP(の出資者)が無限責任を負うのかどうか、ということについて。
「LLPがGPになることによって、GPへの出資者が無限責任を負わないのには違和感があるが・・・」というご質問もいただきましたが、日本では今までもほとんど、業務執行組合員や無限責任組合員を「株式会社」(=有限責任)がやっているので、別にそれがLLPになっても全く違和感がないんじゃないかと思います。
税務上パススルーであるということ
上記のように、単に「limited liability protection」を行うだけなら株式会社や有限会社がGPになってもいいわけですが、LLPがGPになる意味として大きいのは、「税務」の面かと思います。
特に、GPとして「個人」が参加する場合には、例えばGPを株式会社にしてしまうと、GPが受け取るキャピタルゲインに対して法人税の税率で課税されます。公開後に株式を売却して10%で済むパススルーのentityを持ってくるのは大きいかと思います。
事情が許せば、GPは株式会社等にしてその出資は最小限(名目的)にして、GPである個人が個人としてLPとしても出資する、ということでもいいかも知れません。
ただ、形としてGPがそこそこの金額を出資しないとまずい、という場合には、GPのvehicleをLLPにするという手が今年の8月からは使えるようになったのではないかと思います。
GPまたはファンド本体の運営は「共同事業」になるか?
ファンド全体を「共同」で運営するというのはファンドサイズが大きくなると実質的に難しくなると思うのですが、「GPの業務」のみに限れば共同で運営できる可能性があるかと思います。
投資対象によっても異なるでしょうね。
公開株のファンドなら秒単位で意思決定していかないとパフォーマンスをあげられないかもしれないので、「共同で」意思決定していくというのは難しいと思いますが、未公開株とか不動産への投資であれば、投資委員会を開いて、少なくとも数日をかけて投資やexitについて意思決定していく、というノリになるわけで、胸を張って「共同で」と言える運営になる可能性が高いのではないかと思います。
ファンドのストラクチャーの選択の複雑怪奇さ
ファンドのストラクチャーをどうすればいいかについては、ブログの読者の方々からも非常によく質問をいただくのですが、正直言ってかなりお答えしにくい質問です。
つまり、
・ 投資対象が株式なのか不動産なのか、その他なのか
・ レバレッジはかけるのか(借り入れはするのか)しないのか
・ 出資者が国内だけなのか、海外の投資家も含むのか。
・ 出資者は法人だけなのか個人も含むのか
・ GPは法人(的)なのか個人(的)なのか
・ 「共同で業務運営」的なのか「一任」的なのか
・ ファンドサイズはどのくらいなのか(≒ストラクチャー構築にどのくらいコストをかけられるか)
等によって、選択するvehicleその他の構造が全く変わってきますので、個別のカスタムメイドのお話になってくるわけですが、
平成電電のケースのとおり、ファンドは儲かることも損をすることもあるわけで、利益が出たときにはみんな何も言わないわけですが、損をすれば必ず怒ります。当然、投資にはリスクを伴うので、たとえ結果として損をしたとしても、そのリスクについて理解できる人に理解できるように説明していたならまだいいとして、リスクについて真面目に説明する気がなかったり、規制を回避するためにスキームを使ったり、リスクについて理解できない層から(小口の)お金を集めようとするお話にはあまりご協力できませんので、念のため。
(ではまた。)

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LLPでファンドを作れるか?” への2件のコメント

  1. LLPは法人格がありませんが、そもそも、LPSのGPにLLPがなることは可能なのでしょうか。

  2. ん?だめでしょうか?
    福井日銀総裁の村上ファンドへの出資でも話題になりましたが、
    http://www.tez.com/blog/archives/000720.html
    民法上の組合においては、組合員に組合がなれるはずですので、LPSでも(人格がないと組合員にはなれないと書いてない限り)組合員にはなれるのではないかと思いますが。
    (弁護士さん等にご相談ください。)
    ではまた。