タイガース上場(等)と種類株式の活用(「多様なガバナンス」の可能性)

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(以下、私個人として阪神タイガースを公開した方がいいとか悪いとかいう意見があるわけでなく、仮に公開するとしたら技術的にはこういう方法も考えられるのでは?というお話で、ビジネスモデル上、公開した方がうまくいくかどうかという検討もしてませんので、公開の是非についての「ワレ、何考えとんのじゃ!」といった熱烈タイガースファンの方々等のご批判はご容赦願います。<(_ _)>)
昨日の、「公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)」の続きですが、昨日のお話が「安定株主比率対策」的なお話だったのに対し、本日のお話は、より前向きに、
「今まで株式公開に向かないと考えられてきた企業に、株式公開による多様な資金調達手段を提供することはできないか」
「”会社=100%株主のもの”という単純なモデルではなく、より多様なコーポレート・ガバナンスの形に、種類株式が使えないか?」

といった観点から。
「カネ以外」の価値
第三者から見ても、「この会社の価値は単なる短期的な株価だけでは計れない」というのが明らかなケースには、公開時に種類株式を使った複数階層構造を取る意義が認められやすいかも知れません。
例えば、Googleのように研究開発型の企業で当面安定した環境で研究を行う必要性が高いとか、すごくブランドが浸透している老舗とか、ファンの多いコンテンツやコミュニティを抱えていたりする場合など。
つまり、当該ビジネスに「思い入れの強い」存在が不可分にくっついているケースは、単なる普通株式の公開というのが難しいケースも多いかと思います。
そうしたケースの最も典型的な例の一つとして、村上ファンドが主張している阪神タイガースの株式公開があるんじゃないでしょうか。この場合に、単純に普通株式を公開するのではなく、「経済的な持分」と、ファンクラブ向け種類株や経営陣向け種類株などを適当な比率で組み合わせることで、阪神電鉄は経済的価値を譲渡してキャッシュインするとともに、資産の時価評価も高め、しかも、ファンの意向も経営に反映されるようにできる可能性があるかと思います。
image001.gif
上記のように、(例えば)ファンクラブが普通株式より強い議決権を持つ種類株式を保有し、ファンクラブで1人一票で投票して、その比率で、保有している議決権を不統一行使することにします。
「タイガース=阪神」でないとダメという場合には、阪神電鉄が、やはり経済的価値の割に強い議決権を持つ種類株式を持つとか、そんなもんいらん、とか。
普通株式だけの構造で公開すると、「金を持っている人=でかい発言権」であり、「口出ししたければ金持ってこい」ということになるわけですが、そうでない方法も理屈としては存在するわけです。
公開企業は必ず買収される可能性を開放しなければならないのか?
世間では「公開してるんだから、買収されるのは当たり前だ」というような議論も行われてますが、公開企業になるからには必ず他者から買収される可能性を解放しないといけないでしょうか?
必ずしもそうでもないと思うんですが。
証券化っぽい考え方でいくと、上記でいう普通株式は(経済的特性でなく議決権の面で)「メザニン」っぽい部分とも見れますが、そういった特性やリスクが適切に開示されて投資家がそれを正しく判断できれば、そういう証券が公開されてもいいと思います。
つまり、未公開なら他者から買収される可能性はゼロで、公開すれば100%オープンという「二者択一」ではなく、中間の選択肢がいろいろあってもいいんじゃないでしょうか
そういうケースを許容する方が、例えば、(今後の法律の改正や税制の変化にもよりますが、ことによると株式会社化された有名私大とか大規模医療法人とか農業法人とか)、今までは公開とは相容れないようなビジネスまで含めて、莫大なビジネスチャンスが生まれるポテンシャルを秘めているかも知れないですし。
「資本と経営の分離」と言いますが、一歩進めて、「資本とガバナンスと経営の分離」を考えた方がいいケースもあるのではないかと。効率的な市場の下で、多様な企業がすべて、「資本の論理」の一次元的linearな関数で最もうまく機能するという仮定の方が非現実的な気がします。
以上、冒頭にも述べましたが、タイガース(他)が公開や資金調達する必要があるかどうかは全く考えてませんので、悪しからず。「経営陣の悪口を言えるのもタイガースの魅力」という人が多くて収益性がそれほどはあがらず、valuationもあまり高くつかなくても、未公開時よりはそこそこ経営にもプレッシャーがかかるものの敵対的買収までは気にせず、「らしさ」を残して、といった微妙なバランスが設計できる可能性があるのではないか、ということです。
ビジネス上のより本質的なお話は、47thさんのこちら↓のエントリをご参照ください。
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2005/10/post_83.html
(ではまた。)

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タイガース上場(等)と種類株式の活用(「多様なガバナンス」の可能性)” への5件のコメント

  1. コントロールとキャッシュ・フローの分離雑考(イントロ)

    今週は金曜日にMPREなるBar関係の試験があるのと、来週月曜日はコーポレート・ファイナンスの2回目の試験があるので、ちょっと重い記事を書く時間はなさそうなんですが、紅の牛さんの「市民球団が危ない」と磯崎さんの「タイガース上場(等)と種類株式の活用(「多様なガギ..

  2. ご紹介、どうもありがとうございます。
    タイガースファンの掲示板と聞いて、一瞬、
    「ごるぁ!」
    「あほんだらぁ!」
    「何ぬかしてけつかんのじゃー!」
    等、ボコボコにされるかと思いましたが(笑)、みなさん極めて紳士的に話し合われてるんですね。(ほっ)

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