公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)

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未公開企業の種類株の活用は、DES(債務の株式化、デット・エクイティ・スワップ [Debt Equity Swap])の他に、今後、議決権の調整にも活用されるかも知れませんね。
10月26日の日本経済新聞朝刊13面に、「買収には特殊株で備え、グーグル会長に聞く——買規模より技術革新重要」という記事が、種類株式の活用として非常に印象的かつ象徴的な記事だったと思います。

インターネット検索世界最大手、米グーグルのエリック・シュミット会長兼最高経営責任者(CEO)は二十五日、日本経済新聞記者とのインタビューで、「ネットの世界ではマイクロソフト参入の影響は全くない」と述べ、IT(情報技術)の巨人との競争に自信を見せた。(中略)
 ——資本が二重構造で株主による統治が効かないという批判もある。
 「株式公開する際、長期的利益のために短期的利益を犠牲にすることもあると宣言した。それを実現するために二種類の株式に分かれており、敵対的買収にも心配ない仕組みになっている。投資家がこれを支持しているのは株価が証明している」

実際、株価は公開以来、以下のような感じで推移。
goog[1].jpg
(「Googleほどの企業だから」ということで、「dual class」方式が一般に認められたということでは全くないとは思いますが。)
このGoogleのIPOで一躍注目を浴びたdual class型の資本政策ですが、GoogleのようにMicrosoftやYahoo!等のコンペティターにすぐにでも買収される可能性があるというような場合でなくても、「創業時にお金がなくて、お金を集めるために安いvaluationでたくさん株式を発行しすぎた」等の理由により経営陣など安定株主の持株比率が低くて、このまま公開するとすぐに買収の危険があるような企業では活用の可能性があるかも知れません。
こういうベンチャー企業は非常に多い・・・というか、創業時から利益が出る運のいい企業以外は、ほとんどのベンチャー企業が多かれ少なかれこうした問題を抱えているケースが多いかと思います。
(会社のvalueをうまく説明できなかったり創業者が「いい人」だったりすると、知り合いやベンチャーキャピタル等にどんどんequityを放出して、結果として公開前に頭を抱える、というパターン。)

「プチMBO」で調整
ということで、公開前に安定株主対策として取られる手段の一つとして、「プチMBO」というか、経営陣などがキャッシュで他の株主から株式を買い集める、という策が取られることがあります。
ただ、資産に含みがあったりキャッシュフローが安定している企業のMBOと違って、ほとんどのベンチャー企業では、企業を担保にした借り入れは難しいことがほとんど。つまり、LBO的なスキームでのMBOは困難なことが多い。公開前で公開時の時価総額が見えてくると、既存株主もそう安い価格では株式を手放してくれなくなります。また仮に借り入れが行えたとしても、借り入れをする経営陣のリスクが大きくなったりすると、経営陣が破産するリスクも大きくなりますし、(公開を急ぐ誘因があったり、公開後も中長期的に経営陣から株式が放出される可能性が高いと、)結果として公開審査上いやがられることが多いです。

ストックオプションでの調整
経営陣等の資金負担なしに実質的な安定株主比率を高める手段として、新株予約権などを発行する方法もあります。
ただ、これも、あまり高い(発行済株式総数の10〜20%を超える)潜在株式があると、公開審査上もいやがられるのが普通。
それ以前に、既存株主の保有する株式の経済的価値がdiluteする可能性が高いので、発行決議が事実上できない場合も多いかと思います。

有利発行による調整
このほか、経営陣に株を有利発行する方法も考えられますが、やはり他の株主の反発を買いますし、税務上の問題も発生しかねないので、特に公開が見えてきている段階では、現実的ではない場合がほとんどでしょう。

種類株式を使う方法
というわけで、第4の方法として、種類株式を使う方法が考えられます。
以前のエントリでも書きましたが、新会社法(来年4月以降)には、

第百九十一条 株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。
一 株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。
二 イに掲げる数がロに掲げる数を下回るものでないこと。
イ 当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数
ロ 当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)

という規定があり、分割数と単元のくくりを同じ(以上)にすれば、株主総会の決議なしで定款変更できるので、そうした後に、その後に、株主総会で1単元1株(=1議決権)という、種類株式を定款に入れ、種類株式を発行することが考えられます。
つまり、経済的持分は(ほぼ)今のままでいいから、経営権だけは確保させてくれ、ということですね。経営陣以外の株主が、ベンチャーキャピタル等、経済的な側面だけに興味がある人たちであれば、(公開審査上どうかということはともかく、少なくとも株主総会の決議では)賛成してもらえる可能性が高いかと思います。
逆に言えば、関係の深い取引先など、事業上のメリットや「あわよくば経営権を」ということを見越して出資をした株主や、経営陣の独立性が高まることを望んでない株主の比率が高い場合には、賛成してもらえない可能性が大きくなるかと思います。
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(続く。次回は「タイガース等の上場への種類株式の活用」案・・・の予定。)

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公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)” への2件のコメント

  1. ♪売りと買いとの間には

    「上場するなら金をくれ!」でも議決権は渡しません:)
    元歌はもちろん本アルバムの一曲目。
    Love or Nothing
    中島みゆき
    isologue −by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: 公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)つまり、経済的持分は…

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