情報通信の発達と「ドラマのある時代」の終焉

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SF小説や映画では、科学が非常に発達した社会が描かれることが多いわけですが、どの小説や映画でも、ロケットで宇宙まで行ったりロボットが人間並に活躍しているといった他の科学技術の進み具合に比べて、情報通信系技術だけは異様なほど発達してないわけです。


「JM」
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にしてからに、ネットは異様に発達してるのに、肝心な情報は持ち出せないので、「記憶屋」ジョニーが国境をまたいだ情報の「密輸」に携わっているというお話。「ガンダム」でも、「ミノフスキー粒子」の存在で、遠距離の敵の存在をレーダーで探知することが困難になっているという前提。
スタートレックだって、わけもわからん怪しげな惑星に、なにも生身の人間を「転送」する必要は全く無いわけで。人間以上の感度を持つ観測用ロボットなりを送り込んで、広帯域で通信されてきた結果をあたかも自分のことのように体験できる装置があればいいだけです。それはほとんど現在のテクノロジーの延長で出来るお話なので、ワープとか物質転送ができるテクノロジーがあれば、そんなことが出来ない方がおかしい。それを考え出すと、そもそもエンタープライズ号に生身の人間が乗る必要自体あるのか、という話になってくるわけですが。(笑)
かように、SFに限らず、そもそも「ドラマ」というものは「情報の行き違い」から生じるとも言えるわけで、情報がスムースに伝わる世界は「ドラマとしてはつまらん」のじゃないでしょうか。
孫子曰く、

古えの所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者の勝つや、智名も無く、勇功も無し。故に其の戦い勝ちてたがわず。

・・・ということで、孫子は、「ドラマになるような英雄的活躍をするやつ」というのは、偉いどころか、ちゃんと仕事をしてない。情報を日頃から入手・分析して正しく戦略を立てていれば、ドラマになるような活躍がそもそも発生しない、という世界観なわけです。
先週号のビッグコミックスピリッツ連載の「日露戦争物語」でも、渡米中の秋山淳五郎真之が、明治32年5月に当時、海軍大学校教官をしていた山屋他人少佐にあてた黄海海戦を分析した書簡を紹介してますが、その中で真之は、

談柄として面白き出来事の起こるものは皆是れ戦術上の失態にて、完全無欠に実施されたる戦術は殆ど無臭味にて、戦談の種子もなく、戦況に光彩もなく、又誰に大功績あるかも分からず、而かも全軍一様に最大の戦闘力を発揮し、大功を全局に収め、勝果の獲得最大なるものなり

と、同様のことを述べています。
人間はしばしば、他人にうまく情報が伝わらないことに苛立ったり憤ったりするわけですが、あと50年とか100年経って、すべての情報がスムースに行き交う世界になったら、それはそれで非常につまんないかも。
私たちは、「ドラマのある世界」の最後の(非常に”おもしろい”)時代に生きているのかも知れないな、と、ふとモーソーいたしました。
(ではまた。)

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情報通信の発達と「ドラマのある時代」の終焉” への6件のコメント

  1. 50年、100年たってもドラマはなくならないと思うでつよ。
    囲碁とか将棋とかの状況が丸見えのゲームにおいても、
    ドラマがあるように、イコールコンディションに見えるところ
    で如何に差異を作るかがインテリジェンスの発揮すべき
    ところになると思えば、自動的に情報の行き違いは消滅
    する作用が強まれば反対の作用も強まるんじゃないかと。
    要するに今以上に神経戦になるわけで、ドラマはそこに
    見出せるんじゃないか知らん?と思うわけでつ。
    そういう意味で、孫子はやはりいつまで経ってもバイブル
    であり続けると思うのでした。如何か知らん?

  2. >50年、100年たってもドラマはなくならないと思うでつよ。
    そうも思ったんですが、一部のマニアックな知識のある人にのみウケるマニアックなドラマであって、一般受けする映画になるようなお話はぐっと少なくなるのではないのかなー、と思いまして。(今ですら、その傾向は現れ始めている気もします。)
    どもども。ではまた。

  3. > そもそもエンタープライズ号に生身の人間が乗る必要自体あるのか
    そもそもカーク船長さえいなければトラブルの9割はなかったのに、と常々思っておりました。
    そういう意味もこめて、ドラマには設定上の制約も含めてトラブルメーカーが必要なのですね。