図解シニョリッジ

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本石町日記さんが、通貨発行者である日銀さんが得られるメリット「シニョリッジ」について書かれてます
シニョリッジは、よく「日銀は原価数十円の紙を印刷するだけで1万円として通用させられるので、9千9百何十円は『丸儲け』」と理解されてますが、会計上は、発行した通貨の額は下記の日本銀行の貸借対照表?(BS)の図のとおり、(利益でなく)負債として計上されてます。
一般の銀行のBSを見ると、普通の事業会社のBSと違って「預金」が負債(貸方・右)」になってるので、ちょっと簿記をご存じの方はびっくりするわけですが、日銀のBSを見ると、現金(表記は「発行銀行券」)が負債になってるので、さらにびっくりできるわけです。

image002.gif

出所:日本銀行営業毎旬報告 (平成17年3月31日現在)より磯崎作成

「企業が社債発行して資金調達するのが負債に計上されるのと同じじゃん」と考えればすんなり理解できます。1万円で印刷できる社債券を1枚1億円で発行しても、9999万円「儲かる」わけではないですから。
ただ、兌換でない紙幣を発行した場合に、日銀が法的に何の「債務」を負っているのかというところまで考えるともう一度頭がこんがらがります。
先日、「年金2008年問題」の著者の玉木伸介さんに、「国民は年金を払って『お金が貯まった』気になっているが、公的年金は、国民の政府に対する『債権』ではない。民間の金融商品とは法的性格が全く異なる。」ということを教わって、「えっ、そうだったの?」と目からウロコが落ちたんですが、根拠法規の違う日銀券も社債のアナロジーで考えてはいかんのかも知れませんね。
また、上図の資産(右×[訂正])側に目を転じると、日銀さんが国債を100兆円!も抱えてらっしゃることがわかります。
昔、社会科で日銀の公債引受は禁止されているてなことを習ったような記憶があったのですが、このBSだけ見る限り、「原則禁止」というよりは「原則OK」としか読めませんが。(不勉強でよく存じませんが、直接引き受けるのはダメだけど、市中から買い入れるのはOKという意味でしょうか。)

財政法第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

単純な自己資本比率が1.66%、国債のリスクウエイトをゼロ、その他の資産をざっくり8掛けとしても6%程度の自己資本比率というのも、シロウト目にぱっと見ると大変びっくりできます。
(ではまた。)

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図解シニョリッジ” への21件のコメント

  1. 日銀の国債引受について

    日銀の国債引受について調べてみました。
    日本銀行の対政府取引 (2005年 4月)http://www.boj.or.jp/stat/boj/seifu0504.htmを見ると
    対国債整理基金 長期国債売現先残高 146,348億円
    割引短期国債借換引受残高 136,177億円
    対財政融資資金 長期国債売現先残高 …

  2. 一応発行後1年以上であれば買い取ることできます。
    第一次大戦後のドイツのようにならなければいいですが

  3. いそろぐさん、軽くコメントしておきますね。
    国債の大量発行による金利上昇で一連の金融緩和措置がちゃらになることを恐れ、大量発行と共に買取を認めていますが、通貨供給量が買い取り量の上限になっています。発行後一年以上という条件は、日銀の国からの直接引き受けを防ぐために設けられておりまして、まあ、一定の歯止めをかけてるよ、というポーズです(この表現は関係者には怒られますけど)。あと、30年債はだめよ、という歯止めがあるくらいです。ですから引き受け、ではなく、「買取」が正確な表現ですが、まあ、経済効果は同じ事で、現実には通貨供給量という上限一杯に近くなりつつあり、あまり新聞は書きませんが恐ろしいことに、これを「取っ払ってしまえ」と言う議論も厳然として存在することを申し上げて起きます。既に国債の発行量はGDPの150%に達しており、歴史上No.1,この数字だけみると一次大戦のドイツどころではありません。

  4. いそろぐさん、エントリーでの紹介ありがとうございます。
    補足いたしますと、銀行券は(金利コストゼロの)社債に近い負債ですが、銀行券流通を左右する主役は国民ですので、日銀からみると銀行券はコントロールできない負債という性格があります。例えば、“タンス預金”を銀行に預金すれば、最後は日銀に戻り、銀行券残高は減ります。日銀は券が戻ってくるのを阻止できず、出て行くのも止められない立場で、券の動きには基本的に受け身です。なお、よくお金が捨てられますが、発見されずに朽ち果ててしまう現金は無コストの永久債務と化し、エクィティに近いものになっていきます。
     なお、日銀による公債引き受け禁止の点では、ご指摘の通りに「直接引き受けはダメだけど、市中からの買い入れはOK」ということです。銀行券見合いの資産は、市場からの買いきりオペを通じて取得された中長期債で、ぐっちさんの説明を若干補足すると、銀行券残高を保有上限としています(この歯止めは買いきりオペが財政ファイナンス化するのを防ぐため)。現状、保有国債は99兆円と銀行券残高を大幅に上回っていますが、このうち3分の1程度は別のオペで取得された短期国債(いわゆる短国買いきりオペ)です。実はこのオペ、短国発行と同時に買われる場合もあるなど、限りなく直接引き受けに近いです。
     いそろぐさんが多額の国債保有に驚かれ、ぐっちさんも国債引き受け化に懸念を表明されておりますが、金融緩和が実質的には財政支援に貢献していることを日銀B/Sは如実に示していると思います。なお、中央銀行の資産・負債構造では、TB頂いた最初のエントリーで「ラスト何マイルさん」の指摘が日銀の考えに近く、参考資料としては「うおさん」が紹介している日銀金融研究所発行の『金融研究』(2004年8月発行)が有用です。

  5. 忘れていました。
    「発行後一年以内の国債は買えない」という規定(いわゆる“一年ルール”)は、2002年1月16日に撤廃され、以下の新たな規定では発行後2、3カ月で買えます。
    「国債売買基本要領」中一部改正
    4.売買対象
    利付国債(発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く。)とする。
    (附則)
    この一部改正は、平成14年1月17日から実施する。
    この手のオペ要綱は金融政策の陰に隠れて世間的には余り目立たないですが、日銀は譲歩を重ねつつあるわけで…。

  6. 日銀のバランスシートと日本の財政

    朝からおもしろい議論がなされております。いつも取り上げさせていただいてる
    いそろぐさん http://www.tez.com/blog/archives/2005_05.html
    本石町日記さん http://hongokucho.exblog.jp/
    のお二方でそれぞれお話をコラボレートしながら大変貴重な書き込みをされてい…

  7. 国債ネタで2004年度予算の国債依存度は1945年と同じ。
    一般会計に対する特別会計と臨時軍事費の比率も2004年と1945年はほぼ同じ。
    1年以上も2,3ヶ月の直接引き受けもほぼ同じ。
    イギリスで50年国債が発行されました。
    アメリカでも発行しそうです。
    日本でもこの低金利に・・・・

  8. ツケのつけまわし

     いつか読もう読もうと思っていて、読んでいない国家破綻本ですが、
     読む前に僕なりの見解を書いておきます。
    #きっかけとなった磯崎さんにトラックバックしました。
     いろいろ言われていますが、対外債務がほとんどない以上、膨大な国債残高の
     意味するとこ…

  9. 日本経済はもっと緩和的な金融政策を必要としていると思うんですよね〜。
    (今結構景気が良いという政府発表を信じておられる方と、足元でのインフレを心配しておられる方以外には、ご賛同いただけると思うのですが。)
    だとすれば、日銀のBSの右側を大きくする必要があるわけで、対応して左側に入るべきまっとうな、資産が無い事が、問題になる訳です。
    思い切って、ドルorユーロorSDR立ての債権で、日銀のBSの左側の相当部分(出来れば過半)を埋めてやるわけにはいかんのでしょうか?
    (債権でなくても、それなりに信用の有る銀行への外貨預金でもかまいませんが)
    金利もそこそこ期待できるのでシニョリッジも実感しやすいし、ハイパーインフレへの抑止にもなるし、多分円安に振れるので景気への刺激にもおまけが期待できるし、いい事づくめだと思うんです。
    例えば、200兆円分の外債(当然利付き、たぶん平均5%p.a.位?)と、日銀券(当然無利息)を印刷して交換すれば、(円安を考慮しなくても)年間10兆円規模の金利収入が期待できるし、日本経済の渇望する(?)強烈な金融緩和も実現できるし、インフレも(目一杯悲観的に見て)100%/年x1年(or 50%/年x2?)くらいに押さえられるし、日本政府の財政規律の緩みの心配もないし、世界的な低金利で世界経済の刺激にも貢献できるし「1000利有って1害有るか無いか」と言う美味しい話だと思うのですが。
    どなたか、日銀に”円建てでの”元本保証のない資産の所有を禁止する、合理的な理由を教えて下さる方はいらっしゃいませんでしょうか。
    素人の、議論で申し訳ありません。

  10. [economy][BOJ]「通貨発行益(シニョリッジ)をめぐる勘違い」の勘違い

    「図解シニョリッジ」(@isologue5/11付)経由です。何が勘違いかと言えば、利益にせよ負債にせよ、本来、一般の企業の経済活動を統一的に把握・描写するためまとめられた概念ですが、あくまで経験則的にまとめられらものに過ぎないわけですから、それですべての経済活動ぎ..

  11. ドル高の流れを紐解く手掛かり

    以前、こんなエントリを載せました。
    ===
    それにしても、人民元の切上げが起きるから、アジア通貨が強くなるって、根拠はなんでしょう・・・。
    中国の相対的な通貨価値が上昇するという事実になんで日本円がつきあわにゃならん・・・。
    だれかスカッとする解説を戴きぎ..

  12. 「2008年IMF占領」につきまして

    「2008年IMF占領 財政史から見た日本破産 森木亮 光文社 1000円」
    を紹介します。
    内容を簡単に要約しますと
    ・日本は、60年償還ルール・巨額の借換債のために、「単年度の利払い費+借換債が税収の250%以上」という、返す当ての無い借金まみれ
    ・日本の国家会勲..

  13. 「インフレ+低金利」の破壊力

    NHKへの投稿で、次のように記述しました。
    「今後、長期金利の上昇により国公債の利払い費が級数的に増大し、物理的に利払いが不可能になる事態、すなわち国公債のデフォルトも、可能性として全く無いわけではない。」
    これは、このブログでこれまで可能性を指摘しぎ..

  14.  あまり緻密に考えるのは苦手なんですが。
    公的債務を日銀に付け替えてしまって、日銀への借金を踏み倒せば
    誰も困らないのではないでしょうか。800兆円の借金を返すことは不可能です。
    ずいぶん節約しているのに毎年40兆も借金が増えるんですから小泉さんや
    民主党の緊縮政策は持続可能ではありません。
     私が首相ならこうして経済危機を解決します。
     まず毎年70兆の国債を発行してすべて日銀引き受けで消化します。
    税収45兆と合わせて115兆円の予算を組みます。現在より30兆以上使える
    のですからかなりの拡大路線です。これで15年ほどすれば公的債務を全て
    完済します。変わりに政府の日銀への借金が1000兆円の借金が出来ます
    がこれは踏み倒すことにします。
     デフレギャップが200兆以上ありますから70兆円の増刷でもデフレが収ま
    るかどうかだろうと思います。
     これで無借金の世界一の日本経済が出現します。
     現在の不況は政府と日銀の経済と日本国に対する無知から来た人災と
    思っています。
     国家は破産しません。特に日本は世界一の債権国です。
     

  15. 日本生命で資産運用に従事するなかで、わたしも日本の財政問題についてはかねてより危機感を抱いておりました。愚見ではございますが、ご参考まで。
    みなさまからのご意見・ご感想をお待ちしております。
    http://www.geocities.jp/yasuhisatsurumi/Opinion.html
    2005/02/13  シニョリッジ(通貨発行益)に関するガセビア
    2002/06/05  ムーディーズ、内貨建て日本国債格下げについて

  16. [Study]分裂勘違い君の「お金を刷りまくり政策」の日銀がおかしい点

    fromdusktildawn氏に恨みがあるわけでは全くないのだけど、人気者なので、つい細かなところにもツッコミを入れたくなってしまう。 (会計問題なの…