オープンな法体系(SF小説風)

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みなさんから、契約書を著作権で保護する必要があるかどうかについて、いろいろご意見をいただきました。
以前より「オープンな法体系」というものについていろいろ思考(妄想)しておりまして、それをSF小説風に書くとこんな感じになるかな、ということでまとめてみました。
半日で書きあげて、あまり「ハードな考証」をしたわけでもないので、ツッコミどころ満載かと思いますが、ご興味のある方は、ご笑覧いただければ幸いです。
(以下、登場人物・団体等は実在のものとは関係ありません。)

−−−

2035年2月15日。
昨日、大きなディールをクローズさせたボクは、江ノ島を遠くに望む高台にある鎌倉の自宅で博士論文を書いている。
テーマは「21世紀における電子法学発展の歴史とOLI仕様の変遷」。
2007年にシリコンバレーで発案されたXMLによる法律文書の体系、「OLI」(Open Legal Interface)が、どのように実務界で発展し、経済と産業に影響を与えてきたか、という内容である。


XMLによる契約書の記述
OLIは、スタンフォード大大学院卒業後、シリコンバレーのXML関連技術のベンチャー企業に勤務していたJoseph van Beuningen博士が、その後弁護士に転じ、Wilson Sonsini Goodrich & Rosati法律事務所に勤務している時に提唱。その後、博士は事務所を退職し、2009年にOpen Legal Interface Consortium(通称「OliCon」)を設立した。
21世紀初頭の世界では、法律上のスキームや表現は弁護士事務所等の一部の専門家の間でノウハウとして抱え込まれており、それを積極的に公開しあう発想やインセンティブはあまり存在しなかった。もともとvan Beuningen博士も、企業間で用いられる(完全に定型化できない)特定の電子商取引の契約作業を省力化するために、電子署名・電子認証付きのXML化された電子契約書の仕様を提唱したわけであり、OLIの利用も当初はそうした非常にニッチな分野での利用に留まっていた。
しかし、MS-Word・Excel2010がOLI文書を取り込み 修正できるようになったあたりから、法律専門家の通常の業務にも徐々にOLIが浸透し始めることとなった。OLIに準拠したドキュメンテーションは、原則として他者が自由に利用してかまわない。こうしたオープンソース的ライブラリが蓄積されてきたことにより、しだいにOLIに準拠して契約した方が効率的になり、「ネットワーク外部性」が働きはじめたのがちょうどこのころと言える。

契約書が言語の壁を超える
また、OLIでは、法的な概念の一つ一つについて、XBRL(会計領域のXML仕様)と同様、「タクソノミー(taxonomy)」と呼ばれる定義集が蓄積されることになる。これによって、英文の契約書も、クリック一発で日本語にもフランス語にも韓国語にも表示されるようになった。
つまり、ここで重要なのは、「法律上の概念」と「言語による表現」のレイヤーが切り離されたことであり、契約書が「プログラム」で処理可能となったことである。
オープン化に難色を示してきたISDA (International Swap and Derivatives Association, Inc.)の文書類も、2012年についにOLI準拠への移行を決定、2015年から適用を義務付けた。これ以降、金融界ではデリバティブ部門から他の国際取引、電子取引等に、OLIの利用が急速に広がることになる。

契約とオプションバリュー
当然のことながら、これと平行して、こうした契約書の処理をサポートするプログラムやパッケージ類が発達することになった。特にその中でも、契約書が内包するオプション的価値を算定するパッケージが発達したことが注目に値する。
OLIに準拠した契約書ファイルをそうしたパッケージに放り込むと、パッケージがその契約書を解析し、枝分かれした様々なケース毎の確率を予想してオプションバリューを自動的にはじき出す。
もちろん、オプション価値算出の前提としては、契約の内容によって、金利、為替、株式指数や個別の株式、天候等の水準や価格、ベータ等の非常に多岐にわたるデータが必要になるが、こうしたデータについても、アナリスト等から徐々にOLIで利用可能なXML化されたデータの形で提供されるようになってきた。
そして、こうしたアナリストや格付機関、調査会社の将来予測データや格付けについては、実際の発生確率によってバックテスティングが行われ、提供主体別の「当たりはずれ」の結果も明確にわかることになり、そうした情報提供主体のパフォーマンスもより厳しく問われるようになっていった。
これにより、金融関係のみならず一般企業の中でも「リアルオプション的意思決定」が進展していくこととなる。すなわち、ありとあらゆる契約やその中に含まれる条件はオプションその他のデリバティブの一種であり、そうした条件の善し悪しが、契約締結時点で一定の「価値」を持つということである。

監査手法の変貌
こうした動きを後押ししたのが、企業のコーポレートガバナンスやコンプライアンス強化に対する社会の要請である。
2002年のSOX法(Sarbanes-Oxley Act)制定後、各国で同様のコーポレートガバナンスや内部統制の制度強化が図られたものの、その後も21世紀初頭に大型の企業不祥事が続発。破綻後に蓋を開けてみると開示されていた内容と企業実体が乖離していることも多く、開示や監査に対する「期待ギャップ」が広がっていった。
この状況を打開するための手法として、会計監査人が企業側が作成した帳簿を監査するのではなく、レジの打刻を始めとする原始データの発生時点から関わる「監査のSTP (Straight Through Processing)化」を取り入れる企業が2019年ごろから現れはじめた。
2021年に、上場企業の全てに原始データ発生時からのデータの電子認証と第三者関与を義務づける「Johansson- O’Brien Act」が米国で成立、他の先進国でも概ね2025年までに監査のSTP化を上場会社に義務づける法案が成立した。
原始データは、データ認証用の鍵が書き込まれているタンパープルーフのICカードでタイムスタンプを押された上で認証され、暗号化されて独立した会計監査人に送信、蓄積される。社内での会計処理とは別に監査人側でも平行して仮想の帳簿が作成され、会社側のXBRL準拠の帳簿と電子的に突合が行われることとなった。当初は企業内のデータだけが中心であったが、XML化された処理の普及とともに、連結対象子会社との間のデータの照合や、グループ外の企業との間の残高確認等も電子認証されたデータで自動的に行われることになる。
世界の三大会計事務所は巨大なデータ処理産業となり、監査のフローにおいても、会計基準等やトップの方針をヒアリングして最終的に監査意見を出す上位レイヤーの作業と、企業の原始データが発生する取引端末やPOSレジ等に電子認証カードが正しく設置されているかどうかを確認するテクニカル・サポート的作業が重要性を増すことになった。21世紀初頭までは見られた伝票や帳簿をひっくり返すという作業は、最近ではほとんど見られなくなってきている。
このICカード等の「認証用ハードウエア」を売り、巨大な設備投資に基づいてデータ処理を行うというビジネスモデルにより、21世紀初頭まで行われていた中小規模の事務所による監査はマーケットからすっかり姿を消すことになり、三大会計事務所による寡占化に拍車がかかって、それら大手事務所の収益構造を若干好転させることとなった。

オプションバリューと経営者の注意義務
一方、企業活動における「契約」という行為は、複雑化し、直感として非常にわかりにくいものになってきた。なにせ、最近はちょっとした投資契約でも、A4の用紙にプリントアウトすると厚さ50cm以上のボリュームがあるから、これを人間が読んで判断するなんてことをしてたら時間がいくらあっても足りるわけがない。
ただし、量は多くても、普通の契約の中身はデファクト・スタンダード的ライブラリの組み合わせ部分が95%以上を占めるので、実は見た目ほどには複雑ではない。取締役や執行役をはじめとする「人間様」が負う注意義務は、「こうした組み合わせが妥当であるかどうか」と、先述のようなオプションバリューを計算するパッケージソフトからアウトプットされるオプションバリューと、金利・為替・株式指数等の様々な要因が変化した場合の感度分析や予想確率分布の図表で、「とんでもないこと」にならないかどうかのチェックを行うことが中心となる。
主要な先進国では、
「企業全体でリスクを合計して考慮した場合、1年以内の発生確率が1%以下である事象によって被る損失が自己資本のx%以下であるなら、経営判断の原則により取締役・執行役の責任が問われることは無い」
といった、リスク・リターンの数値が明示された判決が次々と出はじめ、企業の負えるリスクの範囲は、規模別・地域別等に(良くも悪くも)21世紀初頭とは比べものにならないくらい明確に決まってくることになった。
さらには、
「パッケージ等を用いて、企業の重要な投資等についてリアルオプション的検討を行わなかったのは、取締役の重大な注意義務違反である」
という判決が出始めるに至って、企業の「意思決定」と「オプション価値計算」と「契約締結」の作業は、お互いに切り離せないものになっていく。

法律のオープン化
先進各国の法律も、自ずとOLIに準拠することになった。
まず米国や日本では2017年くらいから、ネット上で空いている法人名等を探し出してクレジットカード等で決済すれば瞬時に法人等が設立できるようになった。これは単なる法人登記のネット化だったが、さらに2028年までにはOECD加盟各国の法律はすべてOLIのライブラリとして定義されることになり、法人や信託、パートナーシップ等のentity自体も、国家等の認証鍵による電子認証が施されたOLI準拠の「データ」として定義されることになった。このころから、それまで使われていた「ペーパーカンパニー」という用語は「データーカンパニー」と呼ばれるようになっていく。
このため、現在では重要な契約はそれ自体が一つの独立したentityとして定義され(つまり、契約ごとにSPV [特別目的事業体] が作られ)、そのentity自体が(契約ごと)譲渡可能となっていることが多い。つまり、「契約」が「価値」であり「データ」であり「事業体」になったのである。

ルールに対するオープンなガバナンス
こうしたOLI準拠のentityは、「OLI準拠のVirtual Entity」の頭文字を取って、「OLIVE」と呼ばれている。ちなみにOpen Legal Interface Consortiumのロゴも、鳩がオリーブの葉をくわえた図柄だ。もちろん、旧約聖書でノアの箱舟に戻ってきた鳩がくわえていたのがオリーブの葉だったことにもとづいている。
各国の法律の改正時に法案がOLIのデータとして公開されると、それに対して「Lhacker(ラッカー)」と呼ばれる法律分野のハッカー達が一斉に「アタック」をかけることになる。つまり、すべてがOLI化される社会では、こうした法律の運用に重要なのは、21世紀初頭までのような意味での法律知識ではなく、「プログラミング能力」になってきたのである。
Lhacker達は、コンピュータ上でシミュレーションをすることにより、例えば、法改正によって市場に「歪み」が発生し、OLIVE等をいくつも組み合わせて裁定(アービトラージ)すると、リスク無しで莫大な利益が得られる、といったことを発見する。そうしたことがwebで公開されたりパブリックコメント等に投げ込まれると、法案が変更を余儀なくされることも多い。20世紀までは一部の法律専門家による検討で決定されていた経済・社会・ビジネス関係の法律の立法という作業が、「オープンな」衆人環視の下で行われるようになってきたのである。
もちろん、その「バグ」を公表せずに法改正後にそういう法律の抜け穴を利用してカネを儲けても(法律上は)問題はない。しかし、そういうことをするとLhackerコミュニティ内で批判をあびるし、万が一他のLhackerにそれを先に公表されたら手柄と栄誉はそいつのものになってしまうので、大抵は先に発見したやつが「バグ」を公表することになる。
天才Lhackerと言っても、その多くは高収入の弁護士とか法学部の教授ではなく、広範な法律知識があるとは限らない「プログラマ」なのだ。最近は、中学生Lhackerが国際租税法の改正についての「バグ」を指摘することも珍しくない。

法律事務所の業態の変貌
こうした中で、法律事務所に求められるものも大きく変貌を遂げてきた。21世紀初頭までのような「文系」出身の法律事務所勤務者は大きく減少し、代わりにオプション理論やコンピュータ・サイエンスを学んだやつが増えてきている。
法律事務所の業態も徐々に変わってきた。現在では、もともとの契約書がほとんどのケースを網羅的に想定しているので、契約書数に対する訴訟の比率は圧倒的に下がってきている。契約書の「完備性」が圧倒的に高まってるわけだ。
作成した契約のうち訴訟となる件数やその勝ち負けは法律事務所毎にバックテスティングによってチェックされるので、契約締結時に想定したリスク値以上の確率で訴訟等が発生する法律事務所は自然に淘汰されていくことになる。
OLI準拠の契約書数自体が激増しているので、訴訟になる比率は下がっても訴訟の絶対件数は増えている。しかし、その訴訟の99%以上は、双方のXML文書を電子的に突合して、法律や過去のXML化された判例と照らし合わせて当日中に判決が出る「自動裁判」になってきているから、訴訟の代理人というビジネスもあまりうまみはなくなってきた。このため、法律事務所の大半は、より戦略的、数理的、情報サイエンス的な側面からクライアントに契約体系の変更についてアドバイスをしてフィーを受け取る業態にシフトしてきている。
また、21世紀初頭には無かった「自己ポジションを持つ法律事務所」という業態も増えてきている。「法律版のヘッジファンド」といった方がわかりやすいかも知れないが、OLIVEの形で存在する契約間の「歪み」をアービトラージすることにより利益を上げる業態だ。
「オープン」になると、すべての「歪み」が無くなるかというと、全くそんなことはない。契約書は一般には公開されないためだ。標準のオプション価値算定パッケージと実際の価値が乖離することもありうる。
最近の世界の有力大学の理科系学部の学生の就職においても、こうしたヘッジファンド型法律事務所の人気は非常に高い。
−−−
ボクは現在25歳だが、12歳からOLIのプログラミングにハマり、飛び級を利用して19歳でStanford大学 情報法学部(ネット受講)を卒業、今はニューヨークに本部のある法律事務所に勤務している。(といっても仕事場は、昨年2億5千万円で購入した鎌倉の自宅。)
「35歳定年説」がささやかれる業界なので、若いうちに稼いでおかないとね。
昨日は、1ヶ月かけてボクが練ったディールがクローズした。シベリアの油田の地区別の採掘権のOLIVEと、石油先物と、米国と欧州の石油会社の分割・合併を組み合わせてアービトラージするもので、ディールのロットは2500億円で利益が約15億円。このディールに関わるボクのボーナスは2億円也、の予定。
こうした「オープンな」社会は、歪みの少ない非常に効率的な市場を作り出した。しかし、残念なことに、それが「平等な世の中」を生み出したかというと全くそうではない。今日も、アフリカで500人が飢餓で死んだというニュースが流れていた。
ボクは、節税メリットを取るため あいだに2つほどOLIVEをかませて、ケイマンに作ったOLIVEから、ボクの名前がわからないように、アフリカで活動をしている団体に1億円ほど寄付をした。
「施しをするときは、右の手のすることを左の手に知らせてはならない。あなたの施しを人目につかせないためである。そうすれば、隠れたことを見ておられる父が、あなたに報いてくださる。」
のだそうなので。

(おしまい。)

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オープンな法体系(SF小説風)” への15件のコメント

  1. フジテレビとライブドアの和解が決定したみたいですね。会見では日枝会長・村上社長・亀淵社長・堀江社長が同席ということで見ものですね。
    予断ですが、磯崎さんが社外取締役を務めているのって、「カブドットコム」だったんですね。自分はずっと「カブトドットコム」だと思っていて、カブト虫の会社だと思ってました(笑)
    カブドットコムのCMがやっていたので気づきましたよ。
    CMまでやっているなんてすごいですね。

  2. エンロン事件が起きる前に読みたかったなあ。
    それに日本ではたぶんSFのままになる可能性がまだ高い。
    政府通した認証使えば国税も納得してくれる・・・なら可能性高いだろうけど
    それはそれでまた別のハードルが出てくるものねえ。
    STP的?なシステムをリスク管理システムの関係で売ろうとしてた外資系の監査法人さんは果たして売り込めたのかなあ・・・日本企業の人的リソースの中の一定の年齢の方々が阻害し続けてくださるうちはやっぱり売れないものね。
    それと契約書の問題・・・これは「事実上」ある意味で「共通化」が進んでます。ただし、案件の細部と各条項の整合性が取れてるかどうかは・・・扱った弁護士先生の考え方とアレンジャーの方の見識次第。ますますエンロン的な状況は一部で広がっているのでは?
    なんてこと考えながら読むと面白いなあ、磯崎さん。これで一本書きませう。協力しますですよ(^^;)。

  3. 最新動向を押さえつつしかも全てにわたりアドバンスドな
    ストーリーで、興奮して読みました。
    エピソードの最後がまた示唆的ですね。
    ケイマンといえば「慈善」。
    新しい生き方、考え方まで盛り込まれていて感動しました。

  4. ライブドアとフジの和解?内容は、産活法を活用した完全子会社化を目指したスキームになったみたいですね。磯崎さんが言及されてた株式交換(実際には産活法の現金利用による簡易交換のようですが)も織り込まれています。当初マスコミに流れていた枠組みだけでなく結構少数株主に配慮されたスキームかもしれません。トラックバックつけさせてもらおうとしたのですが、まだ磯崎さんがアップしてなかったのでこちらに。失礼しました。

  5. 会計監査のくだりは実に鋭い示唆に富んでいますな。いや、さらっとこんな力作こなせちゃうなんて、すごいですな。・・・、最期にオチがあれば星新一みたいでなおよろしかったのに(古い、古すぎか?)。

  6. 三権分立とプログラマー

    いやあ、こうも面白いものがただで読めるとは素晴らしい。
    isologue −by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: オープンな法体系(SF小説風)以前より「オープンな法体系」というものについていろいろ思考(妄想)しておりまして、それをSF小説風に書くとこんな感

  7. (遅レス恐縮です)
    オチ、付けたつもりだったんですがー。orz
    薄味でお気に召さなかったかも知れませんが。
    ではでは。

  8. LEGAL XML

    くだないエントリにコメントを頂いてしまって恐縮なisologueの磯崎さんのエントリで、「オープンな法体系」っていうエントリがありました。 契約書を作るって行為がプログラミングみたいに統一言語でできて、書く地域語への変換とか、裁判とかがプログラム上で解決できれぎ..

  9. LEGAL XML

    くだないエントリにコメントを頂いてしまって恐縮なisologueの磯崎さんのエントリで、「オープンな法体系」っていうエントリがありました。 契約書を作るって行為がプログラミングみたいに統一言語でできて、書く地域語への変換とか、裁判とかがプログラム上で解決できれぎ..

  10. [computer][law]リーガルパターンの可能性

    「オープンな法体系(SF小説風)」(@isologue4/17付)において、法令や契約書のxml文書化を通じた自動処理の可能性が語られているわけですが、webmasterの見立てとしては、そちら方面には進まないように思います。
    というのも、その補足に当たるエントリで紹介されていぎ..

  11. 遅コメで失礼します。
    いまハイエクを勉強しており、法秩序・法体系について考えているものです。
    これは投稿当時に拝見したとき、とても面白いと思いました。(私はもともとプログラマでもあります)
    ただ、これが有効なのは成文法の社会ですよね。英米法、慣例法の社会でも通用するでしょうか?
    慣例法の理想は、まず「常識」「慣例」が判例として蓄積されていき、それを後追いする形で法律が成文化される、というものではないでしょうか。その場合、確立した分野ならともかく、最先端の(立法が間に合っていない、あるいは現実に即していない)分野においてXMLによるvalidity checkができない、ということになると思います。
    例えばYouTubeのような、法律が想定していない、逸脱するような存在を、こういうシステムは取り扱えないのではないかと。
    だからといって役に立たないというのではなく、「成文法にもとづくチェックを自動化する」という効果は計り知れないものがあると思います。
    ようするに適用できない例もありますよね、という確認です。
    もう一点。私自身ハイエク的なリバタリアンなので、根本には理性の限界、不可知論というのがあります。本分に出てくるモンテカルロ・シミュレーション的リアル・オプション算出は、果たして有効なのかと。サブプライム問題やLTCM破綻やブラックマンデーなどの「100年に1度」の問題(ブラック・スワン)が10年おきに起こったりしないと思うのです。といったあたり『まぐれ』『リスク』などを読んで思った次第です。つまり「リスク」と「(ナイトの)不確実性」の違いですが、これについてはいかがお考えでしょうか?
    これも、もちろんリアル・オプションやモンテカルロ・シミュレーションが無力だという意味ではなく、明らかにやったほうがいいと思います。その限界を指摘するに過ぎません。

  12. コメントありがとうございます。
    私も最近、ハイエクを勉強し直してみて、このエントリのことを思い出してました。
    >英米法、慣例法の社会でも通用するでしょうか?
    明文化された「法律」がプログラム化される、というのは慣習法的世界ではなかなか進まないでしょうけど、企業間の「契約」は、こうした形になっていく可能性はなくはないと思います。
    ご案内のとおり、どちらかというと、英米法の世界の方が、契約書は細かくて分厚くて「プログラム的」です。
    (日本の契約書の方が、移行しにくそう。)
    ここで言っている自動的チェックは、成文法とのチェックというよりも、「取り決めた金利、為替等の水準が変化した場合」等に、契約の価値自体がどう変化するか、といったチェックが中心になるイメージです。
    >ようするに適用できない例もありますよね、という確認です。
    ここには書きませんでしたが、そもそも対消費者の建物賃貸借契約とか、約款とか、そういったものは(適合性の原則的な考え方から)、ややこしい契約そのものが否定されると思います。
    ということで、企業間の契約がこういったノリにたとえなっていったとしても、世界の契約の大半は、そうした体系に落とし込まれないとは思います。
    >モンテカルロ・シミュレーション的リアル・オプション算出は、果たして有効なのかと。
    こうしたシミュレーションは、「正しい」未来を神のように予知することが目的ではなく、あくまで、契約の価値や取締役の責任等に関わって来るお話です。
    人間が作る契約書だと、「if A 〜」の場合について書かれていても、「else 〜」の場合について書かれていないことがよくありますが、「プログラム化」されると、そうした「文法エラー」は少なくなり、「A」というケースが明確に定義されるほど、ぼんやりした人が「else」のケースについてたとえ想定していなくても、それは「バグ」ではなく「仕様」になってきます。
    (日本人はともかく)、キリスト教やイスラム教の強い国の人たちは、「きちんとやれば、完全にケースが網羅できる」なんてことは、もともとあまり考えてないと思いますよ。
    (ご参考:
    http://www.tez.com/blog/archives/000103.html
    ただし(それゆえ)、その時点で人間ができることを、どこまでちゃんとやったか(善管注意義務、due care)といったことが問われるし、こうした「契約のプログラム化」が進むと、そうしたハードルは(好むと好まざるとに関わらず)上がって行ってしまうだろう、ということです。
    >明らかにやったほうがいいと思います。
    とのことですが、そういう意味では、「いい」かどうかは、私はちょっと疑問ではあります。
    (ではまた。)