大量保有報告書、遅れて提出って、それアリ?(その2)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

遅れて大量保有報告書を提出した場合の罰則について、bewaad institute@
kasumigasekiさんとminoriさんにトラックバックいただきました。それぞれ、行政の方と実務の方なので、大変興味深いです。
minoriさんのご意見
http://www.minori.com/archives/law/2005/02/filing.html
minoriさんは、遅れただけでは「罰則無い」、というお立場。
実際に、提出でご苦労されたエピソードも紹介されていて非常にためになります。

罰則があった場合、タイムアウトの次の瞬間から隠蔽に走ると思います。法人も個人も。
 「次のタイミングで帳尻を合わせよう」とか、「すぐ売っちゃうから、ま、いいか」とか。
 遅れても正直に提出した者だけが罰される、という矛盾も生じますし。
 かえって市場が不透明になります。

というご意見。

 と、大上段に構えて書いてはみるものの、閲覧できる場所・時間が限定されているのでほんとに投資家のみなさんの役に立っているのかしら、と、つねづね疑問を感じています。

少なくとも、敵対的買収を受ける発行会社側にとっては、ちゃんと開示してもらえないと怖いですね。そうでないと、怖くて株式公開できません。
bewaad institute@kasumigasekiさんのご意見
bewaadさんは原則論的なお立場から説明されてます。
http://bewaad.com/20050217.html#p02
参照されている条文は以下の通り。

証券取引法第百九十八条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(中略)
五  第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十七条において準用する場合を含む。)若しくは第二十四条第六項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書若しくはその添付書類、第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第十条第一項の規定による訂正報告書、第二十七条の三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付届出書、第二十七条の十一第三項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付撤回届出書、第二十七条の十三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付報告書、第二十七条の二十三第一項若しくは第二十七条の二十六第一項の規定による大量保有報告書又は第二十七条の二十五第一項若しくは第二十七条の二十六第二項の規定による変更報告書を提出しない者

#6日めに出していなければ、その時点で「提出しない者」になるので、その後提出しても過去の違法は治癒されないと思います。

なるほど、1日でも遅れたら、その時点では「提出しない者」になるというお考えですね。
実際、提出せずに罰せられたケースを解説しているページを紹介されてます。
「東天紅事件 〜証券取引法5%ルールについて〜」
栄光綜合法律事務所 弁護士 池田佳史
http://www.eiko.gr.jp/6topics/topics055.htm

中華レストラン「東天紅」の株式公開買い付け(TOB)をめぐり、発行済み株式の5%を超える同社株を保有しながら大量保有報告書を提出しなかった等の事件で、平成14年11月8日、被告人に対して懲役2年、執行猶予4年、罰金600万円の判決がなされました。
これは証券取引法27条の23に規定する「5%ルール」に違反するもので、同条違反の最高刑は懲役3年以下または300万円以下の罰金となっています(同法198条5号)。
この事件は「5%ルール」違反での刑事事件としては初めてだということです。

ま、実際には、東天紅事件くらい有名でひどいケースでないと実刑ということにはならないんでしょうね。

なお、実際の運用を見ますと、告発の実績もありますが、まずは行政指導で対応がなされている(略)ようです。

元の記事がオンライン上にないので、新聞の方を当たりますと、2003年12月29日読売新聞朝刊27面に記事があります。

武井被告と一族企業、武富士株の保有を7年間報告怠る 309件急きょ提出
(略)
 消費者金融最大手「武富士」(東京都新宿区)の前会長で、電気通信事業法違反で起訴された武井保雄被告(73)(拘置執行停止中)やファミリー企業などが、同社の大株主として義務づけられた「大量保有報告書」の提出を七年間にわたって怠り、関東財務局の厳重注意を受けていたことが分かった。(中略)
 武富士が株式を店頭公開した直後の一九九六年十一月以降、一部親族やファミリー企業が、武富士株を担保に設定して地方銀行やノンバンクなどから繰り返し融資を受けていたのに、武井被告らは報告書を全く提出せず、その保有実態は明らかになっていなかった。
 関東財務局から「証取法違反に当たる」と指摘を受けた武井被告らは、今年八月下旬から先月中旬にかけ、九六年分までさかのぼって膨大な報告書を次々に提出した。遅れて出された報告書を積み上げると約一メートルにもなるという。(中略)
 武井被告らが報告書の提出を怠ったことについて、武富士は「コメントする立場にない」としている。
 
 〈大量保有報告書〉株式の保有状況を一般投資家に公表する報告書。バブル期に仕手集団による株の買い占めが相次いだことを受け、1990年に提出が義務付けられた。

minoriさんのおっしゃるように、実務としては「うっかり」ということもありますから、1日遅れただけで懲役三年というのは勘弁して欲しいところ。(私も、もしなるとしたら、司法や行政の側というよりは、提出者側関係者ということになると思いますので(笑))、悪質でなく軽過失の場合には、ぜひ、ちょっとしかられるくらいで許して頂きたいところです。
ただ、「ゲームのかけひき」として、わざと軽い違反を行う、としたら、ちょっと許せません。
いずれにせよ、期日通りに提出すれば問題ないわけですから、よい子のみんなは、ちゃんと期日までに大量保有報告書を提出しましょうね。
「課徴金ブーム」(笑)なので、「懲役三年」と「厳重注意」の間をとって、例えば「購入金額×5%×提出が遅れた日数/365日」くらいの課徴金を課す、というのも手かも知れません。
(では。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

大量保有報告書、遅れて提出って、それアリ?(その2)” への2件のコメント

  1. 証取法198条は刑罰規定ですから、故意が認定できない「うっかり」なら適用されないのではないでしょうか。