ゲートキーパー業務

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従来の銀行中心の間接金融では、調達も銀行、審査も銀行、リスクを取るのも銀行と、資金供給に必要なあらゆる機能をすべて銀行自前で行ってきたわけです。
これに対して、資本市場というのは、証券会社が全部1社でやるのではなく、リスクを取るのは投資家、情報はアナリスト、情報サービス会社や格付機関等が提供するなど、いろんな「エージェント」が登場して機能を分担するところが特色。
みなさん、日本は昔から資本主義の国だと思ってらっしゃるかも知れませんが、製造業や流通業はともかく、こと肝心の資本の流れについては、日本はいわば「(世界一成功した)共産主義の国」だったという見方のほうが的を射ているんじゃないでしょうか。おかげで世界一貧富の格差の少ない平等な国になった反面、そうした政府や政府のコントロール下にある銀行を中心とする「計画経済的」なやり方は、複雑化する社会にはついていけなかったわけです。
バブル崩壊後1990年代後半から証券化の進展や証券手数料自由化、プライベートエクイティやベンチャーファイアンスの活発化等、日本も徐々に「資本主義」への転換が進んで来ましたが、例えば、アメリカのプライベートエクイティやベンチャーキャピタルが、個人のキャラに大きく依存した主体であるのに対し、日本の大手のベンチャーキャピタルは軒並み大手金融機関の関連会社であるなど、海外とは違った「生態系」が成立しているのも事実。未だに、個人金融資産の大半は無リスクの「預金」の形で銀行や郵貯を経由して供給されているわけですから、当然といえば当然ではありますが。
ゲートキーパーとは
こうした中で、日本で一般にはあまり知られていない機能の一つとして「ゲートキーパー業務」があるのではないかと思います。これは、年金等の機関投資家に対しどのファンドに投資をすればいいかをアドバイスする機能。
なぜ日本にゲートキーパーがいない(目立たない)のか
(私の仮説ですが)、現在の日本はゲートキーパーが食っていけるほどまだファンドを経由した資金のボリュームが存在しないんでしょう。ゲートキーパーが(ほとんど)存在しないので大規模にファンドに資金が流入しないという「卵とニワトリ」も言えますが、1999年ごろのことを思い返していただければおわかりのように、ただ資金だけが流入しても、投資する対象や資金仲介者であるファンド等の実態が伴わないと「バブル」になるだけです。
やはり、まだ「それだけの市場規模がない」と考える方が適切かなと。
また、今はファンドの数も少ないので、そうしたゲートキーパーのような情報仲介者が必要とされないのかも知れませんね。ファンドのコミュニティの中にいらっしゃる方々はみなさんお知り合いなので。
またちゃんとトラックレコードがある方がやってらっしゃる「ちゃんとした」ファンドは概ね資金集めに成功されているんじゃないかと思いますので、資金集めに苦労しているのは「イケてない」ファンドということなのかも知れません。
「分析するほど情報がない」ということもあるかと。
PEやVCとは違いますが、映画の領域でもハリウッドでは監督やテーマで膨大なデータが存在しているので、どこに投資するとどれくらいのリスクでどのくらいのリターンが見込めそうかということが(もっともらしく)分析できるけど日本の映画市場ではそれができない。
日本でも、スタジオジブリやプロダクション I.G作品なら、「かなりの確率で当たりまっせ」ということが合理的に説明もできると思うのですが、そこはもう「資金はいりまへん」ということで、昔から投資されている方々(TさんとかNさんとかDさんとかMさんとか)しか投資できない世界になっており、そこに資金を導入するビジネスなんぞ成り立たないのとある意味似た構造なのかも知れません。「スタジオジブリの映画に投資したら儲かる可能性大でっせ」なんてことは、しろうとでも言えますしね。
引き続き、ゲートキーパーについては(個人的に)勉強していきたいと思いますが、以下、「ゲートキーパー」等のキーワードでググッたリンクを掲げておきます。
参考文献
「ゲートキーパーの欧米における実態と日本における可能性」
産業基盤整備基金(平成14年3月)
http://www.smrj.go.jp/isif/hoho/jyoho/doc/gate_h13.doc
三菱総研さんの作。107ページの大作で、Web上で入手できるものとしては、これが一番詳しそうです。(「生wordファイル」になります。)
(関連?図表)
http://www.smrj.go.jp/jasmec/venture/report_h13/df/pdf/df03.pdf
エー・アイ・キャピタル株式会社
三菱商事さん系の会社。日本でゲートキーパー業務をうたっている数少ない会社の一つ。
総合商社さんの「立ち位置」は、ゲートキーパー業務には向いてるかも知れませんね。
「本邦初!米パスウエイ社と提携し、プライベートエクイティファンドへの投資一任・助言業務を開始」東京海上アセットマネジメント投信株式会社
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/j0201/pdf/021129.pdf
2002年とちょっと古いリリースですが。
どうも三菱系のプレイヤーが多いような。
資金調達・投資制度についての課題(平成14年4月26日経済産業省)http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g20426lj.pdf
P35「米国との大きな違いとして、ゲートキーパーなどの資金の出し手に対する資金運用の助言・ファンドのパフォーマンスをウォッチして選別する主体の有無が指摘される。」
という部分だけですが。
三菱総合研究所「2004年 日本バイアウト市場関係者ディレクトリー」販売のご案内
http://www.mri.co.jp/REPORT/OTHER/2004/20040617_imu01.htmlここでは、ゲートキーパーとして、前出のエー・アイ・キャピタル、東京海上アセットマネジメント投信のほか、「WestLB証券会社 東京支店」というのがあげられています。
(ディレクトリーの内容は不明。)
米国のベンチャーキャピタル − 通説と本質 −(小野 正人)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/8285/usvc2.htm
米国のゲートキーパーについて実名がいくつか掲げられています。
かいせつ「ベンチャーキャピタルファンドなるものについて」(小野 正人)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/8285/fund-2.html
G.W. Fenn, N.Liang and S. Prowse, The Economics of the Private Equity Market, Staff Paper of Governors of the Federal Reserve System, 1995」という、ゲートキーパーの実態について触れているFRBのレポートを紹介。
大和総研「年金運用受託者責任とファンド・オブ・ファンズ投資」 資産運用評価本部長 飛田 公治
http://www.dir.co.jp/consulting/report/library/viewpoint/0020.html
ニッセイ基礎研究所「オルタナティブ投資(代替投資)の基礎知識− ヘッジファンド・ブームのかげにリスクあり−」(金融研究部門 中窪 文男)
http://www.nli-research.co.jp/doc/eco0208b.pdf
オルタナティブ投資入門—ヘッジファンドのすべて
山内 英貴 (著) 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492653104/
(読んでませんが、Amazonでは☆5つですね。)
運用難時代を切り拓くオルタナティブ投資
大塚 明生 (著), 神谷 智 (著) 金融財政事情研究会
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4322102921/
(これも読んでませんが、同☆5つ。)

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ゲートキーパー業務” への10件のコメント

  1. いつも興味深く拝見しています。AIキャピタルにいた徳田さんがこのあたりは詳しいです。

  2. どうもありがとうございます。
    その方、面識はございませんが、ご経歴からして「ズバリ」の方のようですね。
    「いた」というのはどこかご転職されちゃったんでしょうか?
    では。

  3. 昨年AIキャピタルを退職し、今は西海岸にいます。来週帰国するようですが。

  4. 資金調達のホントの姿

    以前に直接金融と間接金融について本当に理解している人間ってどれくらいいるんだろうと考えたことがあった。 ファイナンスについて声高に叫ぶ人たちは、たいてい旧来型の間接金融をあまり経験していなかったりするので、バランスを欠いた論調になりがち。 もちろん、日本…

  5. 「あっちのゲートキーパー」の話題で盛り上がっていたこともあって、こっちのゲートキーパーについて考えてみました。:-)
    ではでは。

  6. ゲートキーパーなんて別に付加価値の高いビジネスじゃないと思います。優秀な奴はゲートキーパーなんて夢のない仕事は絶対しません。

  7. 徳田です。
    知らない間に話題になっていたようですので、遅ればせながら議論に参加させていただきました。
    ゲートキーパーの仕事はおっしゃるように個人の高い能力が求められる仕事ではありません。そもそもゲートキーパーという言い方は、非常にさげすんだ言い方のようです。
    昔、あるVCが機関投資家に出資をお願いに行ったところ、雇っているアドバイザーから、あのファンドには投資すべきでないと言われ断られた。そのとき、「門番(ゲートキーパー)に過ぎないやつらに何がわかるか!」とはき捨てたように蔑視した言い方をしたのが始まりだそうです。ですから、米国では、投資アドバイザーたちは、自分たちのことをゲートキーパーとは呼ばないそうです。実際に、ゲートキーパー業務は、経験や能力が物を言う世界ではなく、データベース事業です。過去のトラックレコードを見てよいか悪いか判断するのが仕事ですから、さほど経験が必要とされません。したがって、米国でもゲートキーパーの社員は、証券会社の出身者が大半です。もちろん学歴だけで人を判断してはいけませんが、学歴を見ると、
    ベンチャー>VC>ゲートキーパー
    という感じになっております。
    そのため、VCやバイアウト投資の中身まで理解して判断できる人はごくまれれです。どちらかというと、仕事の大半が投資家対応で、営業向けのセルサイドの人間が中心です。これは日本だけではなく、米国も同じで、私がお付き合いしていたある米国のゲートキーパーは、社長がワンマンで4年お付き合いしたのですが、社員はほとんど入れ替わりました。長い経験を必要としないので、ファンドマネージャーを長期に雇うという意思もなく、インセンティブプランにも乏しため、社員の入れ替わりが激しいです。
    ただ、特に米国の年金基金ですが、高額な給料を払って、基金内に優秀なファンドマネージャーを雇うことができないということから、外部のアドバイザーを雇わざるを得ません。そのため、ゲートキーパーが力を発揮しているわけで、VCから見るとうるさい存在ではあります。

  8. 徳田さん、
    はじめまして。
    「ゲートキーパーという言い方は、非常にさげすんだ言い方」だったんですね。失礼いたしました。
    お話、大変参考になりました。
    今後ともよろしくお願いいたします。
    では、また。

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