転換社債(CB)を用いた”新”資金調達スキーム(その2)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

昨日取り上げさせていただいた、転換社債(CB)を用いて公募増資の代わりとなる”新”資金調達スキームについてですが、その事情をご存じの第三者の方から背景を教えていただきました。
もともとこのスキームは国内某大手証券ですでに行われたもので、そのスキームを実行した方々がチームごとUBSに移籍された、とのこと。
(もちろんそのときは、今回のようにオンライン証券を経由するスキームではないそうです。)
すでに行われたそのケースの発行体さんのホームページを見ても該当するプレスリリースが見あたらないので、とりあえず社名は伏せますが、その転換社債の公告を見ると、以下のような条件となっています。

発行総額:1000億円の桁
転換価額修正:下方に50%(半分)、上方に100%(2倍)
修正頻度:毎月1回
修正後転換価額:決定日までの5連続取引日の終値の単純平均の92%
行使請求期間:発行日翌日から約2年間
当初転換価額:取締役会当日の終値を5%上回る額

というわけで、予想したとおり、「MSCB(転換条件修正条項付転換社債)」を使うスキームのようですね。
昨日ご紹介したプレスリリースでは、

これにより当社顧客は、従来の株式の公募・売出しと異なり、その時々の株価動向を見極めながら自分の好きなタイミングで当該株式を時価よりも低い価格で購入することができるようになります。

とありましたので、オンライン証券版のスキームでは、転換価額の修正頻度は毎月1回ではなく、毎日になるのかも知れません。
ニューヨークで勤務中の弁護士の方、「47th/あとにー君」さんからトラックバックいただきました。いつもありがとうございます。
やはり、「なぜ一般の公募増資ではだめなのか」についてみなさん疑問を抱かれるようです。ただ、上記のように具体的な条件も含めて考えてみると、確かに「機動的に増資」できるというのは日本の商法下では画期的かも知れません。
日本の商法においては増資の払込期日の2週間前に公告が必要ですので(商法280条ノ3ノ2)、日々の相場を見て少額の増資を機動的にパラパラ行うというのは事実上不可能。そこで、資金力のある証券会社がどーんと引き受けて、会社にはまとまった資金を供給し、一方で相場を見ながら徐々に市場に株式を供給するのは、非常に合理的な方法とも言えます。
ただ、当然、証券会社も商売ですから、リスクヘッジはしないといけない。で、転換価額の修正条項がつくわけですが、上記の事例では「底なし」「青天井」ではないです。
下限(50%)を下回りそうなら、そのときは残額についてショートしておく等でリスクヘッジは可能。上限(2倍)を上回るときは、証券会社に「ボーナス」としてキャピタルゲインが入るわけで、株価をあげるためのインセンティブになるかも知れません。
過去にこのスキームを採用した会社さんは、ちょっと「会社建て直し中」のモードでしたので、公募一発でどかんと1000億円の桁の資金を集めるのはキツいということだったんでしょう。
チャートを見ても、やはり、発行の発表日に株価が急落しています
chart_x_sha6.gif
(出所:Yahoo!ファイナンスをもとに磯崎が加筆)
が、その後、(毎月1回の転換価格修正日前後にはやや取引量が膨らみ、価格もちょっと怪しげな動きをしますが)、基本的にはじりじり株価は回復して発行当時の株価を上回ってますので、この間に株価を見ながらうまく株が消化できていってるのかも知れません。
インボイスさんの場合と違って、転換社債の行使状況を開示していないので、どれくらい転換が進んでいるのかよくわかりませんが)、どこぞの会社さんのように、「転換価額修正条項が付いているのをいいことに、売り崩して株を安く買い叩く」てなことはされてない模様です。行使期間も2年ありますので、株価が当初の転換価額の2倍の上限価格を上回るのを待って、キャピタルゲインを得ようということかも知れません。
「単純に公募増資でドカンと資金を集めちゃうと、悪い条件でしか発行が行えないが、それは市場の認識の”歪み”によるもの。本来、長期的に見てもらえば、この資金調達で会社の体質は好転し、株価も上がるはず。」
というような「企業再生っぽい状況」のときに、こういうスキームを採用すると、株価が回復することにより、関係者全員ハッピーですので、いいですね。(この銘柄も、かなり低PERです。)
さて、それではここでみなさんに問題です。
Q.MSCBを使ったこのようなスキームを採用する場合に、引受側が「売り崩して株を安くゲット」というようなことをしないようにするために、あなたが発行体側なら引受側とどのような契約を結びますか?
もちろん、「発行時の転換価額以下では転換しない」というような条件をつければ、発行体側にとっては有利ですが、引受側にとっては下方修正条項の意味がなくなって一方的にリスクを負うことになりますので受け入れがたいでしょうね。
誰かに一方的にリスクを負わせずに、双方win-winになるような契約って、存在するでしょうか?
それとも、修正条項に一定の歯止めを付けた上で引受側を信じるしかないでしょうか?
(ではまた)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

転換社債(CB)を用いた”新”資金調達スキーム(その2)” への3件のコメント

  1. MSCBについて

     いつも拝見しております。また、楽しませていただきそして勉強させていただいてます。コメントにしようかと思ったのですが、入力できなかったので、こちらに書かせていただきます。とはいえ、MSCBについてはあまり詳しくないのですがぁ。。。 Q.MSCBを使ったこのよ…

  2. いかがわしい。 – 松井証券とUBSのニュー・ビジネス

     「企業が発行する転換社債型新株予約権付社債(CB)などをUBSが引き受け、株式…

  3. おそらく本音

    ライブドアの堀江社長は、ニッポン放送株35%取得についてこう語っている。
     『絶対に短期で売らないとは言えないが、今のところ長期保有が前提』
    ライブドアは以前からテレビ関連のコンテンツには意欲を示していて、
    著者: レッカ社
    タイトル: できる社長の…