イノテックの転換社債と新株予約権

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本日(10月28日)の日経朝刊24面に、イノテック株式会社(JASDAQ:9880)の転換社債型新株予約権付社債および新株予約権の発行に関する公告が載ってました。
イノテック株式会社ホームページ:第3回無担保転換社債型新株予約権付社債および第1回乃至第4回新株予約権の発行に関するお知らせ
http://www.innotech.co.jp/back_number/contents/pr041126.pdf
転換社債と単独の新株予約権を同時に発行、というのがちょっと「むむ?」という感じですので、よく見てみましょう。
新株予約権の目的は?
プレスリリースを見ると、野村證券が全額引受とのことですが、業績もよくないようですので、社債で5億円資金調達するとともに、「株価が回復してくれば増資してあげるかもね」という意味での新株予約権の発行ではないかと思います。
しかし、ただ投資家側だけに有利なだけではなくて、先述のように会社側がいつでも新株予約権を消却できるという条件もついてますし、下方だけでなく上方にも行使価格が修正される条件ですから、あまり「アコギ」な内容でもないかと思います。
新株予約権の内容
「新株予約権の発行価額及び行使時の払込金額の算定理由」としては以下のような理由があげられています。

本新株予約権は、発行日の翌日以降任意の時点において、発行価額と同額の対価をもって消却できるものとされていることから、本新株予約権の時間的価値は特定し難く、ブラック・ショールズモデルや二項モデルといった一般的なオプションプライシングモデルを用いてオプション・バリューを算定することには馴染まないと判断した。

もちろん、一般的なオプションモデルにあてはまらないからといって、オプション・バリューを計算しなくていいわけではないわけですが、そこはさすが野村證券さんというか、

他方、本新株予約権の消却を決議した場合にはその公告がなされた日から最長7週間に行使請求期間が制限されてしまうことから、仮定的に行使価額を667円とする期間7週間のコールオプションの価値を算出し、本新株予約権の発行価額はかかるコールオプションの価値を下回らないことを確認した上で、本新株予約権の目的である株式の低流動性や、本新株予約権自体の流動性も限定的でありこれを取引の対象とすることは予定されていないこと、また、当社の財務状態、収益状況、配当状況等の事情から、投資家の当社に対する投資リスクを総合的に勘案した。かかる状況において、本新株予約権の発行により企図される目的が達成される限度で、当社株主にとって有利な発行価額であると当社が判断した43,000円を、本新株予約権の1個あたり発行価額とした。
また、本新株予約権の行使時の払込金額は、当初、平成16年10月27日に日本証券業協会が公表した当社普通株式の最終価格を概ね20%上回る額とした。
尚、第1回乃至第4回新株予約権各々の内容の違いは、上記の理由から、その発行価額の違いを生ぜしめるものではないものと判断した。

ということで、どうも、ちゃんとオプション・バリューの算定はモデルを作って(?)やってらっしゃる風です。いつでも消却できるので、公告してから消却までの期間だけの比較的価値の小さい新株予約権だ、ということですね。
転換社債のオプションバリューとのバランス
一方、転換社債と新株予約権を同時発行することによって、オプションバリューが顕在化してしまっているわけです。以下の通り、直感的にはヘンなわけですが、ここに問題がないのかどうか。
image002.gif
上記の表のように、条件としては、転換社債についている新株予約権の方が条件がいいように見えます。にもかかわらず、各回の新株予約権の発行価額は1個あたり43,000円で、転換社債についている新株予約権は「無償」。
ちなみに、「新株予約権の発行価額を無償とする理由」は、以下の通りとなってます。

本新株予約権は、転換社債型新株予約権付社債に付されたものであり、本社債からの分離譲渡はできず、かつ本新株予約権が行使されると代用払込により本社債は消滅し、本社債と本新株予約権が相互に密接に関係することを考慮し、また、本新株予約権の価値と、本社債の利率、発行価額等のその他の発行条件により得られる経済的な価値とを勘案して、その発行価額を無償とした。

前掲の、単独の新株予約権の発行価額決定のロジックは、「なるほどちゃんと考えてそうですね」という感じがするわけですが、上記の理由は「いろいろ考えたんです」というのはわかりますが、理論的にどうして無償としたのか、なぜ、単独で発行した新株予約権より発行価額が安くなるのか、については伝わってきません。
もちろん、他社の転換社債でも上記程度の説明しかされてませんので、これが悪いとか違法だとかいうことを申し上げてるわけでは全くありませんが、転換社債と新株予約権単体を並べてみると、オプションに関する実務の「矛盾」が浮き彫りになりますねえ、ということです。
(では。)

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イノテックの転換社債と新株予約権” への1件のコメント

  1. 一連のMSCBの労作を楽しみに拝読させていただいておりますが、今回のケースは面白いですね。ここまで手が込んだことをやられると、私も含めた一般投資家としては「よくわかんないけど、うさんくさい」としか言いようがないと思います。またの力作を楽しみにしております。