資本金を上げずに増資する方法

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

krpさんの経営・会計通信「有限会社と合同会社」より。

会社法現代化の目玉の1つは日本版LLCである合同会社(仮称)です。一方、有限会社は株式の譲渡制限のある株式会社という扱いになり、会社法施行後は設立できなくなります。
出資口数1口あたりの資本金の額を定款に記載する為に、たとえ10億円の増資でも、増加資本金は1口当たりの資本金額として定款に記載されている金額で良い(株式会社は資本金を5億円以上増やさなければならない)などがあります。そういうメリットを享受したい場合は、駆け込みで有限会社を作っておくのが良いのかも知れません。なぜなら、現行有限会社法にもとづいて設立された有限会社は、経過措置として有限会社のままとなる予定だからです。

新会社法が成立して、有限会社がなくなった後でも、先日、インボイスの転換社債と自己株式(第2回)で解説させていただいたような、自己株式処分による方法は使えるかも知れませんね。
例としては、下記のような感じ。(例えば資本金を300万円に押さえたいが、資金は2億円くらい欲しい場合。)
(1) 設立
例えば資本金100万円で株式会社を設立。
(最低資本金制度が無くなっているとして。)
image002.gif
(2) 増資
さらに、400万円を増資。200万円を資本金に、残り200万円を資本準備金に組み入れ。
image004.gif
(3) 資本準備金の取り崩し
(追記:定時株主総会で)資本準備金を取り崩し(125万円)、自己株買いの決議をする。もちろん、その間に利益が出て配当可能な場合には、資本準備金の代わりにその利益剰余金を原資を使ってもいい。
image006.gif
(4) 自己株買取
決議に基づき、自己株を買い取る。
image008.gif
(5) 自己株の処分で資金調達
その後、高い株価で自己株式の処分を行い、資金調達を行う。
株を渡して資金が入るので、増資と効果は同じにもかかわらず、2分の1を資本金に組み込むのではなく、自己株式との差額が資本剰余金である「自己株式処分差益」になり、資本金は増えない。
例えば、調達額が2億円の場合、単純に増資にすると、半分しか組み込まなくても資本金は1億300万円になっちゃいますが、自己株の処分だと300万円のまま。
image010.gif
以上で、資本金300万円で自己資本が2億375万円ある会社のできあがり。
ややこしいようですが、株主数が1ないし少数であれば、総会の招集の手間や税務上の問題も小さいので、ドキュメンテーションだけの問題。期間も、資本準備金の取り崩しの債権者保護手続き以外は、それほどかからないはず。
(追記10/28 5:37:自己株式買取決議が定時株主総会のみなので、設立してすぐとこれをやるというわけにはいかないですね。設立直後で株主が1名等の場合には、決算期変更するとか年2回以上配当する会社とする[商法234条�]というようなウラ技が使えるかも知れません。)
また、最終的に資本金1000万円以上にするのであれば、現在の株式会社や確認会社を使っても同様のスキームが行えるかと思います。
先述のインボイス関連のエントリーで見たように、この「その他剰余金(自己株式処分差益)」は、配当原資にも使えるし、自己株取得の原資にも使えて非常にフレキシブルでよろしいかと。
(利益の資本組入れ[商法293条ノ2]や準備金の資本組入れ[商法293条ノ3]はありますが、その他の剰余金の資本組入ってのはできないのか知らん?、という点ですが、
利益の資本組入れ[商法293条ノ2]の「利益」というのは、利益剰余金だけではなく、290条で定義される配当可能部分全体を指すという解釈でいいんですよね?つまり、後で資本金を増やしたいと思ったときにフレキシブルに増やせると・・・。
ま、仮にダメでも、既存株主から自己株を買い取って、同額を第三者割当で増資すれば、資本金は増やせますが。)
●用途
例えば、
・大企業が、資本集約型の事業を行う非公開の会社を作る場合とか、
・ベンチャー企業を設立したが、当面赤字が続く計画なので、ベンチャーキャピタルからの増資で資本金が増えて、法人住民税の均等割額が増えたり外形標準課税の資本金割の部分が増えたりするされるのががイヤだ、とか、
・同じく、商法上の大会社等になって、監査役や監査法人のコストが増加するのがイヤだ、
・増資のときに、銀行に保管金証明書のコストを払うのがアホらしい、
・登録免許税をケチりたい、
というような場合に有効かも知れません。
大企業の非公開子会社などで、ずっと株主が1名の場合にはいいですが、ベンチャー企業で将来的に増資を考える場合には、株主数がまだ1人ないしは非常に少ない時に自己株式の買い取りまで準備しておいた方が、いいかも知れませんね。(税務上等の株価の問題がややこしくなるので。)
公的投資やエンジェル税制など、新株発行でないとメリットが受けられないケースもあるので要注意。
その他、本スキームが適用できるかどうか、適当かどうかは、個別に弁護士さん税理士さん等にご確認ください。
(ではでは。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

資本金を上げずに増資する方法” への9件のコメント

  1. 会計上の資本および資本剰余金と税務上の資本および資本積立金

    有限会社に関するポストに、磯崎哲也事務所さんから「資本金を上げずに増資する方法」…

  2. 本当に重箱の隅をつつくような話ですみませんが、1つだけ。私の書き方が良くなかったようですが、法人住民税の均等割も「資本等」で計算されます。

  3. いえいえ、たびたび本当にありがとうございます。
    単純に何かを引用するのはblog的にさらっと書いてもあまり問題にならないかも知れませんが、複数箇所からひっぱってきてメリットなどにまとめるのは、慎重に読み直さないとだめですね。
    深く反省して、今後気をつけます。
    (本文の追記が増えて来ちゃったので、下記に移します。)
    krpさんのご指摘
    http://krp.web.infoseek.co.jp/mt/archives/000251.html
    により、本文を変更。
    「資本金割」→「資本割」
    「外形標準課税の判定は資本”金”で行うが、対象となる場合の課税額は「資本等」をベースに算出。
    (11:59)上記コメントによりさらに修正。

  4. はじめまして。資本金を上げずに増資する方法を拝読させていただきました。ありがとうございます。しかし、わからない点があるので質問をさせていただきたくメールいたしました。宜しくお願いいたします。
    (5)自己株の処分で資金調達のなかの「自己株式処分差益」ですが、ここででた利益は会社の売上になるのでは?おはずかしい質問ですが宜しくお願いいたします。また、資本金を上げずに増資する方法がいまいちよく理解できません。わかりやすく解説をいただければ助かります。

  5. 自己株式の処分は資本取引ですので、発生した差額を売上や利益にしてはいけません。(それをやると、「ライブドア事件」になってしまうわけです。)差額は、「その他資本剰余金」で資本になります。
    また、このエントリは、旧商法時代のお話なので、(大筋としてはあってますが)、設立時とか自己株式取得時とか、全面的に見直す必要があります。
    具体的な案件の処理にあたっては、弁護士、税理士等にご相談ください。
    (ご参考まで。)

  6. ありがとうございました。勉強になりました・・・
    たびたびで申し訳ありませんが、もう一つ質問がございます。
    これもまたおはずかしい質問ですが、上場株のようにマーケットで売買される株は、価格が変動し上記のようなことが可能と思いますが、私どものような上場もしていない中小企業でもこのようなことができるのでしょうか?
    お忙しいなか、レベルの低い質問でごめんなさい。。

  7. 非上場企業でも会社の価値や株価はありますので可能性はありますが、本文のとおり、起業してまもなく株主数が1人または少数のうちなら、株価の倍率はフレキシブルに決められる可能性があるものの、既にそこそこビジネスができあがっていて企業価値を急激に大きくあげるのが難しい場合には、大幅に株価は上げられない可能性が高いです。
    いずれにせよ、あまりよく理解できないのに、こういったややこしいことをすると、増資する関係者等にも説明しきれずトラブルの種にもなりますので、お勧めできません。普通に増資額の半分のみを資本金に繰り入れる増資などをご検討された方がいいかも知れません。
    (ではまた。)

  8. はじめまして。拝読させて頂きました。
    これは自己株式を高値で取得した方の株主が法人であれば、株式の時価を超える部分の支払額は、株式の取得価額ではなくて、寄付金とされるという理解でよろしいでしょうか。

  9. 本文中の例は、時価を超える額で自己株式を処分するのではなく、時価自体が大幅に上がっているベンチャービジネスの場合を想定しております。
    またこれは、5年前に書いた文章でして、その後、会社法の施行も行われ、条件が変わっている部分があります。
    現在の状況に当てはめて考察する場合には、個別に弁護士さん税理士さん等にご確認ください。
    (ではまた。)