ハードディスクビデオと電通の未来

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昨日、関東地方に台風が接近したのでテレビを見ていてハッと気づきましたが、そういえば、「リアルタイム」でテレビを見たのは超久しぶり。CoCoonを買ってからというもの、録画で見るのが全体の99%以上になっちゃいました。
当然、録画されたテレビ番組のコンテンツでは、広告は飛ばし見されてしまうわけです。これは、テレビという媒体の価値が著しく低下する可能性を示しているかと思います。
逆に、(例えば、うちの奥さんがヨン様のCMだけを選って見て、ワイドショーの番組のコンテンツ自体は飛ばしてしまうように)、CM自体がコンテンツとしての価値を持つように変わっていくかも知れません。
「そういう新しいメディアの登場の影響って、騒ぐ割には実際には社会の変化はそれほどたいしたスピードでは起きないんじゃないの?」と思われる方も多いかと思います。(実際、Google News は思ったほど見ないなあ。)
しかし、ハードディスクの価格低下のスピードを考えるに、5年後、10年後にテレビをリアルタイムで見る人って、明らかにかなりの少数派になってるんじゃないでしょうか。
11月にはソニーからも、1テラバイトのハードディスクを搭載して、地上アナログ放送6チャンネル分を同時に約1週間分録画可能全部録画できるVAIOが発売されるそうです。
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200410/10-1005/
例えば電通の売上明細をみても、テレビ媒体からの収入はじりじり下がりつつはあるものの、いまだに4割以上を占める最大の収益源であることがわかります。
Dentsu_Sales.jpg
(出所:電通フィナンシャル ファクトブック 2004
テレビの媒体価値は下がるが、CM制作費には逆に熱が入る可能性もあるので、それで広告代理店が滅亡する、ということにはならないでしょう。(ただ、「気まぐれコンセプト」に出てくる白クマ広告社のラテ局の部長さんは、ライターで燃やしたりラップを使ったりして営業してる場合とちゃう、ということになるんやないでしょうか。)
インフォマーシャルみたいな番組が増えたり、映画のファンドレイジングのように番組中で人気タレントがスポンサーの製品を使ってたり、テレビ番組のあいだ中ずっと、バナーなどで広告が出っぱなし、というような方向性もありえます。
かれこれ1年半以上も前になりますが、日経デジタルコアのメーリングリストに投稿した内容(一部抜粋)をご参考まで掲載しておきます。以上のような話が長々と書かれているだけですが、ご興味のある方はご覧ください。
———————– Original Message ———————–
発言者 :磯崎 哲也
発言日時:2003/02/10 22:03
●「CoCoon」で垣間見る情報産業の未来
eラーニングから話がそれるようですが、2ヶ月ほど前にSONYの「CoCoon」と
いう機械(http://www.sony.jp/products/Consumer/cocoon/)を買いまして、
eラーニングやテレビ産業、その他の情報産業についてかなり示唆がありまし
たので、ご紹介させてください。
CoCoonというのは、平たく言うとハードディスクビデオですが、キーワード
(例えば、「ゴルフ」とか「ニュース」とか)を登録すると、そのキーワード
にひっかかる番組をすべて自動的に録画してくれるところがミソです。
このため、これは「ビデオの延長線上の機械」というよりは、未来の「究極の
オンデマンドの動画像コンテンツ・サービス」を「ローカルのハードディスク
上で擬似的に体験できる製品」になってます。つまり、自分で個々の番組をい
ちいち予約するのではなく、見たい番組はすべてディスクの上にあって、その
中から、オンデマンドで情報を取り出せるわけです。
(中略)
●真の「オンデマンド」
CoCoonでは最大120倍速で早送りや巻戻しができます。これは、極めて単純な
機能のようでいて、ストリーミングコンテンツの意味を決定的に変える要件で
はないかと思います。
ご案内の通り、現在のWebのストリーミングコンテンツだと、ちょっと早送り
したいと思っても、そのたび、
「バッファリング10%、20%、30%、40%・・・」
という表示が出て、次の映像に飛ぶまでに10秒近くも待たされます。
つまり、コンテンツのタイトル毎には確かに「オンデマンド」であるかも知れ
ませんが、コンテンツの「中身(コンテンツ)」については、まったくオンデマ
ンドではないわけです。
動画像のでかいファイルのどこに自分の欲しい情報があるのかが全くわからない。
これに対して、120倍速でのサーチは、(コンテンツはそのままでも)まった
くコンテンツの性質を変えます。
(中略)
また、この「オンデマンド化」によって、今までのテレビの、リアルタイム&
フルタイムの「呪縛」に改めて気づかされました。
基本的にリアルタイムでテレビを見ることが皆無になり、
「時計代わりの朝の番組を見なくなった」
「夕食時にもテレビを見なくなった」
「家族の会話が増えた」
「好きな時にトイレにいける」
「いつでも(ゴールデンタイムでなくても)おもしろい番組が見られる」
「見たい部分は何回でも見られる」
というように、生活面にもかなり変化がありました。
●コンテンツの「一人勝ち」化へ
改めて思うのは「テレビの番組って、やっぱりおもしろい」ということです。
おもしろさの根源は、やはり「好感度の高いタレントが出ており」「才能ある
プロデューサーやディレクターが才能あるスタッフと」「金をかけて」作って
いるところかと思います。
今までは、テレビをつけた時にたまたま自分の興味のあることをやっている確
率が限りなく低かったわけで、テレビを付けたときにアホな番組をやってると
「テレビの低俗化が進んでいる」てなことを思ってしまっていたわけですが、
「すべての」番組の中から一番面白い番組の一番面白いところだけ選べれば、
大変面白い。
関東圏で見られる地上波だけでも、一日に130時間以上のコンテンツがありま
す。一方、見られる時間は、普通の社会人なら1〜2時間程度でしょう。
こういうコンテンツが作れるのも、数千万人の目を引き付けることのできる、
「テレビ」という「ビジネスモデル」の構造的要因が大きいかと思います。
Webやeラーニングのコンテンツで、1コンテンツ1千万円かけられるケースは
なかなかないかと思います。
(中略)
ただし、金をかけたコンテンツなら高い金を払う、というほど市場は甘くない
ので、おのずと、金をかけられるのは、一部の「勝ち組」コンテンツだけ、と
いうことになるでしょう。
●収益のシフト
(中略)
実際、あまりにテレビのコンテンツがおもしろいので、CoCoonを購入してから
というもの、ほとんどレンタルビデオを見なくなりました。
(中略)
●というわけで、
私は最近、自宅にビデオデッキが何十台あるデーブスペクター氏とか1日中テ
レビをつけっぱなしだった故ナンシー関氏並の量のテレビ番組(1日10時間分
以上)を見ているのではないかと思います。
もちろん、実際の視聴時間は1日1〜2時間程度に圧縮されてます。
世界で初めて登場した「eラーニング・マシン」は、映画「禁断の惑星」に出
てきた知能の高くなる機械じゃないかと思いますが、ああいうのを手に入れた
気分です。
今のところ、「イドの怪物」が夜中に歩き回っている兆候はありませんので、
ご心配なく。(笑)
では。
———————– Original Message ———————–
発言者 :磯崎 哲也
発言日時:2003/02/13 10:37
ソニーさんは「ビデオ以来の大発明」とぶちあげてらっしゃいますが、確かに
そうだと思います。これ、使ってみないとスゴさがわからないので、革命的な
割には、マスコミ等でも意外なほど取り上げられていないのが不思議なくらい
でして。
これが広まると、テレビの広告媒体としての価値も大きく変わってしまいかね
ないので、政治的な配慮かなあ、と勘ぐりたくなります。(たぶん、違うと思
いますが。(笑))
私もビデオを使い始めて20年近くになりますが、最初の数年はいろいろ一生懸
命録画したものの、ここ十数年は「レンタルビデオを見る」以外の用途には全
く使ってませんでした。かように「録画」という行為はめんどくさい。
未だに「ビデオの録画ができない人」というのはたくさんいるので、「録画し
なくていい」(擬似オンデマンドな)のはすごいことです。
もともと、同機を購入しようと思ったのは、おそらく史上初の「本格的に常時
接続でネットに繋がっている家電」で、ネットのサービスモデルと連動してい
るから、だったのですが、肝心のその「家の外からでも録画できる」機能は、
勝手にほとんど録画してくれて「擬似オンデマンド」になっているので、ほと
んど使わなくなってしまいました。
(中略)
これは、ソニーさんがすごいというよりも(すごいのもさることながら)、
ハードディスクが低価格化して、10万円の製品で画像データが100時間も録画
データが保存できるような時代になると、遅かれ早かれ訪れる必然的変化と
いうことなのではないかと思います。
では。

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ハードディスクビデオと電通の未来” への4件のコメント

  1. [tv][manga]ついに「企業戦士YAMAZAKI」の夢の賞品が実用化

    相変わらず時間がないのですがー。坊主が一人プロレスを繰り広げる自宅で仕事をするのは限界か…。明日はネットカフェだな…。 ソニーさんは「ビデオ以来の大発明」とぶちあげてらっしゃいますが、確かにそうだと …

  2. 磯崎さん、
    赤羽です。この記事を読んで、僕がNAで実現しようとした「いつでもTV」というビジネスを思い出しました。
    「いつでもTV」はひとことで言うと「録画機能付きストレージ貸しサービス」。優れたTV番組(地上波TV・衛星放送、CATV)を、インターネットを使って、世界中から、いつでも、手軽に見られる環境を実現しようというもの。ハードディスクビデオとの大きな違いは、
    ・インターネット接続環境さえあればどこでも見れる
    ・見たいけど、自分の地域は放送されない人(地方、海外の人)も見れる
    ・見たいと思ったら終わってた(見逃した)番組も見れる
    です。
    過去番組は、過去番組流通用のP2Pプラットフォームを組む予定でした。
    最終的には、著作権法のある条項をクリアできずにプロジェクトは停止してしまいました。
    著作権法何条だったか忘れましたが、個人で楽しむための個人による録画は許されているので「ハードディスクビデオ」は合法なんですが、「録画機能付きストレージ貸しサービス」はなんと違法になってしまうのですよ、残念ですが。。

  3. [メディア]ハードディスクビデオと電通の未来 を読んで

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  4. コンテンツを蓄えるビジネス。

    RSS+BuldFeedsさんのサイトの組み合わせで、「今あるリンク」ではなく、「未来に出てくるであろうサイト」への検索を仕掛けておけるメリットなどがありますが、それと全く同じで、CoCoonなどにキーワードをしかけておけば、そのキーワードにひっかかるTV番組を全部録画で…