匿名組合方式によるベンチャー投資ファンド

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某証券会社より、「SBIブロードバンドキャピタル投資事業匿名組合」のDMをいただきました。(追記:リンク切れになってます。2006/8/14)
ソフトバンクインベストメント(さん)が組成したブロードバンド関連のベンチャー企業に投資するファンドですが、このファンドのおもしろいのは「匿名組合契約」で資金を集めるところ。
通常、日本の投資事業組合というのは、「民法上の組合」または「投資事業有限責任組合」で組成されることが多いかと思います。匿名組合による投資ファンドというのは、ちょっとめずらしいし、非常に興味深いスキームです。
ということで、今回は、ちょっとこのファンドを教材に勉強させていただこうかと思います。
組合とは?
ここで、簡単に基礎的なことをおさらいしておきます。
「組合」というのは、民法上の組合契約(民667〜688条)に基づくものです。

民法第六百六十七条
組合契約ハ各当事者カ出資ヲ為シテ共同ノ事業ヲ営ムコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
2 出資ハ労務ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得

image002.gif
組合は、基本的には「みんなでワイワイやってこうぜ」という感じのvehicleで、組合の財産は組合員の共有(民668条)ですし、意志決定は組合員の過半数での決議(民670条1項)が原則となり、各組合員は無限責任を負うと解されています。
例えは悪いですが、株式会社などの法人が「人格」を持ち、様々な機能をもつ「機関」を有する、多細胞生物の中でも高等?な生物だとすると、組合は同質な細胞が寄り集まっただけの、より「原始的な」多細胞生物、というイメージです。
ただし、多数決で意志決定するというのは、ベンチャー投資には向きませんので、一般に投資事業組合では、「業務執行組合員」(民670条3項)を定めて、その人がかなり単独で機動的に意志決定できるように権限委譲されているのが通常です。
この業務執行組合員には、日本では通常、いわゆる「ベンチャーキャピタル会社」が就任するわけです。
また、各組合員は原則無限責任ではありますが、投資するのが有限責任の「株式」等のみになるため、組合で借り入れさえ起こさなければ、通常、出資を超えて損失を補填しないといけないということはないようになってます。
投資事業有限責任組合は、民法でなく「投資事業有限責任組合契約に関する法律」によって規定される組合で、民法上の組合と違って、業務執行を行う組合員(無限責任組合員:法7条)以外は有限責任になるとか、登記が必要(第4条)等の違いはありますが、基本は民法上の組合をベースにしています。
匿名組合とは?
組合契約が「みんなで決めよう」というのが原則の「集合体」であったのに対し、匿名組合は、より「中心人物」がいて、その人に対して出資を行う、というイメージになります。
その「中心人物」は通常「営業者」と呼ばれます。
image004.gif
組合が民法で決められている契約であるのに対し、匿名組合は「商法」で定められている契約。(商535〜542条)
組合で組合員が出資した財産が「共有」であったのに対し、匿名組合員の行った出資は営業者の財産になってしまいます(商536条�)し、匿名組合の出資者は有限責任が原則となります(商536条�)。
匿名組合員といっても、ことさらに出資者の名前を隠しまくらないといけないというわけではないのですが、「合名会社」というと出資者の「名」が全面に出るのに対しての「匿名」(有限責任)という感じです。
事業の責任については、営業者が「主」で、出資者はあくまで「従」ということですね。
組合と匿名組合の違いは?
組合と匿名組合の違いは、税務上の取り扱いの違いということになってくるのではないかと思いますし、匿名組合があまりベンチャー投資に利用されないのもこの税務上の理由によるところが大きかったのではないかと思いますが、その件については、また明日にでも。
(ではまた。)
民法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html
投資事業有限責任組合契約に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO090.html
商法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M32/M32HO048.html

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匿名組合方式によるベンチャー投資ファンド” への2件のコメント

  1. SBIブロードバンドキャピタル投資事業匿名組合のDMですが、リンクをクリックしてもつながりません。
    ぜひ中身を参考にしたいのですが、何らかの形で提供していただけないでしょうか。ぜひよろしくお願いします。

  2. リンク切れの情報、ありがとうございます。
    私もDMを保管してないですが、こちら、
    http://72.14.235.104/search?q=cache:KhicgJR-_5IJ:www.wnfrontier.co.jp/syouhin/bbf_gaiyo.html+&hl=ja&gl=jp&ct=clnk&cd=1
    に、Googleのキャッシュが残ってます。
    (画像は消えていて下記のテキストだけですが。)
    ご参考まで。
    −−−
    商品の名称 SBIブロードバンドキャピタル4号投資事業匿名組合
    商品の区分 商法第535条に規定される匿名組合形式による投資事業組合
    目的及び事業の内容 主にブロードバンド・インターネットに関連する事業を行っている中長期的に高い成長が見込まれる国内外のIT関連未公開企業に投資し、ソフトバンクグループの持つIT産業に関する様々なインフラストラクチャー及びグループネットワークを活用して投資先の成長を支援し、株式の上場、株式の売却などの手段によって、匿名組合資産の極大化を目指します。
    出資金総額 80億円(予定)
    申込単位 1口100万円(1口以上1口単位でのお申し込み)
    申込期間 2005/2/14(月)〜2005/3/31(木)
    運用期間 2005/4/8(金)〜2009/8/31(月)
    (営業者の裁量で最大2年間延長の可能性があります。)
    会計期間 毎年9/1〜翌年8/31までを1会計期間とします。
    (但し、第?T期事業年度は2005/4/8〜2005/8/31)
    決算日 毎年8月末日(中間決算日:2月末日)
    損益の分配 匿名組合員には、各事業年度の本匿名組合収益から当該事業年度の本匿名組合費用を控除した残額が損益として分配されます。
    現金の支払 営業者は、当期利益の50%までの額を、匿名組合員に支払うことができます。ただし、匿名組合員への支払いは本匿名組合口座に残存する現金の範囲内でのみ行われます。ただし、過年度の累計損失が解消されていない場合はこの限りではありません。
    お申込手数料 なし
    備考 営業者と投資家との相対契約となります。
    営業者、その他関係法人 営業者 SBIブロードバンドキャピタル株式会社
    業務委託先 ソフトバンク・インベストメント株式会社
    1. 匿名組合契約とは、商法第535条以下において定められる匿名組合契約をいい、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資して、相手方がその営業から得られる利益又は損失を匿名組合員に分配する契約をいいます。
    2. 本匿名組合契約においては、出資金の全部又は一部の返還は保証されていません。従って、出資者は出資金の全部又は一部の返還を受けられないリスクがあります。
    3. 本匿名組合の解除は、契約期間中は本匿名組合契約又は商法の規定(商法第539条)による場合を除き、認められていません。
    4. 課税関係において、法人である匿名組合員は、現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない(現金分配を受けていない)場合であっても、匿名組合契約により、その分配を受け又は負担をすべき部分の金額を匿名組合計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入しなければなりません。個人の匿名組合員の場合、営業者から受けた利益の分配は、本匿名組合の性質上、雑所得に区分されると考えられておりますが、詳細な所得の区分は最寄の税務署又は税理士等にご相談ください。本匿名組合の匿名組合員が日本の居住者であり、かつ営業者が10人以上の匿名組合員と匿名組合契約を締結している場合、営業者は、その支払の際、現金分配の支払額につき20%の税率で計算された額を源泉徴収いたします。源泉徴収された税額については、確定申告により税額控除の対象となります。
    5. 本匿名組合の営業者の業務は、有価証券に係る投資顧問業の規制等などに関する法律第3条において制限される投資判断の一任等に該当せず、現行の法令に照らし適法に本匿名組合を組成・運営することができると判断しております。しかしながら、今後の法令及びその解釈の変更等により本匿名組合事業の継続が困難となった場合には止むを得ず直ちに本匿名組合を解散する可能性もあります。
    6. 本匿名組合契約に基づく出資金は、投資者保護基金・預金保険機構・貯金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
    7. リスクの詳細につきましては、「目論見書」の「本匿名組合契約のリスク及び留意点」をご参照ください。
    匿名組合員に関する課税上の取扱いは概ね下記の通りです。しかしながら、税法等の改正が行われた場合、下記の内容が変更となることがあります。
    法人投資家
    1. 利益分配に関する取扱い
    法人である匿名組合員は、現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない(現金分配を受けていない)場合であっても、匿名組合契約により、その分配を受け又は負担をすべき部分の金額を匿名組合計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入しなければなりません。なお、匿名組合の利益分配は法人税法上の受取配当等の益金不算入の適用対象とはなりません。本匿名組合の匿名組合員が日本法人であり、かつ営業者が10人以上の匿名組合員と匿名組合契約を締結している場合、営業者は、その支払の際、現金分配の支払額につき20%の税率で計算された額を源泉徴収いたします。源泉徴収された税額については、確定申告により税額控除の対象となります。
    2. 払込出資金の払戻に関する取扱い
    法人投資家が本匿名組合から受け取る利益を超える金銭の分配は、払込出資金の払戻として取り扱われます。払込出資金の払戻にあたる部分に関しては源泉徴収の対象とはなりません。
    個人投資家
    1. 利益分配に関する取扱い
    個人である匿名組合員は、現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない(現金分配を受けていない)場合であっても、匿名組合契約により、その分配を受け又は負担をすべき部分の金額を匿名組合計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入しなければなりません。各事業年度において利益が発生した場合でも、現金分配を行わない場合がありますが、現金分配がない場合でも、匿名組合員へ利益が分配され、税負担が発生することもあります。所得区分の取り扱いによっては損金を使った損益計算を行えない場合もあります。
    個人である匿名組合員が分配を受ける金額については、本匿名組合の性質上、雑所得に区分されると考えられておりますが、詳細な所得の区分は最寄の税務署又は税理士等にご相談ください。本匿名組合の匿名組合員が日本の居住者であり、かつ営業者が10人以上の匿名組合員と匿名組合契約を締結している場合、営業者は、その支払の際、現金分配の支払額につき20%の税率で計算された額を源泉徴収いたします。源泉徴収された税額については、確定申告により税額控除の対象となります。
    2. 払込出資金の払戻に関する取扱い
    国内の個人投資家が本匿名組合から受け取るべき利益を超える金銭の分配は、払込出資金の払戻として取り扱われます。払込出資金の払戻にあたる部分に関しては源泉徴収の対象とはなりません。