SKYPEと携帯電話(その2)

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SKYPEのコール受け付けのしくみは?
私の、
「Windowsの「接続の状態」でパケットの送信/受信のバイト数を見ていたのですが、不思議なことに、「ひっきりなしに」送受信のやりとりが発生するということがないんです。というか、数分間、まったく1バイトも送受信がなかったりします。」
という疑問に対し、中妻穣太さんとMostlyVowelsさんから返信いただきました。ありがとうございます。
中妻穣太さんの日記曰く;

“ひっきりなし”ではなく、HTTPのRequestをまず打って、それがタイムアウトするまではセッションを保っているのかもしれません。
パケットを監視すればタイムアウト時間が何分に設定されているかがわかるかも。

MostlyVowelsさんのコメント曰く;

クライエントがスーパーノードへTCPベースのセッションを一旦張ったら、そのセッションはタイムアウトさえしなければ、常時スーパーノードからのinboundパケットを受け付け可能です。
つまり、クライエント側からのpolling無しでも、着信時にはスーパーノードから瞬時にクライエントの方へパケットが送れる紐付けはされていると思います。一時間に一パケットの細々とした”keep-alive”トラヒックでも、ファイヤーウォールに因るセッションの自動タイムアウトを回避するには十分な筈です。 (^^)

とのこと。
なるほどー。要するに、「ひっきりなしに」問い合わせていなくてもいいので、FOMAやCDMA1X WINなど従量制の携帯カードでノートパソコンからSKYPEを使う人でも、電話を待ち受けてるだけなら、請求書を見てビックリということはなさそうですね。
P2P方式と設備投資
中妻穣太さんの日記曰く;

MSN MessengerはかなりよくできたSIPクライアントですが、この「SIP」というプロトコルを選択したことにより、必然的にサーバを持たなければならなくなり、(サーバがまったく不要であるという意味での)純粋なP2Pにはなれなくなってしまいました。

MostlyVowelsさんのコメントによると、

ここは、やはりスケーラビリティの問題じゃないでしょうか。Vonage等の通常のVoIPシステムでは、加入者同士の呼び出し時に必要な動的な紐付け情報(IPアドレス等)を集中形(centralized)なシステムで管理しています。Skypeでは、IP mappingディレクトリ、リレー&ルーティング情報等は全てスーパノード(SN)に分散されています。
ファイヤーウォール、又はNATゲートウェイの後ろにあり、任意のinboundの接続を受けられないクライエントは、複数のSNに対してTCPセッションを張り、余剰のネット帯域を持つSNにトラヒックをルーティング&リレーしてもらいます。Inbound+outboundのSSL、またはHTTPソケットへの接続を受けいられるクライエントは、自動的にRelaying SNに「昇格」しうるので、Skypeアーキテクチャにはスケーラビリティのボトルネックは基本的にはありません。

なるほど、SIPというプロトコルはサーバーを持たざるを得ないんですか。(通話者同士がつながった後も、音声のパケットは集中型のサーバーを通るということ?そこは分散?)
いずれにせよ、(もし仮に)パソコンで電話するということがメジャーになったとしても、利用者の増加に従ってのサーバーの設備投資負担がキツくて、参入できるプレーヤー(事業者)はかなり限られてきてしまう気がします。
「規制」の影響

(続き)
また、Skypeは、暗号化、ノード同士のトラヒックリレー等、P2Pファイル交換ソフトのWinnyと同様、「抵抗勢力」または「当局」に因る把握と規制を非常に困難にする特徴をもっています。特に、オンライン・バンキング等でも使われているSSL暗号化トラヒックをやり取りしているユーザーの規制は、殆ど不可能ではないでしょうか。Skypeネットワークの唯一の当局に押さえられる弱点は、集中型でしか実現できないSkype VoIPと通常の電話網との接続ゲートウェイでしょうか。
PDA型の小型端末へのSkypeの実装に関しては、VonageコンパチのVoIPソフトのX-proのPocket PC版も発表されている程ですので、処理能力の問題はないみたいですね。GSM/GPRS機能内蔵のPocket PC PDAも既に市場に出回っている所ですし。
http://www.pocketpccentral.net/!pocket_pcs.htm#phone

わたしも、「規制」によってP2P型の電話サービスの発展が阻害される可能性は(特に先進国の場合)あまり意識しなくていいと思うんですよね。規制のしようもないし。
電話網への「出口」のところは(発展途上国の場合など)規制をかけられる可能性はありますが、私、別にパナマに市内通話料金で電話できなくっても、一生困ることは無い気がします・・・。
SKYPEは儲かるのか?

(続き)
しかし、そのユニークな分散アーキテクチャー等の技術的な面よりは、Skypeで興味深いのは彼等のビジネス・モデルではないでしょうか。
フリーソフトを幾ら開発し、配付しても直接収入には結びつきませんね。やはり、Skypeは自前の電話網ゲートウェイを経由する発信と着信通話への課金で稼ぐつもりかもしれません。ちょっと検索してみましたら、こんな新聞記事がありました。
With only software and business strategy to develop, a modicum of purchases of premium services will provide plenty of revenue, according to the Skype plan. Premium services like voice mail and conference calling might be introduced by March, Zennstrom said. Another possible premium service – connecting Internet calls to plain old telephone networks – is also on Skype’s 2004 agenda.
“If you look at the amount of voice communications spent globally – it’s like a trillion dollars a year,” Hartenbaum said. “So for him to be successful, he only has to have a little bit of that.”

http://www.iht.com/articles/126530.htm

「道に落ちてる直径30cmのケーキに出くわしたアリさんモデル」ですね。
「100% 広告無し」を宣言してしまってるので、おっしゃるように既存電話への出口で、市内料金程度のわずかなお金をいただく、というところで稼ぐしかないわけですが、とにかく現状の電話マーケットがでかい(記事には100兆円とありますが…)ので、その通話の1万分の1を獲得するだけでも十分食ってけそうです。
ソフトバンク(さん)の資金調達可能性?
中妻穣太さんの日記曰く;

ところで、もしよろしければ磯崎さんにお伺いしたいのですが、ソフトバンクの現在の財務状況をどう見ますか? 携帯電話事業を成立させるのに十分な資金調達ができるとお考えになりますか?

うーん。難しいご質問ですが、、、
Yahoo!Financeによると、

前期
決算年月日 2004年3月期
売上高 517,393百万円
営業利益 -54,893百万円
経常利益 -71,901百万円
当期利益 -107,094百万円
総資産 1,421,206百万円
株主資本 238,080百万円
資本金 162,303百万円
有利子負債 575,539百万円
株主資本比率 16.80%
ROA -9.05%
ROE -43.23%
総資産経常利益率 -6.07%
以上、http://profile.yahoo.co.jp/biz/consolidate/9984.html
時価総額 1,353,032百万円(8/6終値ベース)

と、強烈な赤字。
格付情報の通り、普通社債での調達ができるかどうかというと、ちょっと厳しいのかも知れません。
ただし、資金というのは「返ってくる」と信じる出し手がいる限り、赤字だろうがなんだろうが調達できる可能性はあるわけです。1千億円以上の赤字にもかかわらず1.3兆円の時価総額がついているということは、合理的に考えれば、株式市場の投資家は今後(通信事業で)ザクザクキャッシュフローが生み出されることを信じてるはずですし、孫さんが携帯電話事業もやりたい旨は報道もされているので、その事業計画を織り込んだ上での企業価値がマーケットでつけられてるのだ、とも考えられます。(・・・前向きな考え方をすれば・・・。)
また、(仮に)ソフトバンク自体の財務状態は資金調達のネックになるが、買収する携帯電話会社の財務状況には期待できるとする投資家がいるのであれば、ソフトバンク・グループ本体のリスクと切り離した形で資金を集めるようなスキームも、いくらでも組めるかと思います。
「手頃な携帯電話会社さん」が、おいくらで買えるのかにもよりますが、「調達」の可能性は十分あるんじゃないでしょうか。
(ではまた。)
参考URL:
ソフトバンク財務情報
http://www.softbank.co.jp/finance/results/finance_results.html

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SKYPEと携帯電話(その2)” への4件のコメント

  1. > なるほど、SIPというプロトコルはサーバーを持たざるを得ないんですか。(通話者同士がつながった後も、音声のパケットは集中型のサーバーを通るということ?そこは分散?)
    SIPサーバーの主たる役割は、クライエントのIPアドレスの「電話帳機能」を提供するものです。SIPクライエントは、発進時にこの電話帳で相手方SIPクライエントのIPアドレスを検索し、そのIPアドレスに直接SIP接続要求パケットを送ります。この様に、相手方IPアドレスを取得しましたら、通話自体はサーバーを介せず純粋にP2Pで行えます。
    実際には、SIPを通さないファイヤーウォール、電話帳に登録不可能のノン・グローバルなIPアドレスを割り振られているNATクライエント等、SIP通話の確立には幾つも超えるべきハードルがありますが…
    > わたしも、「規制」によってP2P型の電話サービスの発展が阻害される可能性は(特に先進国の場合)あまり意識しなくていいと思うんですよね。規制のしようもないし。
    確かに完全な規制は技術的には難しいでしょう。しかし、固定電話サービスを非採算地域を含み、全国くまなく提供する義務を負っているオペレーターは、この “universal service” (UVS) のコストへの応分の負担を競合する通話サービス提供者に求めるでしょう。ここで、行政が外国のサービス提供者からも自国UVSへの応分の負担を徴収できるかは微妙な所です。 (^^;

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