信用情報と目隠しババ抜き

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昨日の「消費者金融と恐怖のリンボーダンス」の続き。
銀行がなぜ自分だけで消費者金融業をやらないのか?という理由の根本的な要因の一つとして、「信用情報」の問題があると考えられます。
本日の日経新聞でも「(三井住友フィナンシャルグループの)西川氏は年明け直後から個人ローンの審査・回収ノウハウを持つ消費者金融との提携を行内に指示していた」(4面)とあります。審査・回収ノウハウというと抽象的ですが、その「ノウハウ」のうち最も重要なことが、「信用情報」ではないかと考えられます。
日本の信用情報交流の現状
日本の消費者信用情報は、消費者金融、クレジットカード、銀行など業界ごとに分断されているのが特徴。
消費者金融専業者の作った地域別の33信用情報センター会社の信用情報のデータ交換を行っているのが全国信用情報センター連合会(全情連)。
ここで交換される情報の特徴は、延滞や貸倒が発生していないお客のいわゆる「ホワイト情報」が交換されているところ。つまり、消費者金融業者間では、「普通の」お客さんについて、他社でどのくらい借入があるかがわかるわけです。これ顧客情報というかマーケティング情報そのものを交換しているわけだから、よく考えればすごいことです。
この全情連のデータは、他の個人信用情報機関との信用情報交流業務を委託するために設立された「(株)日本情報センター」(JIC)経由のCRIN(Credit Information Network)というネットワークを通じて、銀行系の全国銀行個人信用情報センター(KSC) (銀行・信用金庫などの金融機関、銀行系クレジットカード会社、保証会社等が加盟。)やクレジット系の株式会社シー・アイ・シー(CIC) (信販会社、銀行系以外のカード会社、銀行系カード会社等の個人信用情報機関)などの他業態との情報交流を行ってますが、交流するのは延滞等の事故情報(いわゆる「ブラック情報」)に限られてます。
また全情連は、クレジット会社や信販会社などの個人信用情報機関である株式会社テラネット(T-Net)を通じて借入情報(残高有り件数情報)の相互交流を行ってますが、金額については、相互交流してません。
参考:
(株)ジャパンデータバンク ホームページ
http://www.jdb-web.com/about/index2.html
株式会社シーシービー
http://www.ccbinc.co.jp/
銀行は「個人の財務諸表」が見えない
つまり、消費者金融業者(商工ローン業者も含む)の間では、その個人がどこでいくら借りているかがわかるわけですが、銀行等にはお客が「ヤバくなる」までお客の状況が伝わらない。
例えば、ですが。
超優良一部上場企業に勤めている年収500万円のAさんと、あまり聞いたこと無いベンチャー企業に勤める年収300万円のBさんがいたとします。あなたならどちらに金を貸しますか?普通はAさんのほうが信用力がありそうと考えますよね?
銀行やクレジットカード会社は、簡単に言えば、そういった「見かけ」の観点からしか審査が行えないわけです。
一方、消費者金融業者が信用情報を照会してみると、Bさんは他社借入なしなのに対して、Aさんは、武富士、プロミス、アコムなどの大手はもとより、聞いたこと無いような中小の消費者金融業者の借り入れが最近急増しており、合計120万円もの借入残高になっていることがわかったとします。
どっちの顧客がヤバそうか、というのは一目瞭然ですよね?
つまり、消費者金融業者はその個人の「バランスシート」がリアルタイムでほぼわかるのに対して、銀行はその個人が(消費者金融業者から借り増してでも)返済している限り、財務状況が悪化しているのがまったくわからない。これは、決算書をディスクローズしない会社に融資するのと同じくらい恐ろしい話です。
ババ抜きをするのに、他のプレイヤーは手札を見せ合ってるのに、自分だけは手持ちのカードしか見えないとしたら、絶対、ババをつかまされるに決まってます。
実際、銀行のカードローンの貸倒率は消費者金融業者より高い、という話もあります。
「あるべき」情報交換の姿とは
多重債務などの問題を防ぐには、貸金業に必ず信用情報を登録するようにさせるとともに、全業態の信用情報をお互いに開示しあうようにさせて、どの会社も顧客の現在の「バランスシート」がリアルタイムに把握するようにするのが一番いいに決まってる。
ところが、全情連などの信用情報センターは、民間の企業同士の契約によってデータを交換・蓄積して今にいたるわけで、こうした「利権」であり私的な財産権であるものを、法律で無理やりむしりとることもできない。
ホワイト情報が「本来あるべき」状態で全業態に行き交ったら、銀行が有利になるのは明らか。またそれにより、欧米と同じく銀行本体が消費者金融をやるようになり消費者金融専門の会社が生き残れなくなるのも目に見えてます。
なぜ銀行と消費者金融は接近したのか
財務情報だけを見ると、事業環境が悪くなった消費者金融の側から銀行に歩み寄っていかざるを得なかったようにも見えます。しかし、このような情報交換の構造上の問題は20年以上も前から分かっていた話。
銀行等の金融機関はバブル崩壊で疲弊したとはいえ、依然数百兆円の資産をかかえる日本の金融の「ハブ」であり、このセクターの回復無しには日本経済の再生はありえない。また、銀行の収益性を高める最も重要な方策の一つが消費者金融への進出であることも間違いない。ただし、ホワイト情報無しで銀行が消費者金融のマーケットという戦場に飛び込めば、またしても死体(不良債権)の山を築くことになるのは明白。
「なんとか、銀行がホワイト情報を利用できるようにしたい」という巨大なニーズが存在するが、それを直接に実現することは財産権の侵害にもなりかねない。「北風と太陽」のように風をいくら強くしても旅人はコートの襟を立てるだけ。
そのため、その「お宝」である「情報」を手に入れるために、規制金利を下げたり多重債務者問題を社会問題化したりなどして消費者金融側から銀行に歩み寄らざるを得ないように仕向ける「インボー」が存在し、10年以上の歳月をかけたそのインボーが今完成しつつある・・・と考えたら、考えすぎでしょうか?
(ゴルゴ13の原作になりそうな気がするんだけどなあ。)
(ではまた。)

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信用情報と目隠しババ抜き” への2件のコメント

  1. もしかして・・・
    リンボーとインボーを掛けたんですか?
    いや、ほら、ちょっと気になったもので・・・