消費者金融の金利は「安すぎる」?

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krpさんも書いてらっしゃいましたが、三菱東京とアコム、三井住友とプロミスなど、銀行と消費者金融業者の接近が進んでいます。
「消費者金融専業者」は日本独自の業態
もともと、「消費者金融専業」という業態は、世界に類を見ない特異な業態です。なぜ、このような業態が成立したか、というのは、もともと日本の制度が「ゆがんで」いたから、だと言えるのではないかと思います。
欧米では、消費者に対する信用の供与は、クレジットカードにより「銀行が」行ってます。日本ではクレジットカードというのは「原則翌月払い」のカードのことですが、欧米ではクレジットの名のとおり、リボ払いなどで信用残高がたまり、銀行はその残高に対して金利収入が得られるビジネスになってます。
つまり「銀行」=「クレジットカード会社」=「消費者金融業者」。
現在の、銀行と消費者金融業者が一体化していく流れは、経済原理上もともと「当然そうあるべき」状態になりつつあるのだ、とも考えられるのではないかと思います。
クレジットカードと銀行の分離の歴史
なぜ、そのような日本独自の業態が成立しえたのか。
まず、銀行とクレジットカードが「分離」せざるを得なかったのは、銀行の監督官庁が旧大蔵省、クレジットカードは「割賦販売」からの流れで旧通産省という、「なわばりの違い」があったからです。で、国際的には銀行本体が営むのが当然であったクレジットカード(issuer)業務が銀行から切り離されるという「ゆがんだ」形になってしまった。
銀行と消費者金融の分離
もうひとつは、利息制限法の存在が大きいのではないかと思います。
現在の日本の利息に関する規制は、下記の図のようになってます。
利息制限法(下図の黄色い部分)の上限を超えたものは、民事上「無効」ですが、別に刑事罰があるわけではありません。ので、必ずしも「違法」ではない。
商売で貸金を行う業者は、「出資法」(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)第5条�の金利(29.2%)を超えると刑事罰があるので、これを超えると完全な「違法」金利ということになります。
(貸金業法(貸金業の規制等に関する法律)では、直接には金利の上限は定めていません。)
image002.gif
大手の消費者金融業者のみでなく大手のクレジットカード会社も、上図で灰色の部分、通称「グレーゾーン金利」という領域に食い込んで営業しています。
ここは、民事的には無効だが刑事罰はないという「不思議な」空間になってます。
「高金利」の合理性(業者側の論理)
さて、「29.2%」というような数字を聞くと、普通の人は「暴利だ!」と感じるかと思いますが、あながちそうとも言いきれません。
下図は、50,000円の小口融資1回につき、それぞれ1000円〜5000円のコストがかかった場合に、それを回収するためにいくらくらいの利息を取る必要があるか、というのをグラフにしたものです。
image004.gif
図のように50,000円の小口融資の場合、仮に3000円コストがかかるのに30日程度で返済されてしまうと、70%程度の金利をとってもトントン、1000円しかコストがかからないとしても、30日で返済されてしまうと24%は利息を取らないと利益が出ません。
おまけに、利息制限法第3条、出資法第5条7項等の「みなし利息」の規定により、金利は安くして金利以外の手数料等の名目でこうしたコストを回収しようとしても、それも利息とみなされてしまいます。
そもそも普通はどんなビジネスであれ、原価を回収する程度のフィーをもらうことは許されるはずですが、こと貸金業では、それは「ダメ」ということになっちゃいます。
5000万円の資金を6ヶ月融資するというような話なら数%の金利で十分ペイするわけですが、数万円の小口で便利な消費者金融をやろうとすると、なかなか利息制限法の範囲内でやろうとすると難しい、ということになります。
銀行本体による消費者金融業の可能性
国会で、利息制限法の撤廃とか、短期で小口の場合には利息制限法の上限を引き上げましょう、というような話をしようとしても、「借り手保護」や「国民感情」の観点からそれも難しいかも知れませんね。(実際、30日で返せば年29.2%で合理性があっても、ズルズル借りてしまうのが人間なので。)
ということは、しばらくは銀行とは別会社の形で、利息制限法の上限を超えた「グレーゾーン」の融資を行うことは続くのではないかと思います。
日本の銀行が復活するには、リテール(という名のサラ金&街金)の領域に踏み込んでいかないと収益が確保できないのは明らか。
ただし、わかってる人は20年も前から「銀行は大企業融資などでは食えなくなる」と言ってたものの、いまだに大手銀行の人の様子を聞くと、一般にはまだ「大企業融資=エリート」、「リテール?ケッ!」ということで意識改革も進んでないようなので、ま、そういうマインド面からも統合への道のりはまだ長そうです。
ただ、「銀行を復活させる」ために、銀証分離の原則をとっぱらって銀行に証券仲介業までやらせる法律を通しちゃったわけですから、毒食わば皿まで、利息制限法の改正くらいはお茶の子でやっちゃうかも知れないですね。
(ではまた。)
参考資料:
利息制限法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO100.html
(利息の最高限)
第一条  金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合          年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合  年一割八分
元本が百万円以上の場合          年一割五分
2  債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。
(みなし利息)
第三条  前二条の規定の適用については、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなす。但し、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO195.html
(高金利の処罰)
第五条  金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセント(二月二十九日を含む一年については年二十九・二八パーセントとし、一日当たりについては〇・〇八パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3  前二項に規定する割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4  前三項の規定の適用については、貸付けの期間が十五日未満であるときは、これを十五日として利息を計算するものとする。
5  第一項から第三項までの規定の適用については、利息を天引する方法による金銭の貸付けにあつては、その交付額を元本額として利息を計算するものとする。
6  一年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては、元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなして第一項から第三項までの規定を適用する。
7  金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は、礼金、割引料、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなして第一項及び第二項の規定を適用する。貸し付けられた金銭について支払を受領し、又は要求する者が、その受領又は要求に関し受ける元本以外の金銭についても、同様に利息とみなして第三項の規定を適用する。

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消費者金融の金利は「安すぎる」?” への20件のコメント

  1. 消費者金融

    銀行経営に関するエントリーに、磯崎哲也さん(blogのタイトルからすると、磯崎哲也事務所さんとお呼びした方が良いのかもしれません)から「消費者金融の金利は「安すぎる」?」というトラックバックを頂きました。 まずは、貸金金利の制限をしている法律を貸金業法…

  2. おっしゃる通りで, 短期間で返済されては全くもうかりません. なるべく利子分だけ返してもらいつつ, 限度額を徐々に拡大してその限度いっぱいまで借りてもらうのが理想です. (破綻するまでは).
    さらに, 長期間借りてもらったとしても, 利息制限法の範囲で利益をあげるには貸付対象をかなり限定する必要があるでしょう.
    今の消費者金融は全く無担保で, かつ給料のような差押えるべきものがないような人(自営業者や主婦とか)に対しても貸付を行いますから, 貸倒れのリスクはかなり高いわけで, それを考えると正直現状の金利でもけっして無茶とは思えません.
    銀行系の消費者金融等には利息制限法の範囲でやってるところもありますが, そういうところの主な顧客はサラリーマン等, いざとなれば給料の差押えという回収手段がある人ですから.
    結局上限金利を下げる, ということは主婦や学生や自営業者などは借金をできないように国が決めるようなものだと思います.

  3. 消費者金融専業は、日本独自っていうのは、事実とは違います。 アメリカにも、サラ金みたいなものはたくさんありますし、クレジットカードも銀行系ではないものが、たくさんあります。
    アメリカの銀行にとっても、消費者金融は、けっこうコストのかかるものなので、住宅ローンやセカンドモーゲージ(これらもノンバンクがたくさんあります)など、担保があるものを除くと、小口の融資には消極的だ思います。だから、クレジットカードでキャッシングしまくって、破産する消費者がアメリカには多いのです。

  4. ベニスの商人の昔から、「金貸し」はいっぱいいるんでしょうけど、全国の駅前に何百という支店を展開し、テレビでアイドルを使ってCMしまくり、無人機で審査・貸出までできちゃうような、日本の「消費者金融専業」の業態は、やはり、世界に類を見ないのではないかと思います。

  5. コスト回収できるかどうかより、重要なのはその金利で借りた顧客が返済しきれるかどうかでしょう。年収の一割が限度とされているのに、複数の業者から借りられればその人はいずれ破綻するのは確定してます。
    そう言う相手に貸してしまっている以上、いずれマーケットは縮小し、業界自体成り立たなくなるという簡単な計算がサラ金も銀行もできてないわけです。私に言わせれば「商売は計画的に」ですね。
    今回のアイフル事件で、結局サラ金は怖いと言う印象を完全に与えてしまいました。もう銀行も離れるし、どう理屈をこねた所でグレーゾーン金利は撤廃されます。
    バブルの時と同じく、金融業界の先見性の無さには呆れるほかありません。
    もう一度書きます。
    「商売は計画的に」

  6. だからといって、ホワイト情報を見て収入や業種等のリスクから考えられる限度額以上の金額しか与信していない大手・中堅のちゃんとした業者や、その金利が十分に負担できる利用者の機会が法律によって強制的に制限されてしまっていいものなんでしょうか。
    バブル崩壊による被害も、不動産等への特定業種への貸出規制や、資金の急激な引き締めといった経済学的に不適切な行政運営によって引き起こされたということは、すでに定説ではないかと思います。今回の上限金利引き下げも、経済活動を縮小させることはあっても、結局、多重債務者を救うことにならないのは明らかです。
    政策の方こそが「計画的」なことが求められるんではないでしょうか。

  7. (大手の方のお話ですが・・・)
    資産のある方が貸金業を始められたのか、ビジネス、投資等が成功して資産をもたれたのか知りませんが、現在いわゆる資産家(それも世界レベル)の事業というところが、本文との対比で興味深くコメントします。
    フォーブスのビリオネアデータ(World’s Richest People)より
    2005のデータ
    1996のデータ

  8. ギャンブル・飲食・ブランド品の買い物など、要りもしない資金を貸し込んで債務者を泥沼に陥れているのがサラ金の実際です。サラ金と10〜20年も付き合って収入の大半を返済に充てている人も少なくありません。「俺さえ儲かればそれでいい」がサラ金の論理です。このような企業は存在を許されるべきではないでしょう。

  9. >ギャンブル・飲食・ブランド品の買い物など、要りもしない資金を貸し込んで
    日本は自由主義諸国の一員で、どういう財やサービスを利用するかは個人の自由に任されています。「お菓子のCMがあんまりおいしそうだから、食いすぎて糖尿になっちゃったけど、どうしてくれるんだ!」と言われても困るわけでして・・・。
    >サラ金と10〜20年も付き合って収入の大半を返済に充てている人も少なくありません
    全情連のデータによると、おそらくすでに国民の半分は消費者金融専業者のサービスを利用したことがあるでしょうし、同水準の金利の銀行系や信販系クレジットのキャッシングを利用したことのある人も含めると、国民の大半は、消費者金融サービスを利用したことがあるわけです。
    日本人のほとんどが自分で資金管理もできないアホばかりとは私は思いませんし、それだけの人に利用されているサービスが、「存在が許されない」なんてわけがありません。
    「ハイエナはライオンの残した死肉を食べるから嫌い」というようなことを思うのは個人の勝手ですが、ハイエナも壮大な食物連鎖の中でちゃんと意味があって存在しているのと同じで、これだけみんなが利用している便利なサービスは、経済循環の中で意味をもって存在していると思います。